新造艦船情報(第20回)


日本海軍戦艦「三笠」の巻
(シールズモデル 1/700)

IJN BATTLESHIP "MIKASA"
(SEALSMODELS 1/700)



 

act1:戦艦「三笠」について

明治30年度計画
明治32年1月23日 起工
明治33年11月8日 進水
明治35年3月1日 竣工(英国ビッカース社バロー・イン・ファーネス工場)
大正10年9月1日 一等海防艦に類別
大正12年9月20日 除籍
大正15年11月12日 「記念艦 三笠」となる
平成4年6月 英国世界船舶基金財団より海事遺産賞受賞

常備排水量:15,140t
全長:131.7m
速力:18ノット
30.5センチ連装砲2基、15.2センチ単装砲14基、 7.6センチ単装砲20基、47ミリ単装砲16基、45センチ魚雷発射管4基など

act2:ついに登場、栄光の戦艦!

いままでありそうでなかった戦艦「三笠」のプラモデル がやっと登場です。大敗した太平洋戦争時の艦は特務艦まで インジェクションキット化されるのに、日本海海戦大勝利の 立役者がなかなかキット化されないというのは不思議な国民性ですね。

「三笠」の生涯は波乱に富んでいて、そもそも予算も未決の 段階から西郷海相、山本次官が切腹覚悟でビッカース社と建造契約交渉を 始めてしまう、という際どさでした。日露戦争での活躍は色々な 関係書で紹介されています。 ポーツマス条約締結直後、火災がもとで爆沈。 大正10年にはアスコルド海峡で座礁し船体損傷。 大正12年には関東大震災によりさらに損傷。 また敗戦による荒廃、と幾度かの 不運に見舞われながら持ち前の強運により、 現在もその雄姿を横須賀白浜海岸にとどめています。 (現在の「三笠」については 「大艦巨砲の旅第5回」 神奈川県・横須賀/猿島へ行く を参照してください。)

今回はその「三笠」が一番輝かしかった時、 日本海海戦の状態で製作してみました。

act3:船体

船体は左右分割により、特徴ある防雷網を始めとする各種装備を 立体感溢れる彫刻で再現しています。甲板との合わせも概ね良好ですが 一部隙間ができることもあるようですので擦りあわせを念入りに 行いましょう。ちなみに私のキットは右舷アンカーベッドのあたりに 若干隙間ができたのでパテで埋めました。

キットの舷側錨鎖孔はほぼ円でモールドされていますが、 「三笠」の実物をご覧になった方はご存知の通り、 ここは小判型の長円になっています。私は艦首のイメージが気になる 人なので、キットのモールドを削りとって、0.3ミリプラ板を小判型 に切り取って内側に穴を開けたものに付け替えました。 (中段写真の矢印部) 右舷の錨鎖は1本しかモールドされていませんが、日本海海戦直後 の写真では1本しか写っていませんし、平時も必ずしも2本繰り出して いるのではないようなので、このままでも問題ないと思います。

主砲ターレットの前後に波きりを接着するようになっていますが、 接合部はパテで消しておいたほうがいいでしょう。 主砲は結構目を引きますので。

艦首尾の7.6センチ砲座は何故か船体内側に砲座接着用の 突起がモールドされています。 作例では砲眼をくり貫いて内側に7.6センチ砲のパーツを接着して みましたが、それほど見栄えがしないので説明書の指示どおり 砲身のみ接着したほうが楽でいいかもしれません。

副砲を接着してからでないと甲板が接着できないなど、 組立の順番に気をつけなければならない点が何個所かあります のでよく頭の中でシュミレーションしておきましょう。

act4:上構

この時代の艦はあまり複雑な上構はありませんが、 前後艦橋下部は合わせ目をパテで消しておきましょう。 作例では日本海海戦時としたかったのでマントレットを 艦橋周囲に着けましたが、完全にぐるりと囲んでしまうのではなく ラッタル(梯子)がある部分は開けておいたほうが実感が増します。 (羅針艦橋天蓋右舷の一部、前後ウイングのマスト寄りの部分など) 羅針儀も日本海海戦時はマントレットですまきにされていたので、 1ミリプラ棒で作り直しました。 また、前後ウイング下部には支柱がありますので伸ばしランナー で数本でも再現しておくと精密感がでます。

煙突は日本海海戦時やそれ以前の状態ではジャッキステイ (手摺)のないツルっとした円筒になっているはずです。 (ボックスアート参照、中段写真の矢印部) キットの縞々モールドを削りとってもいいのですが、 WAVE社の「G-タンク:ロングS」セットの6ミリ径のプロペラントタンク がピッタリ同じ太さなので、これを煙突のパーツと同じ長さに切って 流用しました。

マストはキットのままでは日本海海戦時の状態とするには ちょっと低い感じがしましたので、0.3ミリ径プラ棒で延長しました。 後部マストには最頂部と中段にガフ(斜桁)がありますので これもプラ棒で追加します。またマストのパーツは大変細いパーツ ですので製作に取り掛かる前にランナーから切り離しておいて 折れる心配のないところに別途保管しておいたほうがいいかもしれません。

act5:装備

日本海海戦時やそれ以前の状態では主砲防水布は着けていませんでした。 楽でいいですね。ただ主砲身パーツのパーテングライン はよく消しておきましょう。

日本海海戦時は搭載艇はかなり降ろしているはずです。 作例でも艦載水雷艇や短艇を一部搭載していない状態にしてあります。

菊のご紋章はそのまま接着すると浮いた感じになってしまうので、 ヤスリで裏から削って薄くしたうえで艦首の曲線になじむように ゆっくり曲げます。気をつけないとすぐパキッと折れます。 キットには2つ入っているので1回は練習できますけど。 ちなみに実物の「三笠」を見た方はご紋章が艦首に合わせてかなり 屈曲しているのはご存知ですね。

act6:塗装

船体はグンゼNo.32軍艦色(2)、甲板はグンゼNo.44タン、 喫水線部はグンゼNo.29艦底色のスタンダード塗装。 舷側の精密なモールドを生かすためスミ入れをしたほうが映えます。

マントレットの現物はかなり茶色っぽかったと思いますが、 スケールエフェクトと模型映えを考慮して白で塗り ニュートラルグレーでスミ入れしました。

私が買ったキットは離型剤が強い感じがしましたので、 事前に中性洗剤などで洗浄しておくことをお勧めします。

参考文献
・世界の艦船391集「日本戦艦史」
・「旗艦三笠と東郷元帥(下)」 (豊田穣著、ケイブンシャ文庫)
この本は直接模型作りに役にたつわけではありませんが 「三笠」の保存工事がいかに大変だったかがわかる手頃な本です。 10年以上昔の文庫本なので入手は難しいかもしれませんが、 古本屋等で見かけたら手にとってみてください。

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