新造艦船情報(第15回)


戦艦「信濃」の巻
(タミヤ戦艦「武蔵」改造 /700)

IJN BATTLESHIP "SHINANO"
(from TAMIYA's BATTLESHIP "MUSASHI" 1/700)



 

act1:戦艦「信濃」について

昭和14年度海軍軍備充実計画(通称マル四計画)
昭和15年5月4日横須賀海軍工廠にて起工
昭和18年10月進水(予定)
昭和20年3月竣工(予定)

マル四計画にて大和型3番艦、4番艦は戦艦「榛名」及び「霧島」 の代艦として建造が決定し、 それぞれ「110号艦」、「111号艦」と仮称されました。

しかし昭和16年12月の開戦に伴い 「110号艦」の戦艦としての工事は中止され、 戦局の変化に伴い航空母艦としての工事が施され 「信濃」と命名された上で昭和19年11月に竣工し、 間もなく米潜に撃沈されたのはよく知られています。

ちなみに「111号艦」のほうは昭和15年11月に起工され、 昭和19年末に竣工の予定でしたが開戦に伴い工事は中止され、 解体されました。 日本歴史上最後に建造された戦艦はついに完成することはなかったのです。

act2:見よ!タミヤの底力

我らが「ミンダナオ会」も2000年までにはタミヤが戦艦「大和」 をリニューアルするという情報はつかんでいたのですが、 ついに今年の静岡ホビーショーでその全貌が明らかとなり、 発売と同時に各地であっというまに初回入荷分が完売となって しまう事態となってしまいました。

同社「翔鶴」級がイマイチとの評価もあった中でその出来に 注目が集まりましたが、最近「大和」級に関する研究成果 がいろいろ発表されていることもあってか決定版と称すべき キットとなりました。今回は戦艦「武蔵」のキットを使用して 幻に終わった「大和」級3番艦を製作してみました。

act1.で述べましたように「110号艦」、「111号艦」 は戦艦としては完成しませんでした。 しかし「信濃」という名前は「武蔵」の次に進水する戦艦に 予定されていた艦名のはずです。 そこで今回は昭和16年12月の対米英開戦はなかったという想定の もとに戦艦「信濃」を製作することにしました。 一応「110号艦」が「信濃」であると漠然と考えていますが、 予定では「111号艦」のほうが進水は先(昭和18年10月の予定) なのでこちらが「大和」級戦艦3番艦「信濃」となった可能性もあります。

「110号艦」、「111号艦」は外見上はネームシップの 「大和」竣工時と同様のはずでした。 すなわち主砲、副砲、高角砲共同じ形式、同じ数でした。 高角砲は長10サンチ砲の搭載も考慮されましたが 予算の都合で12.7サンチ砲12門となりました。 従って、タミヤの「武蔵」を設定に従って竣工時として製作すれば、 一応問題なく「信濃」になるのですが「110号艦」、「111号艦」が竣工する 昭和20年頃に電探もない戦艦というのも不釣り合いですので 若干フィクションを加えてみました。 その点含みおいて以下を続けます。

act3:船体

艦首平面形も「きゅうっ」と艦首に向かって細くなる感じが良く出ていますし、 独特の朝顔型のフレアもニチモのキットに比べてよく出ています。 若干気になったのは艦首甲板と船体の接合部や艦尾短艇格納庫入り口パーツ (A9,A10)と船体の接合部を消すのがちょっと面倒なのと、 カタパルト基部が若干イメージと違うかなあというくらい。 今回は平時に竣工した、という想定でしたので、 舷外電路を削り取り、舷窓を竣工時の「大和」を参考に追加しました。 ちなみに竣工時の「大和」、「武蔵」を製作する場合にも舷窓の 追加は必要な作業です。

艦首正面にムアリングパイプを示す凸モールドがありますので、 その中心に1ミリ径の穴を開けてやります。 錨はインストでは同梱のWLシリーズ共通のリニューアルパーツから 小さいほう(W26)を使用するよう指示していますが、 後述の戦艦「大和」図面集に掲載されている主錨から計算すると 大きいほう(W27)と小さいほうの中間くらいです。 私はちょっとデフォルメを考慮しW27のほうを接着しました。 (こうゆうときでもないとW27を使う機会があまりないし・・・)

act4:上構

これまた非常に良く出来ていてピタッピタッと決まるんですけど 艦橋前面の接合部がちょっと消しにくい。

あとマストの成形も秀逸なのですがスライド金型のせいか パーツがランナーの面から突出していて破損しやすいので、 製作を始めたら早めにランナーから切り取って別の場所に 保管することをお勧めします。 またキットを買ってくるときもこのパーツが痛んでないか確認 して買ったほうがいいと思います。 キットのマストは1号3型電探が一体で成形されており、 「武蔵」(竣工時)として組む場合はこれを削り取るよう指示していますが、 厳密にいうと竣工時はトラスの形状がちょっと違います。

久々の大型キットの製作なのでピットロード社から発売されている ゴールドメタルのエッチングパーツ(PE-26)も目立ちそうな所に使用してみました。 全部使ってやろう、なんて考えると段々作業にイライラして きますので適当に取捨選択してやったほうがよいと思います。 15メートル測距儀の下に付けるプラットホームは方位盤室と 寸法が合わないので良くなじませてから付けるか半円の部分 は切り飛ばして使用を諦めたほうが精神衛生上いいかもしれません。

上部構造中央部両舷側に3番、4番副砲とのクリアランスを稼ぐ ための凹部がありますが今回はこれはパテで埋めてしまいました。 (後述のように同副砲は搭載しませんでしたので・・・ 「大和」、「武蔵」として組む場合には当然こんな作業は要りません)

act5:装備

主砲は砲口のラッパ型の広がりが強調されていますので気になる 人は若干やすったほうがいいかも。 完成してみるとあまり気にならないですけどね。 さすがに46サンチ砲ともなると砲口がでかいのでピンバイスで 開口してみました。 私は0.5ミリ径でやりましたが46センチの 700分の1だから0.7ミリあたりが正しいのかも。 ただ最初は細い径から始めたほうがいいみたいです。 また穴もあまり深く開けようとすると「うぎゃっ」 ということになりかねないので浅めにしといたほうがいいと思います。

副砲は防水布まで含めて一体成形。よくできてます。 もしエッチングパーツを使うなら空中線展張用支柱なんかを 付けるといいと思います。 ちなみに私の「信濃」では昭和20年までの海外からの電波技術導入 を考慮して副砲の上の支柱は廃止にしたことにしてしまいました。

それじゃ電探はどうなるんだ?という話になりますが、 順当に考えれば2号1型や2号2型とは全然違った形状に なった可能性が高いのですが、 私の想像力ではかえってウソくさいものしか考えつきませんので 2号1型はエッチングパーツから2号2型はリニューアルパーツ から流用し最終時の「大和」と同様の位置に接着しました。 また本来陸上型の1号3型は平時を想定するなら装備しない 可能性が高いと思いますが削りとってしまうと 上記のようにマスト形状を修正するのが面倒だったので キットのまま装備した状態で組んでしまいました。

高各砲はピットロードの艦船装備セット(I)から 長10サンチ連装高角砲を12基分流用しました。 上記のように予算計画上では12.7サンチ連装高角砲6基12門 でしたが、昭和20年竣工ともなれば途中で米海軍の ノースカロライナ級(5インチ連装高角砲5基10門)の 情報も入ってくるでしょうし、年次演習の結果などを 考慮すると高角砲の増備は行われた可能性は高いと考えました。 ただ、それが長10サンチ連装高角砲に変更されえたかは 当時の海軍軍備予算、ひいては日本経済の状況如何でしょう。 今回は6基は12.7サンチ連装高角砲用のスポンソンのブルワーク を削り取った上で接着。2基は副砲用支基(C8)の上、 残りはその前後の甲板に直接接着しました。

高角砲の増備に伴い高射装置も増やすことになりますが、 これは最終時「大和」と同様に煙突後方にしました。 「武蔵」のキットには増備分の高射装置はありませんのが 丁度ニチモの「武蔵」のキットで余っていたので 使ってしまいました。

煙突直前の5メートル測距儀装備位置には機銃射撃指揮装置 を装備しましたが、平時ということを考慮し、 C15(旧タイプの爆風除けシールド付き)と同じタイプの ものを自作しました。

機銃は竣工時の「大和」と同様の位置にシールド付きタイプ のものを接着。先ほど機銃射撃指揮装置を追加してしまったので 艦橋及び後部艦橋脇の甲板にC24(シールド付き)を追加装備しました。 平時が続いたとすると、機銃も大口径のものが採用された可能性もあります。 スウェーデン(もしくは米英)経由で40ミリ、 もしくは独経由で37ミリが想像できますがこれらの 爆風除けシールドを考えるとやはりウソくさいものしか考えられない のでやめてしまいました。

装填演習砲のパーツはないので25ミリ連装機銃のパーツから 適当にそれらしくして、艦橋後方に接着しました。 また13ミリ連装機銃も何故かパーツがありません。 今回は省略してしまいました。

ジブクレーン、艦尾空中線支柱、カタパルトなどはエッチングパーツ を使うと自己満足にひたれますが、 なかなかうまく作れませんでした(T_T)

旗竿は艦首艦尾とも支柱がないので三脚にしてやりますが、 「大和」級では艦首旗竿の場合支柱のほうが艦首寄りにある タイプのようです。

搭載機は昭和20年頃ということでタミヤの重巡(航空巡)「最上」 から瑞雲を流用しました。

act6:塗装

これはお定まり。船体はグンゼ軍艦色(2)、喫水線部は同じく 艦底色、木甲板部はタン。後部甲板(セメント張?)は 軍艦色より暗めのグレーということでたまたまあったタミヤの ジャーマングレー。 搭載機は平時ということで機体をグレー (今回はダークシーグレーを使用)、カウリング周りを黒 で塗ってみました。

さすがに「マンモス戦艦」(死語?)。でかくて置く場所に 困ってしまう!とはいえ、精密さでは大味なところが感じられず さすがにタミヤ。 そういえば「大艦巨砲主義者の部屋」なのに始めての戦艦の 完成だなあ。

参考文献
丸スペシャルNo.115戦艦大和級
モデルアート増刊SUPER ILLUSTRATION 戦艦大和
戦艦大和図面集(光人社)

旧・新造艦船情報

  • 1/700軽巡洋艦「チェスター」の巻(JIM SHIRLEY PRODUCTIONS) UPDATE 98/03/14
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  • 1/700護衛艦「むらさめ」の巻(アオシマ) UPDATE 97/12/29
    JMSDF DEFENCE SHIP "MURASAME" DD-101 (AOSHIMA 1/700)

  • 1/700水雷艇「鴻」の巻(ピットロード) UPDATE 97/11/30
    IJN Torpedo Boat "OTORI" (PITROAD 1/700)

  • 1/700輸送艦「あつみ」の巻(ピットロード) UPDATE 97/09/24
    JMSDF LST"ATSUMI" class LST-4101 (PITROAD 1/700)

  • 1/700護衛艦「はるさめ」の巻(ピットロード) UPDATE 97/08/19
    JMSDF DEFENCE SHIP "HARUSAME" DD-102 (PITROAD 1/700)

  • 1/700水雷艇「千鳥」の巻(ピットロード) UPDATE 97/05/04
    IJN Torpedo Boat "CHIDORI" (PITROAD 1/700)

  • 1/700軽巡洋艦「龍田」の巻(ハセガワ) UPDATE 97/04/01
    IJN Light Cruiser "Tatsuta" (HASEGAWA 1/700)

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    IJN Repair Ship "Akashi" (PITROAD 1/700)

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    IJN submarine tender "Chogei" (PITROAD 1/700)

  • 1/700輸送艦「みうら」型の巻(ピットロード) UPDATE 96/08/04
    JMSDF LST"MIURA" class (PITROAD 1/700)

  • 1/700駆逐艦「フレッチャー」型(タミヤ) UPDATE 96/07/21
    USS "FLETCHER" class (TAMIYA 1/700)

  • 1/700駆逐艦「朝潮」型(ピットロード) UPDATE 96/06/03
    IJN Destroyer"Asashio" type (PITROAD 1/700)

  • 1/700駆逐艦「白露」型(タミヤ) UPDATE 96/03/17
    IJN Destroyer"Shiratsuyu" type (TAMIYA 1/700)


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