新造艦船情報(第19回)


日本海軍水上機母艦「秋津洲」の巻
(ピットロード 1/700)

IJN SEAPLANE TENDER "AKITSUSHIMA"
(PITROAD 1/700)



 

act1:水上機母艦「秋津洲」について

昭和14年度計画(飛行艇母艦)
昭和15年10月29日 川崎重工にて起工
昭和16年7月25日 進水
昭和17年4月29日竣工、水上機母艦に類別
昭和19年9月24日コロン湾にて米空母機の爆撃により沈没。

基準排水量:4,650t
全長:114.8m
速力:19ノット
12.7センチ連装高角砲2基、25ミリ連装機銃2基など

act2:異形艦登場!

日本艦にしてはなんとも珍しいシルエットを持った 「秋津洲」がピットロードからリリースされました。

前進基地または洋上にて飛行艇に対する各種補給、整備、修理 などを任務とする飛行艇母艦という艦種は、もはや戦闘任務についている 飛行艇がほとんど存在しない今日となっては「戦艦」と同様にノスタルジックな 存在といえるかもしれません。

act3:船体

「長鯨」のような左右分割式じゃないかなあ、と期待していたのですが、 オーソドックスなワンピース成形でした。錨甲板は別パーツではなく 他のキットのように擦合わせに気を使わなくてすむ・・・と油断したのが 運の尽き。後甲板のクレーン周りの甲板が別パーツになっているのですが こっちを充分擦合わないで接着してしまったのでちょっと段差になってしまいました。 ちょうど艦載艇で隠れるようなところに分割線がくるように配慮されているので あまり目立たないのが不幸中の幸いでしたが。

多分、このキットの最大の欠点じゃないかと思うのは舷窓のモールドが 浅すぎること。私が購入したキットは右舷側の舷窓がほとんど消えていました。 穴が浅くても痕跡くらいあればそれをガイドにピンバイスで開けなおせる のですが、何もないと箱絵を見ながら自分で位置決めしなければならないので なかなか面倒です。 技術的に難しいのかもしれませんが、改修をお願いしたいところです。

艦首にヒケがあるのでアンカーレセスのモールドごとパテで埋めてしまいました。 「秋津洲」に関しては手元になんにも資料がないのでわからないのですが、 19ノットしか出ないような船にアンカーレセス付けたりするものなんでしょうか? 艦尾トランサム部にもヒケがあったのでパテ埋めしました。

箱絵に従って0.3ミリ角棒にて舷外電路を取りまわして接着。艦底パーツは 艦尾フレア部との接続に段差ができがちなので先に接着しておいて擦合せておいた ほうがいいと思います。図面によっては2番高角砲のちょっと手前あたりの舷側に スカッパーが描かれているので1.5ミリ幅に細長く切った0.3ミリプラ板を接着、 同様に艦尾両舷に1ミリ幅のを接着しておきました。

act4:上構

艦橋部がかなり細かく分割されていて、特に艦橋前面と側面の合わせ目が消しづらい のはちょっと泣き所。機銃台下の支柱は0.3ミリプラ棒にしました。

クレーンアームのトラス(部品A6)は裏面からヤスリがけして薄っぺらに したうえでデザインナイフで中空部を切りぬきました。 クレーン上のマスト(部品A25)も同様に処理。前後ともマスト上段は 0.3ミリプラ棒にて作り変えました。 クレーンのワイヤは見た目がちょっと太く感じたので、 切り飛ばして伸ばしランナー換えました。作例ではクレーンフックが変に傾いて いますが、これは急に増速した状態を表現しているわけではなく、接着ミスです(^^;)。 一度切り離す場合には接着時にフックは真下に向くように気をつけましょう。

クレーンアームも通常の係止位置では俯角のついた状態に なりますので飛行艇を載せて遊ぶのを断念(^^;)する方は、 その状態で接着するのもよいでしょう。

act5:装備

1番高角砲の砲身根元はパテで防水布を再現。 飛行艇を甲板上に引き揚げる場合には 後甲板の艦載艇は降ろすことになっていたようなのですが、 別にジオラマ仕立てにするつもりはなかったので、 艦載艇は接着してしまいましたが、飛行艇を甲板に搭載した状態に したい方は接着しないほうがいいかもしれません。 私は大艦巨砲主義者なので飛行艇は作りませんでした(^^;)。

今回は使用しませんでしたが8メートルカッターの キャンパスカバーの部品が付属しています。 11メートル内火ランチも天蓋の有無が選択できます。

act6:塗装

本艦の場合、その生涯のほとんどの時期を迷彩を纏っていたようです。 初代艦長黛治夫大佐考案といわれる迷彩パターンが左舷側のみ 組立説明図に紹介されています。反対舷はちょっと違うという説も あるようですが、資料のない私は右舷もほぼ同様に塗ってしまいました。 説明図では艦橋前部の迷彩が不鮮明で私はうっかり軍艦色のままに してしまいましたが一部ライトグレーのようです。 写真を見ると本当に高速で走っているように見えませんか? であれば迷彩効果充分ですね。

ライトグレー部はグンゼNo.332ライトエアクラフトグレー、若草色(トクホン色?) はグンゼNo.26ダッグエッググリーンを使用。若草色の斑点はモップで塗りつけた そうなので1/700だと0.5ミリ径くらいかなあ、なんて考えてつまようじの 先を使ったり面相筆を使ったりしてみましたがあまりうまくいきませんでした。

他の部分に関しては通常の日本艦と同じく、船体はグンゼNo.32軍艦色(2)、 喫水線部はグンゼNo.29艦底色、リノリウム甲板部はピットロードカラーNo.11 リノリウムなどなど。迷彩したらちょっとおもちゃっぽくなってしまったので 舷側は茶色系統で若干汚しを強めにしてみました。煙突ふもとの 凸モールドは応急資材を表現しているものと思われるのでタンで塗ると アクセントになるでしょう。

参考文献
世界の艦船481集「日本航空母艦史」
特にP126の写真は非常に参考になるのですが、 この存在に気づかないまま作ってしまった・・・後のマツリ
丸スペシャル25集「水上機母艦」
モデルアート182集「ウォーターラインスペシャルNo.4」
モデルアート537集「日本海軍艦艇図面集3」など

(追記)モデルアート546集にて、衣島尚一氏が「秋津洲」 の右舷と思われる写真を紹介してます。これはモデルアート182集 の写真が裏焼きになっている、という推測に基づいていますが 信憑性は高いと思います。これでとりあえず安心して両舷の 迷彩ができますね。また光人社「日本空母物語」 (福井静夫著作集、第七巻)ISBN4-7698-0655-8 C0395 P2400E の430頁に「秋津洲」の略図面があり1944年8月頃の 装備(機銃、レーダー、搭載艇)がわかります。

旧・新造艦船情報

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    Make Home Page:1999.08.15 / Updated 2000.02.27
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