大艦巨砲の旅第5回
「忘年会は要塞無人島?」神奈川県・横須賀、猿島
ACT1;初見参、戦艦「三笠」!
- 横須賀・記念艦「三笠」。今まで何度も近くまでは来ていながら、
入ることのできなかった聖域にとうとう足を踏みいれる。今回は
「海老原博物館」
館長の海老原氏も忘年会を兼ねてご同行願った。
- 「三笠」についてはもう言うまでもなかろうが、日露戦争時の
栄えある連合艦隊旗艦である。かのワシントン海軍軍縮条約で廃艦と
決まったが、除籍後横須賀にて記念艦として保存されている。太平洋戦争
後一時占領軍に接収され、備品の大部分を撤去されて荒廃したが、
英国人ルービン氏の呼掛けを始めとして、ニミッツ元帥の協力なども
得て、修復の末、昭和36年に記念艦として復活した。
- そういった経緯もあって、実は艦上の備品はほとんどレプリカ
で占めれている。そうは言っても建造されてから間もなく1世紀を経よう
としているその堅牢な船体は大英帝国華やかなりし頃の造船技術の高さを
まざまざと見せつける。また復活した備品の一部は同じく英国にて建造され
日本で解体されたチリ戦艦「アルミランテ・ラトーレ」から外された
ものも活用されているときく。ともかく世界で唯一の現存する前ド級戦艦
であり、世界に誇れる技術遺産なのである。(英国製だけど・・・)
- 技術遺産という意味では内部に展示されている36式無線電信機
もまた逸品である。1897年にマルコーニが世界で初めて無線電信機を
発明してからわずか6年で開発された国産機である。勿論、日本海海戦
を前にした、かの名文「天気晴朗なれども波高し」も「三笠」搭載の
同機から発信されたのであった。明治人の進取の気概を示す事例と
いえよう。
- 他にも様々な史料が展示されているが、記念艦としての「三笠」
の歴史を扱ったコーナーでは、戦後一時、ダンスホールや水族館となっていた
当時の「三笠」の写真を見て、海老原氏はえらくご立腹の様子であった。
- 「記念艦三笠」
- 京浜急行・横須賀中央駅より徒歩15分
- 入場料:\500(12/28〜31休艦日)
- 観覧時間:9:00-17:30(4-9月)、9:00-17:00(3、10月)、9:00-16:30(1-2、11-12月)
- 連絡先:財団法人三笠保存会/電話0468(22)5408
ACT2;沈黙の要塞
- 例によって「三笠」をゆっくり見学している余裕は我々にはなかった。
なぜなら、今回のもう一つの大きな目的であるところの猿島へ行く最後の船便
の時刻が迫っているからである。一時この航路は廃止されていたが一昨年より
復活した。冬場でも便数を減らして運行している。
- 慌てて「三笠」を出てきた我々はそばの売店にて急いで「東郷」
ビールを買い込み、船に飛び乗る。この変なニックネームを持ったビールは
フィンランドで製造されていたAMIRAALIシリーズという世界の名提督をラベル
にしたビールで現在はビン詰めのみオランダで製造されている。我が日本から
は「東郷平八郎」が選ばれており、そのラベルに同元帥の肖像が描かれている。
(私の記憶が確かならば昔は山本五十六」もあったように聞いているが・・・
まあ、戦時中の日本に対して反日感情の強いオランダでは作られてないかも)
- さて、猿島であるが軍港・横須賀防衛の為に明治時代より要塞化された横須賀沖
に浮かぶ小島である。戦後は武装解除され、今は無人島である。夏場などは
海水浴客などで賑わうがこの島に宿泊することは禁止されているため、
皆最後の船便で帰らねばならない。人が住んでないので東京湾内では
珍しく自然が豊富な島である一方、旧要塞を構成していた遺構が散在し、
独特の景観を持っている。
- 潮風に吹かれて渡航すること10分余り。船着き場では「海軍港」と
書かれた標柱が我々を出迎えてくれる。散策コースを行くとレンガ作りの兵舎跡
や旧高角砲台跡やトンネルなどを見ることができる。場所によっては西洋の
古城のような雰囲気すら醸し出す。展望台は明らかに軍艦の艦橋を摸した
構造になっている(宗谷岬の望楼と同様)がどのような由来を持っている
のであろうか?
- 高台の視界の開けた場所で我々は例の「東郷」ビールを飲みはじめるが、
寒くなってきたので、飲み干さないうちにまた歩き始める。レンガの壁の凹み
はベニヤ板で塞がれているが、海老原氏によると昔は中に入れたそうである。
入るかどうかは別にしても、景観上はちょっと見苦しい感じがする。
- ゆっくり見学しても1時間弱位で大体見て回れそうだ。
冷たい海岸で暫く待った後帰りの最終便に乗込む。沈む夕日をバックに
くっきり浮かぶ富士山を眺める。
- そして我々は横須賀の街で忘年会の続きへと繰り出すのであった・・・
- 「東郷ビール」
- 小ビン:\350
- 「猿島航路」
- 乗り場は「三笠」艦尾よりすぐ近く。
- 運賃:\1,200(往復)、祝日以外の水曜日休航
- 運行時刻表は季節により異なる。
- 連絡先:トライアングル三笠営業所/電話0468(25)7144
「大艦巨砲の旅第4回」 青森県・青森/大湊へ行く
「大艦巨砲の旅第3回」 栃木県・那須高原へ行く
「大艦巨砲の旅第2回」 千葉・稲毛海岸(こじま)へ行く
「大艦巨砲の旅第1回」 甲府・石和(模型合宿)へ行く
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Make Home Page:1997.01.06 / Updated 1997.01.06
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