(3180m

  

第4部 <槍ヶ岳山荘→3000mの稜線漫歩→氷河公園→横尾山荘 2000年8月29日(火)>


コース・時間

8月29日(火)
槍ヶ岳山荘 6:10→7:00 大喰岳 7:20→8:15 中岳 8:30→9:50
横尾尾根分岐10:20→11:40
天狗のコル 12:00→12:35 氷河公園 13:20→14:00 槍沢合流
14:00→15:30 旧槍沢小屋跡(天場) 15:35→16:00 槍沢ロッヂ 16:15→18:00横尾山荘着(泊)



3000m級の稜線雲上漫歩

今回の山行で初めての朝食。「うまか〜」3杯も食べてしまった。1号もよく食べてる。「トイレは?」「出ない」・・・おいおい本当に大丈夫かい?心配だなあ。でも出ないものはしょうがないもんな。6時10分に槍ヶ岳山荘に別れを告げ、横尾尾根に向かう。今日は楽しみにしてた3000m級の稜線縦走だゾ!名づけて「B型ファミリー3000m雲上散歩」


槍ヶ岳山荘を出発 今日歩く3000m級の主稜線を見る。


今日の計画は、飛騨乗越から大喰岳(おおばみだけ 3101m)、中岳(3084m)、南岳(3032m)と相次いで3000m級を踏破し、南岳からすこし戻って横尾尾根を下降、天狗原のコルから氷河公園を目指すという壮大な計画だ。1号は下りは大得意、スタミナに不安はないが「不注意」だけには気をつけないといけない。何でもない下りで大怪我をしている登山者が北アルプスでは多いのだ。また昨日「熟年夫妻」が槍沢ロッヂで止めたほうがイイと言われた「横尾尾根」は要注意だ。ここは時間をたっぷり使ってゆっくり慎重に臨もう。



ついに出た!

山荘の前を大喰岳方面に向かって歩く、階段状に設けられた天場を過ぎると飛騨乗越に向かってジグザグに降りて行くように道が着いている。ガイドブックによると飛騨乗越は日本一標高が高い峠とのこと(標高3020m)。「おとうさん!あれ見て!わたあめみたいだ!」 おー本当だ、写真写真っと。この下りの道を半分以上過ぎた頃、「おとう、ウ○チがしたい!」「!!」やったあ!ついに出るか!・・・でももう少し早く言ってくれよなあ。今更登り返す気力はない。「あそこまでガマンできるか?」と飛騨乗越を指差す。「うん大丈夫。」
飛騨乗越について適当な岩陰をさがす。あったあった、大きな岩に隠れた狭い平場が。ここでショベルで穴を掘る。あんまり深く掘ると自然分解が進まないので20cmほどで良い。「さあ、やれ」・・・・・・・・・・うおーとてつもなくデカイ!(お食事前の方、申し訳ありません)、イイゾイイゾ・・・・・・使ったティッシュはビニールにくるんで必ず持って帰ろう。再び掘った土をかけて、その上に小岩を5〜6個置く。これでOK。環境面からできれば「キジ撃ち」はしたくないが、この場合は致し方ない。くれぐれもマナー違反のやり方だけはしないように!
なんと日本一高い峠で大キジを撃った1号、「ああ身体が軽くなって絶好調だア!」と喜ぶ。


1号が「わたあめ」と表した雲
その向こうは黒部五郎岳
山荘の天場にて。
大喰岳が迫ってくる。



大喰岳(3101m)

大喰岳への登り返しにフーフー言いながらも何とか頂上へ。ここは二重山稜で一瞬どこが頂上か迷う。標識のついた小山に登るとそこが頂上で、なんとまあ槍がほれぼれするような格好で眼前に迫る。ちょっと右に傾いだ槍が素晴らしい。頂上を降りて飛騨側に行くと、こちらは笠ヶ岳が実に凛々しい。またこの名山を見下ろしていることが実に気分がイイ。


大喰岳山頂にて。
右に少し傾いだ槍がカッコイイ。
笠ヶ岳を見下ろす1号



結構なアップダウンで時間を食う。

この3000m雲上漫歩は地図や写真で見るイメージとは違い、かなりのアップダウンがあり体力を消耗する。しかも岩クズの上り下りも多く、慎重さを強いられ精神的にも疲れてくる。景色がなければかなりのダメージがあるだろう。休憩の数も増えて時間を食ってしまうB型ファミリー。


主稜線の向こうに穂高が。
この景色に励まされる
こういう小ピークが結構ある
じわじわこたえてくる



中岳(3084m)

中岳は形の整った山だ。近くに来て見上げると迫力がある。岩クズをジグザグにヒーヒー登る。わーこの山は厳しいぜ。相当な急登である。頂上直下にはハシゴまで付くと言うサービスぶりでやっとこさ頂上に着く。ここは5〜6人が休憩している。例によってオールレーズンと練乳で大ブレーク、そうこうしているうちに石川@鴻巣さんが追いついてきた。今朝穂先を往復されたはずだ。さすがに足が速い。また昨日槍ヶ岳山荘で知合った「東鎌夫妻」(昨日、東鎌尾根を縦走された)も到着された。みんなで一緒に仲良く休憩。石川さんにシャッターを押していただく。


中岳山頂へのハシゴ
高度感が最高!
中岳山頂。
本日2つめの3000m峰
中岳を振り返る。イイ山容だ。



石川さんとお別れ

たっぷり休憩の後、中岳を出発する。先にMMLの石川さんが大キレットに向け出発されており健闘をお祈りする。「ご無事で〜。」
「東鎌夫妻」は我々と同じコースで横尾尾根を下るとのこと。
朝の雲海が太陽に暖められて湯気のように沸き上がってきているが、切れ落ちた左右の眺めは絶景だ。左は限りないカールの広がり、右は笠が岳を初めとする飛騨の山々である。南岳までは楽勝かと思っていたが、槍・穂高のシンボル岩クズの歩きにくい道が続く。中岳の下りは思った以上にしんどい。右手に雪渓を見て中岳を過ぎるとやがて小ピークが二つ、三つと現れてくる。岩をトラバースする多少緊張する箇所もあり、1号に気を遣いながら進んでいく。ヒエーこんなの聞いてないヨ〜。
東鎌夫妻とはお互いに抜きつ抜かれつで、ほぼ同じペース。中岳を出発して1時間20分、ようやく横尾尾根への分岐に到着した。


こんなん聞いてないよ〜 気持ちのよい稜線と南岳



南岳は断念!

時間は10:00近い。ここで十分休憩しておかないとこの横尾尾根はリスクが高くなる。向こうに見えるもうひとつの3000m峰・南岳の往復は我々の足では1時間以上かかるだろう。そうなると本日の宿泊地・横尾まではつらい。あせって横尾尾根を下降するのは危険だ。そう判断し残念だが南岳はあきらめることにする。「東鎌夫妻」は往復してこられるとのことで、ザックをデポして出発される。
しっかり行動食と水分を補給し、心の準備を整え、この岩尾根を下り始める。


横尾尾根、初心者・ファミリーは近づくべからず!

エラそうなことを申し上げて恐縮だが、この尾根の下降はハンパじゃない、初心者・ファミリーは避けた方が賢明だ。わがB型ファミリーが地獄を味わったあの「谷川岳・西黒尾根」の下降より少なくとも2ランクは難しい。まずは急角度の下降、クサリの掛かり方が中途半端。通る人が少ないので整備があまりされていない。(一箇所クサリを支えるホールドがスポっと抜けてしまうところがあった!「ウソー」って感じ)。また道はかなりのザレ場、気を抜くと「ズル」と転倒してしまう危険あり。落石にも注意!わが隊は散々注意したにもかかわらず、3度ほど落石をおこしてしまった。うち1度はかなりの規模で、カールに向かってガラガラと石がなだれて行ってしまった。
そんなこんなでRIKIは1号の気持ちを引き締めることに全力を傾けることに集中、やり方は常に言葉を投げかけること。「そこはズルっとなるぞ!」「とんとんとん、と降りるな!」「その石は動くかもしれないぞ!」・・・終始気を抜かせないよう気を配る。ところどころ肩を貸してあげて降りさせるところも。
・・・・これも聞いてないよ〜、下調べは入念にね!


高度感はかなりのものだが、スパっと切れ落ちたところを通るようなことはない。ところどころで疲れた頭をクールダウンさせるために休憩。「わースゲー」、左手に槍沢カール、右手に南岳カールの両カールが眼前に果てしなく広がっている!ここでも北アルプスのスケールをまざまざと感じさせられるのである。


横尾尾根。これを下る。
ファミリー向きではない。
南岳カールが美しい 絶景に見入る1号。北アルプスを実感


天狗原のコルから氷河公園へ

緊張が続き、頭も身体もヘロヘロになった頃、ようやくコルに到着。ここは「天狗原のコル」、南岳カールからのバリエーションルートの終着地でもある。ここで「東鎌夫妻」が降りてこられる。一緒にコルで休憩、聞けば南岳はガスがかかり「大キレット」は見られなかったとのこと。大変美味な焼き豚を頂き、1号が「うまいうまい!」と言って食べる。ここでの豚肉は栄養の面でも大変ありがたい。感謝!!。20分ほど休憩の後、氷河公園へ。途中雪渓を通り30分ほどで、昔は「知る人ぞ知った」氷河公園に到着する。

ここでも「東鎌夫妻」と一緒に休憩。5名ほどのグループが先に休んでいる。ここはいいとこだねえ。心が安らぐ。有名な「天狗池の逆さ槍」もバッチリだ。苦労して降りてきた甲斐があったよ。槍があんなに遠くになった。あそこまで登ったんだよなあ、なあ1号。1号は近くの岩の上に乗って自分の世界に浸っていた。

雪渓にて。山って不思議。 氷河公園にて



槍よ、さらば!

この後のことは寂しくなってしまうのであまり書きたくないが・・・
氷河公園から槍沢カールを横断して、昨日奮闘した槍沢の登山道に戻る。カールを横切る時の至福感!!大自然の中にちっぽけだがオレは存在しているぞ!という感じだ(表現がヘタ)。登山道に戻るにつれ槍が徐々にその姿を隠していく・・・少しずつ見えなくなっていく。さようなら、ありがとう!本当にありがとう!・・・「登らせてくれて、ありがとう!」と叫ぶRIKI、すると1号も叫ぶ「ウ○チさせてくれて、あ・り・が・と・う!」・・・親子で大笑いするが、またすぐに寂しい気持ちになる。ついに穂先の一部だけがかすかに残り、やがてそれも隠れてしまった。


カールを横切る。まさに大自然! 槍沢を下る



横尾山荘着 Bファミ隊の冒険おわる

一気に槍沢を下るB型ファミリー、1号はあまり休憩もとらずにドンドン歩いていく。子供は下りに強い。途中槍沢ロッヂで横尾山荘に到着の時間を電話で告げた後、さらに歩いて18:00に横尾山荘に到着。途中、槍沢小屋跡の天場では昨日置き忘れてしまった1号の手袋を無事回収できたのはラッキーであった。
横尾山荘では、「さわやか夫妻」「熟年夫妻」が祝福の言葉を1号にかけてくれる。ご満悦な1号、山荘にあった山の写真集で槍ヶ岳をいつまでも見ている。「熟年夫妻」が「横尾尾根はどうでした?」と聞かれる。ありのまま答えるRIKI。でも「時間をかければ降りられます。何事も余裕が大事です」と付け加える。幾つになられてもチャレンジ精神は持っていただきたい。僕らだってそうでありたいんだ。


私が年老いても、
そして私が死んで1号のけんすけが年老いても、
いつまでも槍の穂先は変わらないだろう。
永遠に悲しいまでにひとり天を指しているだろう。
いつの時代になっても、
それぞれの人にそれぞれの槍があるだろう。


その願いをこめつつ、今回の長いB型ファミリーの冒険記を終了したい。最後まで読んでいただいてありがとうございました。


(おわり)


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第1部 <出発→槍沢ロッヂ 2000年8月26日(土)〜27日(日)> へ
第2部 <槍沢ロッヂ→槍ヶ岳山荘 2000年8月28日(月)> へ

第3部 <槍ヶ岳山荘(穂先往復)(泊)→感動の朝 2000年8月28日(月)〜29日(火)> へ


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