(3180m


「いやしくも登山に興味を持ち始めた人で、まず槍ヶ岳の頂上に立ってみたいと願わない者はないだろう。」
(深田久弥)


  

プロローグ
(初めて槍を目指す、すべてのファミリーに捧ぐ)


槍ヶ岳 北アルプス 3180m 日本第5位の高峰
私が山に興味を持ち始めたのは、福岡で高校生活を送っている頃だった。と言っても休みのたびに登山に出かけるようなことではなく、日本や世界の名峰と言われる山を、本やテレビで見てそのたびに「へえ、カッコいいなあ〜、凄いなあ〜」と憧れる程度である。その数ある名峰の中でも私が最も憧れを抱いていたのが槍ヶ岳である。本当に槍のように鋭い山容、日本にこのような山があること自体なんとなくうれしい気持ちがして、同時に写真で見る限りとても一般人では決して登れない山であると思いこんでいた。何しろ九州には2000mを超える山は皆無、おまけに私の故郷である福岡県の最高峰(当時)は背振山で、その高さは1055mと千メートルをわずかに超える程度である。1000mにも満たない山をヒーヒー言って登っていた私にとって3000mを超える山なんてどんな厳しい行程なのかまるで想像が付くわけが無い。ましてや「槍」のような鋭く尖った岩塊の山である、これはきっと大学の山岳部や登山家と言われる人達の世界の山なんだろう、アプローチに何日もかかり、ロッククライミングの技術と凄まじい体力が必要で、とても一般人なんかが近づける山ではない、そう思いこむのも無理の無いことであった。


従兄
私には13歳ほど離れた山好きの従兄がいて、よく山の話しをした。従兄は同じ会社の仲間達と福岡近郊の山をあちらこちら登っていたようだ。いつだったか初めて購入したカラビナを見せてくれたことがあり、私も初めてそれに触った。何に使うのか全く分からなかったが「カチンカチン」という開閉音がとっても良い音だったことだけ覚えている。鋭い岩山に憧れがあった私が「槍ヶ岳って普通の人じゃムリだよね?」と言うと従兄は「たぶんな・・・遠いしね」。福岡から日本アルプスはまるで外国である。「じゃあ阿蘇の根子岳は?一緒に行かない?」「う〜ん、オレには(年だし)無理かもなあ」
結局従兄とはその後一緒に山に行くことも無かった。
その従兄が15年前他界した。突然だった。棺の前で涙が止まらなかった。
そして「槍ヶ岳」と「阿蘇・根子岳」は「利尻・谷川・富士」と共にいつのまにか私の「憧れ5峰」となった。



Special Thanks to Mr.IMAMURA, a member of MML, for his Providing above 3PHOTOs
MML 今村氏のHPはこちら


事前準備
ウチの会社の夏休みは全社一斉ではない。自分の仕事の都合で6月〜9月まで好きな時期に取得できる。当初は会社の研修の都合で9月前半を予定、子供達は夏休みが終わっており仕方なく自分一人の夏休みを過ごすことにする。行き先は槍に決定、単独である。
ところが会社の研修の予定がコロっと変わってしまい、8月中に休みが取れることになった。やった!子供を連れて行けるゾ!槍だ槍、B型1号のけんすけ(小3)と北アルプスだ〜!!(B型2号のお姉ちゃんは塾、ゴメン。)(^-^;)

計画では山小屋3泊の計4日(プラス1日予備日)。3日目には3000mの稜線上を縦走する。こうなると今まで1号が山で着ていた「コットン生地」のシャツやズボンではヤバイ。7月終わりに山シャツ、山ズボンを買いに行く。痛い出費だがリスク軽減のためには仕方が無い (にやけながらレジでお金払っていたが・・・)。

B型1号のけんすけにとっては、これまでの経験から体力的には問題がない (むしろRIKIの方が心配である)。しかし槍の穂先はクサリとハシゴで攀じ登る岩場。中高年の方たちも登っていて危険度はかなり軽減されているはずだが、そこは子供、渋滞待ちでちょこちょこ岩の上で動かれたら危険この上ない。なんかイイ確保のやり方ないかな〜なんて思っていたら、タイミング良く亀足隊長・郡司さんよりスリングとカラビナでの確保の方法を伝授される。なんとありがたい!さっそく購入。隊長からはその他、稜線歩きの際の「強風」にもアドバイスを受ける(感謝)。



食料計画
槍沢登山コースは標高差1350mを一気に登る。十分な行動食と昼食を考えていなければゾンビの極致が目に見えている。事前にショップで山メシを試し買い、家で色々試食会を行った結果、けっこうα米もいけることが判明。五目やピラフなどを中心に買い揃える。その他にスパゲッティ、魚肉ソーセージ、たまごスープ、麻婆春雨を昼食として用意。行動食としては東鳩オールレーズン、リッツ、ツナマヨ、ビスコ、チューブ入り練乳、羊羹なども購入。準備万端、食料には死角なしだ。ワハハ。\^o^\
(1号の好きな「マシュマロ」を持って、バーナーで焼いて食べようかと思ったが、面倒なのでやめた)
これらはすべて亀足隊長のHP腹ペコ山男さんのHPよりヒントを頂戴した。(感謝感謝)
山小屋生活
RIKIはこれまで山小屋は1回しか経験がない。今年(2000年)の3月に行った「雲取山荘」だけだ。そこは亀足隊長がおっしゃったように「異常」な山小屋。まるでペンション並みの施設で、かなり快適度が高かったらしい。ところが今度は3泊、しかも北アルプスの混雑の小屋で1号の面倒を見ながらである。ちゃんと食事は食べてくれるか、早く寝て早く起きてくれるか、ザコ寝の状態はいったいどうなのか?心配は尽きない。
そして最大の問題は「ちゃんとウ○チ」をしてくれるか、である。これが出ないとかなりつらいことになる。途中でのキジ撃ちは山の環境保護の点からなるべくならさせたくない。しかも山小屋のトイレはかなりの順番待ちとも聞く。ああ〜心配、心配。でもこればかりは出たとこ勝負だ。悩んでもしょうがないと思いなおし、明るく臨むことにする。

cf:山小屋情報をはじめコース全般につき、詳細なInfoは田代さんのHPより木目細やかな情報を頂戴した。
天候
こればかりは自分の晴れ男を信じるしかない。まずは登頂を最大目標とし、天候が大きく崩れた場合は縦走を放棄することを計画する。ファミリーの場合はかなり余裕を持った計画でないと大失敗する。さらに雨でビショビショになって山小屋に到着した場合のことを何回も頭の中でシミュレーションする。



さあ、いよいよ出発が近づいてきた。心臓バクバクだ。親子で明るく安全に楽しい槍ヶ岳登山へ出発だ!!!


第1部 <出発→槍沢ロッヂ 2000年8月26日(土)〜27日(日)> へ
第2部 <槍沢ロッヂ→槍ヶ岳山荘 2000年8月28日(月)> へ
第3部 <槍ヶ岳山荘(穂先往復)(泊)→感動の朝 2000年8月28日(月)〜29日(火)> へ
第4部 <槍ヶ岳山荘→3000mの稜線漫歩→氷河公園→横尾山荘 2000年8月29日(火)> へ