大艦巨砲の旅第2回



「本当に消えてしまうのか?老兵「こじま」よ!」千葉県・稲毛


ACT1;ショックなニュース

ある日、いつものようにニフティの模型フォーラムの会議室を覗いていると、 「こじま」の解体が決まったとの新聞記事あり、との報。早速千葉在住の妹に頼んで読売新聞4月 14日の京葉版を持ってきてもらったところ、やはり近く解体が始まるとのこと。 (但しニフティの同会議室での情報によると年内は解体は始まらない、との説もあり。)

私が先程から「こじま」と呼んでいるのは、現在の千葉市海洋公民館(美浜区高洲四) のことで、旧日本海軍海防艦「志賀」として建造され、太平洋戦争を生抜き、戦後は 海上保安庁巡視船「こじま」として多くの海上保安官を育てたフネである。退役後千葉市 が払下げを受け、同地に固定保存、公民館施設として活用されていたが、 老朽化や消防法の改正の影響で休館となり、この度解体と決まったらしい。

ACT2;回想

初めて「こじま」を訪れたのはもう11年も前のこと。(とはいえ「こじま」= 「志賀」の半世紀に渡る生涯からすれば最近のことだが…。)当時高校3年生だった私は 登校日が減ったのをよいことに、学校へ行くふりをしてあちこち見学にいっていたが、 その頃である。何でその存在を知ったのかは忘れてしまったが、旧日本海軍の海防艦 が本当にこの日本で現存しているのだろうか?と半信半疑ではあった。

京成「稲毛」駅を降りて海岸方向へ徒歩で結構歩いた。まわりは団地である。本当に にこんなところにあるんかいな?ムムッ!団地のてっぺんからマストが見える! ってなわけで(私にとっては)感動的な出会いを果たしたのであった。

武装は当然外されていたものの、艦橋の双眼鏡はまだ使えた(若干ピンボケのになっ ていたが)し、搭載艇の類も当時はまだ装備されていた。艦内は水槽が幾つか設置さ れており、魚の説明板とともに海洋公民館であるということをアピールしている。 別室には艦船の模型が展示してあり、初めてマルサンの艦船模型の実物を見られて非常 に感動した。

船体は池の中に固定されている。左舷側は芝生の公園となっており、非常にのどかな 光景である。激動の生涯を送ったこのフネも安住の地を得たかに見えたが・・・。

ACT3;再訪・再々訪

それから何年かしてまた「こじま」を見に行った。そのときは丁度改装工事中で中には 入れなかった。そして三年位前にまた写真を撮りに行った。煙突の色が変わっていた他 ペンキの塗換えなどによりこぎれいになったが、搭載艇の撤去などにより上構があっさ りした感じになった。双眼鏡は見えなくなってしまったものの、マルサンのプラモは 健在であった。とりあえず、無事でなにより。改装工事をしたばかりなんだからあと 10年は大丈夫かな、と思ったのだが・・・。

その日は稲毛海浜公園の民間航空記念館のほうにも足を伸ばした。稲毛海岸 (といっても実際には今の海岸ではなく、当時は「こじま」のあるあたりまで海だったのだが)は 民間航空で初めての練習所が作られたところで、その辺りには記念碑があり、 前述の記念館には奈良原式四号(「おおとり」号)やプライマリーグライダーのレプリカが展示 されているのでハセガワのプライマリーを作る人には良い資料となるかもしれない。 建物も新しく今風の展示方法である。

ACT4;願わくば・・・

カタチあるもの、いずれは消えゆく。マッカーサー元帥曰く「老兵はただ消え去るのみ」。 今日まで「こじま」を保存し続けてくれた千葉市の皆さんにはただ感謝するほかありま せん。ただこのフネが背負っている歴史的意義を考えると、まだまだカタチある存在で あって欲しいと願うのは私だけではないでしょう。劣勢覆いがたい大戦末期、ひたすら に日本のシーレーンを護って戦い抜き、戦後は海外の邦人を祖国日本へ送り届け、かつ ての敵の連合国にも仕え、草創期の海上保安庁では巡視船として活躍、練習船として多 くの生徒を海に送り出したのです。

解体してしまえばただの鉄屑です。しかし今の「こじま」は日本にとって かけがえのない歴史的遺産なのです。

JR稲毛海岸駅(京葉線)からの所要時間
千葉市海洋公民館(こじま公園):バス5分、徒歩2分(駅からみて内陸側)
民間航空発祥の地記念碑:バス5分、徒歩2分(駅からみて内陸側)
稲毛海浜公園(民間航空記念館):バス10分(駅からみて海側)
(取材協力:和田 安隆 氏)


「PORTHOLE(Phots of Ships)」 「こじま」の写真を見る 

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Make Home Page:1996.5.11 / Updated 1997.5.05
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