屋久島(宮之浦岳 1,935m)


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13:00淀川登山口出発。
次々に現れる信じられない樹木。
道は歩きやすいので上を見上げながら進める。「おいおいこれ本当に杉かよ〜」植林杉しか見たことがない目には驚愕の嵐だ。でもまだまだこれは序の口なのだろう。なんたって樹齢1000年経たないと屋久杉とは言わないらしい。途中で電気ノコで道を整備している地元の方々に遭遇、道に張り出しているスギの根っこを切っているのだ。こうして登山者の安全をキープしている。どうりで歩きやすいはずだ。服装は上2枚で十分。13:50今夜の宿泊予定・淀川小屋に到着。


淀川小屋
見上げると、こんなのが 次々と現れる。


さっそく小屋の裏に流れている沢に下りて水を補給。「すげえええ!」薄暗い中うっそうと苔むした沢!そこを流れる美しい水!雰囲気満点だ。まだちょっとしか歩いていないのにもうこんなところが現れるなんて!(快晴の天気だったが、ここは暗くて写真が撮れないほど)小屋に戻ると悩む。まだ14:00、空は素晴らしい青さだ。さすがに九州まだ陽は高い。時間がもったいない。明日はこの天気がいつまで持つか分からない。歩けるだけ歩いた方がよいのでは?ちょうどよい距離に石塚小屋がある。ここに泊まると明日の朝は1時間ほど来た道を戻ることになるが、それでもここにいるより時間は稼げる。よし行こう!
そう決心した時、上から年配の登山者が降りてきた「いや〜最高の眺めでした」聞けば今日宮之浦岳山頂を往復してきたという。360度海が見渡せ
種子島がきれいだったとのこと。「天気予報をよくみて、よし!と思って昨日東京から飛んできた」のだという。「おかげで大当たりでした」。いいよなあ、暇な人は。ああうらやましい。明日晴れるかなあ〜。


14:20淀川小屋出発。小屋の先にある鉄橋から見る清流(淀川)は絶品!水面に映る秋空の美しいこと!溶け込んでしまいそうなほど見事な青さだ。後ろ髪を引かれる思いで鉄橋を渡ると、やがて本格的な登山道に。急登、運動不足の足にはつらい。ゆっくり歩く。地元のオジサンとすれ違う。「石塚までか〜?」「はい」「だったらいい。投石平は少し雪が積もっとるけん野宿は危なか」。今朝は放射冷却で相当冷え込んだらしい。そういえばさっきの年配の登山者も山頂近くは氷でツルツルだと言っていた。投石平はビバーク場所として有名な投石岩屋がある。「足、萎えちゃったなあ〜」ドアtoドアの車の生活はホント良くない。ヒイコラ登る。ふと上を見上げるとドカーンと巨木が覆いかぶさっている。ある種の恐ろしさも感じる。


淀川小屋の鉄橋より(見とれた)
何と表現したものだろう。
上を見るとドカーンとこんなのが(クリックで拡大)



ジグザグの登りから解放されると「高盤岳展望台」がある。ここから高盤岳を見るのが楽しみだった。高盤岳は本当に変な山で、山頂に食パンを並べたような巨岩が見られる。トーフ岩というらしく、以前TVでこの岩の成り立ちを解説している番組を見たことがある。期待した山だったが、この展望台から望むトーフ岩はその肝心の「切れ目」が見えない。単なる岩のかたまりしか見えない位置に展望台があるのだ。もう少し先に進むと木の間から高盤岳が見えた。そこからはトーフ岩の見事な食パンぶりを目にすることができた。もう夕方近いため、完全な逆光だったが何とか撮影に成功。16:00ちょうどに小花之江河に到着。
高盤岳(逆光で判りにくいが山頂にトーフ岩)


小花之江河は小さな湿原だが感動的だ。夕刻の斜光が芸術的な光景を作っている。湿原のミズゴケのブラウン、巨木のホワイト、水面に映るピュアブルー、そして杉の木のグリーンの葉、色温度がちょうど具合が良かったのか360度ぐるりと癒しの光景だ。シャッターを押しまくる無体力トレッカー、この場所を独り占めの幸せにひたる。時間も止まりそう。


小花之江河でのショット5連発
(クリックで拡大します)
ミズゴケ
湿原と巨杉
池と青空と影
巨杉(古存木)
小花之江河入り口より



先を急がないと暗くなってしまう。15分ほどで花之江河に到着。こちらは広い湿原、だけど大味な場所だ。黒味岳は美しい。木道に座り込みお菓子を食べていると湿原の対岸にビックリするような太い白い巨杉がズドーンと立っているのが見える。「スゲー」不謹慎ながらなぜか劣等感と嫉妬を感じる。記念写真を何枚かオートで撮る。陽はだいぶ傾きやや風も出てきて寒くなってきた。薄手のフリースを着る。これで十分。

黒味岳をバックに(花之江河)



身体もだいぶ慣れてきた。さっさと重いザックを担ぎ石塚小屋を目指す。石塚小屋へのルートは花之江河から安房歩道に入る。宮之浦岳の縦走路からは少々はずれることになる。5分ほどで小さな沢にかかる一本丸太橋は怖かった。足を滑らせたら沢に転落だ。ケガをしたらこの時間はもう誰も通らないだろう。時間をかけてゆっくり摺り足で渡る。ちょっとびびった。
この安房歩道は通る人も少ないのか、あまり整備がされておらず所々道が不明慮なのは誤算だった。ぬかるみも多く正直言って
ヒドイ道だ。気を抜いてルートを外すこと数回、その度に狼狽して元に戻る。う〜んちょっとこの登山道の整備は本土に比べて素人だな、いやこれが本来のもので、これまでの登山ルートが登山者に過保護すぎるのか?そんなどうでもいいような事を考えているとまた道を外す。あたりはだんだん薄暗くなってくる。ちょっとあせる。突然左の方向から「ドカドカドカ!!」と地響き、「!!・・・な、何なんだよぉ〜」びびって泣きそうになる。どうやらヤクシカらしい。口から心臓が飛び出るかと思ったぜ。ただでさえ不明慮な箇所が多いこのルート、暗くなってしまったらアウトだ。焦ったつもりはないが、自然に足が速くなる。ずいぶん時間を食ってしまっている。やっぱり焦る。そしてまた至近距離で「ドカドカドカ・・・」というシカの足音でびびる。そうこうしている内に旧安房歩道(現在は通行禁止)との分岐が見つかりほっとする。そこから少し登って小ピーク、このピークを少し下りようやく今夜の宿泊場所・石塚小屋に飛び込んだ。時間は17:30、幸い空はまだ多少明るかった。心身ともに疲労困憊。


小屋には案の定誰もいない。誰もいないことはラッキーだが、これから一晩怖そう。周囲何キロに誰もいないと思うとまことに不気味。窓から明かりが差しているうちにさっさと飯を食ってしまおう。今夜のメニューは博多のセブンイレブンで購入した「キムチ鍋」とアルファ米。だんだん小屋の中が薄暗くなる。キムチ鍋に今日淀川で汲んできた水を注ぎ火にかける。誰もいないので荷物を思いっきり広げて置ける。贅沢。真っ暗になった、時間は18:00すぎ。ローソクに火をつける。部屋の中がボーっと明るくなり、ほっとする。ゴーというバーナーの音だけ、静粛。きわめて静粛。キムチ鍋ができた。うまい!屋久島の水で作った鍋は最高の贅沢か?身体が温まってくる。満腹になり、食器を片付ける。次に何をやろうか?淀川で汲んだ水を殺菌のため沸騰させる。沸騰したあと少し冷ましてからプラスチックの水入れ(熱湯OK)に入れ直す。さて次は?・・やることがなくなった。ローソクの炎をじっと見ているだけ。いつまでもじっと見つめているだけ。さびしい。少し遠くで「ドカドカ」というシカの足音がまた聞こえる。これからは彼らの時間なのだ。何も考えずにローソクを見つめ、何も考えずにその音を聞く。もう寝よう。シュラフとマットを用意する。寒くなってきた。想像していた通り昼夜の気温差が激しいようだ。上下にフリースを着込みシュラフに潜り込む。まだ寒い。いったい何度なんだろう?下着が汗で濡れて少し気持ち悪い。久々の山歩きで腰が痛い。マットからはみ出た足も寒い。足の下にザックを敷く。中には先ほど暖めたお湯が入っているので温かい。なかなかグッドアイデアだ。「明日はいつまで天気がもつだろうか?」「早く起きてさっさと出ようかな」「・・・・」いつの間にか寝てしまった(19:00頃だろうか?)。ひざから下がやや寒かったので時折目を覚ましたが、何とか熟睡できたようだ。


グタグタ言いながらもなぜか写真を撮る余裕がある(石塚小屋)


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