番外編 ハイテク登山の奨め


初めに

登山に危険は付き物ですが、好き好んで危険を招き入れる事は無いわけで、誰だって安全にそして無事に帰ってきたいはず。私だってそうです。
安全登山には

○きちんとした計画を立てる
○適切な持ち物の選択する(雨具やビバーク用の非常装備、食料・水、地図 等々)
○自分の技術・体力に合った山に行く(計画を立てる時とダブります)

事が重要かと思います。

そこで、このコーナーでは、ちょっと目先を変えてハイテク武装して安全な登山に近付いてみようではないかと云うことで、私が使っている登山向けのハイテク道具(デジタルガジェットに近いですが)とその使い方まとめてみました。何かのヒントにでもなれば嬉しいです。尚、それぞれの細かい使い方はマニュアルや他のサイトを参照下さい。書き出すとキリが無いので...

使うもの一覧
1.カシミール3D:パソコン用地図ソフト(DAN氏作成フリーソフト もっと知りたい方はここ
2.GarmapCE:WinCE用地図ソフト(fukuro氏作成フリーソフト もっと知りたい方はここ
3.Garmin Venture-JかVista-J:ハンディGPS(私が買ったショップ、いいよねっとのサイトはここ
4.Suunto X6:気圧計(高度計)、電子コンパス、温度計を内蔵したフィンランド製の腕時計(メーカーのSUUNTOはリストップコンピュータと言っています)(前正規輸入代理店のイワタニプリムスのサイトはここ)(現販売元アメアスポーツのサイトはここ
番外編.SUUNTO X9:GPS内蔵のリストップコンピュータです。本文に載せてしまうと煩雑になるのでこちらに分けておきます。興味の有る方はどうぞ。

ステップ1:計画立案
○カシミール3Dで行動計画をまとめる
計画を立てる際、いきなりカシミール3Dに向かうのはよく知った山の時のみ。ほとんどの場合は、ガイドブックとコースタイム入り地図を併用します。
大まかな計画をガイドブックと地図を元に構想します。勿論、避難路も検討します。コースの難易度や概要、所要時間はこの時点で把握します。構想が決まってからカシミール3D上でルート作成(避難路も)を行います。縦走する時は1日毎(+避難路毎)に作成します。GPSの機種によって1ルート辺りのポイント数の上限が違うのでこれを超えないようにしましょう。
ルートを作成するだけでは何の役にも立たないので、いろいろな機能を使ってみましょう。
カシミールでのグラフ表示・グラフ機能:
ルートに沿って、標高や勾配などが分かります。実際に山に行く前に勾配が分かっていれば体力の配分が決められます。きついコースだと覚悟もできますし...(^_^)
カシミールで切り出した地図・画像出力:
カシミールは地図上に書き込みが出来ないので(出来る様にするジオパッドプラグインのβ版は有りますが、正式リリースでは無いので)、画像出力をしてからレタッチソフトでいろいろと書き込みをしておきます。これを印刷すれば、行動時に必要な部分だけ持ち歩くことが出来ます(あくまで行動時のメモ程度とし、きちんとした地図は持ちましょう!)。ルートも一緒に印刷した方が便利です。
・印刷機能:

上の方法での印刷も有りますが、メモ書きがいらないならカシミールの印刷機能をそのまま使います。選択範囲のみの印刷が出来るので無駄な印刷や1画面毎に継ぎ接ぎしなくても良いのです。ルートも一緒に印刷した方が便利です。
登山計画書への応用:
ルートも一緒に印刷した地図は、登山計画書に付けて提出しましょう。係りの方がいる場合は、”しっかり計画を立てている”と分かってくれるはずです。
・カシバード:
安全とは関係ないのですが、或る地点から見えるはずの景色を再現することが出来ます。”こんな景色が見えるのかぁ!”と胸躍らせながら行くのも良いですねぇ。希望があればいざと云う時も気力が湧くかも。また、印刷して持って行けば山座同定と云う楽しみ方も。
○GarmapCEで外出先でも計画
カシミール3Dで、ルートやウェイポイント(ランドマークと考えてください)をPOT形式で出力、地図をマップカッターで出力し、GarmapCEに取り込みます。手の平サイズのWinCEマシンであれば大した重量も無いので、ノートPCと比べれば持ち歩きも楽です。持ち歩いて何をするかと云うと、
・コースを頭の中にたたき込む(周辺の地理関係も)(電車の中で地図を広げると周りの迷惑になりますし、立っている時は難しい)
・コースの再検討
といったところです。


ステップ2:準備
Garmin Venture-JかVista-J(以後GPS)に、ウェイポイントとコースを転送する。Vista-J等の地図入りのGPSならまだ使いようはあるのですが、Venture-J等の地図が無いGPSはこれをしておかないと経緯度以外何も分からなくなってしまう(経緯度線入りの地図と付き合わせなければ何も分からないのです)ので、これは必須です。また、地図が入るモデルには該当地域の地図を転送しておきます(GarminのGPSはMapSource等から)(地図は、山で使うなら等高線入りのTOPO地図が良いでしょう=ちょっと高いですが)。

ステップ3:山に行こう!
○印刷した地図の活用
・地図1:ポケットにでも入れておいて、すぐに見れるようにしておきます。
・地図2:登山計画書に添付しましょう。
○GPSの活用
Garmin eTrex Venture・ルートナビ:
転送しておいたルートを元にナビゲーションが出来ます。カーナビほど機能が充実してるわけでは無いのですが、大凡のコース方向(コンパスを内蔵していないモデルは移動していないと方向が分かりませんので要注意です)や目的地の大凡の水平距離が分かります。道標の無い分かれ道や、怪しい踏み跡があった時にどっちに進めば良いか判断するのに役立ちます。また、今の速度で歩けばどれくらいの時間で着くか計算(設定ルートでの距離で計算するので実際の登山道の距離とは異なります)してくれるので、心の支えにしましょう(裏切られた時や意外に時間がかかる事が分かった時の衝撃も大きいですが(^^ゞ)。
GPSを見たり操作する時は安全を確保してからにしましょう。注意力散漫になり、躓いたり何かにぶつかったり道を踏み外したりすると危険です。当然の事ですが、GPSに限らず、歩きながら何かをする事は注意力散漫になり事故の元になります。安全確保はしっかりとしましょう。
・軌跡ログ:
自分が通った経路を記録できます。記録した軌跡ログは帰宅後、カシミール3Dで活用します。記録間隔はお任せ(細かさを5段階で調整可能)、一定時間、一定距離の中から選べます。
また、経路をGPS内に保存する(軌跡ログと明確に分けるためか?)事で、ルートナビと同様にナビゲーションのルートデータとして使用できます(軌跡ナビ機能)。道に迷った場合は経路を逆に辿れば元の場所に戻る、と云う使い方が出来ます。ただし、これは非常時の使い方であり使わないに越したことはありません。
・ウェイポイントの登録:
景色が綺麗なところ、水場、要注意ポイント等をウェイポイントとして登録しておきます。このデータも帰ってきてから役に立ちます。
他のお役立ち:
速度、移動時間、停止時間が分かるので自分のバテ具合を測る参考になります。
◯GarmapCEとGPSの併用
数日の縦走をする場合、GPSの内蔵メモリーでは、細かく軌跡ログを取った場合メモリー不足になる可能性があります(最大Venture-Jで4999ポイント、Vista-Jで10000ポイント)。粗くデータを取れば良いのですが、あまり粗く取ると後で役に立たないデータとなってしまうこともあります。なので、こういう時はGarmapCEでWinCEマシンに待避してハンディGPSのメモリーを空けてあげます。この時、POT形式では無くGarmap形式で保存します。POT形式だと緯度経度の秒の小数点が1桁で切られてしまいます。
(今回は、地図をPDAで持ち出すことも行っているのでGarmapCEを取り上げていますが、データのバックアップと衛星情報の確認だけと割り切るのであれば、Palmでも行えます。PDAとGPSを連動させるPalmWareとGarmapCEの簡単な紹介はこちらをご覧下さい。
また、GarmapCE上の地図に今いる位置を表示したり、ルートナビゲーションすることもできます(が、歩いているときはケーブルが邪魔です...)。また、衛星からの電波受信状態も表示できます(歩きながら見るものでは無いですが...)。
◯Suunto X6(以後X6)の活用
クロノモードでのメモリー機能:
10若しくは60秒間隔で高度や昇降率、記録を取っている間の最高・最低高度、上昇・下降の総高度、平均昇降率が記録されます。
スプリットタイムを巧く利用して、予定時間と実時間の比較を行い、遅れや前倒しを把握しましょう。また、スプリットタイムを入れるとその時点でのデータが記録できます。
ハイキングモードでのログブック:
”今”の時間・高度(最高10点)や記録を取っている間の最高・最低高度、上昇・下降の総高度と平均昇降率、50m以上の標高差があるピークを越えた数が記録できます。手帳に記録する時間が無い時等にマークを打っておいて、1本入れている時に記録し直すのも良いですね。
これらの記録はGPSの軌跡ログから見る事ができるのですが、見るためにはカシミール3Dが必要です。しかし、X6だとその場で見れると云うメリットがあります。また、GPSは縦方向の精度が低いので高度校正をした高度計の方が正しい高度が測れます。
高度が分って、あと何メーター登れば頂上だぁ!となれば気合いも入ると云うもの。。
コンパスモード:
方位磁石な訳ですから説明はいらないですね(^_^)
ウェザーモード:
移動している時や高度計として使用している場合は気圧は、実際の気圧変化とは関係なく刻々と変化するのですが、休憩時や縦走時の宿泊時等、一定以上の時間同じ場所にいる場合は気象計として使用します。天気が良くなる方向にあるのか若しくは悪くなるのか、気圧変化のグラフとログを参考に判断します。天気図があればそれと併せて判断しましょう。天気が崩れるのが分かっていながらの無謀な山行は控えましょう


ステップ4:帰ってきてから
○GPSのデータをカシミール3Dで有効活用
新しく登録したウェイポイントと軌跡ログをカシミールに転送します(GarmapCEからはGarmap2経由で戻します)。
カシバード画像・軌跡ログ:
自分が通った経路や速さ(遅さや休んでいたことも分かしますし、道に迷ったところも分かります)を元に、自分のウィークポイントを洗い出し、次回の山行までにウィークポイントの克服を目指しましょう。次に同じ山に行った際のデータと比較するのも一興です。また、後日見直すことで思い出も鮮明となるかもしれません(^_^)
表示の方法はいろいろあり
・地図上やカシバードでの立体図に
  指定した色で
  速度、勾配等に応じて色分けして(上の画像は、カシバードでの立体図に速度で色分け)
 表示
・グラフ表示
等が出来ますので、実際のコースでの勾配や標高等も一目瞭然です。
ウェイポイント:
次回の山行計画を立てる時に有効活用しましょう。また、景色が綺麗なところ等お薦めポイントは”ココ地図”で公開するのも良いですね。
○X6のデータの有効活用
腕時計と云いながら、パソコンにデータを転送できるのです。ただ...2004年の正月休みに買ったばかりなのでまだ活用しきれていませんが、少ない事例の中から...
ウェザーモードのログ以外は、GPSの軌跡ログとカシミール3Dで確認出来ることがほとんどです。
・クロノモードのログ:
大きく3つの表示ができます。
チャート:
ログ全体の高度、上り・下りの高度の累積、スプリットを打ったポイントがグラフ表示されます。また、上り・下りの平均・最高速度、上り・下り・平地に要した時間や最大・平均・最低高度も数値で表示されます。数値での表示は、グラフで範囲を選択することで部分的な表示も可能です。が、選択された範囲なので瞬間のデータを表示することは無理です。
複数のデータを開いている場合、時間軸での連続表示か、重ね併せ表示が選べます。前者は縦走した時に全日程の推移を見る、後者は同じルートを複数回行った時にその違いを見る等に良いでしょう。
ログ自体とスプリットに説明を入れることができるので、覚えているならメモ(食事中とか岩場をラペ中とか)を書き込んでおきましょう。スプリットには写真をリンクすることもできます。
データ:そのまま、生のログデータです。瞬間の高度、上り・下りの速度はここで求めることができます。
分析:複数データを開いている場合は、アクティビティ(アクティビティ:どうやら、運動の種類毎にまとめたほうが良いようです。縦走、沢上り、岩登り、(HRモデルでは)マラソンとか待ち歩き等で分類するとSUUNTOが提唱している科学的な分析に近づけるとか...)毎に表示することができます。
各高度帯にどの程度の時間いたか、年月週日単位でどの程度運動したか(といってもクロノモードでログを取っていた時間なので、動いてなくても運動時間に含まれてしまいますが...)がグラフで表示されます。
そうか、こんなに山で活動してる時間が多いのか、とか思ったほど高い高度にいる時間って短い(長い?)のか、とか、いろんな切り口で眺めてみてください。
・ログブック:
何処でマークを入れたか覚えていないといけないのがネックで、帰ってきてからだと意外と役に立たない感じです。GPSの軌跡ログからと併せることで何処で記録したかを特定してから、マークを打った地点での情報を見ることになりそうです。
・ウェザーモードのログ:
一番使えるのは気温の記録では無いでしょうか。正確な気温を測るには肌に触れず外気に晒す事が必要です(体温を拾ってしまうと正確な温度が測れません)(冷凍庫にX6を入れてテストしたところ氷点下22度まで動作しました=新品の電池の場合)。気温が分かって何が面白いの?と言われてしまえばそれまでなのですが、”あんな暑さ(or 寒さ)の中を歩いていたのかぁ”と実感できます。また、気温に合わせた対策の検討に活用しましょう。
!データ通信に関するワンポイント!
X6にはシリアル端子が付いていますが、私のPriusGear150G、LibrettoL5にはシリアル端子がありません。USB−シリアルコンバータを使って通信をしようとしたのですが安定しません(イワタニ・プリムスのHPに速度を9600bps固定、バッファを下げるとあったのですが効果はほとんど有りませんでした)。何度もリトライすると成功することも有るのですがこれでは実用に耐えません。そこで試したのが、PCカード型のシリアル増設カードです。いやぁ、一発で決まりしたね、完全に安定しています。

最後に一言
いくらハイテク武装しても、最後の判断は自分で下すものであり、判断を下す際の一つの情報として捉えることが肝心かと思います。特に山中においてはGPSも受信できないこともありますので、基本技術である”地図とコンパスを使った位置割り出し”は身につけておくべきと思います。
肝心なのは準備。荷物をパッキングする、と云う準備ではなく、勉強したりトレーニングしたり調査したり、日頃から出来ることはいろいろです。そういったものの積み重ねが安全な山行に繋がると思います。
過信は禁物。他人任せはもっとダメ。いくら人数がいても。

おまけ:Rhymeのハイテクはまり道
一番最初に買ったのは10数年前のCASIOの気圧計内蔵初代モデル。高度を測る、一定の高度に達したらアラームを鳴らす、3時間置きの気圧変化を記録できると云うものでしたが、高度が確実に上がっていくのを見て、気合いが入ったものです。
これが壊れた後、同じくCASIOのプロトレック トリプルセンサー初代モデルを入手しました。気圧関係の機能は少し充実して、ログが取れるようになり設定高度までの達成率も表示できましたし、気圧変化も1時間置きとなりました。また、電子コンパスも内蔵され、方向音痴な私は町中でも有効活用していました。が、2003年の暮れに室蘭岳で落としてしまいました。かみさんにプレゼントして貰ったものだっただけにちょっとショックです。
で、すぐに買ったのがX6です。これからの腕の相棒です。
GPS関係は、2003年の初め頃に導入したカシミール3Dが引き金となりました。それまではMac版のmapFanIIを使っていましたが、登山道のデータが無いので地形確認程度しかできず、もっぱら町中での遊びか観光の際の参考に使っていました。カシミール3Dは地図データを別途購入しなければならなかった(結構高いのです)のですが、解説本に地図データが付いている事(不要なデータは省かれていますが)で閾が下がったと思います(私も解説本の地図を使っています)。カシミール3Dを導入したての頃はルート作成から地図印刷までしか使っていなかったのですが、GPSと連携できることとGPSも値段が下がってきていることを知り(とはいってもVenture-Jでほぼ4万、Vista-Jでほぼ8万です)GPS導入に踏み切りました。近場の山でテストを繰り返し、北アルプス縦走の準備中にメモリーの問題に行き当たりGarmapCE(WinCEマシンはかみさんのカシオペアE55を譲り受けました)の導入に踏み切り...今ではPalmIIIcとの連携や、MapFanII PUEとの連携(車でのナビに使えるのですが、カーナビがあるのにわざわざ...)に至っています。
もともと、デジタルガジェットが好きなので面白いのですが、これらを使うための登山にならないようにしなければ、と戒めています。

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