漢方問答のページ  

この漢方問答は小田原の方々に漢方薬のすばらしさや基礎的な知識を少しでも拾得していただくことを目的に平成4年5月よりタウン紙に掲載を始めました。
漢方というと迷信や戯言のように頭から否定する人、はたまた漢方は万能で何にでも効果があるとかたく信じているような人まで様々な方がいますが、もちろん漢方は万能ではありませんし、限界は当然あります。
それは現代医学でもまつたく同じ事で、完璧な医学や薬学はこの世には存在しないのです。
しかし、現代医学は現代医学なりに素晴らしさがあり、漢方にも現代医学にはない素晴らしい部分があります。
そのことは漢方を専門としている私たちは皆様方より少しは判っているつもりです。
そんな漢方薬の素晴らしさを、このページに来られた皆さんに少しでもわかっていただければと思い、漢方問答をここにご紹介させていただきます。
つたない文章ですが少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。

薬剤師 鈴木幸弘


INDXに掲載いたしました漢方問答のタイトルは、過去8年間にわたり小田原のタウン紙に掲載された記事です。
内容が重複しているものもありますのでご了承下さい
インデックスのタイトルをクリックしていただければその漢方問答にリンクします。


漢方問答 INDEX

タイトル名

掲載年月日

漢方薬とは何

H4.5.23

漢方薬の歴史

H4.6.13

薬用酒の作り方

H4.6.20

漢方薬の話1

H4.7.11

漢方薬の話2

H4.7.18

漢方薬の話3

H4.8.1

漢方薬の話4

H4.8.22

漢方薬の話5

H4.8.29

漢方薬と民間薬

H4.8.22

ドクダミ健康法のうそ・ほんと

H4.9.12

食欲不振の漢方薬

H4.9.19

夏ばて薬膳の作り方

H4.9.19

肥満と漢方

H4.9.19

糖尿病の漢方薬

H4.10.10

痛風の漢方薬

H4.10.10

風邪の漢方薬

H4.10.17

気管支ゼンソクの漢方療法

H4.10.17

白内障と漢方薬

H4.11.14

貧血と漢方薬

H4.11.14

喘息の養生法1

H4.11.21

お屠蘇のはなし

H4.12.12

喘息の養生法2

H4.12.19

和漢薬のお話1 

H5.1.15

和漢薬のお話2

H5.1.30

和漢薬のお話3 

H5.2.13

アレルギー性鼻炎と漢方薬

H5.2.20

糖尿病の薬草療法

H5.3.13

高血圧と方薬

H5.3.20

低血圧と漢方薬

H5.4.10

女性と漢方薬

H5.4.17

女性と漢方2

H5.5.15

女性と漢方3 前編

H5.5.22

女性と漢方3 後編

H5.6.12

女性と漢方4 前編

H5.6.19

女性と漢方4 後編 

H5.7.10.

和漢薬のお話4

H5.7.17

和漢薬のお話5

H5.8.7

和漢薬のお話6

H5.8.14

和漢薬のお話7

H5.9.11

便秘の漢方薬

H5.9.18

動脈硬化の漢方薬

H5.10.9

肝臓病の漢方薬

H5.11.2

インフルエンザと漢方薬

H5.12.18

女性の漢方薬 1

H6.1.29

女性の漢方薬 2

H6.2.19

女性の漢方薬 3

H6.3.19

女性の漢方薬 4

H6.4.23

腰痛の漢方療法

H6.5.21

乳幼児と漢方薬

H6.6.18

胃・十二指腸潰瘍の漢方薬

H6.7.16

心臓病の漢方薬

H6.8.20

胃下垂・胃アトニーの漢方薬

H6.9.17

胆石症の漢方薬

H6.10.21

頭痛の漢方薬

H6.11.19

夜尿症の漢方薬

H6.12.17

慢性副鼻腔炎の漢方薬

H7.1.21

尿道・膀胱炎の漢方薬

H7.2.18

アレルギー性鼻炎の漢方薬

H7.3.18

不眠症の漢方薬

H7.4.22

膀胱結石の漢方薬

H7.5.20

美肌と漢方

H7.6.17

冷え性の漢方薬

H7.7.15

夏バテの漢方薬

H7.8.26

ゼンソクと漢方薬

H7.9.23

アトピー性皮膚炎と漢方薬

H7.10.21

自立神経症の漢方薬 前編  

H7.11.18

自立神経症の漢方薬 後編

H7.12.16

痔疾の漢方薬

H8.1.20

胃腸神経症の漢方薬

H8.2.17

漢方薬の副作用 @

H8.3.16

漢方薬の副作用 A 

H8.4.20

漢方薬の副作用 B

H8.5.18

漢方薬の副作用 C

H8.6.15

大腸菌O157の正体

H8.7.13

下痢・消化不良の漢方薬

H8.8.31

鬱病の漢方薬

H8.9.21

皮膚掻痒症の漢方薬

H8.10.19

尿路不快感の漢方薬

H8.11.16

インフルエンザの漢方薬

H9.1.25

神経症・ヒステリーの漢方薬 前編

H9.3.22

神経症・ヒステリーの漢方薬 後編

H9.3.29

前立腺肥大の漢方薬

H9.4.26

脳卒中後遺症の漢方薬

H9.5.24

主婦湿疹の漢方薬

H9.6.28

小児虚弱体質の漢方薬

H9.7.19

夏バテの漢方薬

H9.8.30

風邪の漢方薬療法

H9.9.27

胃炎の漢方薬

H9.10.25

咳の漢方薬 前編

H9.11.29

咳の漢方薬 後編

H9.12.6

お屠蘇の話

H9.12.20

更年期障害と漢方薬

H10.1.24
※ここまでの掲載とさせていただきます。





漢方問答集


漢方薬とは何?

漢方薬と聞くと非科学的と初めから馬鹿にしてまつたく見向きもしない人や神秘的で謎めいたものがあり万病ことごとく治ると信じている人などいろいろな人がいます。確かに漢方薬は万能では有りませんが、実際に現代医学では治療が困難な病気に対して良い効果を上げています。また効果が無ければ、三千年前の医学が現代にまで伝承されているわけがありません。どうして漢方がこの様に千差万別のイメージがあるのか?その理由はおよそ百年前の明治時代に政府の『ドイツ医学を範とする』という方針により伝統医学の漢方が医療体制から外されたことに始まりまりす。そして現在再びその効果が見直されていますが、残念なことに一部のマスコミや業者が漢方ブームを作り出し消費者に多くの誤解や、不利益をもたらしているようです。そこで、ぜひ皆様に漢方薬を正しく理解していただき、上手に漢方とつきあうことができればと考えています。次号から漢方についてのターマをさだめ、そのテーマに対し問答形式にて紹介していきたいと思います。


漢方薬と民間薬

問 どくだみ、せんぶり、げんのしょうこ、は漢方薬ですか?
答 これらの名前をどこかで聞いたり、飲んでいる人はたくさんいることでしょう。そしてこれらを漢方薬だと思っている人もたくさんいると思います。しかしながらこれらは漢方薬ではなく民間薬と呼びます。
問 民間薬と漢方薬の違いは何ですか?
答 草根木皮からなるような煎じ薬はすべて漢方薬だと思っている人は意外に多いようです。民間薬はいわゆる民間の古くからの経験やいい伝えにもとづき、おもに身近な動植物を一種類で用います。なかには、優れた効果を持つものもありますが、いまだに迷信的に用いられたり、まちがった使い方をしているものも多いようです。漢方薬、まず単独で使うことはなく適応症もはっきりしています。俗に民間薬、漢方薬は害がないと言われますが、あくまで素人療法は危険性を含んでいますので、専門家のアドバイスを受けて下さい。
問 民間薬の効能を教えて下さい。
答 紙面の関係で全部は無理ですが、カキドオシ(糖尿病)、カキノハ(血圧)ドクダミ(解毒、利尿、緩下)、ゲンノショウコ(下痢、整腸、健胃)、センブリ(健胃、胃痛、整腸)、クコ(健胃、強壮、視力増強)キササゲ(腎臓病、利尿)ハトムギ(イボとり、美肌づくり)、ベニバナ(婦人病、血の道)などがあります。


アレルギー性鼻炎と漢方薬

これから花粉症の人には嫌な季節になりますので、今回はアレルギー性鼻炎の漢方薬についてお話ししたいと思います。
問 アレルギー性鼻炎の原因はそもそも何ですか。
答 アレルギー鼻炎は大きく分けて免疫によるものと自律神経の異状で起こるものがあります。原因としては、ハウスダスト、花粉、枯れ草、動物の毛などによるアレルギー、ストレスなどによる発作、ホルモンの分泌異状や神経の緊張などが考えられますが、どうもこれらが単一ではなく色々なものが関係してアレルギー鼻炎になるようです。
問 症状としてはどんな具合になるのでしょう。
答 おもな症状としては先ず多量の水様性の鼻汁、次に発作的に頻発するくしゃみや鼻づまりが一般的ですまた前頭部の頭痛、鼻の痛み、涙目、目のかゆみを訴える場合も多いですね。
問 具体的な治療法は何ですか。
答 西洋医学、東洋医学を問わずやることは原因となる食物、動物、カビ、花粉、ストレスなどをできるだけ排除することが肝腎です。次に薬物療法としては抗ヒスタミン剤、自律神経作用薬やステロイドホルモン剤の点鼻や内服などが上げられます。またアレルギーを起こす物質を皮下に注射してアレルギーに対する過敏性を低下させたり、手術をしたりする方法も有ります。
問 漢方薬での治療法はどういうものがありますか。
答 漢方には現代医学でのアレルギーと言う考え方は存在しません。しかしながら多量の鼻水、くしゃみの頻発を漢方医学の概念で考えるならばアレルギー鼻炎は体内の水分の異状な排出つまり水毒という症状に当てはめることができると思います。ですから漢方薬を選択するに当たっては駆水剤、つまり体の中の水毒を治し、水はけをを良くするような処方を選ぶ場合が多いです。
問 具体的にはどんな漢方薬を使うのですか。
答 もちろん漢方薬はその人の体格や体質を見て処方を決めるので、一外にはこれと決め付けるわけにはいきませんが、よく使われるものを紹介しましょう。

*小青竜湯(ショウセイリュウトウ)アレルギー鼻炎に最も良く使われる処方です。余り体質にこだわらなくても良く激しいくしゃみや鼻水が出て寒気がするような場合に用います。また発作時に頓服的に飲んでも良いでしょう。

*麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)これは小青竜湯の裏の処方で小青竜湯を飲んでも効果がない場合や、くしゃみ、鼻水は以外に強い寒気を感じる場合に用いると良いでしょう。

*葛根湯(カッコントウ)皆さんも良くご存知の漢方薬です。とくに普段から首の後ろや肩が凝り頭痛あるような場合の鼻炎に良いでしょう。

まだいくつかご紹介したいのですが紙面の関係でこれくらいにしておきます。詳しいことはお近くの漢方薬局または薬剤師に相談して下さい。


お屠蘇のはなし

今年も後わずか。どうも日本人は師走になると忙しく動き回らなければならないという錯覚にとらわれてしまいますが、こういう時こそ無理をせず楽天的に過ごすのが長寿の秘訣かもしれませんね。さて前置きが長くなりましたが、今回は新年を迎えるにあたり一年の健康と無病を,願って飲むお屠蘇についてお話し致しましょう。
問 お屠蘇も漢方薬の仲間なのですか?
答 はい、そうです。お屠蘇はりっぱな漢方薬です。正確には屠蘇散と呼び古代中国の名医である華陀(カダ)が処方を作ったと言われています。原典には邪気をはらう香りの高い生薬4種類、体内の毒を下す生薬3種類、また体力を増す生薬1種類の合計8種類を細かく刻み酒につけておいて元旦に飲めば病気にならないと書いてあり、病気の予防薬として考え出されたものです。『一人これを飲みぬれば一家に病なし。一家でこれを飲みぬれば一里に病なしと言う、めでたき効能はべれば年の初めに是を奉るにや』などとも言われています。
問 なんだかとても健康に良さそうですね。お屠蘇の中味は何が入っているのですか?
答 時代により中味が少し異なるようですが、現在よく使われている屠蘇散の中味のは次ぎの通りです。百朮(ビャクジュツ)、桂皮(ケイヒ)、桔梗(キキョウ)、山椒(サンショウ)防風(ボウフウ)、陳皮(チンピ)、蒼朮(ソウジュツ)の7つの生薬から構成されています。
問 なんだか難しいものが入っていますね。
答 そんなことはありません、私たちがよく口にするものも幾つか有ります。たとえば桂皮(ケイヒ)はシナモンのことですし、山椒(サンショウ)、陳皮(チンピ)は七味唐辛子などに入っているものです。
問 どういうふうにして作ればよいのですか?
答 作り方は先に述べた生薬を細かく刻み、袋にいれ、清酒とミリンをおのおの半量づつ混ぜたものを180〜360ml(1〜2合)作り、その中に浸して一晩くらい放置しておいて元旦の朝から飲んで下さい。ミリンを入れるのは味をまろやかにし飲み易くするためで、好みで清酒、ミリンのみで作っても結構です。


ゼンソクの養生法1

十月に気管支ゼンソクの漢方薬をお話ししたところ沢山のご質問をいただきました。質問の中で特に多かったのが『日頃の生活の中で注意することはないか』と言う事でした。そこで今回はゼンソクの養生法についていくつかお話したいと思います。
問 それでは、どんな養生法が有るのか説明して下さい。
答 先ず最初に食事に関することからお話ししましょう。次にあげるようなことを日頃から注意してください。1、『過食をさける。』食べ過ぎ
は発作を誘発するので禁物ですね。常に腹八分目と言うことを心掛けて下さい。特に夜食は控えることが必要です。2、『タバコ、刺激性食品はやめる。』これはいずれも咽喉や呼吸器を刺激するので好ましくありません。特にタバコは有害ですから必ず止めてください。また周囲にタバコのタバコを吸う人にも注意していただきましょう。3、『肉食を控え、野菜を多くとる。』ぜんそくに限らず、すべての慢性病にとって肉食過多は血液を酸性にするので良くありません。なるべく野菜中心の食事を心掛けて下さい。4、『過剰な水分、糖分を控える。』水分、糖分の取り過ぎは体のバランスを崩し発作が起きやすくなります。ジュース、コーラ、コーヒー、お菓子などは控えるほうが良いでしょう。また白砂糖は漂白の過程で化学物質を使用していますので好ましくありません。5、『アレルギーの起こしやすい食品を注意する。』ゼンソクはアレルギー疾患ですから、アレルギーを起こしやすい食品には注意が必要です。とくに次にあげるようなものには気を付けて下さい。卵、牛乳、鮭、さば、まぐろ、海老、蟹、竹の子、さといも、やまいもなどこれ以外にもアレルギーを起こしやすい食品はたくさん有ります。なお注意していただきたいのはこれらの食品を食べてはダメと言うことではありません。ゼンソクの人でもこれらの食品を食べても発作が出ない人はいくらでもいます。ただ人によっては、この中のどれかが発作を起こす場合があるので注意して下さいと言うことです。実際には毎日の食事の献立をメモしておき、発作が起こったときにどんなものを食べたかチエックすることが大事ですね。


ゼンソクの養生法2

問 他にはどんな養生法がありますか?
答 次にお話したいのが休養という養生法です。養生の中で以外とおろそかにされているのが休養です。ゼンソクの人は発作が起こると七転八倒の苦しみを味わいますが、発作の起きない時は健康な人とほとんど変わらないので無理をしがちです。発作の起きないときも十分な休養を取り体力を養うよう心掛けて下さい。発作のときは半死半生の目に合いながら、発作が鎮まるとその分まで根を詰めて働くと言うのではまさに自殺行為です。
問なるほど、しかし日頃仕事に追われている人はなかなか休養が取れませんね。体を鍛えるような養生法はありますか?
答 もちろんあります。体操やジョギング、水泳、、球技などあらゆるスポーツをやっていただいて結構です。ただ、急激な運動はゼンソクの発作を誘発することがありますので最初は無理をせず徐々に運動量を増やして行くのが良いでしょう。水泳などは発作が起きにくいので最適なスポーツではないかと思います。また、ゼンソクの人は、温度差の急変に対して非常に敏感で普通の人が感じないような場合でもそれがきっかけとなってぜんそく発作を誘発するので、乾布摩擦、冷水摩擦、冷水浴などで空気に触れている肌の自律神経を鍛え、皮膚の抵抗を強めておくことは有効な方法です。
問 呼吸法などはどんな物がありますか?
答 ゼンソクの人は絶えず発作の恐怖におびやかされていつも浅い呼吸をしていますし、また発作のときは息を吸うことはできても、うまく吐くことができませんので、その結果肺が膨脹して肺気腫の様な状態になってしまいます。そこで、肺の中の空気をうまく吐き出せるように日頃から腹式呼吸ができるように練習しておくことが大切です。ここでは触れませんが、喘息体操という方法で呼吸法がマスターできますので是非やってみて下さい。
問 前回には精神を安静に保つことが重要だと書いてありましたが?
答 その通りです。つまり精神を鍛えると言うことです。『夫婦げんかを止めたらゼンソクが良くなった』などぜんそくの場合心理的なストレスが原因になっている場合も少なくありません。とくに小児ゼンソクは両親が不仲の家庭に多く見られるようです。とにかく大人でも子供でもなるべく心理的なイライラやストレスを解消するよう心掛け、運動、座禅などで精神を鍛えてゼンソクに負けないという自信をつくることが大切です。


ドクダミ健康法のうそ・ほんと

問ドクダミとはどんな植物ですか?
答 ドクダミは『見たことがない』と言う人がいないくらいあちこちで見かけますかわいい白い小さな花を咲かせますが、葉を擦ると臭い匂いがしてとても不快な気分になりますね。ドクダミの名前は毒ためから変化したもので毒を阻止すると言う意味があるようです。また馬に飲ませると十種類の薬効があるとされ十薬(重薬)とも言います。
問 ドクダミの薬効は何ですか?
答 利尿作用、便通をつける緩下作用、また生の葉には強い抗菌作用があります。
問 体質改善になると言うので、毎日煎じて飲んでいますが?
答 困ったことに、一部の健康雑誌などで『万病に良い』とか『血をきれいにする』『体質を改善する』などと書かれていますが、もちろんそんな作用はありません。むしろ体を冷やし、内臓を弱らせるので注意が必要です。とくに冷え症や胃腸の弱い人は長期間の服用は避けたほうが良いでしょう。
問 それではドクダミをどのように用いれば良いのですか?
答 普通の民間療法としては便秘症もしくは便秘にともなう皮膚病や肌あれなどに煎じて服用して下さい。またドクダミの成分は水に溶けるものが多いので入浴剤として使うこともあります。薬用酒には成分がアルコールに溶けないのであまり使いません。ドクダミはポピュラーな薬草だけに飲んでいる人が多いので前述したことによく注意をしていただきたいものです。


漢方薬の歴史

問 漢方の誕生はいつですかす?
答古代中国の医術が体系化するのは今から約1800年前の後漢時代ですこの時代にはすでに漢方のバイブルといわれる書物や、皆さんも良くご存知の葛根湯、八味地黄丸などの処方が有りました。
問 日本にはいつごろ伝わったのですか?
答 今から約1200年前の奈良、平安時代です。遣隋使や遣唐使が大陸より経典などと共に医学書や薬を持ち返りました。現在もその頃の貴重な薬が奈良の正倉院に保存されています。その後鎌倉、室町、江戸時代と中国から伝わった伝統医学を日本の気候風土に合うよう改良し、漢方医学ができあがったわけです。
問 漢方薬の現状はどうなっていますか?
答 明治時代の初期までは、医療と言えば漢方治療のことを指しましたが、しかし明治政府がドイツ医学を範とする方針が打ち出し、漢方はアカデミズムの外に追いやられ絶滅の危機に瀕しました。それから100年後、現代医学の行き詰まりと薬の乱用に対する薬禍から再び漢方薬が注目され、現在、化学技術により漢方薬の成分分析、臨床試験による漢方薬の効果の確認など、まだ未知の部分に科学のメスが入っています。


漢方薬の話@

問 漢方薬というと昔ながらに煎じて飲むのですか?
答 そうですね、通常漢方といえば煎じ薬で治療することを指します。しかし現在は工業技術により煎じ薬の成分を取り出したエキス製剤があり、簡単に服用できるようになりました。
問どちらが良く効きますか?
答 この質問はよく聞かれます。例えは余り良くありませんが、インスタントと豆から挽いたコーヒーを比べて下さい。手軽に飲めるのはインスタントですが、香り味わいは豆から挽いたものとは比較になりませんね。漢方薬でもまったく同じです。やはり煎じ薬で服用するのが一番効果的です。
問漢方薬の原料は何ですか?
答漢方薬の原料は新薬の様に化学合成されたものではなく、すべて自然界に天然に存在するものを用いています。またナツメ、生姜、甘草、シナモン、クチナシなど私たちの食卓と関係深いものも使います。もちろん天然ばかりでは数に限りがありますので、現在は大部分を栽培していますし、原料の薬草のほとんどは中国、韓国などからの輸入に頼っています。ですから天候や国内事情により生産量価格が左右され、原料の安定確保に苦労しています


漢方薬の話A

問 漢方はどの様にして薬を選択するのですか?
答 これについて詳しくお話すればとてもスペースが足りませんので簡単にお答えします。漢方薬の出発点は人間の経験、つまり何千年もの臨床試験の結果、薬が出来上がったものです。昔は現在のように科学的な検査方法など有りませんから病人の症状や訴えを細かく聞き、漢方独自の『証』という概念により的確な漢方薬を処方したのです。ですから病名が判らなくても薬は処方できました。現在は科学的検査が簡単に出来ますが、漢方薬の選択は昔と同様に『証』に基づいて決められています。
問 『証』とは何ですか?
答 これも一言でいうのは難しいでが、『証』とは漢方独自の表現で証拠の証のことです。つまり漢方の診断方法によって病人の複雑に絡みあった症状の関連を数学の方程式のように表現したものいえば少しはお判りいただけるでしょうか。
問 漢方薬は副作用は無いと聞きますが?
答 それは間違いです。漢方薬にも副作用はあります。これだけは覚えておいて下さい、漢方だからと言ってむやみに服用するものではないのです。副作用については次回でくわしくお話いたします。


漢方薬の話B

問 よく漢方薬には副作用が無いと聞きますが?
答 副作用はあるということは前回お話しました。しかし漢方の薬の用い方は非常に慎重です。なぜならば『薬は毒、やたらに服用するものではない。』という考えが基本となっているからです。昔から漢方薬では有効な作用はもちろん、有害な作用にはそれ以上に注意をはらつて処方を作りました。ですから先人の英知のおかげでたいていは複数の薬草を合わせて用いたり、薬草に加工をほどこすことで有毒な作用が出ないように工夫されていますが、それでも体質を無視して処方した場合は胃腸障害、下痢、吐き気、不快感などの副作用が出ることがあります。
問 漢方薬はいつ、どの様に飲めば良いですか?
答 漢方薬を飲む時間についてはあまり厳密に決められていませんが、食間(食事の1〜2時間前の空腹時)に飲むのが良いとされています。胃が悪く、空腹時に飲むと気持ちが悪くなる方は食後に飲んで下さい。また服用する場合、煎じ薬は少し暖めて、エキス剤は水で飲まずに白湯で、オブラートなどに包まず服用していただきたいものです。昔から良薬は口に苦しと言うじゃありませんか。


漢方薬の話C

問 よく漢方薬は効いているのか、効かないのかよく解らないと言われますが?
答確かにそういう場合が多々あると思います。人間には生まれながらにして抵抗力や自然治癒力といつたものが備わっています。ですから病気にかかつても自然に直ってしまう場合や、逆に医療が病気の治癒を妨げてしまう場合もあります。今から約2000年前の中国に『病を得て、之を治せざれば、中医を得』という諺があります、訳せば〃病気になっても治療しないで放っておけば中程度の医者にかかったのと同じ〃と言うことですが、この時代にこんなことが言われていたとはなんとも意外ですね。さて話が逸れてしまいましたが、漢方薬は人間の自然治癒力、免疫力を高めることで病気を治し、また病気になり難くい体を作り上げるという理論で成り立っているのですが、この事を科学的に立証するデータが皆無のためいろいろな誤解を生み、効くのか効かないのか解らないという現状を作り出しているのです。
問漢方薬は長く飲まなければ効かないとも聞きますが?
答 たしかに自然治癒力、免疫力を高めるには多少時間がかかりますし、体力、病気の種類、進行ぐあいによつても変化します。一般的には病気にかかつて初期のうちほど速く治り、慢性化したものは時間がかかるといえるでしょう。


漢方薬の話D

問 漢方薬はだいたいいくら位費用がかかるんですか?
答 材料に高価なものを使えばいくらでも高くなります。しかしたまに飲むならまだしも毎日となると経済的に大変です。価格とすれば一日分が500〜800円位が妥当ですし、月に3万円くらいが限界でそれ以上は高すぎると思います。
問 漢方薬も保険が効くと聞きますが?
答 その通りです、現在は多くの病院、医院で漢方薬を扱っていますので、漢方薬も保険で処方して戴けます。ただしほとんどがエキス剤で煎じ薬を処方するところはあまりありません。
問 では自費の場合どんな漢方薬局を選べは良いのですか?
答 まず第1に一日分の価格が妥当かどうかです。先程もいいましたが500〜800円位が目安です。第2に薬を何種類も出さない。通常、軽い病気ならば一種類薬を飲めば十分です。第3に漢方薬と共に健康食品をいくつも勧めるようなところは避けたほうが良いでしょう。第4にこれが一番肝腎ですが、漢方薬についてしっかりと説明してくれ、親身になって相談に乗ってくれるところを選んでいただければまず間違いないでしょう。とにかく最近は漢方ブームということで、病人の弱みにつけこみ高い薬を売付けたり、効果もない健康食品を抱き合わせて販売するような業者がたくさんいますので注意が必要です。


女性と漢方薬

春は生命の誕生の活発な季節ということもあって人間もホルモンのバランスを崩しやすい時期。とくに女性は、この傾向が強いようですので今回から暫くのあいだ女性特有の病気と漢方薬を年代別に取り上げてみたいとおもいます。
問 漢方では女性をどう扱っていますか?
答 中国最古の医学書「黄帝内経」(こうていだいけい)によりますと7年周期で女性の身体の変化をあらわしています。即ち、七才で永久歯がはえ髪が長くなり、十四才で月経が始まり子供をうめるようになり、二十一才で肉体的な完成、二十八才で成熟、三十五才でしわができ始め髪も抜けてゆき、四十二才でしわや白髪目立ち、四十九才で閉経。多少のずれがあるとはいえこの二千年前の理論はりっぱに現代女性にも通用するようですね。
問 では、どんなトラブルがあるのでしょうか?
答 はい、女性は子供を宿し産むための臓器や神経・ホルモンの分泌を体内に備えています。その代表が月経なのですが、漢方ではこれに関連しておこる症状を『血の道症』と総称して言います。主な病気としては、生理不順・月経痛・子宮内膜症・冷え症・卵巣膿腫・子宮筋腫・不妊・更年期障害・婦人科系のガンなどがあげられます。
問 十代のトラブルはどんなものが多いのでしょう。
答 生理不順に生理痛です。思春期は血の道がまだ完全に出来上がっていない・いわば試運転の時期です。そのため高校生の半数近くがこれらの症状をもっているそうです。また、月経は脳からの指令よって促されるものなので、精神的なストレスに弱い傾向があり、特に十代は要注意。受験・無理なダイエット・友人関係などが主な原因で崩れる事が多く有るそうです。この場合に有効な漢方薬として当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)・桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)・桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)・加味逍遥散(カミショウヨウサン)などがありその症状や体質にあわせて選択しますが、十六才になっても初潮が来ないとか半年以上も生理がない場合、まず婦人科で診てもらってから漢方薬を単独なり併用なりして頂きたいと思います。また、生理不順がなおると、にきびなどお肌のトラブルも解消しやすくありますので、お試しになってみてください。くわしくは漢方薬専門の薬局でご相談下さい。


女性と漢方A

今回は二十代から三十代の女性を取り上げましょう。
問 二十代・三十代に多い婦人科のトラブルは何ですか。
答 女性としての肉体の完成・成熟期の為、月経の周期が安定し妊娠の準備が整います。しかしその一方で、心因性または婦人系臓器のトラブルから起きる生理不順・生理痛などが多く報告されています。心因性の代表的な原因としては、人間関係や仕事などのストレス・不規則な生活・偏った食事・無理なダイエット・太り過ぎなどがあげられ、器質性としては子宮筋腫・卵巣膿腫・子宮内膜症・ガンなどにかかりやすくなります。これらは年齢が高くなるほど増加する反面、最近は若い年齢層にも広がりつつありますので注意が必要です。またそのままで放置すると不妊の原因になりやすいので早めに治しておきたいですね。
問 どんなことに注意すると良いでしょうか?
答 一番簡単に見分ける方法として次のことがあげられます。 月経の周期が二五日から三八日以内であるか・月経が三日以上七日以内であるか・生理痛がひどくないか(寝込むほど重症か)・月経での出血が少なすぎる・あるいは多すぎる(最近とくにひどくないか)・不正出血がないか・乳房に変なしこりがないか又、少々めんどうですが、基礎体温を最低月経の一周期分つけてみることをお勧めします。低温期と高温期の二層に分かれているか・高温期が二週間以上あるかなど、婦人体温をグラフにすることでホルモン異常や排卵の有無・妊娠の肯否などを一目で診断できて便利です。
問 ところでこれらに対して、どんな漢方療法がありますか?
答 先程の注意事項で一つでも引っ掛かる方は、まず婦人科で診てもらって下さい。器質性のトラブルでも軽い場合、例えば子宮筋腫なら桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)を、内膜症には当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)などを用います。又、心因性の生理不順・生理前の不調(イライラ・だるい・むくみ・腰痛・頭痛・等)・冷え症など半健康半病人の症状は『血の道症』とも言い漢方治療のなかで得意分野の一つです。さきほど御紹介した漢方薬の以外にも桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)、加味逍遥散(カミショウヨウサン)など多くの漢方薬を用いるわけですが、詳しくは漢方専門店でご相談いただきたいと思います。


女性と漢方B

妊娠と出産(前編)
春は結婚式の多い時期であると同時に出産シーズンとしても人気の高い季節。そこで今回は妊娠と出産に関わるトラブルと漢方を取り上げてみました。
問 妊娠中のトラブルにはどんなものがありますか。
答 現在は医療の発達と妊娠中の定期検診の推進から、日本国内における妊婦の死亡率や重大なトラブルの発生はかなり少なくなりました。しかし、体内に新しい生命をやどらせて十ヶ月近く育まねばならないのですから女性にとって一大事業であることは今も昔も変わりないわけで、妊娠中のトラブルも広範囲にわたります。主なものとして、つわり・シミやかぶれなど肌の異常・便秘・動悸・息切れ・股関節のゆるみ・おりもの・腰痛・むくみ・静脈りゅう・妊娠中毒症・などのほか、外科的処治を緊急に必要とする子宮外妊娠・胞状奇胎・流産・早産などがあり、同じ妊娠であっても個人差が非常に大きいのが特徴です。
問 妊娠中の漢方療法にはどんなものがありますか。
答 古人の諸書には、適度の運動・規則正しい生活・バランスのとれた食事・ていねいな言葉遣い・精神の安定・良き家庭環境をつくる・妊婦にショックを与えない・重い物を持ったり高い所の物を無理な姿勢でとらないなどとあり、人間作りの最も大切な妊娠中はもちろん産後から乳幼児期にかけてもこれを守れとあります。又、妊婦のおなかを優しくなでることは皮膚の血行を良くし、子宮にも良い影響を与えるとされ、推奨されました。現在の胎教に通じるこれらの注意の他、妊娠中の養生薬として当帰散(トウキサン)を二千年も前に発明しており、後の当帰芍薬散の源となっています。
問 当帰芍薬散とはどんな漢方薬ですか。
答 当帰芍薬散は、婦人薬としてよく使用されています。つわり・妊娠中毒症・貧血・など妊娠中のあらゆるトラブルから妊婦を守り安産に導き、しかも産後の肥立ちを良くする漢方薬としても有名で、妊娠が判ったら産後まで長く服用しても安全な漢方薬の代表です。問その他に妊娠時に使用する漢方薬はありますか。答つわりは、漢方の得意分野の一つで99%軽くなるか治るといっても過言ではありません。代表薬としては、ショウハンゲカブクリョウトウやカンキョウニンジンハンゲガン・ブクリョウインゴウハンゲコウボクトウ・などがあり、冷たくして服用します。この他、風邪・痔・便秘薬などいろいろありますが、胎児への影響もありますので、漢方専門の薬局で御相談のうえ服用して下さい。


女性と漢方B

妊娠と出産(後編)
問 後半は産後の漢方ですが、まずは、主なトラブルからお願いします。
答 無事に大任を果たし、可愛い赤ちゃんと御対面もつかの間、まだまだお母さんには会陰縫合や子宮収縮(後腹)の痛み・乳房の変調などいろいろな試練が待っています。とくに産後六〜八週間は産褥期といって元の体にもどす為の大切な期間で、トラブルも起こりやすく、悪露の悪臭・産褥熱・子宮復古不全・など緊急に対処しなければならない異常もありますので、心配な時は早めに医師の診察を受けて下さい。。又、母乳に関心がおありの方は、「桶谷そとみの新母乳育児の本」(主婦の友社)などを参考にされてもよいと思います。
問 産後のトラブルに効果のある漢方薬を教えて下さい。
答 出産に関しては現代医療に席を譲るとして、産後の疲労回復(帝王切開や長引いたお産・高年齢の方は特にお勧めです)には、ジュウゼンダイホトウ・ホチュウエッキトウ・ケイギョクコウ・などがあり、前編で紹介したトウキシャクヤクサンを産後も続けられても結構です。又、俗にマタニティーブルーと呼ばれる産後の憂欝症は、ホルモンの分泌の急激な変化に体がついていかれないことが原因といわれていますが、漢方では“血狂(ちちがい)”つまり血の道の狂いからの病気としてカミショウヨウサン・トウカクジョウキトウ・などを使用し、また軽い乳腺炎にはカッコントウなどをお勧めします。妊娠中の便秘や分娩でひどくなった痔はダイオウボタンピガン・オツジトウ・などを服用しながら患部に紫雲膏(しうんこう)を塗られると効果的です。尚、この紫雲膏は授乳中のトラブルの一つ、乳首の裂傷・表皮の剥がれ、そして軽いヤケドにもよく効きますので、常備されておくと良いと思います。とにかく、産後は今までやってきた家事の上に生まれたての赤ちゃんの世話やお祝いの行事で忙しくなりやすいもの。せめて産褥期は、周囲の人の協力を仰ぎ休み休みやるか、手抜きして心身のバランスを早くに回復させるように努めて下さい。また、母乳で育てられる場合の投薬は、オッパイを通して赤ちゃんにも影響しやすいので、妊娠中と同じく注意が必要です。くわしくは医師か漢方専門の薬局でご相談下さい。


女性と漢方C

〜前準備は35才から・更年期を上手に乗り切る(前編)〜
女性と漢方シリーズの最終回は更年期に起こりがちなトラブルを取り上げてみましょう。
問 更年期とは何ですか。?
答 月経が順調だった時期が終わって、不順になり、完全に止まる移行の期間をさします。この時期は女性ホルモンの変化からくる自律神経系統のトラブルが多いため、それらを総称して更年期障害と呼びます。
問 更年期障害とは何ですか?
答 のぼせ・異常な発汗・冷え症・肌あれ・かゆみ・不眠・めまい・頻尿・頭痛・耳なり・抜け毛・動悸・精神不安・便秘・疲れやすい・動悸・など広範囲にわたるこれらの不定愁訴が更年期障害の一般的な症状として上げられます。
問 何才ぐらいから更年期は始まるのでしょうか?
答 早い人は三十代の後半から、遅い人で五十代に入ってからと、かなり年齢のバラつきがありますが、平均的には月経不順が四十代の前半、閉経が四十八〜九才頃と言われています。これは女性と漢方のシリーズ@でもご紹介したた古代中国の医学書「黄帝内経」(こうていだいけい)の『女性の身体の変化は7年周期』に合致するわけで、文明が進化した今日も、体内の基本は、変わっていない証しといえましょう。
問 更年期障害の治療法にはどんなものがありますか。
答 現代医学では、ホルモン療法、精神安定剤などの投与による治療法がありますが、とくに今は、ホルモン療法が注目されています。これは、卵巣機能の低下からくるホルモンのアンバランスを整え直すために、足りなくなったホルモンを補充する方法ですが、この療法はリスクも伴い、婦人科系のガンになる率が増えるので、定期検診を欠かさない事が必要です。また、半永久的に使用して老化を防止するわけにはいきませんし、量が過ぎればかえって自律神経を乱すもとになりかねませんのでだれでもお気軽にお勧めするわけにはいきません。
問 漢方ではどう治療しますか?
答 更年期障害は、漢方治療の効果が大きく望める分野す。漢方医学に基いて体内の気・血・水の三つうち、どれがどの位アンバランスなのかを患者さんの症状や体質をチェックしながら、お薬を処方します。


女性と漢方C

更年期を上手に乗り切るには(後編)…35才からの下準備が肝腎です!
問 前回に引き続いて、更年期障害における漢方治療を教えてください。
答 更年期障害では、だるい、肌あれ、動悸や便秘、イライラ、肩凝り、抜け毛など、病名がつけにくい広範囲にわたる不定愁訴と呼ばれるトラブルが発生しますが、これらのいろいろな自覚症状を漢方医学では『気・血・水』という漢方独自の病理観で説明します。まず、気とは気持ちの気、元気の気と同じで心因性の問題を指します。自律神経との関係が深く、これが停滞するとのどにつかえた感じがしたり、気のめいり、イライラ、動悸、息切れなどの症状が出やすくなります。次の血とは血液の事で血の留滞からの症状は、頭痛、めまい、動悸、のぼせ、ほてり、しびれ、冷え症などがあり、最後の水は体内の水分代謝を指し、水が留滞すると、全身の倦怠感、多汗症、耳鳴り、めまい、不眠、ケイレン、手足のふるえなどが起こります。漢方では、これら三つのバランスを整え治すことに重点を置いて治療します。
問 具体的にはどんな漢方薬がありますか。
答 漢方に於いて、女性の月経に関連した症状を総称して『血の道症』とよび、更年期障害もこれに含みます。この『血の道症』は、最も漢方が得意とする分野の一つで、非常に多くの処方があります。代表的なものとしては、柴胡加竜骨牡蠣湯(サイコカリュウコツボレイトウ…不眠やイライラに便秘を伴う時)・加味逍遥散(カミショウヨウサン…情緒不安定、めまい、のぼせたかと思ったらその後に寒気がくるなど不定愁訴が多い時)・桂枝加竜骨牡蠣湯(ケイシカリュウコツボレイトウ…のぼせて汗が出やすく、クヨクヨしがち、抜け毛などの時)・この他、桂枝茯苓丸料(ケイシブクリョウガン)・甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)・当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)など症状にあわせて処方決定します。前編で載せましたホルモン療法との併用も可能ですから、医師や漢方専門の薬局で御相談の上で服用してください。
また、親の老齢化、夫や子供の進路、自身の容姿の衰え、孤独感などの環境的ストレスが、病状を左右しやすくすること。更年期障害とおもって我慢していたらガンや成人病だった…という笑えない話がいくつもあります。
女性として長く性を営んでいれば、必ずやってくる更年期。前向きにそれを受けとめて、自分の明日の姿をより正確に把握する事が、更年期を上手に乗り切るコツです。その為にも、三十代の後半頃から更年期について勉強しておくのは重要な事ではないでしょうか。


高血圧と漢方薬

日本人の40才以上の4人に1人は高血圧ということで、今回は高血圧を取り上げてみました。
問 高血圧症とは何ですか
答 日本人の場合、最大血圧(収縮期血圧)が150ミリ水銀より上の人をさします。高血圧の状態が続くと、一般の人に比べて脳卒中や心臓発作でたおれる確率が5倍も高いと報告されています。
問 どうして高血圧になるのでしょうか
答 高血圧は2つに大別することができます。1つは遺伝的要因や体質によると思われる本態性高血圧、もう1つは腎臓病などの病気によってひきおこされる二次性高血圧です。
問 治療法や予防法を教えて下さい。
答 二次性高血圧は原因の病気を治療することで治療することができますが、本態性高血圧の場合は原因が不明なので利尿剤などの薬を基本に治療していきます。生活面での予防法としては、バランスのとれた栄養と減塩食・肥満やストレスを避ける・急激な温度差を避ける・適当な運動と規則正しい生活・少なめのお酒と禁煙などです。問漢方薬での治療法はどんな具合ですか。答漢方薬の場合は体のバランスを調整してやることで、血圧を安定させるという治療をします。つまり高血圧に伴う頭痛・頭重・めまい・肩凝りなどの自覚症状をまず改善してから血圧を安定させます。西洋医学の薬物治療のように急激に血圧をさげることをしない代わりに多少時間を要します。でもその代わり、新薬は飲むのをやめると血圧がまた上昇してしまいますが、漢方薬では簡単に逆戻りすることは有りません。
問 どんな漢方薬を高血圧に使いますか。
答 代表的なものを幾つかご紹介しましょう。

七物降下湯(シチモツコウカトウ)体質にこだわらず最低血圧の高い場合に良く使われます。

釣藤散(チョウトウサン)脳動脈硬化が有るような場合や、明け方に頭痛がして苦しんだり、物忘れがひどい場合に使うと良い。

柴胡加竜骨牡蠣湯(サイコカリュウコツボレイトウ)下半身が何となく重く、不眠、イライラなどの神経症状が強い場合に用いる。

三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)頭の中に絶えず血が充満しているような感じがあり、気分がサッパリしない場合で便秘ぎみ。

黄蓮解毒湯(オウレンゲドクトウ)三黄瀉心湯の症状が有るが、便秘が無い場合に用います。

他にもまだ紹介したい漢方薬が有りますが、高血圧症の治療は漢方単独で良い場合、西洋薬との併用が良い場合、漢方では無理な場合がありますので薬剤師、医師によく相談して使用して下さい。


低血圧と漢方薬

前回の高血圧に引き続き今回は低血圧の漢方療法についてお話しましょう。
問 低血圧とは血圧の値がどくらい低い場合を指すのですか。
答 収縮期血圧が100ミリ水銀以下の場合を低血圧と言います。
問 低血圧は体に悪影響を及ぼしますか。
答 低血圧は高血圧と異なり危険な合併症などを引き起こすことはまずありません。医学的に見てもむしろ血圧が低いほうが長寿になる傾向があるので、あまり危険な疾患とは考えられていないのが現状です。
問 低血圧はどんな症状が現れますか。
答 低血圧の人のが訴える症状はむしろ高血圧の場合よりもはるかに多く、疲れ易い、めまい、頭痛、頭重、手足の冷え、肩凝り、動悸から食欲不振、胃の不快感、慢性の下痢など胃腸疾患まで色々あります。とくにめまいを訴える人が非常に多いです。問現代医学的な治療法はどんな物があるのか教えて下さい。答先程も言いましたように現代医学では低血圧を病気として見ていないような所がありますし、決定的な治療法が確立していないのが現状です。ですから先ず生活習慣の改善が第一になります。また急激な血圧の低下には血圧を上げる薬や中枢神経を興奮させる薬を用いたりします。
問 漢方薬での治療法はどんなものでしょうか。
答 漢方薬では先ず、血圧の値よりも患者さんの訴える症状に重点を置きます。ですから胃腸障害を訴える人には胃腸系統の漢方薬、疲れが取れない人には体力を付けるような漢方薬を使います。とくに低血圧の症状の中で多いめまいについては漢方的でいう水毒の状態と考えられます。よって体の水分代謝を良くするような漢方薬を低血圧の方に良く用います。
問 では、具体的な漢方薬は何が良いでしょうか。
答 もちろん個人個人の体質や症状によって使う漢方薬は異なりますが、ここでは代表的なものをいくつかご紹介しましよう。

当帰芍薬散料(トウキシャクヤクサン)顔色が悪く、足腰が冷え、めまいがある人女性では月経障害が多い人に用います。

半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)とても長い名前ですが、胃腸が弱い方で食後にすぐ眠くなりめまいや動悸がする人

苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)めまいや立ち眩みがひどく、息切れ、動悸や尿の出が悪い人には良いでしょう。真武湯(シンブトウ)歩いているときにフラッとするめまいがあり、下痢しやすいような人に用います。
問 どの位の期間飲まなくてはいけませんか。
答 低血圧は今すぐに始まった疾患ではありませんので治療には数ヵ月以上の長期間になる場合が多いです。詳しくは漢方薬局でご相談下さい。


糖尿病の薬草療法

前に糖尿病の漢方薬につてお話ししましたが、今回は食事や運動療法などで治療している軽度の糖尿病の方のために手軽でお茶がわりに飲む薬草療法をご紹介しましょう。
問 糖尿病はどんな病気かもう一度教えて下さい。
答 前にもお話ししましたが、糖尿病は単に尿に糖が出ると言うような単純な病気ではありません。そのまま治療しないでおくと体重の減少、疲労、感染症、神経障害、網膜障害、腎臓障害を併発し、失明、心筋梗塞、腎不全などを引き起こす恐ろしい病気です。
問 さっそく薬草療法を教えて下さい。
答 糖尿病に用いられる薬草は何種類かありますが、代表的なものをいくつかご紹介しましょう。『ベニザラサ』別名蝦夷レンリソウとも呼びます。産地は北海道及び樺太で、古来から民間利尿薬として腎臓病や糖尿病に用いてきました。ベニザラサは東京大学の熊谷教授の研究により尿糖を減少させる成分が認められ、これがヒントとなってメゾ蓚酸カルシウムという糖尿病薬が発見されたほどです。『ランソウ』キク科のフジバカマのことで唾液やホルモンの分泌を高めて口の渇きを癒すことから糖尿病に効果があるとされています。『キササゲ』キササゲはマメ科の植物でこの植物のサヤの部分に血糖降下作用がある事は古くから知られていました。研究の結果この植物のサヤにはアルギニンというアミノ酸を含んでいて、これが血糖を下げることが分かりました。現在使用されているビグァニド系の糖尿病の新薬はこの植物をヒントにして開発されました。『アララギ』別名イチイヨウとも言います。葉の中の成分であるタキシン、タキシニンがブドウ糖を大量に与えて起こる糖尿に抑制効果があります。古くから民間薬として利尿、通経などに利用されていました。『レンセンソウ』別名カキドオシとも呼びます。腎臓病、腎臓結石、糖尿病などに漢方薬と併用して良く使用されます。
問 飲み方を教えて下さい。
答 紹介した薬草は単独で飲んでも幾つか混ぜ合わせて用いても結構です。用いる量は各薬草とも10〜20グラム位を煎じて一日に3〜5回位お茶の代わりに飲んで下さい。詳しい煎じ方や薬草についてはお近くの漢方薬局又は薬剤師に御相談になって下さい。


糖尿病の漢方薬

問 糖尿病とはどんな病気ですか?
答 糖尿病は単に尿に糖が出ると言うような単純な病気ではありません。全身の慢性かつ進行性の代謝異状の病気です。原因としては遺伝的なものや外因による自己免疫機構の異状などがあります。いずれにしろ治療しないでおくと体重の減少、疲労、感染症、神経障害、網膜障害、腎臓障害を併発する恐ろしい病気です。
問 治療法を教えて下さい。
答 現代医学では食事、生活の制限が第一で決められたカロリー、糖分の制限、適当な運動療法をしなければ薬物療法も効果が上がりません。薬物療法としてはインシュリンや血糖降下薬などを用います。漢方療法でもやはり食生活のコントロールが第一なのは現代医学と同じでが、漢方薬としては自覚症状により次のようなものを処方します。喉が渇き、夜間に尿が多く、疲労しやすい人にはハチミジオウガン、体力が有り、多尿と喉の渇きを訴える人はビャツコカニンジントウ、病気が進行して衰弱がひどく食欲もない場合はシクンシトウ、皮下脂肪が厚く腹部がビール樽のような方はボウフウツウセイサンが良いでしょう。またベニサラサ、レンセンソウなどの薬草をお茶のかわりに毎日飲むのも良いと思います。詳しいことは薬局でご相談下さい。


白内障と漢方薬

問 白内障とはどんな病気ですか。
答 白内障は目の水晶体が混濁してくる病気です。水晶体の周辺が混濁しているときはあまり視力には影響がありませんが、瞳孔にまで及ぶと視力障害の原因になります。
問 原因はなんですか。
答 大きく別けて先天性白内障と後天性白内障が有りますが、先天性の多くのものは原因不明です。後天性白内障の中には50才を過ぎて起こることが多く水晶体の物質代謝障害による老人性白内障や傷などによる外傷性白内障が有ります。
問 白内障に良く効く漢方薬は何がありますか。
答 漢方薬では老人性白内障に対して有効な処方がいくつか有りますが、その中のハチミヂオウガンは喉が渇き、夜間尿が多く、下腹部の軟らかいような人に良く効きき、老人性の白内障の8〜9割はこの処方が有効という結果が報告されています。また血色が悪く、みぞおちがつかえ、薄いつばが出やすい人はニンジントウハチミジオウガン証で、尿の出が悪く、下半身に浮腫みがある場合はゴシャジンキガンが適応するでしょう。ハチミジオウガンを飲んでのぼせる人はロクミガンをお勧めしますので、薬局でご相談になって下さい。


肥満と漢方

問 漢方薬で肥満は解消できますか?
答 よく雑誌などで『漢方でOOKg減量』などといかにも漢方薬で簡単に痩せられるような広告を目にします。しかしながら下剤でも飲まないかぎりそんなに減量することは不可能ですし、そんな事をすればかえって体の調子をおかしくしてしまいます。漢方も薬だけでは肥満を治すことは出来ません。食事制限と、運動、それに適切な処方が加わることによつて、多少減量できるのであつて、薬はあくまでも補助であり本人の自覚と努力が第一です。
問 肥満はどんな病気になりやすいか教えて下さい。
答 肥満は見栄えが良くないだけでなく、糖尿病、高血圧、心臓病、痛風、胆石、肝臓病などの病気にかかりやすいのでほつておくわけにはいきません。ただし最近は若い女性が肥満でもないのにやせようとしているのが目につきますが、無理なダイエットは生理不順、不妊症、更年期障害、骨粗そう症になりやすいので注意して下さい。
問 それでは肥満に使う漢方薬は何ですか?
答 漢方では次のような処方を使います。へそを中心に腹部がタル状に膨らみ便秘がちな人は防風通聖散、汗っかきで腰から下が重い水太りタイプの人は防己黄耆湯、体力があり便秘がちで肩凝り、口の中が粘つく筋肉質タイプは大柴胡湯、のぼせが激しく、女性ならば月経異常がある場合は桃核承気湯などを使用しますが、あくまでもバランスを考えた食事制限と適当な運動が第一と言うことを忘れないで下さい。


貧血の漢方薬

問 貧血に効果のある漢方薬は有りますか。
答 貧血には鉄欠乏性、溶血性、再生不良性貧血など色々な原因によるものがあり、精密検査で重大な疾患や手術の必要のない貧血と判明した場合に漢方薬の出番となります。漢方薬で治療すれば、鉄剤を用いる場合に起こりがちな胃腸障害も起こることがなく、消化管や子宮出血に伴う場合はもとの病気も良くなる事が多い反面、再生不良性や白血病による貧血が漢方薬で良くなったと言う報告はあるものの完全に治すのは難しいでしょう。
問 それでは実際にはどんな漢方薬がありますか?
答 その人の体質によって薬が異なりますが、代表的なものをいくつか上げてみましょう。
全身がだるく、すぐ疲れてしまい貧血の度合いが強く顔色が普段から悪い人はジュウゼンダイホトウが良いでしょう。
疲れ易く、顔色が悪くて不眠のある人はカミキヒトウやはり顔色が悪く、冷え症で女性ならば月径障害が有るかたはトウキシャクヤクサンが適合します。顔色が悪く疲れ易くて腹痛や鼻血を良く出す人はショウケンチュウトウ
立ち眩み、のぼせ、動悸、頭が重たい方はリョウケイジュツカントウ
顔色が黄色っぽく、唇が青くて食欲の不振な人はシクンシトウが合うでしょう。他にも漢方薬は色々有りますが、とにかく自分の症状を良く把握して漢方薬を選ぶことが肝腎です。


風邪の漢方薬

問 風邪の漢方療法を教えて下さい。
答 漢方では、風邪を急性の熱病として症状や体力の状態により薬を調合します。しかし薬は治癒の機転を与えるものであって、養生こそ体内の自然治癒力を補強し病気に打ち勝つポイントです。風邪の原因は疲労などからの体力の低下や寒さなどがあげられますので、体を暖かくし、栄養を十分にとり体力を付けることが第一の養生です。とくにタンパク質、ビタミン類は大切ですから、消化の良い豆腐、牛乳、卵、軟らかく煮た緑黄色野菜、くだものなどを取るようにして下さい。
問 具体的にはどんな漢方薬を服用すれば良いですか?
答 漢方薬としては症状別に次にあげるものをお勧めします。風邪の引き始めで頭痛、発熱、筋肉痛があるる人は葛根湯、鼻水が多く、うすい淡を伴う咳がある人は小青竜湯、風邪をこじらせて、胃腸の具合が悪く食欲のない人には柴胡桂枝湯、風邪をひいて激しいカラ咳や、喉がヒューヒューする気管支炎に麻杏甘石湯、淡が切れにくく、こみ上げるような強い咳には麦門冬湯、頭痛、発熱、寒気がして、節々が痛む場合には麻黄湯などまだこの他に処方はいくつかあります。また、風邪の予防策として外出先から戻ったら、まず手を洗いうがいをすることがずいぶんと効果があるので是非やってみて下さい。


夏バテ薬善の作り方

 前回の食欲不振に続いて今回は家庭で簡単にできる夏バテの薬善の作り方を紹介しましょう。薬善と聞くとなんだか一流ホテルでの高価な料理を連想したり、薬臭くてまずそうな感じがするかも知れませんが、なかには安価でなかなか美味しいものもあります。是非チャレンジしてみて下さい。まず材料はクコの実、豚モモ肉、竹の子、オイスターソース、カタクリ粉、しょう油、塩、お酒。作り方は豚肉を薄切りしてオイスターソースとしょう油をからませておきます。ピーマン、竹の子は細切りに、クコの実はお酒か水に5〜10分つけておきます。熱した鍋に油を注ぎ、カタクリをまぶした豚肉を炒めてからピ−マン、竹の子を入れ味をみます。薄ければ塩などで調節して、最後にクコの実とその汁をまぶし水気がなくなったら出来上がりです。クコの実は、疲労(得に目に良い)回復、糖尿などに効果がありますし、豚肉にはビタミンB1が、また野菜もタップリですから夏バテ気味の方から、お酒の肴に、またお子様にも喜ばれること請け合いです。


薬用酒の作り方

問 薬用酒は簡単にできますか?
答 はい、材料さえそろえれば誰にでも簡単に作ることができます。
問 どんな薬用酒にする薬草がありますか?
答 朝鮮人参(疲労回復、食欲不信、虚弱)クコ(疲労回復、強壮)イカリ草(補精、強壮)この他にもいろいろあるので目的に合わせてお作り下さい。
問 作り方を教えて下さい。
答 しっかりしたフタのできる広口ビンを用意して良く洗い、フタもビンも十分に乾燥させます。お酒は原則的にはホワイトリカーが良いですがブランデーを使用しても構いません。度数は35〜40度が目安です。量は薬草2〜400グラムに対して1.8リットル位、氷砂糖は入れないほうが薬草成分がよく出ます。材料を用意したビンに入れたら、フタをしっかりと締めて、直射日光の当たらないところで2〜3ケ月熟成し、薬草を取り除き別のビンに移せばもう出来上がりです。
問 どの位飲めば良いですか?
答 飲み方は、一日さかずき1〜3杯位が良いでしょういっぺんにたくさん飲むよりも長く続けるほうが効果的です。飲みにくければハチミツなどを加えていただいても結構です。ぜひこの機会に薬用酒にチャレンジして、御自身の健康管理に役立てて下さい。


和漢薬のお話@

問 和漢薬とは何ですか?
答 まず和漢薬を説明する前に生薬(ショウヤク)という言葉を説明させて下さい。
問 生薬って、薬のコマーシャルで良く出てくる生薬配合の生薬ですね。
答 そうです。生薬を簡単に説明すれば薬として使用する植物、動物、鉱物などの総称で、昔はキグスリなどとも言いました。そこで和漢薬とは何かといいますと、中国産の生薬を漢薬、日本産の生薬を和薬といい両方を併せて和漢薬と呼び漢方薬の原料などに使用されています。
和漢薬の数ははっきりしませんが、数万種類ともいわれています。しかし実際に私たちがよく使う和漢薬はその半分以下です。また和漢薬は漢方薬の原料だけではなく、私たちの生活の中でも数多く利用されています。たとえば醤油の甘味、ウイスキーの甘味や香り付け、お菓子、料理にもスパイスとして数多く使われています。いかに和漢薬が私たちの身近にあるかお分かりいただけますか?
今回から折りにふれて身近な和漢薬、珍しい和漢薬にはどんな物があるのかいくつか紹介していきたいと思います。
最初は皆さんも良くご存知の朝鮮人参からお話ししましょう。
人参、朝鮮人参中国や韓国などを旅行して買ってきたり、おみやげにもらったりした人はたくさんいる事でしょう。現在は人工的に大量に栽培され安く手に入りますが一昔前までは大変な高級品で親の病気を治すために娘が身売りしてまで人参を手に入れたなどという話はよく聞きます。
人参は別名、朝鮮人参、白参、御種人参とも呼ばれ、原産地は朝鮮半島中部より北から中国東北部の山の中に自生または栽培したものを指しますが、日本でも長野県や福島県、島根県で栽培しています。天然のものは山人参とも呼ばれ一本が数千万円もするものもありますが、栽培品は3〜5万円ぐらいで良質のものが買えます。人参はその昔、猟師が山で赤い実をつけた草を掘って見たら根っこが人の形にそっくり、これは精霊が宿っていると考えて持ち帰り、病弱な人に飲ませたら元気になったことから発見されたと言われています。人参の効能としては胃腸病、食欲不振、虚弱体質、強壮、消化不良、嘔吐、下痢、心痛、神経衰弱などに一日分2〜6グラム位煎じて用います。詳しい煎じ方や人参の実物はお近くの漢方薬局でご相談になってください。


和漢薬のお話A

 今回は牛黄と竜胆という2種類の和漢薬についてお話したいと思います。牛黄(ゴオウ)牛の黄と書いてゴオウと読みます。字だけ見ても一体なんなのか正体はさっぱりわかりませんね。これは牛の胆のうまたは胆管の中にできた石のことです。つまり胆石ですね。大きさは1〜4センチ位の丸い形で、色は赤茶色をしていて、軟らかく簡単に砕けてしまいます。そんなものが薬になるのかと驚かれるかも知れませんが、ゴオウは和漢薬の中でもジャコウの次に高価なものなのです。昔は1グラムが金の価格と同じとされていましたが、今ではそれ以上の6千円ぐらいします。いったいこんなものを何に使うのかと思うでしょう。古典にはゴオウは『心を清し、毒を解し…』と書かれています。つまり薬効としては強心、鎮静、鎮痙、解熱、解毒薬として動悸、息切れ、心臓病、熱病に用いられ、六神丸などに配合されています。飲む量は一回に0.1〜0.5グラム位を頓服して下さい。
竜胆(リュウタン) 竜のきもとはなんとも凄い名前ですね、しかしその実態は名前とは全く似つかわしくないリンドウの根なのです。リンドウは生け花や山などで目にする植物ですが、とても美しい青紫色の花が咲くことは皆さんもご存知だと思います。なぜ竜胆(リュウタン)と言うような名前が付いたのでしょうか?それはリンドウの根があまりにも苦く、『まるで竜の胆を食らっているようだ』ということから先人が命名したようです。効能はその苦味を生かして苦味健胃薬、消化不良、胃炎に一日2〜3グラムを煎じて用います。『良薬は口に苦し』ぜひ一度その苦みをご自身で味わってみてはいかがですか。


和漢薬のお話B

今回は霊芝(レイシ)についてお話ししたいと思います。
問 霊芝(レイシ)とは一体なんですか?
答 霊芝はキノコの仲間のサルノコシカケ科のマンネンタケもしくは同類を乾燥した物で、産地は中国各地や日本が産地となっています。
問 いつ頃から霊芝は薬用として使われていたのですか?
答 霊芝は中国の古典の神農本草経という書物に『久しく食すれば身を軽くし、老いず、天年を延べ、神仙となる』つまり霊芝を食べれば身を軽くし年を取らず仙人になると書かれています。また古くから日本でも霊芝をサイワイタケ、サキクタケなどと呼び大変珍重し、日本書記には霊芝を天皇に献上したところ、大変喜ばれ献上者に三枝部連(サエグサべノムラジ)の姓を賜ったと記載されているほどです。
問 そんなに貴重なものでしたらなかなか手に入らないし、高価でしょうね。答たしかに天然の霊芝はごくまれにしか自生しませんので、見つけると大変おめでたい事とお祝いまでしたほど大切にされました。ですからほんの十年くらい前までは霊芝は桐箱に入れられ一本が数十万円もしたことがありましたが、現在では人工栽培により2年ほどで品質の良い霊芝が手に入りますし、値段も以前の十分の一ぐらいになりました。
問 霊芝にはどんな効果があるのですか?
答 近年サルノコシカケ科のカワラタケの抽出液から得られた成分に強い抗腫瘍作用が認められて以来、その成分の制癌効果が注目されてきました。そして色々な実験によりマンネンタケつまり霊芝にも同様の効果があると認められています。ですから用途としてはその効果を狙って制癌、抗癌を目的とし用いたり、強壮、鎮静薬として神経衰弱症、不眠症、消化不良、老人性の気管支炎などの慢性病に応用されています。特に制癌を目的にするならば単独で用いるよりも漢方薬と組み合わせる用法の方がさらに効果的と思われます。
問 いろいろな種類の霊芝が有って、どれが良いか、迷ってしまうのですが?答一時期ブーム以来、市場には丸ごとや、刻んである物、エキス製剤化して粉末や錠剤になった物などいろいろな種類の物が出回っています。しかしどんな品質のものを材料に使用しているのか生薬を研究している人でない限り一般の人が知ることはほぼ不可能です。ですからここで私が申しあげられますのは、安易に価格の安いものには手を出さないということと、その反対に値段が余りにも高く飲み続けるのが困難な製品も避けたほうが良いという事です。とにかく飲まれる場合には薬剤師、または生薬を取り扱ってる薬局のアドバイス、説明をよく聞いて実物を見てから購入し、ご自身の健康維持に役立てていただきたいと思います。


食欲不振の漢方薬

問 夏バテがひどくてほとんど食欲が無いのですが?
答 この時期は残暑の影響で冷たい食べ物ばかり食べていたために胃腸に負担がかかり、食欲が無くなる人が多いですね。体質に合った漢方薬を服用して、体全体のバランスを整えてやれば、食欲が出てくると共に持病も改善されまよ。
問 どんな漢方薬を服用すれば良いですか?
答 だいたい20種類ほど処方が考えられますが、代表的なものを書きますと、おなかがゴロゴロ鳴り、ガスがよく出て下痢しやすい人はハンゲシャシントウ、体格がガッチリした人で胃がもたれ、張って苦しい人はヘイイサン、血色が悪く、疲れやすく、腹痛の激しい人はショウケンチュウトウ顔色が悪く、食欲があっても食卓に向かうと食べられなくなるような人はリックンシトウ、胃がもたれてつかえ、食後に吐いてしまう人はブクリョウイン、顔色が悪く冷え症で、ツバが良く出る人はニンジントウ、極度の疲労による食欲不振にはジュウゼンダイホトウなどをお勧めします。
しかし、漢方薬を飲んで食欲が出てきたからと言って急にたくさん食べるとまた元の状態に戻ってしまいますので、腹八分目にとどめておくよう気を付けて下さい。


痛風の漢方薬

問 痛風とはどんな病気ですか?
答 痛風はタンパク質の代謝異状によつて生産された尿酸により引き起こされる病気です。尿酸の結晶はコンペイトウのようにキザギザがたくさん有り、これが関節の神経を突き刺して激痛を起こします。この痛みはなった人にしかわからないほど辛いものです。問どんな人が痛風になりますか?
答 頻度は全人口の0.5 %位で、ことに中年男子に多く、女性には少ないです。また必ずしも血液中の尿酸が高いと痛風になるわけではありませんが、尿酸値の高い人が一番多いのが痛風ですので注意が必要です。
問 治療法はどうですか?
答 現代医学の治療法についてはここではお話しませんが、運動、食事、アルコールの制限、とくに肉汁などの尿酸の生成に関係深いものの摂取は厳禁です。漢方薬治療では、尿酸値が正常になるまで数ヵ月間かかりますが、痛みや腫れは比較的早く良くなります。処方としてはダイサイコトウ、ボウイオウギトウ、ボウフウツウセイサンなどを中心に体質改善していきますが、痛みが激しいときはシャクヤクカンゾウトウ、ケイシカジュツブトウを使用します。処方について詳しいことはお近くの漢方薬局にご相談下さい。


気管支ゼンソクの漢方療法

問 気管支ゼンソクとはどんな病気ですか?
答 普段は一般になにも症状がありませんが、発作時には喘息を伴う呼吸困難、咳、痰が出ます。さらに悪くなると呼吸困難が増悪し、会話、歩行が困難な状態になってしまいます。
問 原因はなんですか?
答 アレルギー、精神的要因、自律神経失調、内泌系の異状などいろいろな原因が考えられていますが、アレルギーに起因するものが多いですね。
問 季節に関係ありますか?
答 その通りです、喘息発作の起こる季節は秋が一番多く、次に春、冬、夏の順番です。特に季節の変わり目は要注意です。時間帯は真夜中から明け方にかけて発作が起こりやすいです。
問 漢方薬は何が良いですか?
答 漢方薬としては、ガッチリしていて呼吸困難があり、喉が乾く人にはマキョウカンセキトウ、肩が凝り、喉がつまる様な感じがある人はサイボクトウ、体力がなく顔色も悪く、呼吸困難、咳がひどい人はリョウカンキョウミシンゲニントウ、小児の喘息にはショウセイリュウトウなどが代表的ですが、その人の体格、症状によって薬が違いますので、詳しいことは薬局でご相談になって下さい。
問 日ごろ気を付けることはありますか?
答 日頃の養生としては、規則正しい生活のリズムを保ち、過労や寝不足を避け十分な休養をとって下さい。そしてアルコール、タバコ、コショウなどの刺激物は止め、ジュース、コーラ、ケーキ、菓子などの甘いもの、過剰な水分の取り過ぎを避け、それから適度な運動と心静かな生活を送ることも忘れないで下さい。


和漢薬のお話しC

今回ご紹介する薬草は黄柏(オウバク)と黄蓮(オウレン)です。
前者の黄柏はミカン科の植物『キハダ』の樹皮のことで、後者の黄蓮はキンポウゲ科のオウレンの根の事です。
問 いったいどんな薬効があるのですか。
答 まず黄柏からお話ししましょう。黄柏にはベルベリンという成分が含まれていて、匂いはほとんど無く味はとても苦いです。薬効としては消炎性の胃腸薬として胃腸炎、腹痛、下痢などに用いられます。また打撲の時、黄柏の粉末に酢と水を加えて練ったものを患部に貼って湿布薬として使うことはよく知られていますし、とても有効です。
問 漢方薬の中にも黄柏の入ったものが幾つか有りますか。
答 皆さんがよくご存知の二日酔いの防止に効く黄蓮解毒湯(オウレンゲドクトウ)や昔からの大和の陀羅尼助(ダラニスケ)、飛騨、信濃地方のお百草にも黄柏が入っていて江戸時代から胃腸薬として繁用されていました。
問 黄蓮についてはいかがでしょうか。
答 黄蓮の成分にも黄柏と同じベルベリンという物質が含まれていて味はとても苦いです。薬効は消炎性の苦味健胃薬として用いたり、充血、または炎症の症状がある場合の精神不安、吐き気、腹痛、出血などに用います。
問 黄蓮が入っている漢方薬はどんなものがありますか。
答 黄蓮の配合された漢方薬には、三黄丸、黄蓮解毒湯、半夏瀉心湯、黄蓮湯、甘草瀉心湯などが有りますが、詳しいことは漢方薬局でご相談になって下さい。次回はゲンノショウコとハトムギについてお話いたします。


和漢薬のお話D

今回は皆さんもよくご存知の薬草であるゲンノショウコとハトムギをご紹介しましょう。
問 ゲンノショウコという名前には何か由来があるのですか。
答 これは下痢に一服で効果的面と言うことから『現の証拠』と言われているそうです。別名をタチマチ草とかタキメン草などとも呼ばれています。今でも田舎に行くとゲンノショウコが干してあったりして現役バリバリの薬草ですね。
問 使い方を教えて下さい
答 下痢止めには醤油のように濃く煎じて、温かくして服用します。また下剤の合わないような人の便秘には薄く煎じて冷たくして服用します。
問 煎じる量はどの位が良いのでしょうか教えて下さい。
答 だいたい一日10〜20グラムを水600ミリリットルで煎じて下さい。
問 ハトムギはどういう効能が有るのですか。
答 ハトムギは江戸時代の中期頃に中国から伝来しました。日本でいろいろと研究され民間薬として独自の効用が開発されたのです。その効用としては利尿、イボとり、肌を白くして艶やかにしたり、神経通にも用いられます。とりわけイボとり、肌あれには非常に良く使われ、毎日お茶がわりに飲んでいる女性はたくさんいます。またこの種子を脱穀して精白したものをヨクイニンとよび、効果はハトムギに準じますが血気を増して体を軽くし、肺をきれいにし肺の腫れ物に良いと言うことで愛飲家が増えています。
問 飲み方はどうすれば良いのでしょうか。
答 だいたい一日10〜20グラムを600ミリリットルの水で煎じて一日に3回飲むのが一般的ですが、煎じる量をもっと多くして何回も飲んでいただいても結構です。次回はセンブリとアマチャズルについてお話いたします。


和漢薬のお話E

今回はセンブリとアマチャズルにつていお話いたしましょう。センブリは野山の日向に生えている、リンドウ科の植物であるセンブリを花の咲いている時期に採取した全草を使用します。
問 センブリの名前には何か特別な意味があるのでしょうか。
答 センブリは千回振り出してもまだ苦みがあるために千振(せんふり)がなまってセンブリという名前が付いたようです。当(まさ)に効果がある事から別名、当薬(とうやく)とも呼ばれます。
問 やはり薬効はその苦味を生かしたものなのでしょうね。
答 その通りです。センブリはとても苦い薬草です。一度その苦味をご自身で味わって見ていただくと良いでしょう。薬効としてはその苦味を生かして胃炎、健胃、整腸、消化不良に用います。
問 一日にどの位の量を飲めば良いのでしょうか。
答 一日、1.5グラムを300ミリリットルの水で煎じて一日3回食間に服用して下さい。センブリはこの位にしておいて次はアマチャズルについてお話しましょう。アマチャズルはどこにでも見かけるツル性の植物ですが、一時のブームでその姿は見掛けにくくなってしまいました。
問 アマチャズルのブームとは何でしたでしょうか。
答 アマチャズルの成分にサポニンという物質があり、これが朝鮮人参の成分とよく似ていることから朝鮮人参の代用品として使われたようです。朝鮮人参は高価なものですが、アマチャズルは安値で手に入りますから人気が出たのかもしれませんが、ブームのおかげでずいぶん値上がりしてしまいました。
問 どういう使い道がありますか。
答 強壮、鎮静、慢性気管支炎、去痰に使われるのが一般的です。またアマチャズルは2〜3分間、熱湯を注ぐだけで飲めるので、とても手軽に健康作りができます。


和漢薬のお話F

今回はドクダミと昆虫生薬のシャチュウについてご紹介しましょう。
問 ドクダミと言う名前はよく聞きますが、その名前には何か由来があるのですか。
答 ドクダミについては前に『ドクダミ健康法のうそ・ほんと』で書きましたがもう一度ドクダミについてご説明しましょう。ドクダミを見たことがない方はないと思いますが、ドクダミとは一体どんな植物なのでしょうか。私たちがよく服用するドクダミは野山や庭の湿地に生えているドクダミ科の多年草のドクダミを花が咲いている時期に地上部を採取して乾燥させたものです。ドクダミという名前は毒矯めが変化したもので、毒を阻止するという意味でつきました。また馬にこれを用いると十種類の薬効があるということからジュウヤクという別名もあります。
問 トクダミは人から何にでも良く効くと薦められますが本当ですか。
答 ドクダミを飲んで体の調子がいいとだれにでもドクダミを薦める人がいますし、マスコミなどで取り上げられるとすぐにとびつく人が大勢います。確かにドクダミは毒の阻止するなどという名前の由来を聞くと信じてしまうのも無理はないかも知れません。しかしながらドクダミを飲んで体の具合が悪くなってしまった人も少なくありません。
問 ではドクダミにはどんな効用があるのですか。
答 ドクダミの効用としては緩下、利尿、解毒として皮膚病などに使われたり、血管を丈夫にする作用があります。中国ではドクダミを使用した注射薬があり気管支炎に使用されているそうです。
問 ではどういう人がドクダミを使わないほうが良いのでしょうか。
答 実はドクダミのすぐれた効用の裏には体を冷やす副作用があります。ですから冷え症の人や胃腸の悪い人は止めたほうが良いでしょう。
問 次はシャチュウについてお聞きしましょう。シャチュウとは一体なんですか。
答 実はシャチュウの正体はゴキブリです。しかし私達の家にいるゴキブリとは種類が異なり、サツマゴキブリ、シナゴキブリの雌虫を使います。
問 ゴキブリなんかほんとに漢方薬として使われているんですか。
答 古い文献にはシャチュウについて次のように書かれています。『主に取り除くことが難しい血液の滞り、循環不全のものを治す。また下腹部が張り、そして痛むもの、婦人の月経不順などに効果がある。』つまり女性の生理不順や月経痛があり体内に汚れた血(月経血)が蓄積されてしまうような人に用いるのでしょうね。実祭に大学の研究室で、ラットの子宮収縮作用や血液凝固阻害作用が確認されています。
問 それにしてもずいぶん変なものを薬に使うのですね。
答 まったくおもしろいですね、昔の人はよくこの様な物の効能を見付け出したものですね。これ以外にも私達の想像を超えるような物が薬になっていますので少しずつご紹介していきたいと思います。


便秘の漢方療法

今回は便秘の漢方療法について話しましょう。
問 便秘にもいろいろとあるようですがそのあたりを教えて下さい。
答 今回は常習便秘についてお話しましょう。まず常習便秘には緊張性の便秘と弛緩性の便秘があります。前者の緊張性便秘は腹鳴、腹が張る、腹痛などが強く、症状や訴えがはっきりしている場合が多いです。後者の弛緩性便秘は便秘以外にこれと言った自覚症状が少なく、特に女性の場合は長期間排便の習慣がなく、普段と変わりない生活をしている場合が多いです。
問 それではどの位の間隔で通じが有るのが良いのでしょうか。
答 人間は一日3回食事を取る訳ですから一日に2〜3回通じが有るのが理想だと思います。少なくとも一日1回は通じが有るべきでしょう。3日や4日に一回しか通じが無いようでしたら体のために良くないのは明白ですね。
問 便秘の薬は癖になると聞きましたが本当ですか。
答 確かに便秘の薬は癖になります。でも通じが無いほうがはるかに体に悪影響を及ぼしますので多少習慣になっても通じをつけた方が良いでしょう。しかしながら痩せるために無理やり下剤を飲んで下しているような方がいますが、その結果として大量の下剤を飲まないと通じが付かなくなったような方は話が別です。
問 漢方では便秘にどんな処方を使うのですか。
答 漢方では緊張性、弛緩性と言うような区別ではなく実証、虚証に分けます。実証とは体の丈夫な人でつまり弛緩性の便秘タイプ、こういう方には下剤の配合されている漢方薬を飲んでいただく場合が多いです。逆に虚証とは体の余り丈夫でない人で、市販の便秘薬を飲むとおなかが痛くなるうな人には朝鮮人参、地黄などの体に潤いを与えるような生薬の配合された漢方薬を飲んでいただくのが一般的です。
問 それでは具体的に実証と虚証の便秘薬を教えて下さい。
答 実証の方には三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)大柴胡湯(ダイサイコトウ)、防風通聖散(ボウフウツウセイサン)、通導散(ツウドウサン)、桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)大黄牡丹皮湯(ダイオウボタンピトウ)、大黄甘草湯(ダイオウカンゾウトウ)などの漢方薬を使います。虚証の方には八味地黄丸(ハチミジオウガン)、加味逍遥散(カミショウヨウサン)、当帰芍薬散料(トウキシャクヤクサン)などを用います。しかしながら虚証の人に下剤の入った漢方薬を絶対に使わないのかと言えばそうではなく。症状によって下剤の入った漢方薬を使いますので、薬の選択は漢方薬局または薬剤師にくわしく相談して下さい。


動脈硬化の漢方薬

人間は年を年を取ると若い頃のように無理が利かなくなるように、体の中の内臓も同様に老化が進んでトラブルが出てきます。とりわけ血管が老化し硬くなると高血圧や脳梗塞の原因にもなります。今回は動脈硬化の漢方薬についてお話ししましょう。
問 動脈硬化になった血管は元に戻らないと聞きましたが。
答 これまでは動脈硬化になった血管は元に戻らないと考えられていました。これはが動脈硬化が老化現象であり、防ぎようのないものと考えられていたからです。しかし現在では動脈硬化は老化現象のみに起因するのでは無いことがわかり、適切な治療さえすればある程度は元に戻ることがわかって来ました。
問 それでは動脈硬化の原因は老化以外にどんなものがあるのですか。
答 最近、30歳を過ぎたあたりからCTで脳を調べると多少の梗塞が発見される。というようなショツキングな報道がありました。確かに動脈硬化の原因が老化現象にあると言うのは間違いないでしょう。しかしそれ以外に高血圧、高コレステロール、肥満、糖尿、ストレス、過労、喫煙などが動脈硬化を促進させ、助長させていると考えられています。
問 現代医学での治療法はどんなものがありますか。
答 東洋、西洋医学を問わず先ず実行していただきたいことは食事、嗜好品の制限です。次に肉体的、精神的な休養、そして西洋医学では新薬による治療です。
問 漢方薬での治療はどういう薬を使うのでしょうか。
答 動脈硬化は全身の動脈に起こるわけですが、中でも脳の動脈硬化が自覚症状としてわかりやすく、これによく使うのが釣藤散(チョウトウサン)という漢方薬です。この薬はもうすでに故人となりましたが日本を代表する漢方医の大塚敬節先生が『脳の動脈硬化がある場合には普段から常用すべき』と言ったほど脳動脈硬化によく使われます。ボケの予防薬などとマスコミに取り上げられたこともありました。症状としては朝方にかけて頭痛がしたり、物忘れがひどいなどを目安に用います。
また肥満症で腹がビール樽のように膨んでいる方には防風通聖散(ボウフウツウセイサン)、頭の中が充血しているような感じがしてイライラするような時には三黄瀉心湯(サンノウシャシントウ)、赤ら顔でのぼせがひどく、便秘があるような人には桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)を用います。漢方薬の詳しいことや飲み方については漢方薬局に相談して下さい。


肝臓病の漢方薬

これから忘年会、新年会となにかと宴会の回数が増える季節ですが、あなたの肝臓はベストコンディションですか。今回は慢性肝炎に用いる漢方薬についてお話したいと思います。
問 まず慢性肝炎の原因について教えて下さい。
答 慢性肝炎は日本では肝臓疾患の半数近くを占めるほど頻度の高い肝疾患です。従来は肝障害、急性肝炎などから移行したものとする考え方が一般的でしたが、この頃はウイルスが原因となっているものも数多くなってきました。
問 慢性肝炎になるとどういう自覚症状が現れますか。
答 一般的な自覚症状としては全身の倦怠感、疲れやすい、腹が張るなどが上げられます。
問 肝機能検査による数値の判断基準などはどうでしょうか。
答 肝機能検査についてすべてここでお話するにはとても無理ですので、ここではGOT、GPTいう検査項目についてのみお話します。GOT、GPTは肝臓の細胞に含まれている酵素で、肝臓の細胞が破壊されると酵素量が血液中に通常より多くなるために、その値によって肝臓の状態を判断したりします。正常な状態のGOTは5〜30単位、GPTは5〜25単位くらいが普通です。
問 漢方による慢性肝炎の治療法にはどんなものがありますか。
答 慢性肝炎の漢方療法は一見すると現代医学とは逆の事をやっているように見えます。つまり食事は高タンパク、高カロリーのものを取らせず、大豆、小魚、海草、野菜、穀類などを中心にした粗食に近いものを普通の人と同じ量食べ、安静にもあまりこだわりません。むしろ散歩などの軽い運動は行ったほうが良いくらいです。
問 漢方薬はどんなものを服用すれば良いのですか。
答 その人の体格、体質により用いる漢方薬は様々ですが、一般的には柴胡という生薬の入った処方を使用することが多いです。例をあげれば大柴胡湯(ダイサイコトウ)、小柴胡湯(ショウサイコトウ)、柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)、補中益気湯(ホチュウエッキトウ)、四逆散(シギャクサン)などがあげられます。
問 どの位の期間服用すれば良いでしょうか。
答 服薬期間は最低1年から長い場合は数年はかかると思って下さい。しかしながら現代医学では決め手になる治療法が確立されていない現在、漢方薬を試みる価値は十分にあるでしょう。くわしい漢方薬の選び方、使い方については漢方薬局、または薬剤師にご相談下さい。


インフルエンザと漢方薬

昨年の暮れはインフルエンザが猛威を奮い、風邪を引いて体調をくずした人がたくさん出ました。今年はまだ昨年ほどではないようですが、いつインフルエンザが猛威を奮い始めるのかのかとても心配ですね。
そこで今回はインフルエンザや風邪に効果のある漢方薬を症状別にズバリご紹介しましょう。
問 頭が痛くて熱があり、寒気がするような場合は何が良いですか。
答 頭痛、発熱、悪寒ときたら漢方で言う風邪のひきはじめの症状に当たります。この時に治しておけば比較的早く良くなるでしょう。先ず汗をかく場合は桂枝湯(ケイシトウ)、無汗の場合は葛根湯(カッコントウ)麻黄湯(マオウトウ)を使います。とくに葛根湯は首筋が凝る場合、麻黄湯は関節など節々が痛むような場合に用いると良いでしょう。また麻黄湯は小児の風邪の初期の漢方薬としてとてもよく効きます。熱が出たとき、鼻水、咳が出たときなどぜひお試しになって下さい。
問 鼻水やくしゃみがひどい場合にはどうですか。
答 くしゃみ・鼻水型の風邪には小青竜湯(ショウセイリュウトウ)が合うと思います。また頭痛、発熱、悪寒があって咳と薄い水のようなタンが出る場合も良いでしょう。
問 咳がひどいときはどうでしょう。
答 咳が激しくタンがほとんど出なく、喉が乾くようならば麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)が良いでしょう。また込み上げてくるような激しい咳がありタンが切れにくいようでしたら麦門冬湯(バクモントウトウ)がピッタリですね。
問 どうも体がだるく、微熱があるようで食欲がないような時は何が良いですか。
答 これは風邪の後期の症状ですね。まずご自身で鏡に向かって舌を出してみて下さい。舌が白くなっていませんか。この場合は小柴胡湯(ショウサイコトウ)が良いです。また自然に汗ばんで微熱や寒気、頭痛がなかなか取れなかったり腹痛、吐き気、食欲不振などを伴う胃腸に来た風邪には柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)を飲んで下さい。喉がいたくて腫れているような場合には桔梗石膏などを一緒に飲むと良いでしょう。漢方薬は症状によって薬を使い分けます。また漢方薬は煎じて飲むのが一番効果的です。しかし今回ご紹介した漢方薬はとても有名なものばかりで、錠剤や顆粒など手軽に飲めるような形で薬局で販売されています。とにかく風邪は特に引き始めに治すことが肝腎です。そして薬だけに頼らず安静にし、体を保温し、栄養のあるものを食べることを忘れないで下さい。詳しいことは購入する時に薬剤師に症状を話してアドバイスしてもらって下さいね。


女性の漢方薬@

今月からは4回に分けて女性と関係深い疾患である、月経不順(生理痛を含む)冷え症、不妊症、更年期障害の漢方薬についてお話したいと思います。最初は生理不順からお話します。
問 生理不順の原因は何ですか?
答 生理不順は先天的な染色体の異状、排卵にかかわる臓器の機能障害、ホルモンの分泌異状、糖尿病、肥満、栄養失調、貧血などの疾患、環境の変化、心因的、精神的なものなどが原因となって起こります。
現代医学の治療法としてはホルモン剤による排卵の誘発、補給がホルモンバランスの調整目的で用いられています。しかしながらホルモン剤は時として副作用が出ることがありますので注意が必要です。また子宮筋腫、子宮内膜症子宮発育不全などには手術をすることもあります。
問 どんな症状が現れますか?
答 生理不順には無月経と言って月経が無かったり、月経の周期、持続期間の長短や、経血量の多い少い、痛み、頭痛、精神不安定、無排卵などの症状が有ります。
問 どんな漢方薬で治療するのですか?
答 漢方では生理不順や生理痛でも体のバランスを整えることを目的として次のような処方を多く用います。

★比較的体力があり、のぼせて顔が赤く頭痛、肩凝り足が冷えるような人の生理不順や生理痛には桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

★色白で体力があまり無く冷え症で生理前後にむくんだり、腹痛を起こすような人は当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

★背中が急に熱くなったら寒くなるような人で、のぼせ、精神不安などいろいろな訴えが多い場合は加味逍遥散(カミショウヨウサン)

★ガッチリタイプでのぼせ、冷えがあり、便秘がひどい人は桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)

★生理痛がとくにひどいような人は折衝飲(セッショウイン)

この他にも生理不順や生理痛に用いる漢方薬がありますが、肝腎な事は体質に合った漢方薬を服用していただく事と食べ過ぎ、無理なダイエット、甘いものを控え、不眠、精神的、肉体的ストレスなどが無いように生活のリズムを整えることも忘れないで下さい。


女性の漢方薬A

2回目の今回は冷え症についてお話しいたします。暖かい日があるとはいえ、この季節は冷え症の人にはたいへん辛い時期です。冷え症は西洋医学では効果のある治療法があまり無いのが現状でが、漢方医学では得意とする分野の一つで、体質に合った漢方薬さえ選べばほぼ100パーセント治ると言っても過言ではないでしょう。
問 冷え症を治すには治療期間は長くかかりますか?
答 どうしても体質改善だと治療期間が長期化してしまうと考えがちですが冷え症は一般的に効果が出てくるのが早いです。
問 何が原因で冷え症になるのですか?
答 現代医学的には冷え症の原因を末梢血管の血液の循環障害やホルモン失調と考えていますが、漢方医学では気・血・水のバランスが悪くなったために起こるものとしています。気・血・水を簡単に説明すれば、気とは病気、元気の気で人間の生命エネルギーとでも言いましょうか、血は血液、水は体の中の水分の事です。つまりこれら気・血・水がうまく調和していれば健康な状態が保てるわけですが、バランスが崩れると途端に具合が悪くなるわけです。
問 それではどんな漢方薬を治療に使いますか?
答 やはり気・血・水のバランスを整える処方を使用します。つまり気が原因で冷え症になった人は気を整えてやる処方、血、水が原因では血、水を整える処方を使うわけです。
問 具体的に教えて下さい。
答 一般的には次にあげる処方が良く使われます。

★体力がなくて手足、とくに足の冷えがひどく夏でも靴下を履いているような人で食欲がない場合は当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)

★腰から上はのぼせるが、下はひどく冷える方は五積散(ゴシャクサン)

★色白で顔色が悪く、足腰が冷え、生理不順のあるような人は当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

★立ちくらみがあり、腰から下が水に使ったように冷え、腰が重いような方は苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)

★手足の冷えがひどく、胃腸が弱くて頭痛もちの人には呉茱萸湯(ゴシュユトウ)

★痩せて胃腸が弱い人の冷え性には人参湯(ニンジントウ)

この他にも冷え症に用いる漢方薬はありますが、体質をよく見極めて薬を選び、3か月位をめどに服用していただきたいと思います。


女性の漢方薬B

今回は不妊症の漢方療法についてお話したいと思います。
問 不妊症には基準があるのでしょうか。
答 妊娠可能な年齢にある女性が避妊もせずに2年以上の期間、正常なSEXを反復しても妊娠しない場合を不妊症と呼びます。
問 原因は何でしょうか。
答 女性の場合は子宮発育不全、子宮内膜炎、卵管通過障害、卵巣膿腫など原因は多岐にわたっていますが、生活環境、社会環境、精神状態などにより不妊になる場合も多々あります。また男性の場合にも精子欠乏、無精子症、精子の通過障害などにより不妊になる場合があり、女性、男性の原因の割合はほぼ半分と言われています。
問 漢方療法は不妊症に対して本当に有効でしょうか。
答 原因が女性の生殖器の異常による場合には残念ながら、漢方療法を試みても妊娠に至るケースはほとんどありません。しかしながら、病院の検査で男女とも異常が認められないような場合には漢方療法を試みてみる価値は十分にあると思います。
問 ではどんな漢方薬が不妊症に使われるのか教えて下さい。
答 不妊症に対して女性側に処方される漢方薬は、駆お血剤が中心となります。この駆お血剤とは簡単にいえば体の中に滞っている古い血を排除し、血のめぐりを良くする漢方薬です。具体的には次のような漢方薬を使う場合が多いです。

★月経異常があり、冷え性で顔色が悪いような人には当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

★下腹部が冷えて痛み、夜床に入ると手がほてって気持ち悪く、月経異常があるような人は温経湯(ウンケイトウ)

★のぼせやすく、赤ら顔をしていて、肩凝り、月経異常があるような人は桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

★のぼせがあり、顔が赤黒い色をしていて便秘がある人は桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)

★月経痛がひどくて痛み止めを飲まなければ我慢できないような人は折衝飲(セッショウイン)

また男性の精子数の不足や運動能力の低下にも女性と同様に駆お血剤を使って良かった例が報告されていますし、場合によっては精子の運動を活発にするために朝鮮人参などが配合された漢方薬を用いる場合もあります。
問 どのくらいの期間を目安に漢方療法を試みれば良いでしょうか。
答 期間については難しいです。妊娠するまで、もしくは妊娠の可能性が有るまで続けていただくしかないでしょう。漢方薬で妊娠した症例を見てみますと、60〜400日位とずいぶん幅があります。結論としては不妊症の漢方療法は短期間では無理があり、根気良く、気長にゆったりとした気持ちで望むことが重要です。不妊症の漢方薬についての詳細は医師、薬剤師などに相談して下さい。


女性の漢方薬C

今回の漢方問答は更年期障害・血の道の病気についてお話しましょう。
問 更年期障害・血の道の病気とはどんな病気ですか。
答 更年期障害は生理が終わり、閉径した女性に多い多種多様な精神的、肉体的な苦痛を伴う病気です。血の道は更年期障害と症状は似ていますが、年齢的に更年期には限らず、更年期を過ぎた女性や閉径前の女性などに生理現象を伴って起こる場合が多いです。
問 どんな症状が現れますか。
答 訴える症状はそれこそ多種多様で肩凝り、のぼせ、頭痛、めまい、耳鳴り、冷え症、イライラ、精神不安、、不眠など様々です。
問 原因は何ですか。
答 いずれの場合も、ホルモンバランスの崩れ、精神的なストレスなどにより自律神経の失調が原因と考えられます。問現代医学ではどんな治療が受けられますか。答薬物療法ではホルモン剤、精神安定剤、抗うつ剤などの投与が考えられます。この中でホルモン剤の投与による治療は劇的に効果が期待できますが、発癌の問題もあり、医師の十分な監視の下で行われる必要があり、賛否両論が現状のようです。
問 では漢方での治療法はどんな処方が良いでしょうか。
答 漢方薬を選択するにあたっては、患者さんの体質、症状などを細かく聞いた上で処方を決定する訳ですが、一般的には次のような漢方薬を良く使いますから参考にして下さい。

★ 柴胡竜骨牡蠣湯(サイコカリュウコツボレイトウ) みぞおちがつかえるような感じがして、どうき、不眠、イライラなどの神経症状が強く、便秘がある。

★ 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン) 顔色が悪く、めまい、足腰が冷え、月径障害がある。

★加味逍遥散(カミショウヨウサン) 訴える症状がむやみに多く、急にカーッと熱くなって汗が出てその後寒くなる。ような事がある。

★甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ) 理由もなく悲しんだり、怒ったりする事が多く、あくびが良く出る。

★桂枝加竜骨牡蠣湯(ケイシカリュウコツボレイトウ) 体力がなく、痩せて顔色が悪く、のぼせて汗をかき、どうきや不眠、イライラなどの精神症状を訴える事が多い。

この他にもまだご紹介したい漢方薬がありますが、これ位にしておきます。 最後に更年期障害・血の道の病気はストレスや精神的な不安がおおきな原因になっています。ですから漢方薬、西洋薬を飲みながらも自分自身の気持ちにゆとりを持つように心掛けて下さい。


腰痛の漢方療法

今回は腰痛に用いられる漢方薬をご紹介しましょう。
問 腰痛で悩んでいる人が近頃増えていると聞きましたがほんとうですか。
答 腰痛は以前は老人の病気のように思われていましたが、最近では若い人の腰痛も非常に増えています。原因としては車などの交通手段の発達により、運動する量が著しく低下したことやインスタント食品による栄養のアンバランスなどが主な原因ではないかと思います。また腰痛の原因の8割までが運動不足によるものと言われていますが、その他に椎間板ヘルニア、老人性の脊椎の変形など骨の異状による腰痛もあります。
問 現代医学ではどんな治療をするのですか。
答 腰痛症の場合はまず安静にし、鎮痛剤の投与、姿勢の注意、場合によっては腰痛体操を症状の程度によって行います。椎間板ヘルニアでは、牽引、コルセットの着用、安静、鎮痛剤の投与などを行い、年に何回も再発を繰り返すような場合は手術により椎間板を切除します。
問 漢方による治療はいかがでしょうか。
答 漢方薬での治療でも現代医学と同様に安静、姿勢の注意は言うまでもありませんが、鎮痛剤を投与するのとは異なり漢方では体内の気、血、水を整えてやることで腰痛を治療します。具体的な漢方薬では次のような処方が良く用いられます。

★芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)…急性の腰痛で腹直筋が緊張しているような場合

★桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)…急性の腰痛に用いるが、腹直筋の緊張が無い場合

★桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)…赤ら顔で、のぼせ、肩凝り、頭痛、めまい等があり、下腹部に抵抗がある場合

★苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)…腰が冷えてひどく痛み、腰が重たい感じがする場合

★八味地黄丸(ハチミジオウガン)…年配の方で夜間にトイレに行く回数が多く、下腹部がやわらかくて、腰から下に脱力感のあるような場合

腰痛の場合、治療の開始が早ければ早いほど治り易く、慢性化してしまったものほど治療困難ですので十分に注意して下さい。


乳幼児と漢方薬

乳幼児に飲ませられる漢方薬にはどんな物があるのか教えて下さい。
答 小児虚弱、夜泣き、夜尿、アトピー、風邪、ヤケドなど、いろいろな疾患に漢方薬を用いる事ができます。但し、子供専用の漢方薬はありませんので、分量をお子さんの年齢、体重によって適当に加減して処方します。
問 風邪をひいた時にはどん漢方薬が良いでしょうか。
答 いつもは元気なのに、今日は、ちょっと風邪気味だな…と思ったら、すぐに麻黄湯(マオウトウ)を飲ませてあげてみて下さい。一日でなおることが多いです。これは、比較的、飲みやすいし、ハチミツなどを混ぜても結構です。また副作用の心配も、あまりありませんから、買い置きしておくと心強い風邪薬です。また、急な発熱には、地竜(チリュウ)がよく効きます。あわせて、置いておくと良いでしょう。クシャミ、鼻水のひどい時は小青竜湯(ショウセイリュウトウ)など、ゼロゼロ・ヒューヒューのひどい時は麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)など症状にあわせて処方します。
問 虚弱体質には何が良いですか。
答 すぐに風邪をひくとか、病気がちの体質でしたら、瓊玉膏(ケイギョクコウ)という薬がよいと思います。ハチミツが入っていて、甘酸っぱい味ですから、喜んでなめるお子さんが多いです。この他、柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)、小建中湯(ショウケンチュウトウ)など体質にあわせた漢方薬を用います。
問 この他にどんな漢方薬が、乳幼児に使用できますか。
答 紫雲膏(シウンコウ)という塗り薬は軽いヤケドや、乳児性の軽い痔、腫れものに良く効きます。夜尿症には、ショウケンチュウトウ、六味丸(ロクミガン)などが効果的です。アトピーにもいろいろ体質に合わせて漢方薬がありますが、食事や生活に至るものまで、また、年齢に応じた細かい注意が必要です。乳幼児の身体の具合は、ほんのちょっとの間に、悪くなったり、よくなるものです。そのお子さんのふだんの朝・昼・晩の平熱を知っておく事は、当然として、急な病気に対して、親があわてず冷静に、かつ、優しい気持ちで応じる事が、子供の不安感を和らげ、早期に治す一番のお薬の様に思います。漢方薬についての詳しい説明はお近くの漢方薬局、薬剤師に御相談下さい。


胃・十二指腸潰瘍の漢方薬

今回は現代のようなストレス社会において、私達にとって避けられない病気である胃・十二指潰瘍の漢方薬についてお話したいと思います。
問 胃・十二指潰瘍は何が原因で起こる病気なのですか。
答 胃潰瘍、十二指潰瘍は胃酸の過剰分泌などにより胃、十二指腸の粘膜が傷付けられて起こる場合と、逆に胃、十二指腸の粘膜の酸などに対する防御能力が低下して起こる場合があります。
問 それでは実際にどんな症状が現れるのでしょうか。
答 胃潰瘍では食後30分〜2時間に起こる痛みが比較的に多いですが、その他にも食欲不振、腹が張る、吐血、悪心や呑酸などの過酸症状などが現れます。十二指腸は空腹時、夜間に起こる痛みが多く、食物を取ると軽減されるのが特徴的です。また悪心や呑酸などの過酸症状なども比較的多いです。
問 早速、漢方薬による治療法について教えて下さい。
答 胃、十二指腸潰は漢方では比較的得意とする分野の疾患で、手術が必要と診断されたものが、漢方薬で治癒した症例は少なくありません。漢方薬による治療においては胃、十二指腸潰瘍は同じ物として治療します。また先程のべた胃、十二指腸潰の原因についても漢方では特に区別をする事はなく、患者さんの体質と自覚症状などをもとに漢方薬を決定します。
問 ではどんな漢方薬が使われるのでしょうか。
答 代表的なものを幾つか上げてみましょう。

▲半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)…腹が鳴り、ガスの排出が多く、吐気、悪心、下痢しやすい。

▲小建中湯(ショウケンチュウトウ)…体力がなく、疲れ易くて顔色が悪く、腹痛などを訴える。

▲安中散(アンチュウサン)…やせ型で慢性的に胃痛、胸やけ、ゲップ、食欲不振、などがある。

▲柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)…のぼせがあり、みぞおちがつかえる感じがあっり、食欲不振、胃痛を訴える。

▲六君子湯(リックンシトウ)…疲れ易く、手足が冷えて、食欲はあるが食べられない。

この他にも胃、十二指腸潰に用いる漢方薬はまだまだ有ります。詳しいことは漢方薬局、薬剤師にご相談になって、自分の体質と症状にあった漢方薬を飲んで下さい。


心臓病の漢方薬

今回は狭心症、心筋梗塞に使われる漢方薬をご紹介しましょう。
問 良く耳にする名前の病気ですが、狭心症、心筋梗塞はちがうものなのですか。
答 狭心症、心筋梗塞を同じ病気と思っている人は以外と多いようでが、狭心症は心臓の筋肉に栄養を供給する環状動脈という血管が軽度の硬化を起こし、一時的に詰まってしまう状態で、心筋梗塞は環状動脈の硬化がさらに進んで重症になり、心臓に栄養が供給されずに心臓の細胞が死んでしまった状態を指します。ですから心筋梗塞と狭心症は同じ心臓の病気ですが、その病気の程度はずいぶん違うものだと言えます。
問 では心筋梗塞と狭心症はどんな症状が現れるのでしょうか。
答 一般的に両方の疾患とも肋骨の奥が締め付けられるような痛みを覚え、空気が足りないような息苦しさを訴える場合が多いです。
問 漢方薬で心筋梗塞と狭心症は治療可能ですか。
答 漢方薬の治療では心筋梗塞と狭心症は区別しません。患者の心臓痛、胸痛の程度、状態により処方を使い分けるのが原則です。また今から約2000年前の漢方の文献である『金匱要略』(キンキヨウリャク)には、今日でいう心筋梗塞と狭心症の治療について書かれています。ただ心筋梗塞のような心臓病は死亡率が高い疾患ですから、何がなんでも漢方薬ではなく、発作などが激しい場合には一刻も速く心臓専門医の治療が必要なことは言うまでもありません。
問 それでは、どのような場合の心筋梗塞と狭心症が漢方治療の適応となるのでしょうか。
答 漢方薬による治療が適応するのは、軽い狭心症、慢性的な軽い発作を起こす心筋梗塞、心筋梗塞の発作の予防を目的にして飲むのが良いと思います。
問 それでは、心筋梗塞と狭心症に使われる漢方薬を教えて下さい。
答 代表的な物をご紹介します。

☆木防已湯(モクボウイトウ)…咳や呼吸困難を伴い、浮腫や動悸が有るような場合

★括呂薤白白酒湯(カロガイハクハクシュトウ)…心筋梗塞と狭心症に頻繁に使われ、心臓から左肩、左の腕にまで届く、激しい痛みのある場合

☆当帰湯(トウキトウ)…体力、気力が非常に衰えていて、みぞおちから胸にかけて突き上げるような痛みがある場合

これ以外にも心筋梗塞、狭心症に使われる漢方薬はまだあります。詳しいことは漢方薬局、薬剤師にご相談下さい。


胃下垂・胃アトニーの漢方薬

問 胃下垂、胃アトニーとはどんな病気ですか。
答 胃下垂とは読んで字の如く、胃が本来あるべき位置よりも下垂する事で、胃アトニーは胃の壁の緊張力がなくなり虚脱状態になってしまう事です。従って胃アトニーでは胃下垂を伴う場合が非常に多く、この二つは同一症状として扱う場合が多いです。
問 どんな症状が現れるのでしょうか。
答 一般的には胃の膨満感ゲップ、悪心、食欲不振、全身倦怠感などがあげられ、重傷の胃アトニーでは下痢や吐き気、食物が摂取できなくなってしまいます。
問 漢方薬は胃下垂、胃アトニーに対してどのくらい有効ですか。
答 現代医学では手術によって胃を吊上げる方法以外にほとんど有効な手段は有りませんが、漢方医学では患者に適応した漢方薬さえきちんと選べば、先程述べた胃の膨満感、ゲップ、悪心、食欲不振、全身倦怠感などが比較的早期に改善されます。また半年から1年位で全快した症例も数多く報告されています。ですから現代医学の治療を受けて結果が余り良くない方は漢方薬を飲んでみる価値は十分にあると思います。
問 それでは、どんな漢方薬が胃下垂、胃アトニーに使われるのか教えて下さい。
答 胃下垂、胃アトニーになるような人は本来、漢方医学で言う虚証タイプ(やせていて体力がなく虚弱な人)がほとんどではないかと思います。もちろん例外も有りますが、ここでは虚証タイプの方に使う漢方薬をいくつか紹介します。

▲大建中湯(ダイケンチュウトウ)…胃下垂、胃アトニーに頻繁に処方される漢方薬で、腹の中で腸がモクモクと動くような自覚症状がある場合

▲茯苓沢瀉湯(ブクリョウタクシャトウ)…吐き気や吐いたり、喉が乾いて仕方がない様な人

▲六君子湯(リックンシトウ)…食欲があるのに食べられず、胃の中で水がチャポチャポするような方

▲安中散(アンチュウサン)…食欲がなく、胃から酸っぱい水が込み上げてくるような方

▲半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)…胃が弱く、昼食後にはすぐに眠くなり、どうき、めまいがあるような方

この他にも紹介したい漢方薬はまだ数多くありますが、服用される場合は漢方薬局、薬剤師に相談の上、自分の体質に適合した漢方薬を飲まれるようにして下さい。また食べ過ぎ、水分の取り過ぎには十分に注意する事も忘れないようにして下さい。


胆石症の漢方薬

今回は胆石症、胆のう炎の漢方薬についてお話します。漢方では胆石症・胆のう炎も、治療に当たって特に区別する必要はありません。また、胆石は、ビリルビン結石、コレステロール結石などに分類されますが、これらも同様に区別しません。ですから胆石症、胆のう炎ともに、同じ漢方薬を服用していただく場合が多いです。
問 胆石の漢方療法はどれくらい有効ですか。
答 漢方薬で治療すると胆石はよほど大きな物でない限り次第に胆石が溶かされて排出されると考えられています。ですから、病院で早急に手術をしなければならない大きな胆石は、漢方薬では無理ですが、逆に胆汁排出助長剤などの薬を長期間服用してもなかなか効果が上がらないような方には、漢方薬を飲んでみる価値は十分にあると思います。
問 漢方薬はどれくらいの期間の服用で胆石が排出されますか。
答 これについては一概にこれくらいの期間飲めば胆石が排出されるとはなかなか言えませんが、早いものでは2週間で排出された例や、長いものでは数年かかった例もありさまざまです。
問 漢方薬を服用していると何か自覚症状の変化が出てきますか。
答 胆石症、胆のう炎で疝痛発作などの自覚症状がある場合は、服用し始めると徐々に発作の回数が減り、最後には発作が起きなくなるようになります。またどうしても痛みが残るような場合には芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)という漢方薬を頓服で服用してもらい痛みを取り除きます。
問 具体的に胆石症、胆のう炎に処方される漢方薬を教えて下さい。
答 代表的なものを幾つかご紹介しましょう。

★大柴胡湯(ダイサイコトウ) 体がガッチリした筋肉質タイプで、便秘の傾向があり、右側の脇腹に痛みがあるような場合に用いる。

★小柴胡湯(ショウサイコトウ) 体つきが大柴胡湯よりも劣る中肉タイプで便秘がなく、胆のう炎では長い間微熱が取れないものに用いる。

★柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ) 痩せ型で、体力もあまり無く、腹直筋が緊張していて、のぼせや口の中が苦く感じたり、粘っこいような場合に用いる。★芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)胆石疝痛発作に頓服として用います。

民間薬として胆石には連銭草、熊柳、裏白樫などを煎じて飲むのが良いとされています。また、これらの民間薬を前述の漢方薬と混ぜて服用するとより効果が上がる場合がありまので、詳細については漢方薬局または薬剤師にご相談下さい。


頭痛の漢方薬

慢性的な頭痛や偏頭痛に悩まされている人は案外と多いものです。そこで今回は慢性頭痛、偏頭痛の漢方薬についてお話したいと思います。
問 慢性頭痛の原因は何でしょうか。
答 慢性頭痛や偏頭痛の本当の原因は現代医学に於て、まだ明らかになっていません。ですから高血圧症のように本態性頭痛として理解していただければ良いでしょう。つまり血管拡張性、緊張性、精神性、体質性などがそれにあたり、どれも周期的、持続的に痛みを起こして不快なことは言うまでもありません。
問 現代医学ではどんな治療方法がありますか。
答 現代医学では本態性頭痛の具体的解消法を見つけることは困難で、発作の一時おさえ以外に、根治的治療方法はまだ確立していないのが現状です。ですから薬物療法としては解熱鎮痛剤のアスピリンや抗炎症剤のインドメタシン、マイナートランキライザーなどを使用するのがほとんどです。
問 漢方での治療法はどうでしょうか。
答 現代医学では根治的に治療するのが困難な慢性頭痛、偏頭痛も漢方では根治しない場合のほうが少ないくらいです。10年も20年も苦しんできた慢性頭痛が、漢方薬の服用で2〜4週間、遅くとも半年位ですっかり良くなって再発しなくなった症例はそれこそいくらでも報告されています。
問 それでは慢性頭痛・偏頭痛に使う漢方薬を教えて下さい。
答 漢方では頭痛などあらゆる病気の根本的な原因は体内の気・血・水のバランスが崩れたために起こるものと考えています。ですから気・血・水のバランスを整える事で慢性頭痛などを治療する訳です。具体的には次にあげるような漢方薬が繁用されます。

○五苓散 喉が渇き良く水を飲むが、その割りに尿の出がわるいような人の頭痛に用います。この処方は漢方の大御所である矢数道明先生が良く使う処方で二日酔いの頭痛にも良く効きます。

○呉茱萸湯 手足がひどく冷えて、発作時に激しく吐いてしまうような場合の頭痛に用いる。

○釣藤散 高血圧症、脳梗塞が有るような人で、朝起きるとに頭痛がするような人に用いる。

○葛根湯 お馴染みの風邪薬ですが、頭痛時に首すじが引きつるように痛んだり、普段から肩凝りがひどいような人の慢性頭痛に用います。

○桂枝人参湯 普段から胃腸があまり丈夫でなく、のぼせや手足が冷あり、発作次に嘔吐や下痢をする人に用います。この処方は漢方の大御所である藤平健先生が繁用する処方です。

その他の漢方薬、詳細については薬剤師、漢方薬局にご相談ください。


夜尿症の漢方薬

今回は夜尿症に用いられる漢方薬についてお話したいと思います。
問 どういう場合が夜尿症として治療の対象となるのでしょうか。
答 子供の成長過程における排尿のコントロールは、早くて1才、大部分は2才までに完成されます。しかし無意識状態(夜間)の排尿コントロールは3才までに完成されない場合も多く、7才位まで時々失敗しても特に心配する必要はありません。通常は6才以上で、頻回に起こる無意識状態の夜尿を夜尿症として治療の対象とするそうです。
問 原因は何でしょうか。
答 神経的、精神的、心理的な要因が最も多く、その他には夜間てんかん、糖尿病、尿崩症、尿道炎、ぼうこう炎などの尿路感染症なども原因としてあげられます。
問 神経的、精神的、心理的な要因とはどんなものがあるのですか。
答 例を上げれば、まだ排尿コントロールが完成していない時期に過度の排尿訓練を強要したり、夜尿をひどく叱ったり、反対になぐさめたり、夜間に起こして強制的に排尿させる事などが要因として上げられます。
問 漢方薬での夜尿症の治療は効果がありますか。
答 20才以上の夜尿症では手を尽くしても無理な場合が多いですが、小学生から中学生位の夜尿症は漢方薬で6〜7割りは治療できると思います。問どんな漢方薬が夜尿症に効果的なのでしょうか。
答 夜尿症に良く使われる漢方薬をいくつかご紹介しましょう。

★小建中湯(ショウケンチュウトウ)…夜尿症に一番良く使われる漢方薬で、血色が悪く、疲れ易く、腹痛や鼻血を良く起こすような虚弱体質の子供に用いる。

★六味丸(ロクミガン)…喉が乾いて水をよく飲み、下腹部がやわらかく、手足が夏にはほてり、冬は冷える。
★柴胡加竜骨牡蠣湯(サイコカリュウコツボレイトウ)…便秘の傾向があり、眠りが浅く良く夢を見る。

★柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)…のぼせがあり、上半身に汗をかき易く、口の中が苦く感じる。

★五苓散(ゴレイサン)…喉が乾いて水分を良くとるが、その割りに昼間の小便の回数が少なく、夜に遺尿してしまう。

以上、代表的な漢方薬を上げてみましたが、就寝前の排尿、水分摂取の調整も有用です。何事もあせりは禁物!子供を不安と屈辱から解放するため、遺尿をとがめず、汗と思って取り替えてやる位の心のゆとりも家族に欲しいものです。


慢性副鼻腔炎の漢方薬

今回は慢性副鼻腔炎に使われる漢方薬についてお話します。
問 慢性副鼻腔炎とは、どんな病気ですか。
答 慢性副鼻腔炎ではピンとこない方も多いかと思いますが、蓄膿症と言えばすぐに理解できるでしょう。以前、この病気は耳鼻科の代表的な疾患でしたが、最近では少なくなってきたようです。慢性副鼻腔炎は細菌感染、歯の疾患、アレルギーなどの原因の他に、個々の体質も大きな誘因になっています。症状としては鼻づまり、膿性の鼻漏、後鼻漏、頭痛、頭重、倦怠感、臭覚麻痺、無気力などが上げられ、注意力や作業能力の低下を招く恐れがあります。
問 漢方薬は慢性副鼻腔炎にどの程度有効でしょうか。
答 漢方は現代医学的な一時的な対症療法とは異なり、個々の体質の改善や自然治癒力の増強を主眼として治療をします。手術を含めた現代医学的な治療と比較しても治癒率は遥かに上回り、半年から1年位の服用で完治すると思います。ただ漢方でも再発を繰り返すような頑固な慢性副鼻腔炎では100%治癒は難しく、長期間の服用や、現代医学の併用をしなければならない場合もあります。
問 ではどんな漢方薬がよく処方されるのか教えて下さい。
答 代表的な漢方薬を幾つか挙げてみましょう。

★葛根湯 頭痛、鼻づまり、鼻漏があり、首の後ろが凝っている。

★葛根湯加川弓辛夷 葛根湯の症状で鼻づまり、頭痛、鼻漏などの症状が一層ひどい場合。

★荊芥連翹湯 筋肉質で肌が浅黒く化膿傾向がある。

★防風通聖散 鼻づまり、鼻漏がひどく、肩凝り、便秘がちで、腹部がビール樽のように膨らんでいる。

他にも慢性副鼻腔炎に使われる漢方薬は幾つか有りますが、服用される場合は素人判断で漢方薬を選ばず、医師、薬剤師に相談して自分にあった漢方薬を選んで下さい。


尿道・膀胱炎の漢方薬

今回は非常に不快感を伴う、尿道・膀胱炎の漢方薬についてお話します。
問 女性に多いと聞きますが、本当ですか。またどんな症状が現れるのでしょうか。
答 確かに尿道・膀胱炎は身体の構造上、男性より女性が多く、30〜40歳台の人に多く訴えをききます。症状としては、頻尿、排尿痛、尿の混濁が最も多く、その他にも血尿、残尿感などがあげられます。
問 尿道・膀胱炎の原因は何でしょうか。
答 菌の感染による場合、大部分が大腸菌等により引き起こされますが、ブドウ球菌、連鎖球菌、淋菌、結核菌による場合もあります。特に女性の場合、細菌感染とは無関係に冷えからくる尿道・膀胱炎が多くみうけられます。
問 どんな治療法がありますか。
答 西洋医学による治療はでは、アルコール類、刺激物の摂取を止め、化学療法剤や抗生物質などを使用します。また細菌が検出されないような場合は精神安定剤を用いる事もあります。漢方医学でもアルコール類、刺激物の摂取は止めてもらうのは同じですが、西洋医学で治療して、その後度々再発し、諸種の化学療法剤や抗生物質を投与してもなかなか治癒しなかったり、細菌が検出されない、又は冷えからくる尿道・膀胱炎には案外早期に軽快して、治癒する事ができます。
問 では実際に尿道・膀胱炎に用いられる漢方薬にはどんな処方がありますか。
答 繁用される処方を幾つかご紹介します。

◎猪苓湯…尿道・膀胱炎に最も良く用いられる処方で排尿の異状と血尿がある。

◎竜胆瀉肝湯…ガッチリした体格で、皮膚が浅黒く、手のひら、足の裏に汗をかき、排尿異状が激しい。

◎八味丸…下半身がだるく、頻尿、残尿、夜間尿がある慢性の膀胱炎。

◎清心連子飲…排尿の異状と胃腸の異状や、イライラ憂鬱などの神経症状がある。

◎五淋散…尿の出が悪く、残尿感、排尿痛と伴に、血尿や膿が出る事がある。

慢性の尿道・膀胱炎でお悩みの方は多いと思います。是非、漢方薬を飲もうと考えている方は、漢方に詳しい医師、薬剤師に相談して下さい。


アレルギー性鼻炎と漢方薬

これから花粉症の人には嫌な季節になりますので、今回はアレルギー性鼻炎の漢方薬についてお話ししたいと思います。
問 アレルギー性鼻炎の原因はそもそも何ですか。
答 アレルギー鼻炎は大きく分けて免疫によるものと自律神経の異状で起こるものがあります。原因としては、ハウスダスト、花粉、枯れ草、動物の毛などによるアレルギー、ストレスなどによる発作、ホルモンの分泌異状や神経の緊張などが考えられますが、どうもこれらが単一ではなく色々なものが関係してアレルギー鼻炎になるようです。
問 症状としてはどんな具合になるのでしょう。
答 おもな症状としては先ず多量の水様性の鼻汁、次に発作的に頻発するくしゃみや鼻づまりが一般的ですまた前頭部の頭痛、鼻の痛み、涙目、目のかゆみを訴える場合も多いですね。
問 具体的な治療法は何ですか。
答 西洋医学、東洋医学を問わずやることは原因となる食物、動物、カビ、花粉、ストレスなどをできるだけ排除することが肝腎です。次に薬物療法としては抗ヒスタミン剤、自律神経作用薬やステロイドホルモン剤の点鼻や内服などが上げられます。またアレルギーを起こす物質を皮下に注射してアレルギーに対する過敏性を低下させたり、手術をしたりする方法も有ります。
問 漢方薬での治療法はどういうものがありますか。
答 漢方には現代医学でのアレルギーと言う考え方は存在しません。しかしながら多量の鼻水、くしゃみの頻発を漢方医学の概念で考えるならばアレルギー鼻炎は体内の水分の異状な排出つまり水毒という症状に当てはめることができると思います。ですから漢方薬を選択するに当たっては駆水剤、つまり体の中の水毒を治し、水はけをを良くするような処方を選ぶ場合が多いです。問具体的にはどんな漢方薬を使うのですか。答もちろん漢方薬はその人の体格や体質を見て処方を決めるので、一外にはこれと決め付けるわけにはいきませんが、よく使われるものを紹介しましょう。

*小青竜湯(ショウセイリュウトウ)アレルギー鼻炎に最も良く使われる処方です。余り体質にこだわらなくても良く激しいくしゃみや鼻水が出て寒気がするような場合に用います。また発作時に頓服的に飲んでも良いでしょう。

*麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)これは小青竜湯の裏の処方で小青竜湯を飲んでも効果がない場合や、くしゃみ、鼻水は以外に強い寒気を感じる場合に用いると良いでしょう。

*葛根湯(カッコントウ)皆さんも良くご存知の漢方薬です。とくに普段から首の後ろや肩が凝り頭痛あるような場合の鼻炎に良いでしょう。

未だいくつかご紹介したいのですが紙面の関係でこれくらいにしておきます。詳しいことはお近くの漢方薬局または薬剤師に相談して下さい。


不眠症の漢方薬

今回は不眠症の漢方薬についてお話します。
問 不眠症の原因は何でしょうか。
答 睡眠のメカニズムは完全には解明されていませんが、睡眠調節中枢や脊髄への刺激伝達の異常など、脊髄から大脳皮質へ至るまでの経路で、なんらかの異常興奮が発生すると不眠が起こることが科学的に立証されています。とりわけ、不眠の原因は精神的な問題が大きく関係しているといわれており、また不眠を大別すると入眠困難型、熟睡困難型があります。
問 どういう治療法がありますか。
答 先ず第一に精神的な問題を取り除くことが先決と言う事で、精神療法、説得療法、生活のリズムを整えるなど様々な物がありますが、とにかく寝られないという事が強迫観念となってノイローゼになってしまう悪循環を招く事が多々あるので手っ取り早いのは薬の力を借りる方法でしょう。
問 薬物による治療法にはどんな物が在りますか。
答 西洋薬では、トランキライザー、バルビタール系睡眠剤などをケースバイケースで使用しますが、ここでは漢方薬についてお話させていただきます。西洋薬の副作用としては、肝臓障害、習慣性、薬物の蓄積などの心配がありますが、漢方薬ではそのような心配はありませんし、副作用も処方さえ間違わなければまず起こりません。ですから不眠症は漢方薬で治療するのが望ましいと思います。
問 それではどんな漢方薬が不眠症に使われますか。
答 代表的なものを幾つかご紹介しましょう。

☆柴胡加竜骨牡蠣湯 がっとりした体格で不眠、多夢、動悸、イライラなどの神経症状が強くみぞおちがつかえる感じがする。

☆加味逍遥散 不定愁訴が多く、背中が急にカーッと暑くなり、その後寒くなるような更年期障害時のような不眠

☆酸棗仁湯 不眠症の他にこれといった症状がなく、特にすごく疲れているが寝られな場合の不眠

☆加味帰脾湯 体力が衰えていて、痩せて、血色が悪くイライラしたり、クヨクヨしたりする事が多い

☆甘麦大棗湯 理由もなく怒ったり、悲しんだりするヒステリー症状がみられ、生あくびが良く出るような方の不眠

この他にも不眠症に使われる漢方薬はまだあります。飲まれる場合は必ず漢方薬に詳しい医師、薬剤師にご相談なさって下さい。


膀胱結石の漢方薬

膀胱結石は激しい痛み、腰部の鈍痛や血尿などの症状が現れる疾患です。治療は泌尿器に出来た石を除去すれば治る訳ですが、なかなか思うように旨くいかないのが現状のようです。今回は膀胱結石に使われる漢方薬についてお話し致します。
問 膀胱結石には種類や年齢的な関係がありますか。
答 膀胱結石と言いますが、腎臓結石が1/3、尿管結石が2/3ぐらいの頻度で発生し、左右の差はなく片側だけにできるのがほとんどです。年齢的には20才代から増加し、30才代をピークに徐々に減少していきます。
問 どうして膀胱に石ができるのですか。
答 膀胱結石が出来る原因は、残念ながら良く解っていません。私たちの尿はただの水ではなく、尿素などの多量の代謝産物を含んでいることは皆さんもご存じですね。この代謝産物が何らかの原因によりバランスを崩し、尿に溶けていたものが析出して、それが基となって周囲に塩類が沈着し結石を形成する訳ですが、しかし、なぜバランスが崩れて代謝物が析出してしまうのかは解明されていません。また尿の停滞、感染、偏食、水分の摂取不足などは結石の形成を助長する事も解っています。
問 それではどんな漢方薬を膀胱結石に使いますか。
答 代表的なものを幾つか体質別にご紹介しましょう。

★ 猪苓湯…体格的に中肉で、喉が渇き、尿の出が悪く、血尿などがある人。

★ 竜胆瀉肝湯…体格が良く、皮膚が浅黒くて手足の裏に汗をかきやすく、激しい排尿痛が頻繁に起こる。

★ 大建中湯…体力が非常に弱っている様な人で、激しい痛みがある。

★ 芍薬甘草湯…痛みが非常に激しい場合に他の漢方薬と併用したり、頓服で痛み止めとして用いる。

★ 桃核承気湯…体格が良く、のぼせがやすく、顔がほてり、便秘がちでしばしば激しい痛みが起こる。

その他にも使われる漢方薬がありますが、簡単な民間療法として連銭草という薬草を一日に10g〜15g煎じて服用すると、胆石から歯石までの体の中の石を何でも溶かすと言われています。また、紹介した漢方薬と併用して用いるとさらに効果があるようです。


美肌と漢方薬

春から夏にかけては、お肌の大敵・紫外線がピークになる時期です。その上、夏は冷房の活用などからか、シミや肌荒れなど、肌のトラブルが増加傾向にあります。そこで、今回は、漢方薬と美肌を取り上げて見ましょう。
問 どうして、シミや肌荒れになるのでしょうか。
答 内臓機能の不調(肝臓・腎臓・卵巣など)、妊娠、精神的ストレス、不規則な生活や過労、化粧品や洗剤、栄養のかたよった食事、日焼けなどが考えられますが、はっきりした原因は、まだつかめていません。
問 防止策はありますか。
答 基本は、前記の諸問題を取り除き、心身のバランスを整える事です。また、強い陽射しや乾燥からの防御や、お化粧・肌の汚れを必ず落として、就寝する事も大切です。
問 美肌にはどんな漢方薬が効果的ですか。
答 特にシミやソバカスには桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)や当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)など、婦人薬でも活用されている漢方薬を中心に、その人に適合した物を処方します。また、民間療法としてはヨクイニンをお茶の代わりに飲むと美肌づくりができます。シミは気長な治療が必要ですが、肌荒れは、わりと早期に完治しやすく、それと共に、生理不順などの症状がとれた例も少なくありません。
問 飲み薬以外に肌に直接つけるパックの様な物はありませんか。
答 漢方薬の外用薬でパックなどに用いる物はあまり聞きませんが、本来は内服薬の瓊玉膏(ケイギョクコウ)という漢方薬を用いて美肌づくりになかなかの効果が期待できる漢方パックの作り方をご紹介致しましょう。
「材料」・ハチミツ(適量)・黒砂糖 (〃 )・瓊玉膏(ケイギョクコウ)
<作り方>1.鍋にハチミツと黒砂糖、水を入れ、ごく弱火で煮る。(吹き出しやすいので注意)2.滑らかになったら、瓊玉膏(ケイギョクコウ)を入れて出来上がりです。
*瓊玉膏(ケイギョクコウ)は本来は不老長寿、軽身延年などを目的に今から千年前の宋時代に考え出された漢方薬で、当時は皇帝などの一部の人にしか口にできない物でした。中身は、地黄・朝鮮人参などが入ったあんこの様な舐め薬で、味は甘酸っぱく、疲労回復、体力の増強など子供からお年寄りまで幅広く用いられる薬です。ちなみに、このパックは家内や家内の友人が作って試してみましたが、肌がしっとりして、つるつるになると言っていました。興味のある方は是非作ってみてください。詳細については、漢方専門薬局にご相談を!


冷え症の漢方薬

これからいよいよ夏本番を迎えますが、近頃の私たちの生活も便利になり何処にいってもクーラーが利いていて涼しく日常生活を過ごすことが出来るようになりました。しかしながら、この便利さが災いして、冷え症の方には辛い季節になっている場合が多々あるようです。そこで今回は冷え症の漢方薬についてお話しします。
問 冷え症の原因はなんでしょうか。
答 現代医学的には、冷え症は末梢の血液循環の不良として考えられているようですが、漢方医学では気・血・水のバランスが崩れたために起こる疾患だと考えます。
問 いったい、気・血・水とは何ですか。
答 気・血・水について詳しく説明すると長くなりますから、簡単に言いますと血とは体の血液、水とは体内の水分、気とは表現が難しいですが、元気、気分、病気の気などの気と考えて下さい。
問 冷え症はどのくらい良くなりますか。
答 現代医学では冷え症に対してほとんど有効な治療法はありません。しかし、漢方医学では適合した処方さえ服用すれば、ほぼ
100%良くなると言っても過言ではありません。それくらい漢方で冷え症は得意とする分野なのです。
問 どんな漢方薬が冷え症には良いですか。
答 よく使われる漢方薬をご紹介します。

●当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカショウキョウトウ) 夏でも靴下、長袖が必要なくらい冷えて、特に手足の先が冷え、体力や食欲がない。

●当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン) 貧血気味で顔色が悪く、足腰が冷え、めまいなどがある。女性の場合は月経障害がある場合が多い。

●呉茱萸生姜湯(ゴシュユトウ) 胃腸が悪く、慢性頭痛や激しい頭痛があり、頭痛に伴い吐く場合もある。特に手足の冷えがひどい

●五積散(ゴシャクサン) 夏場の冷房時が特にひどく、腰から下が冷えるが、逆上せがある。 

この他にも冷え症に使う漢方薬はいくつかありますが、冷え症は体質に合った漢方薬を服用しないと良くなりません。体質に合わないと漢方薬が無駄になるばかりか逆に体の調子を悪くする場合もあります。漢方薬を服用しようと思う方は必ず漢方薬局等にご相談下さい。


夏バテの漢方薬

残暑が続くこの頃ですが、皆様の体調は如何ですか。 この時期は暑さのせいから、冷たい飲み物やソーメン等のアッサリした食事に偏りがちです。その上、エアコンの普及で外気温度との差をまともに受けて、体に負担をかけ、かえって体調を崩す人が多くなっています。
そこで今回は、夏バテに良い漢方薬を服用して、体のバランスを整え、食欲を増進させ、健康増進につなげる漢方薬について述べさせていただきます。
問 どんな漢方薬を服用すれば夏ばての回復に良いですか?
答 漢方は体質によって処方を選択するのが原則ですが、よく用いる処方が約20種類ほど考えられますので、代表的なものを紹介させていただきます。

● おなかがゴロゴロ鳴り、ガスがよく出て下痢しやすい人は半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)

● 体格がガッチリした人で胃がもたれ、張って苦しい人は平胃散(ヘイイサン)

● 血色が悪く、疲れやすく、腹痛の激しい人は小建中湯(ショウケンチュウトウ)

● 顔色が悪く、食欲があっても食卓に向かうと食べられなくなるような人は六君子湯(リックンシトウ)

● 胃がもたれてつかえ、食後に吐いてしまう人は茯苓飲(ブクリョウイン)

● 顔色が悪く冷え症で、生ツバが良く出る人は人参湯(ニンジントウ)

● 極度の疲労による食欲不振には十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)などをお勧めします。

しかし、漢方薬を服用して食欲が出て、体調が良くなったからと言って急にたくさん食べたり、無理をしたりするとまた元の状態に戻ってしまいますので、冷たい物は控え、食事は腹八分目、リズム正しい生活を守り、決して無理をしないように気を付けて下さい。


ゼンソクと漢方薬

秋は、ゼンソクの人にとって、要注意の季節。そこで、今回はゼンソクと漢方薬について取り上げてみましょう。
問 なぜ秋は、ゼンソクが出やすいのですか。
答 秋は発作の原因の1つでもある気候の変化と共に、ジュータンや布団・枕などに潜んでいるダニが大量に卵を生んで、自身が死ぬ時期です。ダニは、アレルゲンの代表選手ですから、これを大量に吸うことで、ゼンソクを引き起こしやすくします。
問 予防法はありますか。答 ゼンソクの発作は、主に夜間に発生します。その原因として、気温の低下やホルモン分泌や自律神経系の変化の他、布団や枕のダニやホコリを吸うことがあげられます。掃除機の排気口を窓の外に向けて、ジュータンや布団・枕・ぬいぐるみなどをマメに掃除したりすると、ハウス・ダストが減ります。また、過度の緊張や疲労、ストレスを避け、乾布摩擦を施すこと、水泳や腹式呼吸の練習や、どんな時に発作がでやすいかという食事や天候などを記録するゼンソク日誌のような物も非常に役立ちます。また、発作の出始めには、大量の水をゆっくり飲むと、早期に落ち着くようですね。
問 では漢方薬は何が良いでしょう?
答 漢方薬としては、ガッチリしていて呼吸困難があり、喉が乾く人には麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)、肩が凝り、喉がつまる様な感じがある人は柴朴湯(サイボクトウ)、体力がなく顔色も悪く、呼吸困難、咳がひどい人は苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ)、小児の喘息には小青竜湯(ショウセイリュウトウ)などが代表的な漢方薬ですが、その人の体格、症状によってこれ以外の漢方薬を用いる場合も多々ありますので、詳しいことは漢方薬局でご相談になっていただきたいと思います。


アトピー性皮膚炎と漢方薬

今回はアトピー性皮膚炎(以下アトピー)の漢方療法についてお話しします。
問 アトピーとはどんな病気ですか。
答 アトピーは、喘息、蕁麻疹、などのアレルギー疾患を持つ人に患者が多く、別名、アレルギー性皮膚炎とも呼ばれています。
現代医学的に言えばアトピーはアレルギーの一種、つまり特異体質の人が特定の物質に敏感に反応することにより引き起こされる皮膚の炎症の事です。
症状は、皮膚の紅潮、湿潤、乾燥、強いかゆみなどが一般的ですが、乳児期、幼児期、思春期、成人で症状が異なります。
問 アトピーの原因となる特定の物質とは何ですか。
答 これも人によって様々ですが、卵、米、牛乳、パン、肉、ハウスダスト、ダニ、ストレスなど多種多様です。しかしながら、現代の我々の食生活は人工添加物(着色料、保存料、発色剤、防腐剤、甘味料)などがあまりにも多く使用され、これらが私たちの体をアレルギー体質に変えていると私は思います。ざっと見回しても、私たちが毎日飲む水でさえトリハロメタンなどの化学物質が含まれていたり、肉や野菜でさえ生産性の向上の為に抗生物質、農薬等の薬品が頻繁に使用されているのは事実です。
問 アトピーは漢方薬で良くなりますか。
答 アレルギー性疾患は現代医学的には非常に治療が困難な病気です。漢方においても治療が困難であるには変わりがありません。それでも現代医学よりもひとまわりもふたまわりも良くなると私は思います。
ただ、漢方では長期間の服用が必要になるでしよう。
問 それでは具体的な漢方薬を教えて下さい。
答 繁用処方をいくつか御紹介しましょう。

★温清飲(ウンセイイン)
  患部が発赤し、皮膚がどす黒く痒みが比較的強い。

★消風散(ショウフウサン)
  滲出物が多く患部が汚く発赤し、痒みがひどい。

★十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)
  体つきはガッチリしていて、患部が化膿し痒みが強い。

★越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)
  のどが渇き、水をよく飲むが尿の出が悪く、湿疹ができやすい。

繁用処方をご紹介しましたが、服用される場合はご自身で判断されずに、必ず専門家に相談してから服用して下さい。


自律神経失調症の漢方薬(前編)

今回と次回は現代社会病と言っても過言ではない自律神経失調症と漢方薬についてお話いたします。
問 自律神経とは一体どんな神経なのでしょうか。
答 我々の体の中には無数の神経が張り巡らされています。この神経は機能的に見て、自律神経と体性神経に分類され、体性神経は、さらに我々の筋肉を動かす運動神経と痛みや熱を感じる知覚神経に分けられ、自律神経は交感神経と副交感神経に分類されます。つまり簡単に自律神経を説明すると、内蔵や汗腺など私たちの意思で動かせない器官をコントロールしている神経と言えます。
問 自律神経失調症という病気で苦しんでいる人は多いと思いますが、何が原因でどんな症状が起こる病気なのでしょうか。
答 自律神経には先ほども言いましたが、交感神経と副交感神経があります。このふたつの神経は陰と陽、プラスとマイナスの様な関係でお互いにバランスを保ち、必要に応じてどちらかが優位になることで調整が取られています。このバランスや調整が狂ってくると自律神経失調症になるわけです。一概にこれと確証できるものはありませんが、ストレス、生活リズムの乱れなどが原因の一つと思われています。症状としては全身倦怠感、めまい、立ちくらみ、頭痛、頭重、胃腸障害、動悸、のぼせ、発汗異常、手足の冷え、ほてり、不眠、イライラ等さまざまです。
具体的な漢方処方等については詳しく次回にお話しさせていただきます。とにかく漢方薬は体格、症状によって処方が異なります。誤った漢方薬を服用すれば治らないばかりか、症状が更に悪化する場合もあります。服用される場合は漢方薬局等で詳しくご相談になって下さい。


自律神経失調症の漢方薬(後編)

前回では自律神経とは何か、自律神経失調症の原因、症状についてお話しさせていただきましたが、今回も前回に引き続き自律神経失調症の漢方薬について話させていただきます。
問 自律神経失調症は漢方薬で本当に良くなりますか。答 最近では、現代医学による治療でも自律神経を調節する良い薬が開発され、治癒する例が増えてきましたが、それでもまだ治りにくい患者、治らない患者がたくさんいるのが現状です。そのような方はむしろ現代医学的な治療よりも漢方薬による治療の方が効果的だと思います。
問 漢方薬で自律神経失調症を治療するにはどれくらいの服用期間が必要でしょうか。
答 一概にはこれくらい服用すれば良いとは言えませんが、一般的に言えばおよそ1カ月前後から半年程度で治癒する例が多いです。
特に漢方薬では現代医学ではあまり問題としない、めまい、のぼせ、冷えなどに適応する漢方薬がたくさんありので、適方さえ服用すれば好転、治癒する事は比較的簡単だと思います。
問 では具体的な漢方薬を教えて下さい。
答 代表的な漢方薬をいくつかご紹介しましょう。

■半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)
  体力的に平均以下の人で、顔色が悪く気分がふさぎがちで、喉に何かが詰まっている(ヒステリー球)様  な気がする方の不安神経症、不眠症。

□加味逍遥散(カミショウヨウサン)
  体力がなく疲労しがちで、不眠、精神不安、イライラなどの精神症状がある。特に女性の更年期障害など  で、背中が急に熱くなり、その後汗が出て寒気がし、不定愁訴がやたらに多い場合に良く用いる。

■甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)
  甘草、ナツメ、小麦の食品としても非常に良く用いられる物からなる処方で、とても漢方薬とは思えない   ほど甘く飲みやすい薬です。しかしながら、女性や子供などで、精神興奮(ヒステリー症状)が激しく、不   安、不眠、ひきつけなどに用いる。

□柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)
  体力がなくて顔色が悪く、つねに疲労倦怠感があり、冷え症、貧血気味、動悸息切れ、不眠などを伴う更  年期障害、血の道症、神経症、不眠症など現代人に幅広く用いられる処方。

■柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)
  比較的体力があり、不眠、多夢、動悸、イライラ、些細なことが気になるなどの神経症状が強く、便秘の   傾向があるような方の自律神経症に用いる。

この他にも自律神経症に用いられる漢方薬はまだ沢山ありますが時間の都合でこれくらいにしておきます。
最後に前回もお話しましたが、漢方薬は体格、症状によって処方が異なります。誤った漢方薬を服用すれば治らないばかりか、症状が更に悪化する場合もあります。服用される場合は漢方薬局等で詳しくご相談になる事をお勧めします。


痔疾の漢方薬

日頃、痔疾で悩んでいる方は非常に多い事でしょう。そこで今回は痔疾の漢方療法についてお話します。
問 痔疾にはいろいろなタイプがあると思いますが。答 痔疾は一般的には痔と呼ばれていますが、痔核、痔裂、痔瘻などに分けられ、西洋医学による治療ではそれぞれの病態により治療法が異なっています。
問 痔疾になる原因はなんでしょうか。
答 痔疾はいずれの場合も肛門近くの直腸静脈の異常なうっ血により引き起こされます。主として便秘、妊娠、椅子などに長時間腰掛けたままの職業、直腸炎、大腸炎、うっ血を引き起こす様な食事内容などが痔疾を引き起こす原因と考えられていますが、日本人に非常に多い疾患の一つでしょう。
問 漢方での痔疾の治療方法は西洋医学と異なりますか。
答 漢方では西洋医学のように痔疾の種類をあまり考慮する必要はありません。 漢方では痔疾、つまり肛門周囲の静脈の異常うっ血は「お血」と言う漢方の独自の概念でとらえています。この「お血」は以前にも説明しましたが、簡単に言えば血液などがうっ滞する事により引き起こされる病的な状態で、万病はこの「お血」が原因と考えられています。ですから、漢方での痔疾の治療は先ず、「お血」を改善することから始める訳です。
問 では具体的に漢方薬をあげて治療方法を説明して下さい。
答 痔疾の治療は「お血」の状態を改善しなくてはなりません、ですから処方する漢方薬は「駆お血剤」と言う「お血」を取る漢方薬が中心になります。
特に出血がひどい場合には体質により麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)、三黄瀉心湯(サンオウシャシントウ)、弓帰膠艾湯(キュウキキョウガイトウ)十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)などを使い分けます。また、便秘によって悪化を繰り返すような痔疾で、体格がガッチリタイプの方に乙字湯(オツジトウ)大黄牡丹皮湯(ダイオウボタンピトウ)、虚弱体質の方には潤腸湯(ジュンチョウトウ)などを使います。
裂肛などにより痛みのある場合には、内服薬と併用で外用薬の紫雲膏(シウンコウ)を用いるとより効果的です。詳細については漢方薬局等でご相談下さい。


胃腸神経症の漢方薬
職場、家庭での精神的ストレス、転勤、引っ越しなどによる環境の変化で胃腸の調子がおかしくなった事のある方は大勢いると思います。今回は胃腸神経症の漢方療法についてお話ししましょう。
問 普段から健康な人でも胃腸の病気で悩んでいる人は多いと聞きますが。
答 胃腸は、健康な人でも精神的なストレスや環境の変化による影響を受けやすい臓器です。ですからストレス社会と言われる現代では、健康に自信がある人でも神経性胃炎などになりやすいのは当然の事です。とりわけ神経質な人だと、ちょっとしたストレス、環境の変化などで胃痛や胃もたれを起こしたり、吐いたり下したりする事はよくありますし、最悪の場合は胃潰瘍、十二指腸潰瘍などになりかねません。
また若い女性などではストレスなどで食欲がなくなり、食事らしい食事もとれずに病的にやせていくような場合もあります。
問 漢方では胃腸神経症をどのように治療するのでしようか。
答 病院で神経性胃炎、過敏性大腸炎などの病名をつけられた場合に用いられる西洋薬は精神安定剤、健胃薬、消化酵素剤などが主になりますが、漢方でも精神安定作用、健胃作用のある漢方薬が効果的です。また、漢方で治療した場合比較的早く症状がとれる事が多く、おおむね服薬期間は20日間前後を目安にしてもらえば良いでしょう。
問 どんな漢方薬が胃腸神経症に効果的でしょうか。答 よく処方される漢方薬をご紹介しましょう。

◆安中散(アンチュウサン)
 やせ形で体力がなく胃部がもたれ、胃痛または腹痛があり、胸やけ、ゲップ、吐き気などがある場合

◆半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)
 体格的には中肉中性タイプでおなかがゴロゴロ鳴り、ガスの排出が多く下痢しやすい。また精神的な不安 や不眠などがあり、吐き気、嘔吐を伴う事もある。

◆柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)
 多少のぼせやすく精神的に不安定になる場合があり、みぞおちがつかえたり、上半身に汗をかき、胃痛や 腹痛、食欲不振など症状がある。

◆ 茯苓飲合半夏厚朴湯(ブクリョウインゴウハンゲコウボクトウ)
 食後に苦しまずに食べたものを吐いてしまう事が多く、のどに何か物がつかえているような感じがする。

 この他にも胃腸神経症に使われる漢方薬はまだ沢山ありますが、一般的によく処方する物を挙げてみま  した。漢方薬はその人の体質、症状によって使われる処方は千差万別です。胃腸神経症で漢方療法を試 みてみようと思う方は、漢方に詳しい医師、薬剤師に必ず相談の上で服薬して下さい。


漢方薬の副作用について@

最近、新聞やテレビで「漢方薬の副作用で十数人もの死者が出ている」と言う事が取り上げられました。多くの方は、「漢方薬にも副作用があるの?」「漢方薬で人が死ぬの?」と思われたのではないでしょうか。私の所にも、「現在、服用中の漢方薬は大丈夫でしょうか?」と言う問い合わせが何件もありました。
そこで、今回は何故そのよ事件が起こってしまったのか、漢方薬の副作用についてお話しさせていただきます。
(問) 安全と言われている漢方薬でどうして死者まで出たのでしょうか。
(答) 簡潔に言えば患者さんの漢方医学の概念である『証』を無視して漢方薬を処方したためにので死者を出すような不幸な結果を招いたのでしょう。
漢方薬は服用する患者さんの体質、体格、病気の進行具合などで処方を決める事はいつもお話していまが、漢方薬の原点は人間の経験、つまり何千年もの臨床試験の結果、処方が出来上がったものです。昔は現在のような科学的検査方法など有りませんから病人の症状や訴えを細かく聞き、漢方独自の『証』という概念を基に的確な漢方薬を処方していました。現在でもそれはまったく変わっていません。検査の数値は参考にはしますが、漢方薬の処方はあくまでも『証』により決定するのが原則です。
また、現代医学では患者さんの体質や体全体の状態をあまり考慮せずに胃潰瘍なら胃、高血圧なら血圧の数値、癌なら癌組織に治療を集中させる傾向があります。これでは「抗癌剤で癌細胞は死んだが、副作用で患者も死んでしまった」と言う笑えない事態になるわけで、ことわざに言う「木を見て森を見ず」が思い起こされます。


漢方薬の副作用についてA

前回から引き続き今回も漢方薬の副作用についてお話します。
(問) 前回では漢方医学の概念である『証』を無視したために死者を出すような結果を招いたと言われましたが、『証』とはどういう物なのかもう一度説明して下さい。
(答) 『証』とは漢方独自の概念で証拠の証のことです。つまり漢方の診断方法によって病人の複雑に絡みあった症状の関連を数学の方程式のように表現したものといえば少しは理解していただけるでしょうか。
(問) 実際の医療現場ではどれくらい漢方薬の処方決定に『証』の概念が用いられているのですか。
(答) 残念ながら現在の病院、医院、薬局等の医療機関の大部分が漢方薬の選択を『証』ではなく、病名によって処方しているのが現状です。ただ単に「副作用がないから」「安全だから」と言う誤った認識や「患者が漢方薬を希望するから」、「特に出す薬がないから漢方薬でも出す」などととんでもない漢方薬の用い方をしている場合もあります。ただ誤解しないで頂きたいのか全てがそうだというのではなく、漢方医学を勉強して『証』に基づいて漢方薬を処方している医療機関もある事は忘れないで下さい。
(問) どうして病名で漢方薬を処方してはまずいのですか。
(答) 漢方薬は『証』と言う概念に基づいて処方されるべきだと言いました。わかりやすくするために皆さんも風邪薬として良くご存じの葛根湯を例にあげてみましょう。
あなたが風邪に罹り、葛根湯を服用し、体も快調になり治ったとしましよう。おそらく、あなたは「風邪に葛根湯が効くと」思うでしょう。ところが、体力がないお年寄りが長い間、風邪をこじらせてしまい、寒気がして手足が冷たいような状態になっている場合、あなたが「風邪に葛根湯が効くと」このお年寄りに葛根湯を服用させたら風邪が治るでしょうか?
治るどころか体調を更に崩し、最悪の場合は入院して絶対安静の状態になるかもしれません。そのような状態では、たとえ風邪という病名が付けられたとしても葛根湯は絶対に用いる事が出来ないの処方なです。
漢方の古典的書物には葛根湯を用いる条件として「発熱、頭痛、悪寒などがあり、首の後ろが凝り、汗をかかない者に用いる」と厳密に決められています。ただ単に風邪だからと言って葛根湯を服用すべきではないわけです。また「風邪の初期には葛根湯だ」と決めつけてすぐに葛根湯を服用するのも問題です。お年寄りや虚弱体質のような人、汗がたくさん出ている場合などには用いられません。
風邪に効く漢方薬と言っても千差万別、処方はたくさんあります。問題は患者さんのその時の状態、病気の進行状況でその中からどの漢方薬を使うかが重要なわけです。この様な理由から病名による漢方薬の決定は好ましくないのです。


漢方薬の副作用についてB

新聞等のマスコミを騒がせた漢方薬の副作用の事例はおそらく氷山の一角で、亡くならないまでも漢方薬で体調を崩した患者さんは山ほどいるはずです。そう言うことで漢方薬が誤解され敬遠されてしまうのは大変残念なことだと思います。
(問) マスコミでは小柴胡湯の副作用が取り上げられていましたが。やはり、『証』を無視した事が原因で死者まで出す様な副作用が出たのでしょうか。
(答) その通りです。
小柴胡湯は古典に書かれている内容から有効と思われる疾患を現代医学的病名に当てはめれば風邪、気管支炎、肺炎、胃腸病、肝臓病、リンパ腺炎、その他のいろいろな炎症性疾患に使える応用範囲の広い漢方薬と言えます。今回は慢性肝炎などに使用して副作用が出たと書かれていましたが、確かに小柴胡湯は肝炎に用いて非常に効果の期待できる漢方薬です。しかし、それは『証』と言う概念に基づいて漢方医学的に処方された場合です。
ただ単に製薬会社の添付文書やパンフレットを見て、肝炎だから、肝機能障害だから小柴胡湯ではまったくダメなわけです。肝炎と言うだけで即座に薬が決まる現代肝疾患用剤とは根本的に用い方が異なるわけです。
(問) なんで小柴胡湯だけがそんなにクローズアップされるのでしようか。
(答) いろいろ考えられますが、小柴胡湯が医療機関等で突出して多量に使われているために他の漢方薬よりも目立つからでしょう。新聞では小柴胡湯単独で年間数百億円もの売り上げがあり、漢方が医療体系として確立してから現代に至るまでの2千年間にこれほど小柴胡湯が大量に使用されていた時代はありませんでした。これはおそらく小柴胡湯の薬価が非常に高く、製薬会社は多くの利益が上げられる為に、莫大な宣伝費(医療機関、医師に対して)をかけて「肝機能障害には小柴胡湯」と無責任に宣伝した事が原因でしょう。また、小柴胡湯の他に柴苓湯、柴朴湯なども同類の漢方薬なので注意が必要です。


漢方薬の副作用についてC

今回で漢方薬の副作用についての話を総括させていただきましょう。
(問) 我々は漢方薬が副作用が無く、安全だと聞いていましたが、完全に間違いのようですね。
(答) 今までいろいろな事をお話してきましたが、副作用があると言うことは皆さんももう十分にお判りいただけたと思います。
漢方薬にも新薬同様に副作用はありますし、漢方薬だからと言ってむやみに服用するものではありません。漢方薬の用い方は非常に慎重です。なぜならば「薬は毒、やたらに服用するものではない」という考えが基本となっているからです。昔から漢方薬では有効な作用はもちろん、有害な作用にはそれ以上に注意をはらつて処方を作りました。ですから先人の英知のおかげでたいていは複数の薬草を合わせて用いたり、薬草に加工をほどこすことで有毒な作用が出ないように工夫されていますが、それでも『証』を無視して処方した場合は胃腸障害、下痢、吐き気、不快感などの副作用が出ることがあります。逆に副作用というと悪いことばかりを連想しがちですが、慢性胃炎で漢方薬を服用したらそれまでの偏頭痛が治ってしまったり、冷え症の漢方薬を服用したら膀胱炎にならなくなったなど良い面の副作用も多々あります。
「知人に勧められたから」「知り合いが飲んでいるから」と言う安易な服用は思いがけない結果を生むことになりかねませんし、「漢方薬だから安全、副作用が無い」などと考えてはいけません。特に小さいお子さんや高齢のお年寄り、虚弱低湿の方は厳密な『証』の把握が必要です。また、海外旅行のおみやげ等の得体の知れない薬、週刊誌、健康雑誌等で騒がれる健康食品等にも用心していただきたいです。
病気は薬が治してくれる物ではありません、薬は人間が持つ自然治癒力の手助けをするだけです。自分の体は自分で守り、養生するのが自然の摂理ではないでしょうか。 


大腸菌O−157の正体?

全国的に病原性大腸菌O−157による食中毒患者が発生し、亡くなった方も何人か出てテレビ、新聞等のマスメディアでも詳細に報道されています。
今回は、漢方薬から離れて、病原性大腸菌O−157の基礎知識と、対処の方法をお話します。
問 病原性大腸菌O−157はどこに潜伏しているのでしょうか。
答 大腸菌は私たち人間を含めた動物の大腸の中に生息している菌です。その中でも病原性大腸菌O−157は牛などの家畜の腸に生息している大腸菌です。
原性大腸菌O−157による食中毒はいつ頃から起きたのでしょうか。
答 病原性大腸菌による食中毒が何時頃から発生したのかははっきりしませんが、病昭和53年にアメリカでハンバーガーを原因とする集団下痢が発生し、病原性大腸菌O−157が初めて検出されました。
問 原因は何でしょうか。
答 前述したハンバーガーなどの食肉を含め動物の糞便による汚染を受けた食品は全て原因となります。また、井戸水や受水槽などの飲料水も糞便で汚染されれば原因となります。まだ記憶に新しい平成2年に埼玉県浦和市の幼稚園で死者2名を出した事件は井戸水に汚水が混入したための集団発生でした。
問 感染すると、どんな症状が現れますか。
答 激しい腹痛と大量の鮮血を伴う下痢が主な症状です。潜伏期間は4〜9日
(平均5.7日)とされていますから、感染してから4〜5日は何の症状も出ないので、食中毒の原因食品を特定するのが困難な場合もあります。
問 死者が出るほど恐ろしい食中毒なのですか。
答 通常、健康な人が前述の食中毒症状を発症しても1週間くらいで自然に治ってしまいます。しかし、体力の無い老人や乳幼児が感染した場合は発病後3日〜2週間で腎臓機能が低下する溶血性尿毒症症候群(HUS)を併発し、命にかかわるような状態になりかねません。
問 治療方法は確立されているのでしょうか。
答 鮮血を伴う激しい下痢を症状を引き起こすのは、病原性大腸菌O−157の作り出すベロ毒(細菌性毒素)によるものですが、現在、この毒素に対する特効薬はなく、重症になるのを防ぐ手だてはありません。通常は対処療法や抗菌剤などの投与により菌の増殖を押さえるくらいです。
問 感染防止の手だては何でしょうか。
答 どんな食中毒も予防策をとることが一番重要です。
@ 井戸水や受水を使用している場合は汚水の汚物、汚水の流入に注意し、衛生管理を徹底する。
A 食品に食中毒菌をつけないよう食器、手指の洗浄消毒はこまめに行う。
(特に生肉を乗せたような食器に他の食品を乗せないように注意)
B 食品を十分に加熱し、食中毒菌を殺す。病原性大腸菌O−157は75度以上で1分以上加熱すれば死滅します。
(特にハンバーグなど食品は表面は焼けていても中が生の状態が多々あるので中まで十分に加熱する。)
C 食品は手早く調理し、調理後は長時間放置しないで早めに食べる。
D 調理した食品を保存する場合は、5度以下の冷蔵又は冷凍庫に保存し、食中毒菌を増殖させない。
(冷凍にしても病原性大腸菌O−157は死にませんから、解凍後は加熱する。)
E ペットの糞便やオムツなどは衛生的に処理し、処理後は必ず手指の洗浄消毒を行う。
他にも注意することは幾らでもありますが、週刊誌の一部には病原性大腸菌O−157を伝染病と誤解させたり、食中毒の末期症状のみに偏った記事も見受けられます。しかし、最低限@〜Eまでの事項を厳守していただければ何も恐れることはありません。


下痢・消化不良の漢方薬

毎日暑い日が続きますが、この高温多湿の時期には食中毒や食あたりによる下痢や消化不良が多発するのは今も昔も変わりがありません。今回は食あたりや食中毒による下痢や消化不良に用いる漢方薬をご紹介します。
問 食中毒のような場合の下痢でも漢方薬が用いられますか。
答 食中毒のように細菌が原因による下痢には現代医学の化学療法剤、抗菌剤などの医薬品は必要不可欠です。しかし、漢方薬を併用することにより早期に回復に向かわせる事が可能ですし、潰瘍性の腸炎など現代医学では非常に治りにくい疾患でも、適当な漢方さえ選択できれば必ず良くなると思います。
また、下痢、消化不良などの症状が見られれば、漢方では潰瘍性腸炎であれ、細菌性腸炎であれ、それらの原因によって漢方薬を区別しません。
問 では、どんな漢方薬が実際に用いられるのでしょうか。
答 下痢や消化不良に用いられる代表的な漢方薬を幾つかご紹介しましょう。 
◎半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)
お腹がゴロゴロ鳴り、ガスがよく出て下痢する。時に吐いたり、吐き気をもよおす。
◎五苓散(ゴレイサン)
下痢又は嘔吐があり、のどが渇き、汗が出やすいが小便の出が悪い。二日酔いやこどもの自家中毒によく用いる。
◎人参湯(ニンジントウ) 顔色が悪く、やせ型の人で胃がもたれ普段から軟便がちな人
◎甘草瀉心湯(カンゾウシャシントウ)
お腹がゴロゴロ鳴り、下痢が激しい。不眠やイライラなどの神経症がみられる。
◎真武湯(シンブトウ)
普段から歩いていると立ちくらみやめまいがあり、疲れやすく手足が冷える方の下痢など。
この他にも紹介しきれない漢方薬もありますが、服用される場合は漢方薬局等で体質にあった漢方薬をんで下さい。


鬱(うつ)病の漢方薬

「問」 鬱病に用いる漢方薬があるのですか。
「答」 鬱病の治療は憂鬱感を取り除き正常な生活リズムを取り戻すことが肝心です。また、鬱病は自殺を企てる事があり注意が必要な病気です。重症な場合は専門病院の十分な監視の本で治療しなければならないでしょう。しかし、自宅で治療が可能な方でしたら、新薬と漢方との併用や状況によって両者を使い分けたり、漢方での治療可能だと思います。
「問」 では、どんな場合に漢方薬が有効でしょう。
「答」 抗鬱薬や抗精神薬などは肝臓障害をきたす場合があり、その予防の意味で漢方薬を併用する場合や仮面鬱病と呼ばれていて、本人に自覚症状がなく、不眠、易疲労、体のだるさ、食欲不振、吐き気、肩こり、動悸、息切れ、胃の痛み、便秘等さまざまな身体的症状が現れる場合に漢方薬は効果的です。
「問」 どんな漢方薬が鬱病に有効なのですか。
「答」 代表的な漢方薬をいくつかあげましょう。

◎甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ)
理由もなく悲しんだり怒ったりして感情の起伏が激しく、なまあくびが多い人。

◎柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ)
横っ腹が何となく重苦しく、クヨクヨしたり、動悸が激しく、気分が沈みがちになるような神経症状や夢が多くて熟睡できない、便秘を訴えるような人

◎加味逍遥散(カミショウヨウサン)
更年期障害などにも用いられる薬方です。背中が急に暑くなった後に寒気がしたり(カースー病)、不眠等の不定愁訴が多い人。

◎桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)
前述の柴胡加竜骨牡蛎湯とは体質が異なり、体力が無く、便秘などの症状はないが、代わりにのぼせやすい、髪の毛が抜けやすいなどの症状がある人。

鬱病の治療は薬だけでなく、家族の理解、カウンセリング等が重要な位置を占める疾患です。漢方薬を服用される場合は十分にご相談下さい。


皮膚掻痒症の漢方薬

さしたる湿疹やジンマシンなどの病気でもないのに皮膚がかゆくてしようがない、そういう人が多々見受けられます。特にお年寄りに多いようで、かゆみの程度も軽く皮膚をかくだけでがまんできるものから眠れないくらい激しいかゆみ訴えるものまで様々です。今回はそんな皮膚掻痒症に用いる漢方薬をご紹介しましょう。
「問」 皮膚掻痒症の原因はなんでしょうか。
「答」 消化器疾患、前立腺障害、糖尿病、慢性腎炎、神経障害、嗜好品の摂取過多、更年期障害、血の道症などのホルモン異常などが考えられているようですが、どれが直接的な原因かは不明です。又、温熱刺激やアルコール飲料などによりかゆみが増加することが多々あります。
「問」 外見的には特に変化は異常は見られないのでしょうか。
「答」 外見的には皮膚がカサカサしている事以外はこれという明らかな異常は認められません。したがって、現代医学的には抗ヒスタミン剤や精神安定剤が処方されていますが、なかなか治らないようです。
「問」 どんな漢方薬が皮膚掻痒症に有効なのですか。
「答」 代表的な漢方薬をいくつかあげましょう。

◎温清飲(ウンセイイン)
皮膚がカサツき、皮膚の色が浅黒かったり渋紙色をしている方のかゆみに用いるが、慢性湿疹、皮膚炎などにも応用できる。

◎当帰飲子(トウキインシ)
特に老人性の皮膚掻痒症に良く効く漢方薬です。皮膚にはほとんど変化はなく、たまに粉を吹いたような皮膚状のときもあります。

◎白虎加人参湯(ビャッコカニンジントウ)
体力があり、喉が渇いて発汗が激しくかゆみが強いような方

◎桂枝麻黄各半湯(ケイシマオウカクハントウ)
大部分の場合が皮膚に何の異常もなく、かゆみだけを訴える。

皮膚掻痒症は、現在服用している薬の副作用でかゆみが起こっている場合もありますから注意がいります。漢方薬を服用される場合は医師、薬剤師等に十分にご相談下さい。


尿路不快感の漢方薬

病院の検査では泌尿器に異常が認められないのに頻尿や残尿感で困っている方は多いのではないでしょうか。今回はこの様な症状を訴える尿路不定愁訴の漢方療法についてお話しします。
「問」 尿路不定愁訴はどんな症状があらわれますか。
「答」 尿路に関係する不快感として尿意が頻繁にあったり、排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿などが一般的です。
「問」 原因は何でしょうか?
「答」 尿路不定愁訴の原因としては細菌感染によるものが最も多いようですが、一方泌尿器にはまったく変化がないのに起こる場合もあります。後者は神経的な原因と考えられています。
「問」 漢方での治療はどうでしょうか。
「答」 細菌感染が原因の前者は漢方医学よりも現代医学がはるかに有利ですが、
神経的な原因である後者では適合する漢方薬が数多くあり、実際によく治ります。個々に適合した漢方薬さえ選択すれば、多くは2〜4週間でかなりの効果が認められ、なかなか完治しないものでも3カ月から半年ほどで大半が治癒します。
「問」 では、どんな漢方薬が尿路不定愁訴に効果的ですか。
「答」 よく用いられる漢方薬をご紹介しましょう。

◎猪苓湯(チョレイトウ)
喉が渇いて水分をよくとるが尿の出が悪く、血尿が出るような人

◎猪苓湯合四物湯(チョレイトウゴウシモツトウ)
前者の猪苓湯の症状に加えて、冷え症や肌の荒れなどの症状がある人

◎八味丸(ハチミガン)
のどが渇き、夜間にトイレによく行くが小便がスッキリ出ない方

◎苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)
腰からしたがひどく冷え、色の薄い尿が頻繁に出る方

◎清心蓮子飲(セイシンレンシイン)
排尿痛、残尿感などがあり、胃腸障害があって神経質タイプの方

ご紹介した漢方薬に該当する方は、ご自身の症状をもう一度、医師、薬剤師に充分にご相談してから服用して下さい。


インフルエンザの漢方薬

昨年の暮れからホンコンA型インフルエンザが猛威を奮い、体調をくずしている人がたくさん出ています。年が明けてもインフルエンザの猛威は収まらず、新聞紙上では死者まで出たと書かれる始末です。今月はインフルエンザに対処する漢方薬を症状別にご紹介します。
問 頭が痛くて熱があり、寒気がするような場合は何が良いですか。
答 頭痛、発熱、悪寒があれば、漢方で言う風邪のひきはじめの症状に当たります。この時に治療しておけば比較的早く回復可能です。 先ず体に汗をかく場合は桂枝湯(ケイシトウ)、無汗の場合は葛根湯(カッコントウ)麻黄湯(マオウトウ)などが基本の処方となります。特に葛根湯は首筋が凝る場合、麻黄湯は関節など節々が痛むような場合に用います。
問 鼻水やくしゃみがひどい場合にはどうですか。
答 くしゃみ・鼻水の風邪には小青竜湯(ショウセイリュウトウ)や麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)などが考えられます。頭痛、発熱、悪寒があって咳と薄い水のようなタンが出る場合も良いでしょう。後者はお年寄りの風邪に特に良いと思います。
問 咳がひどいときはどうでしょうか。
答 咳が激しくタンがほとんど出なく、喉が乾くようならば麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)、また込み上げてくるような激しい咳がありタンが切れにくいようでしたら麦門冬湯(バクモントウトウ)が適当だと思います。
問 どうも体がだるく、微熱があり、食欲がなく、スッキリしないような時は何が良いですか。
答 これは風邪の中期、後期の症状です。鏡に向かって舌を出し、舌が白くなっている場合は小柴胡湯(ショウサイコトウ)などの柴胡剤と呼ばれる漢方薬が良いです。また自然に汗ばんで微熱や寒気、頭痛がなかなか取れなかったり腹痛、吐き気、食欲不振などを伴う胃腸に来た風邪には柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)が良いでしょう。喉が痛くて腫れているような場合には桔梗石膏を一緒に服用するのも良いと思います。
漢方は症状によって薬が決まります。また漢方薬は煎じて飲むのが一番効果的ですが、錠剤や顆粒など手軽に飲めるような形で薬局で販売されてるものもあります。風邪、インフルエンザは体力のある引き始めに治すことが肝腎です。そして薬だけに頼らず安静にし、体を保温、栄養の補給を忘れないで下さい。


神経症・ヒステリーの漢方

今回は神経症やヒステリー等に用いられる漢方薬についてお話いたします。
神経症、ヒステリーは現代医学的に見ればかなり症状の異なった疾患ですが漢方で治療するならば両者を特に区別することはなく、漢方薬も類似の処方を用いる場合が多いです。
問 神経症、ヒステリーなどは漢方治療の対象となるのでしょうか。
答 実際のところ、臨床経験、治験例等をみてみると、漢方で治療した場合、神経症は比較的治療しやすいのに対して、ヒステリーは難しい場合が多いようです。しかし、軽症の場合はかなり良い成績をあげているようです。
問 漢方薬で神経症、ヒステリーを治療するにはどれくらいの服用期間が必要でしょうか。
答 一概にはこれくらい服用すれば良いとは言えませんが、一般的に言えばおよそ3カ月前後から半年年程度で効果出る例が多いです。
特に漢方薬で治療すれば、めまい、のぼせ、脱毛、動悸、冷えのぼせ、ヒステリー球(のどに物が詰まった様な感じ)、突き上げ感などの症状が好転、治癒する事は比較的簡単だと思います。
問 具体的な漢方薬を教えて下さい。
答 神経症、ヒステリーに用いられる漢方薬はたくさんありますが、代表的な漢方薬をいくつかご紹介しましょう。

■ 桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ) 様々な神経症状があり、のぼせや動悸、脱毛がひどいような方

■ 半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ) 体力的に平均以下の人で、顔色が悪く気分がふさぎがちで、喉に何かが詰まっている(ヒステリー球)様な気がする方。

■ 加味逍遥散(カミショウヨウサン) 体力がなく疲労しがちで、不眠、精神不安、イライラなどの精神症状がある。特に女性の更年期障害などで、背中が急に熱くなり、その後汗が出て寒気がし、不定愁訴がやたらに多い場合に良く用いる。

■ 甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ) 理由もなく嘆き悲しんだり泣き出したりし、なまあくびが多い。女性や子供などで、精神興奮(ヒステリー症状)が激しく、不安、不眠、ひきつけなどに用いる。

■ 柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトう) 体力がなくて顔色が悪く、つねに疲労倦怠感があり、冷え症、貧血気味、動悸息切れ、不眠などを伴う更年期障害、血の道症、神経症、不眠症など幅広く用いられる処方。

■ 柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ) 比較的体力があり、不眠、多夢、動悸、イライラ、些細なことが気になるなどの神経症状が強く、便秘の傾向があるような方。

■ 苓桂甘棗湯(リョウケイカンソウトウ) 下腹部から何かが突き上げて来てきて、苦しくてしょうがない様な場合の神経症、ヒステリーに用いる。

漢方薬は体格、体質、症状によって処方が異なり、誤った漢方薬を服用すれば治らないばかりか、症状が更に悪化する場合もあります。服用される場合は医院、薬局等で詳しくご相談になる事をお勧めします。


前立腺肥大の漢方

前立腺肥大は膀胱の出口を囲っている前立腺に良性の腫瘍ができ、尿道が圧迫されて排尿障害をおこす病気です。今回は前立腺肥大に用いられる漢方薬についてお話しましょう。
問 漢方薬は前立腺肥大に効果がありますか。
答 漢方による前立腺肥大の治療は名前だけは有名な八味地黄丸の独断場といっても過言ではありません。尿閉を起こしかけている様な場合でも八味地黄丸で良くなった症例が報告されていますし、そこまで進んでいない軽い物でしたら8割くらいは良くなると思います。もちろん漢方でダメな場合もありますから、何がなんでも漢方ではなく手術も必要でしよう。
問 服用期間はどのくらいです。
答 一概にはこれくらい服用すれば良いとは言えませんが、最低1カ月から3カ月は服用しないと本当の効果が現れないと思います。
問 具体的に前立腺肥大に用いる漢方薬には何がよいでしょうか。
答 前立腺肥大症に用いる漢方薬は先ほど述べた八味地黄丸が非常に良く用いられますが、他にもいくつかありますのでご紹介します。

■ 八味地黄丸(ハチミジオウガン) 下腹部が真綿のように柔らかく、のどが渇き、夜間に小便の回数が多くて小便の出が悪い様な方

■ 牛車腎気丸(ゴシャジンキガン) 八味地黄丸に牛膝と車前子という生薬が加わった漢方薬ですが、特にのどの渇きがひどく、手足が冷え、下半身に脱力感が感じられ疲れやすいような方

■ 猪苓湯(チョレイトウ) 小便の出が悪く、排尿痛や残尿感にのどの渇きが伴うような方に用います。

前立腺肥大症の方は大部分が八味地黄丸、牛車腎気丸の適応と思われます。しかし、服用される場合は素人判断で選ぶのではなく漢方薬局等でご相談になる事をお勧めします。


脳卒中後遺症の漢方薬

脳卒中は脳の血管が破れたり、詰まったりして意識障害、運動障害、言語障害などの後遺症を伴う病気です。今回は脳卒中の後遺症に用いられる漢方薬をご紹介しましょう。
問 脳卒中には、リハビリテーションが非常に有効だと聞きますが。
答 その通りです。特に脳卒中の発病後は、可能な限り早くリハビリを行う必要があると思います。発病後、2〜3カ月も寝たきりにしておけば、脳卒中による麻痺ではなく、寝たきりのために関節が固まったり、筋肉や骨が萎縮して歩けなくなるなどの各種機能障害が起きてきます。
問 では、漢方薬は脳卒中にどの程度効果があるのでしょうか。 
答 漢方薬にも、各種の麻痺や運動障害の回復を早める処方が幾つかあり、リハビリなどの方法がなかった太古の昔に、その処方を用い治療した記録が文献に残っています。
漢方薬による治療もリハビリと同じで早く始めれば始めるほど効果があがり、1年以上も経過したものは非常に回復が悪くなるようです。
問 具体的に脳卒中の後遺症に用いる漢方薬には何が良いでしょうか。
答 代表的な漢方薬をご紹介しましょう。

■ 続命湯(ゾクミョウトウ) 脳卒中に最も良く用いられる漢方薬で、運動麻痺や言語障害がある方

■ 桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ) 前述の続命湯よりも体力的に落ち込んでいて、寝汗等の発汗傾向のある方の半身不随、運動麻痺

■ 疎経活血湯(ソケイカッケツトウ) 腰より下肢にかけて運動麻痺があり、左側の麻痺がひどい。

■ 真武湯(シンブトウ)体力がなく、運動障害が少しあり、めまいや立ちくらみがひどい。

■ 苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)立ちくらみやめまいがあり、下肢の麻痺や運動障害があり、歩行がしっかりしない。

脳卒中後遺症で漢方療法を行う場合は、先程も述べたように早期に漢方薬を服用するのと並行してリハビリの実施も重要です。素人判断はせずに医師や薬剤師にご相談の上治療して下さい。


主婦湿疹の漢方薬

主婦湿疹は主婦・・というくらいですから女性に多い疾患です。一般的に20歳代の女性に多く、冬場の水仕事や掃除により悪化する場合が多いですが、冬季以外でも湿疹で悩んでいる方は多いようです。今回は主婦湿疹の漢方療法についてお話しましょう。
問 主婦湿疹の症状にはどんなものがありますか。
答 主婦湿疹の正式名称は進行性指掌角皮症と云い、手指の角質が増えて乾燥し、ひどくなるとひび割れて痛くなります。
問 原因はなんでしょうか。
答 卵巣の機能障害を原因としているものもありますが、詳細は不明のようです。
問 どのような治療法が行なわれていますか。
答 原因がはっきりしない為に対処療法や予防処置を施すのが現状で、サリチル酸、尿素、ステロイドなどの入った軟膏の塗布、予防として水仕事や掃除の回避などを行っています。
問 漢方薬での治療効果はどうでしょうか。
答 先ほどあげたサリチル酸、尿素、ステロイドなどの入った軟膏などの塗布でなかなか良くならず、再発を繰り返すような場合でも漢方薬では効果のある場合が多く報告されています。 中でも温経湯(ウンケイトウ)という薬は漢方の大家である故大塚敬節先生が主婦湿疹に用いて非常に良く効くと報告しているほどです。
問 漢方薬は内服ですが、塗り薬はないのですか。
答 ほとんどの漢方薬は内服として用いますが、外用薬として用いる漢方薬も
あります。
問 ではどんな漢方薬が主婦湿疹に効果的でしょうか。
答 それでは幾つかご紹介しましょう。

■ 温経湯(ウンケイトウ) 先ほどお話ししましたが、主婦湿疹に良く用いる漢方薬です。月経の異常があり、夜に手指がほてり、足が冷える。唇が渇いたり荒れる傾向がある方

■ 紫雲膏(シウンコウ) 漢方の外用薬で就寝前に患部に塗ると良いでしょう。ただこの薬は紫色をしていますので、手袋等をして寝ないと衣類に色が付いてしまいます。また人によってはサリチル酸軟膏の方が良い場合もありますから比較して使用して下さい。

■ 加味逍遥散(カミショウヨウサン) 気分がイライラし、背中が急にカーッと熱くなり、汗が出てたら、その後寒気がする。不眠などの神経症状が気になる方

■ 桂茯苓丸(ケイシブクリョウガン) 月経異常、肩こり、のぼせがあり、へその左斜め下1〜2センチを押すと痛みや不快感がある方。

主婦湿疹で漢方薬を飲む場合でも、水仕事等に注意し、寝る前の外用薬の塗布なども必要です。詳細については漢方に詳しい医師や薬剤師にご相談下さい。


小児虚弱体質の漢方薬

 家の中で遊ぶことが多くなった現代っ子。そのせいか疲れやすく、すぐに熱を出したり、お腹をこわす子供が増えているようです。今回は小児虚弱体質に用いる漢方薬をご紹介します。

問 小児虚弱体質とはどんな子供を指すのでしょうか。

答 虚弱体質という病名は現代医学にはありません。しかし、虚弱な子供はたくさんいます。実際には、すぐに熱を出し風邪をひきやすい、疲れやすい、食が細くやせている、頭痛や腹痛をすぐに訴える、下痢しやすいような子供を虚弱児、虚弱体質と呼びます。

問 虚弱体質の改善は可能なのでしょうか。
答 体質というのは親から受け継いだ遺伝的な要素が大きいですから、それを変えるのは遺伝子操作でもしなければ無理な話です。漢方でいう体質改善とは遺伝的体質に基づく体の不具合や病気の発生を改善することにより虚弱児の半健康状態を健康状態に導いてやることを目標としています。

問 では、どんな漢方薬が用いられますか。

答 小児虚弱体質の改善に用いる代表的な漢方薬をご紹介します。

■ 柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)
 食が細く疲れやすい、食事をすると頭部に汗をかく、神経質でイライラ等があり、寝付きが悪い、寝汗などの症状がある場合もある。

■ 小建中湯(ショウケンチュウトウ)
 血色が悪く、疲れやすい。腹痛や鼻血が頻繁にあり、すぐに下痢や便秘になる場合もある。

 服用期間等の詳細については漢方に詳しい医師や薬剤師にご相談下さい。



夏バテの漢方薬

 暑い日が続きますが体調はいかがでしょうか。つい冷たい飲み物の取り過ぎや食事もアッサリした物に偏りがち、そのうえエアコンの影響で体調を崩している人が多く見かけられます。今回は、夏バテで弱った胃腸にやさしく効く漢方薬をご紹介しましょう。
「問」 どんな漢方薬が夏バテの回復、食欲増進に効果的でしょうか。
「答」 夏バテで弱った体を回復させるには先ず休養が第一です。無理をせず弱った体を十分にいたわり、休ませてやることが最も重要でしょう。漢方薬を用いて夏バテで弱った体や胃腸を元気にするには次にあげるような漢方薬が効果的だと思います。

◎半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ) すぐにおなかがゴロゴロ鳴り、ガスがよく出て下痢しやすい。

◎平胃散(ヘイイサン) ガッチリした人で胃がもたれ、お腹が張って苦しい。

◎小建中湯(ショウケンチュウトウ) 顔色が悪く、疲れやすく、すぐに腹痛をおこす。

◎六君子湯(リックンシトウ) 顔色が悪く、食欲があっても食卓に向かうと食べられなくなる。

◎茯苓飲(ブクリョウイン) 胃がもたれてつかえ、食後に吐いてしまう。

◎人参湯(ニンジントウ) 顔色が悪く冷え症で、生ツバが良く出て胃腸の具合が悪い。

◎十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ) 病人や高齢者などで極度の疲労により食欲不振がある。

肝心なのは、体調が良くなったからといって無理をしたりすると、また元の状態に戻る可能性がありますから十分に気を付ける事です。服用される場合はご自身の症状と照らし合わせ、ご相談のうえ漢方薬をチョイスして下さい。


風邪の漢方療法

問 風邪の漢方療法を教えて下さい。
答 漢方では、風邪を急性の熱病として症状や体力の状態により薬を調合します。しかし薬は治癒の機転を与えるものであって、養生こそ体内の自然治癒力を補強し病気に打ち勝つポイントです。風邪の原因は疲労などからの体力の低下や寒さなどがあげられますので、体を暖かくし、栄養を十分にとり体力を付けることが第一の養生です。とくにタンパク質、ビタミン類は大切ですから、消化の良い豆腐、牛乳、卵、軟らかく煮た緑黄色野菜、くだものなどを取るようにして下さい。問 具体的にはどんな漢方薬を服用すれば良いですか?答 漢方薬としては症状別に次にあげるものをお勧めします。風邪の引き始めで頭痛、発熱、筋肉痛があるる人は葛根湯、鼻水が多く、うすい淡を伴う咳がある人は小青竜湯、風邪をこじらせて、胃腸の具合が悪く食欲のない人には柴胡桂枝湯、風邪をひいて激しいカラ咳や、喉がヒューヒューする気管支炎に麻杏甘石湯、淡が切れにくく、こみ上げるような強い咳には麦門冬湯、頭痛、発熱、寒気がして、節々が痛む場合には麻黄湯などまだこの他に処方はいくつかあります。
また、風邪の予防策として外出先から戻ったら、まず手を洗いうがいをすることがずいぶんと効果があるので是非やってみて下さい。


胃炎の漢方薬

日頃から「胃の具合が悪い」「食欲がない」と悩んでいる方の多いと思います。今回は胃炎に用いる漢方薬をご紹介しましょう。
問 胃炎はどんな症状が現れますか。
答 胃炎には急性と慢性の2種類がありますが、症状として急性胃炎の場合、激痛や吐き気、嘔吐を伴い、場合によっては吐血する事もあります。慢性胃炎の場合は、消化能力の低下により、食べた物が長時間胃の中に留まり、口臭、胃部不快感、ゲップ、下痢、痛み、悪心、食欲不振など様々な症状が現れます。また、胃部に自覚症状はなく、「疲れやすい」、「体重が減少する」といった全身症状のみが現れる場合もあります。
問 漢方では急性、慢性胃炎の治療に差があるのでしょうか。
答 激しい痛みを訴える場合を除いては、漢方では急性、慢性胃炎ともに用いる漢方薬に違いはありません。それどころか、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の場合でも、ほぼ同じ漢方薬を処方する事が多く見受けられます。
問 どのくらいの期間服用すれば効果が現れますか。
答 個々の症状によって少し異なりますが、一般的に言えば2週間位の服用で何らかの症状の改善が現れてくると思います。逆に2週間服用しても何の変化も内容でしたら漢方薬の選択が間違っていると言った方が良いかもしれません。
問 では、急性胃炎、慢性胃炎に用いる漢方薬を教えて下さい。
答 たくさんある中で頻繁に用いられる漢方薬ををご紹介しましょう。

◎半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ) 食欲がなく、お腹がゴロゴロ鳴り、ガスの排出が多く、吐き気や吐く事がある。

◎生姜瀉心湯(ショウキョウシャシントウ) お腹がゴロゴロ鳴り、胸焼け、ゲップ、呑酸が伴い、下痢の傾向がある。

◎甘草瀉心湯(カンゾウシャシントウ) お腹がゴロゴロ鳴り、下痢が激しく、不眠やイライラなどの神経症状がある。

◎平胃散(ヘイイサン) 食欲がなく、胃が張ってゲップ、胸焼けがあるが、痛みはあまりない。

◎安中散(アンチュウサン) 体力があまりなく、胃がもたれ、胸焼け、痛みがある。

◎人参湯(ニンジントウ) 血色が悪く、食欲がなく胃がもたれ、口の中が渇くか若しくは薄い唾がたくさんでる。

◎小建中湯(ショウケンチュウトウ) 血色が悪く、疲れやすく腹痛や鼻血を出すことがある。

◎六君子湯(リックンシトウ) 顔色が悪く、食欲がない。食欲があっても食卓に向かうと食べられない。

この他にも急性、慢性胃炎に用いる漢方薬はまだあります。詳しいことは医師、薬剤師にご相談のうえ服用して下さい。


咳(セキ)の漢方薬

最近、風邪をひいて熱や寒気はとれたものの、咳だけがいつまでも続いている方を見かけます。咳が激しいと不快になったり、苦しかったりするだけでなく、夜中の咳では睡眠不足で仕事に支障をきします。今回は気管支炎等の咳に用いる漢方薬をご紹介します。
問 ひどい咳が何日も続いていて、西洋薬でなかなか良くならない場合は漢方薬で治療すれば良くなるのでしょうか。
答 一概には言えませんが、西洋医学的に治療して難しい気管支炎は、漢方医学的に治療しても難しい事は変わりません。ただ、西洋医薬で良くならず、漢方薬で治療して良い結果が得られた症例は多々あります。
問 西洋医学的な治療法と漢方医学的な治療法の違いは何でしょうか。
答 西洋医学的な治療では症状に対して、抗アレルギー剤、去痰剤、鎮該剤、抗生物質、消炎酵素剤、気道粘液溶解剤などの薬物を使い分けるのに対し、漢方医学では病を治すのは病人自身の自然治癒力であり、この自然治癒力を阻害するような体の歪みや要因を取り除き、十分に病と対決できる生理機能を引き出すようにするのが漢方です。つまり、漢方薬は治療の脇役であり、主役は病人自身の自然治癒力、主役を助け、援助するのが漢方薬の使命と言うわけです。
問 では、咳や気管支炎にはどんな漢方薬を服用すれば良いのでしょうか。
答 咳や気管支炎に用いる漢方薬はたくさんありますが、その中から良く用いられる漢方薬をご紹介します。

◎麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ) 体力があり、熱はあっても無くてもよく、喉かかわいて汗がで、咳がひどい場合。

◎小青竜湯(ショウセイリュウトウ) アレルギー性鼻炎の漢方薬としても有名ですが、呼吸困難と咳がでて、水のような痰がでる場合。

◎柴朴湯(サイボクトウ) 風邪などをこじらせてしまい、喉が詰まるような感じがして痰が出る場合、舌が白くなっているのが一つの目安。

◎麦門湯(バクモントウトウ) 喉がいがらっぽく、粘りけのある切れにくい痰がでる。布団に入って温まるとひどく咳が出る場合。

◎苓甘姜味辛夏仁湯(リョウカンキョウミシンゲニントウ) 顔色が悪く疲れやすい、体力があまりなく、薄い痰を伴う軽い咳がでる場合。

◎竹葉石膏湯(チクヨウセッコウトウ) 粘りけのある痰を伴う激しい咳がでて、喉が非常に渇く場合。

◎清肺湯(セイハイトウ) 老人などでが咳や粘っこい痰が長期間にわたって続き、なかなか治らない場合。

◎麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ) 老人等で顔色が悪く、背中全体に寒気があり、気持ち悪く疲れやすい。非常に長期間にわたり咳がとれない場合。

この他にも咳、気管支炎に用いる漢方薬はまだありますが、服用される場合は必ず医師、薬剤師に相談のうえ自分の状態に適合した漢方薬を服用して下さい。


お屠蘇の話

今年も残すところ後わずかとなりましたが、世の中どうも先行き不安材料が多いようです。景気が悪いと人の気持ちも暗くなってしまいますが、こういう時こそ無理をせず楽天的に過ごすのが健康の秘訣かもしれませんね。今回は正月に健康と無病を願って飲むお屠蘇についてお話します。
問 お屠蘇も漢方薬の仲間なのですか?
答 お屠蘇はりっぱな漢方薬です。
正確には屠蘇散と呼び古代中国の名医である華陀(カダ)が屠蘇散を作ったと言われています。
原典には邪気をはらう香りの高い生薬4種類、体内の毒を下す生薬3種類、また体力を増す生薬1種類の合計8種類を細かく刻み酒につけておいて元旦に飲めば病気にならないと書いてあり、病気の予防薬として考え出されたものです。
『一人これを飲みぬれば一家に病なし。一家でこれを飲みぬれば一里に病なしと言う、めでたき効能はべれば年の初めに是を奉るにや』などとも言われています。問 お屠蘇の中味は何が入っているのですか?
答 時代により中味が少し異なるようですが、現在よく使われている屠蘇散の中味のは次ぎの通りです。
百朮(ビャクジュツ)
桂皮(ケイヒ)
桔梗(キキョウ)
山椒(サンショウ)
防風(ボウフウ)
陳皮(チンピ)
蒼朮(ソウジュツ)
の7つの生薬から構成されています。
問 なんだか変なものが入っていますね。
答 私たちがよく口にするものも幾つか有ります。
たとえば桂皮(ケイヒ)はシナモンのことですし、山椒(サンショウ)、陳皮(チンピ)は七味唐辛子などに入っているものです。
問 どういうふうにして作ればよいのですか?
答 作り方は先に述べた生薬を細かく刻み、袋にいれ、清酒とミリンをおのおの半量づつ混ぜたものを180〜360ml(1〜2合)作り、その中に浸して一晩くらい放置しておいて元旦の朝から飲んで下さい。
ミリンを入れるのは味をまろやかにし飲み易くするためで、好みで清酒、ミリンのみで作っても結構です。
お近くの薬局等で売っていますのでぜひ作ってみて下さい。


更年期障害と漢方薬

今回は更年期障害に対する漢方療法についてお話しいたします。
問 更年期障害とはどんな病気でしょうか。
答 更年期障害は閉経期の女性に特有の、多種多様な精神的並びに身体的な不快感を伴う疾患です。漢方では血の道も更年期障害と同様に扱います。
問 どんな症状が出るのでしょうか。
答 一般的には肩凝り、のぼせ、頭痛、めまい、耳鳴り、冷え症、イライラ等の不快な症状が現れますが、個人差が大きいです。
問 原因はなんですか。
答 更年期障害、血の道のとも自律神経の失調が深く関係しており、ホルモンのバランスの乱れや精神的なストレス、更年期障害では閉経に伴う不安や恐れ、社会環境や家庭環境の心理的なストレスなどが複雑に絡み合って起こるものと考えられます。
問 治療法はどんなものがありますか。
答 まず西洋医学、東洋医学を問わず大事なことはゆっくり睡眠を取り、精神的な安定を得ることが第一で、次に軽い運動や消化の良い食事を取り便通を整えることが大事です。
西洋医学の薬物治療ではホルモン剤、トランキライザー、抗うつ薬などを使用しますが、漢方では次の処方が更年期障害によく用いられます。

◎柴胡加竜骨牡蛎湯(サイコカリュウコツボレイトウ) みぞおちがつかえ、不眠、イライラなど神経症状が強く便秘がちな場合

◎加味逍遥散(カミショウヨウサン) 背中が急にカーッと熱くなった思ったら今度は寒気がするような場合

◎桂枝加竜骨牡蛎湯(ケイシカリュウコツボレイトウ) のぼせて汗が出やすく、不眠、イライラ等の神経症状がある場合

◎甘麦大棗湯(カンバクタイソウトウ) 理由も無く悲しんだり怒ったりして生あくびが出やすい場合

◎当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン) 顔色が悪く冷え症で立ちくらみがあり月経障害がある場合

他にも更年期障害に用いる漢方薬が多数有りますから薬局でご相談になって下さい。

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