「OXOさ〜ん。お待たせしました。診察室にどうぞ」
医師「胸を大きくしたいのですね。基本的にはシリコンバッグを入れて、異物にて胸を大きくします。生理食塩水入りバッグは安全と言われていますが、触った感じは少し硬い印象を受けるかもしれません。豊胸術はあくまで観賞用の乳房を作ります。でもコンプレックスを解消するには良い方法でしょう。」
貴方「破れたりすることはないのですか。」
医師「絶対にないとは言えません。生理食塩水入りバッグなら破れても中身は水ですから問題はありません。」
貴方「その他に問題はありませんか。」
医師「人工乳房は現在までトラブルの発生が多いのは事実です。よく動く胸の部分に異物を挿入し、それが軟らかくなくてはいけないのですから、なかなか理想的なものはありません。現時点でも完璧なものは存在はしません。ただ、女性にとって乳房が小さいのは大きなコンプレックスでしょう。これを解消するには現時点ではこの人工乳房しかありません。
さて、一番大きなトラブルは硬くなるということです。これはバッグという異物を入れたために体が反応を起こし、周囲に硬い膜を作るためです。この膜が縮んで、バッグに密着するようになると、変形を起こし、触っても硬くなります。これを防ぐために手術後のマッサージが必要になります。」
豊胸術は、現在ワキの部分を切って、胸の筋肉(大胸筋)の下にバッグを入れる方法が主流です。上述のカプセル拘縮が起こりにくいことなどから、この方法が多用されています。麻酔は全身麻酔で行われることが多いようですが、頑張れば局所麻酔でも何とか可能です。費用は40〜100万とクリニックによりばらつきがあります。私はシリコンのバッグがまだ良いものがないと思っており、現在この手術を行っていません。
さて、シリコンバッグの歴史は長く、様々なトラブルが起こり、これを改良すべく様々な製品が登場しました。しかし、内容物であるシリコンのゲルが漏れ出すと、硬いしこりを生じ、乳房の変形を起こします。また、異物を入れることにより生じた周囲の硬い膜が縮み、カプセル拘縮という非常につらい合併症を生じてきました。そして、シリコン自体による体の反応(自己免疫反応)がリューマチ様の症状を起こしたり、発ガン性の危険が報道されて、アメリカでは製造が中止され、また訴訟が起こりました。
ただ、実際には発ガン性はほぼ否定されましたが、そんなわけで現在でもシリコンバッグによる豊胸は否定的な意見があります。そこで脚光を浴びたのが生理食塩水入りバッグです。中身が水であるため漏れだしても問題がありません。ただ、カプセル拘縮というのは生じ得ますので、完璧ではありませんし、シリコンゲルと比べて触った感じがどうしても劣ります。最近技術が向上し、これらの問題点を少なくした製品が登場してきています。もう少ししたら、もっと安心して手術を受けられる日が来ることでしょう。