美容外科業界ってどうなってるの?・クリニックの選択は?

このページは私個人の私見です。同業者から見て、違うよということがあるかもしれません。あくまで個人の意見であることを承知していただければ幸いです。


以下に皆さんの知りたいであろうことを記載しました。長〜い内容です。イラストもありません。でも本当に興味のある方には、このくらいは十分知っていただきたいと思います。自分の体ですから、治療を受けるときには万全の知識を付けた上で受診して下さい。


美容外科とは一体何でしょう。私自身クリニックの院長として、美容外科診療に常日頃携わっていますが、最近、皮膚科の先生方も美容領域に進出、逆に形成外科医も手術をしない美容医療に進出し、その境界が非常に曖昧になっています。昔は美容外科の名前の通り、「美容整形」手術をするところが美容外科でしたが、レーザーやケミカルピーリングの出現により、お肌の問題、ある意味エステで施術されていた分野に医療が入り込み、総合的な美容医療全般を実施するようになりました。

さて、美容外科というと、雑誌の広告(正確にはクリニックで出しているビデオや書籍の広告。よ〜く見て下さい)がまず頭に浮かぶと思います。この宣伝というのが現在やや過剰になっていることは事実です。特に大手のチェーンは莫大な広告費をかけて宣伝しているようです。

では、宣伝をしているクリニックがダメなのか、という問題があります。美容外科は口コミの効きにくい領域です。二重にしたとか、鼻を高くしたとか他人にはあまり言えませんから、患者さんをある程度集めるためには宣伝も必要なのです。このあたりが難しいところです。医師とはいえ収入がないのでは困ります。医は仁術ですが、医師なら収入が沢山あるという古き良き時代ではないので、治療に対する報酬は必要です。

では、どんな美容外科・形成外科クリニックを受診すればいいのでしょうか。

当たり前のことですが、良心があるかどうかが肝心です。つまりあり得ない夢のようなことを謳っているところはお勧めできません。腫れないとか、その日からデートが可能とか、傷跡は残らないなどという広告を見たことはありませんか?まぶたなどは寝不足なだけでむくむのに、手術で全く腫れないということはあり得ません。正確には腫れが少ない、他人に気づかれにくい、傷跡が目立たないという表現が適切です。いくら腕が良くても、手術前の説明と経過が異なるようでは、皆さんも心配になると思います。美容外科の広告を見て「どうせ、うそでしょ。」と思っていませんか。

失敗に関しても、今まで数万人治療して一回もないなどということはあり得ません。万全を期しますが、ごくまれには失敗もあります。この頻度が高ければ腕が悪いということにはなりますが。私自身も、もちろん手術がうまくいかないことはあります。普通の病院で手術をして傷が治らないとか、そういうことはよく聞きますよね。美容外科は失敗が多いというわけではなく、通常の医療と同じ頻度です。むしろ少ないかもしれません。ことさら病気を扱うことではないために、うまくいかなかった場合の問題は大きくなるのです。たとえて言うなら、飛行機に乗るときにカウンターで「この飛行機は落ちませんか?」と聞くのはナンセンスです。でも飛行機も墜落することがあります。

実際には、失敗といわれるものの大半は、患者さんの希望と医師のイメージした結果の食い違いによるものです。これを防止するためには手術前の話し合いが非常に重要です。十分な話し合いをするクリニックを選択して下さい。手術に関する限界や、起こりうるトラブル、その他様々なことをきちんと話してくれる所がよいと思います。うまくいくから大丈夫という姿勢は感心しません。納得いかなければ別のクリニックを受診し、最終的に手術を決めても遅くはありません。

また、クリニックの宣伝広告費が高額になると、希望もしない手術を勧めて費用を高額にしたり、貴方にはこの方法は無理で、別の方法を勧めますと言って、高額の手術に方針を変えようとしたりといったことが起こります。多くの手術をこなすために、経験のないアルバイトの医師を雇うこともあります。説明を受ける医師と手術をする医師が違うといったことは美容外科ではトラブルの元です。希望に関する微妙なニュアンスが伝わりにくくなります。大きなクリニックで、医師が沢山いても問題ありませんが、少なくとも診察した医師は手術に立ち会うくらいは必要と思います。

さらには、手術・治療そのものは簡単なものもありますが、トラブルが起こった場合の対処が問題です。形成外科医は傷跡修正、やけどの治療を取得していることから、この点でも安心と思います。しかし、同じ形成外科医でも認定医などの必要な資格は修得している必要があります。学会所属だけでは参考になりません。

その他、広告表現で「当院院長開発の」、「OX式」なども参考にはならないことを付け加えておきます。あなたはそのクリニックでしか実施されていない、誰も認めていない治療を受けたいですか? でも広告は、他と差別化を図るためにこういう表現を使わざるを得ないことも認めますが。

以上、ご理解いただけましたか?