よく聞かれる質問です。私はもともと学生時代に形成外科でマイクロサージャリーというもの(切断した指をつないだり、ガンなどの手術で欠損した部分を作ったりする手術)に非常に興味があり、また形成外科の授業で今までの医学と異なったきれいにするという考え、造るということに驚きを感じました。形成外科はいかに綺麗に仕上げるか、自分の美的センス、幾何学的な造形力が問われます。3次元的に形をとらえ、それを人体で造っていくという純粋に神秘的な部分に強く惹かれたのです。それゆえ、学生時代から形成外科医局に出入りして、手術を見学したりマイクロサージャリーの練習(動物実験)に参加させてもらいました。
医者になって1〜2年は、あまり美容外科に惹かれてはいなかったのです。ケロイドや細胞の培養という創傷治癒(傷の治り方)の研究に熱意を注ぎ、形成外科の基礎学会という研究中心の学会ができた当初は色々と発表してきましたが、ふと行き着くところは傷に限らず患者さんを綺麗にすることだと感じ始めてきました。
この後日本形成外科学会の認定医(この時には美容外科的手術も少しかじっていました)となり、認定医を取得した医師のみが日本美容外科学会に入会できることを知りました。そんなにしっかりした学会なら是非入会しようと思ったのですが、会員の推薦2名がないと入会できないとのこと、周囲を探しても美容外科学会に入っている形成外科医が少なく、困ってしまいました。この時に医学博士を取得するときにお世話なった某大学形成外科の教授にお願いして、入会させていただいたのです。そして赴任した病院でスキンケア・レーザー治療を始めたところ、地方都市だというのに患者さんの希望は多く、こんなに皆さん真剣に悩んでいるんだと分かりました。また、患者さんが感謝していただく比率が通常の形成外科治療の時と全く同じで、密かに心の中にあった美容外科への後ろめたい気持ちが一気に溶け去りました。後はご高名な先生方の下で研修して、腕を磨きました。
その頃はまだ大学の形成外科で大きな手術をしたいという気持ちや研究をしたいという気持ちが強く、美容外科のみで仕事をしようとは考えていませんでした。しかし、丁度その時大学内で派閥争いがあり、形成外科はめちゃくちゃになってしまいました。私の将来もなくなったと宣告を受けました。「白い巨塔」の世界です。実はこういうことに巻き込まれるのは2回目で、これでもう嫌気がさしているところで、ある知り合いの人から現在の医療法人の支援話が出て、それなら開業してみようと思い立ったのです。地方都市からいきなり東京というのは、みんなが無謀だといいましたが、きちんとした診療・治療は地方でも東京でも変わらないという信念のもと、始めたのが現在勤務するクリニックです。
以上長々とお話ししましたが、これで私という人物が少しでもお分かり頂けましたでしょうか。