第1句集『揺曳』所収。
昭和61年の作。今はとてもそれどころではない激務の日々と思われるが、当時草むしりを始めたら3時間でも4時間でもと伺ったことがある。気分転換の土いじりではなさそう。 照りつける太陽、むせ返るような草いきれと土の匂いの中で、黙々と過ごす時間は至福とも思える忘我の時ではないだろうか。 一滴の汗が、ぽとりと落ちる。 この句は切字「けり」の響きが潔い。句の姿はそのまま作者の姿に繋がる。 『揺曳』の序で、故進藤一考先生が「表現に阿ることのない句をつくりたい」という、初学の頃の作者の言葉に触れておられるが、その志は今でも作品や結社誌「人」の選に窺える。 編集長の任にあった時も主宰を継承の後も、淡々と丁寧に物事に処する態度は一考師のいう「桑門のことが身に滲みている」故か。 日常のことをよく話される。いつもあっけらかんと明るい。話をしながら考えをまとめている。そんな風ではある。(井門三千代) |
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顔の汗草に落してひかりけり 佐藤麻績 |
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社団法人俳人協会 俳句文学館459号より |