俳句カレンダー鑑賞 1月



七人は重たからずや宝船  鷹羽狩行


 宝船の絵は当初、帆掛舟に米俵を積んだだけの素朴な絵であったが、徐々に金銀財宝や縁起物が持ち込まれるようになり、宝永年間にはついに七福神までご乗船の仕儀に−。
 立錐の余地もない宝船の絵を眺めながら、「七人は重たからずや」と呟いて微苦笑している作者の表情が見えるようである。「や」は反語の終助詞であるが、切字として詠嘆の機能も果たしている。
 元来、宝船の絵は節分の夜に枕の下に敷き、見た夢で吉凶を占って、悪夢の場合は川に流したと伝えられている。
 その後、次第に夢占や厄払いの要素は薄れ、元日の夜の枕に敷いて良い初夢を願うだけのものになった。その風習も今日ではほとんど廃れてしまったので、作者が実際に敷いて寝られたかどうか定かでないが、さて夢の首尾は?
  初夢をさしさはりなきところまで  狩行
 肝心のところで肩透かしを食わす心憎さ−。
 熟練の軽妙・自在な作品が増えた句集『十五峯』所収。(大西素之)

 社団法人俳人協会 俳句文学館453号より

■戻る■