平成7年作。第16回詩歌文学館賞を受賞した、氏の第5句集『忘年』の代表作の一つ。作者は永年津軽の五所川原に腰を据えて、風土俳句を作り続けて熄まないが、この句にも津軽の月が照り、風が吹き、土の匂いがしてならない。 盆踊は念仏踊から出て、室町末期から民衆娯楽として発達したが、その底には今も、先祖の霊を迎え慰める宗教的な意義が籠められており、津軽の地では、今でもそのことが濃い。 「会ひたくて」とは、さまざまな出会いが希われる。普段会えぬ友達、都会へ働きに行っている友、子供を連れた里帰りの友など。あるいは憧れの人、出稼ぎの人など。殊にも地上に戻った親しい精霊に会える楽しみ。夜が更けるに従って村の踊りの輪は次第に拡がってゆく。 跋で作者は、「私の俳句の主題は一と言でいえば『平和』である」という。天地人を一体となしたこの句は、平和を希う作者の自在な境地でもある。 (北島大果) |
社団法人俳人協会 俳句文学館400号より |