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人は何気ない日常のベールの下に広大な思い出世界を持っているものだが、作者の思い出の中で占める皆吉爽雨の存在は大きい。 爽雨との出会いは、女学校の英語教師、加来金鈴手を通している。両氏の秘蔵っ子として俳句一途の人生を歩んで来た。 作者は山口県周南市にある徳応寺の坊守である。 この句は、その皆吉爽雨、加来金鈴子の師弟愛を通した思い出を旅の中で詠んだもの。鉄幹の血をひく、今は亡き夫君(寺院住職)の後押しがあっての旅であった。 夏蓬は逞しい姿と濃い緑、そして強い香を持つ。 夏蓬を季語としたことから師を慕う畏敬の情が伝わって来ると共に作者の草いきれするような青春の日々への愛惜の念も伝わって来一る。「旅」を重ねているところに師系のつながりも表出されているのではないだろうか。 この句は第二句集『白毫』所載の昭和四十四年の作である。 (川口尚子) |
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旅の師を旅して追ひぬ夏蓬 赤松寰q |
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社団法人俳人協会 俳句文学館398号より |