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なんと大らかな句であろう。一読、心が癒されるような句である。 一口に昌冒えば、これが最初の感想であり、結論でもある。しかし、これでは鑑賞にならないので、部分ごとに味わってゆきたい。 まず「いつの世も」は、昔の世も、今の世も、のちの世も、であり、〈誰しもそう思うのだ〉という表現の含みがある。 「大空」は、広辞苑に〈広大な天。そら〉と出ているが、この句の空は、それだけではない。曇天や雨天ではなく、日本晴に近い青々とした空である。 「たヽへ」は、〈嗚呼、素晴らしい空!〉とほめている。 「春はじめ」は、早春の、今から本格的な春になろうとする期待の、いきいきとした季語。 作者はかねてから、季語の重みを説いてこられた方であり、この句の場合も、季語との真摯な対決による選択が「春はじめ」を生んだのだ。 それは、作者の美意識が掬いあげた、ひらめきによる季語なのである。 (橋本草郎) | |
いつの世も大空たヽへ春はじめ 神尾久美子 |
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社団法人俳人協会 俳句文学館394号より |