俳句カレンダー鑑賞 2月



 なんと大らかな句であろう。一読、心が癒されるような句である。
 一口に昌冒えば、これが最初の感想であり、結論でもある。しかし、これでは鑑賞にならないので、部分ごとに味わってゆきたい。
 まず「いつの世も」は、昔の世も、今の世も、のちの世も、であり、〈誰しもそう思うのだ〉という表現の含みがある。
 「大空」は、広辞苑に〈広大な天。そら〉と出ているが、この句の空は、それだけではない。曇天や雨天ではなく、日本晴に近い青々とした空である。
 「たヽへ」は、〈嗚呼、素晴らしい空!〉とほめている。
 「春はじめ」は、早春の、今から本格的な春になろうとする期待の、いきいきとした季語。
 作者はかねてから、季語の重みを説いてこられた方であり、この句の場合も、季語との真摯な対決による選択が「春はじめ」を生んだのだ。
 それは、作者の美意識が掬いあげた、ひらめきによる季語なのである。
(橋本草郎)
いつの世も大空たヽへ春はじめ  神尾久美子
 社団法人俳人協会 俳句文学館394号より

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