手毬唄を詠んだ著名な句に次のようなものがある。 〈手鞠唄かなしきことをうつくしく 虚子〉〈手鞠唄ここのつ十はさびしけれ 登四郎〉いずれも手鞠唄の哀愁を帯びた独特の歌詞・旋律を見事に俳句のしらべにのせた作品である。 掲句は、これらの句の抒情性を踏まえながら、さらに手鞠唄の本質を描出した作品といえよう。 作者は、第五句集『五行』以後『十三星』まで刊行句集のそれぞれに、言わば背番号を付したタイトルを付けてきている。この点について詩人・大岡信は、「作者は既刊句集の題名を毎回この流儀でつけてきた。整った序列が好きな人なのだろう」(『朝日新聞』一九九九年十一月十六日付「折々のうた」)と記している。俳句作品はもとより句集名においても美しさが追求されているのである。 掲句も、その一貫した美学に裏打ちされている。 a音とu音のリフレインの生み出すリズムに注目して音読して欲しい。古き良き時代の手鞠唄が聞こえてくるに違いない。句集『十三星』所収。 (西山春文) |
社団法人俳人協会 俳句文学館393号より |