どんだけ君



下の廊下…花崗岩の岩壁の間に激流が流れ、下流からS字峡、十字峡、白竜峡に分けられる。S字峡はSの字のごとく、
両側に岩壁が複雑に入り組み、激流が左右にぶつかり、飛沫を上げることから名付けられている。十字峡は原始林に覆われ、
岩壁を割って左岸から剣沢、右岸から棒小屋沢が同じ場所に合流する。
白竜峡は花崗岩の白壁の岩壁が連続し、健脚な人でないと踏み入れられない秘境となっている。
周辺には奥鐘釣山西壁、黒部別山東壁、丸山東壁などの500mを越える巨大岩壁がある。




山行記


日程・コース


    2007年 ルート
<9月15日(土)> 前夜 川越発夜行バス⇒富山(JR)⇒滑川(富山地鉄)⇒宇奈月温泉(トロッコ電車)⇒欅平 9:50 → 10:20 水平歩道合流 10:40 → 15:00 阿曾原小屋(泊)
<9月16日(日)> 阿曾原小屋 6:05 → 8:50 十字峡 → 9:45 白竜峡付近 → 10:10 黒部別山谷出合(雪渓通過) → 12:30 内蔵助谷出合 → 13:30 黒部ダム → 14:00 トローリーバス乗り場 (トローリーバス) ⇒ 扇沢 (バス) ⇒ 大町温泉 旅館叶屋(泊)
<9月17日(月)> 大町温泉 (タクシー) ⇒ 大町駅 (JR) ⇒ 松本 (そば屋・こばやし) ⇒ 特急あずさで帰還


山行記 初日


◆「Myとっても行ってみたいリスト」 ベスト10には入る下の廊下。昨年の知床、今年8月の雲ノ平を秘境秘境とわめいたが、黒部峡谷ほど秘境の名に相応しい場所はない。
 世界一と言われる豪雪地帯、おまけに深いV字谷で太陽光線が短い時間しか届かず、そのせいで前年の雪がなかなか融けず、通行できるのは次の雪が降る直
 前の9月、10月のみ。年によっては全く通行できない事もあるという。深い谷を構成する絶壁には岩をくりぬいた歩道が設けられてはいるが、幅が50cmほどしかな
 い場所もあり、過去何人もの人が足を踏み外し不運にも黒部のモクズとなったという。


◆今回も前夜、川越からの夜行バスに乗り、富山駅に6:00に到着したあと、JRに乗って滑川に向かう。ここで前夜から泊まりで来ているK隊長とO氏に合流する予定。
 滑川駅で降りたら電鉄の滑川駅はすぐに分かるかと思ったら、全然わからへん。駅員に聞くと地下道をくぐって反対側に行って下さいという。言われたとおり地下道
 (これもわかりずらい)をくぐったが、案内板のあの字もなく、数分あたりを見回してもトイレのような建物しかない。「あり〜??おっかしいなあ」と思って半信半疑で
 その建物に近づくと、なんとそれが地鉄の滑川駅だった(どんだけ〜!)。ホームにはK隊長とO氏がザックを背にホームに座っていた。

 今日も暑い!遠くに「岩と雪の殿堂」剣岳が逆光に浮かんでいる。




黒部峡谷鉄道



宇奈月温泉でトロッコ列車に乗り換える。ここから1時間列車に揺られ欅平(けやきだいら)に向かう。手に持っているのは缶ビール?!おい、おまえ、これから怖いとこ歩くんだろうが! K隊長(右)とO氏。さっそく宴会?が始まる。列車が到着するまでに酔いが覚めればいいもんね。(結局RIKIは覚めなかった)。気分はすっかりただの観光客。 列車が走り出す。外は黒部川と宇奈月温泉。まだまだのどかな風景であった。天気予報はあまり良くなかったが、今日はまたまたピーカン。自分の晴れ男ぶりに我ながら感心。



対向列車とすれ違い。このトロッコ列車、黒部川の峡谷をうまく縫うように作られている。トンネルも「根性で掘った!」というかんじ。当初はダムなどの工事目的だったらしいが、それにしても建設は大変だっただろう。 9:30終点の欅平に到着。ここまでで缶ビール2本をあけてしまう。さめるどころか、酔いがすっかりまわってしまいザックが重い!
実はここからいきなり本日一番の急斜面を30分ほど這い上がるのである。あーバカバカ、俺のバカ!



駅を出るなりいきなりの急斜面。観光モードからイッキに阿鼻叫喚モードに。10分もたたないうちに額から汗がしたたり落ちる。
晴れるのはいいが今日はメチャ蒸している。酔いで気持ちよくフラフラしてた頭が今度はクラクラしてくる。30分ほど頑張って
ようやく水平歩道との合流点に到着した時にはすでにウェアは汗でぐっしょり。アルコールはすっかり身体の中から抜けていた。´▽`




水平歩道


水平歩道に到着して東側を見上げると後立山連峰が見えた。水平歩道に入るとしばらくはアップダウンが少ない登山道が続く(ずーっと) 途中に2ヵ所に短いトンネルが岩盤に掘られている。このずっと先の志合谷に150mの長いトンネルがある。 水平歩道は岩盤を削って延々と作られた道。こんな幅の道がずっと続く。ひとたび雨が降り出せば水がこの岩壁を伝わってきて、全ルートが長大な滝と化す。



<お勉強>´▽`

水平歩道とは、黒部川の欅平から仙人谷までの約13kmの歩行者専用道(登山道)である。道は黒部渓谷の左岸の絶壁を「コ」の字にくりぬいて作られており、70cmから100cm程の幅で標高約1000mの等高線に沿って水平に伸びる。水平歩道は、黒部川の水力開発を目的として1920(大正9)年に東洋アルミナム会社によって開かれた。水平歩道は黒部川第三発電所の建設資材の運搬に利用されたが、当時は今ほど道が整備されておらず、重荷を背負った歩荷の転落事故が相次いだ。水平歩道は、歩行に困難を伴うが、その難易度は日電歩道よりも少なく、一応一般向けコースとされている。しかし、一歩足を踏み外すと数百メートルの絶壁の下に転落し、救出も収容も困難を極める難コースであり、実際に毎年、数件の転落事故が起きている。



という水平歩道↓ こわいね〜 ´▽`

       歩道が確認できるかな?


◆水平歩道上のK隊長とO氏。
歩道にはワイヤー(太い針金)が設置されている。



              
黒部のモクズポイント1




志合谷



やがて水平歩道は深い谷をえぐる様になる。志合谷だ。対岸は奥鐘山の大岩壁が対峙する。
尚この大岩壁はクライミングで有名な場所で「黒部の怪人」と呼ばれている。


志合谷に掘られた150mの長いトンネル。トンネルというよりはまるで洞窟。トンネルの中は真っ暗で、おまけに途中でカーブしているために、懐中電灯が無いと通過できない。中は水が流れていて、飲んでみたらこれがメチャウマ。 トンネルを出て志合谷を振り返る。この沢の後ろ側に長ーいトンネルが掘られている。確かにこの沢は常に落石が発生しているようだ。1938年にこの場所で泡雪崩が発生し84名が亡くなった。



<お勉強>´▽`

泡雪崩(ほうなだれ)とは、通常の雪崩と違って、新雪が斜面を落ちていく際に、その中に含まれている空気を極限まで圧縮し強烈な爆発力を生み出す。そのエネルギーは時速3600km(!!!)とも言われている。1938年(昭和13年)12月27日志合谷で発生した泡雪崩では、黒部川仙人ダム建設に伴うトンネル工事の作業員が宿泊していた(雪崩対策のための)鉄筋コンクリート製宿舎の3階および4階部分が、そっくりそのまま尾根上のひと山を飛び越え、川の対岸の奥鐘山の岩壁まで600mを吹き飛び(!!!)、84人の死者(うち47人は遺体の確認ができなかった)を出している。なお、一連の黒部川での電源開発工事では、出し平で34人、竹原谷で21人の泡雪崩による死者を出している。

鉄筋コンクリートの建物が600m吹き飛ぶ泡雪崩(ほうなだれ)っていったい…



水平歩道は続く



ここが大太鼓付近。道が木材で補強してある。高所恐怖症の人は気が狂うだろう。
びっくりしたのはしばらく行って通過した所を振り返った時(右の写真)。「どんだけ〜!」
黒部のモクズポイント2




阿曾原小屋に到着


水平歩道を進むこと4時間。ようやく今日の宿泊場所、阿曾原小屋が見えてきた。雪崩を避けるため毎年プレハブで建替えるらしい。写真の場所からしばらく行くと、水平歩道が崩壊している所があり大きく迂回させられる。これでまた大汗をかいてしまう。ぐっしょり。早くビール飲みたいぜ! 阿曾原小屋は温泉がある。「ここの温泉は入らなきゃ損」らしい。確かにこれまでの疲れがイッキに吹き飛ぶ極楽温泉。ほのかな硫黄泉の完全かけ流し!トレッカーの特権じゃあ!




◆阿曽原小屋に到着してビール、温泉入ってまたビール、メシ食って酒盛り。苦労して歩いてきたトレッカーだけが味わえる至福のひと時。
 だがこの日は湿度が結構高く、速乾性のウェアも汗でぐっしょり。なかなか乾かず気持ちわりー。登山ウェアの着替えは持ってきておら
 ず後悔する。(ひとまず下山後に着る予定のウェアに着替えて寝た)
 本日は空いていて、宿泊客は20名ほどであった。ご主人によると紅葉の時期は100名単位での予約が入っているという。どんだけー!と
 思いながら9時頃には寝た



二日目に続く