薬師岳山頂よりのご来光






山行記


日程・コース


    2007年
<8月24日(金)> 前夜 川越発夜行バス→富山(電車とバス)→折立登山口 8:30 → 13:10 太郎平小屋 13:45 → 16:00 薬師岳小屋(泊)
<8月25日(土)> 薬師岳小屋 4:15 → 5:00 薬師岳頂上(ご来光) 5:30 → 6:10 薬師岳小屋 6:45 → 8:30 太郎平小屋 8:50 → 11:30 薬師沢小屋 12:40 → 15:00 雲ノ平・木道末端 15:20 → 15:40 アラスカ庭園 15:50 → 16:50 雲ノ平山荘(泊)
<8月26日(日)> 雲ノ平山荘 5:00 → 7:00 祖父岳 7:40 → 8:45 ワリモ北分岐 8:50 → 9:30 水晶小屋 9:50 → 10:30 水晶岳頂上 10:50 → 11:30 水晶小屋 11:50 → 12:30 ワリモ北分岐 13:00 → 14:00 鷲羽岳山頂 14:10 → 15:05 三俣山荘 15:20 → 17:45 双六小屋(泊)
<8月27日(月)> 双六小屋 5:30 → 12:00 新穂高温泉(下山) このあとバスで平湯(立寄り湯)→松本→JR特急あずさで帰還
4日TTL累積標高  登り +3813m 下り -4081m  こんなに登り下りしたんかよ〜



山行記 初日


折立登山口 8:30 → 13:10 太郎平小屋 13:45 → 16:00 薬師岳小屋(泊)



◆5月に大阪から東京に転勤。夜のすごし方がイッキにつまらなくなる。それだけ大阪では飲んだくれ堕落生活。おかげで山も
 昨年9月の知床・羅臼岳以来まともに登ってない。すっかり足の筋肉は衰え、心肺機能も地下鉄の階段で息が上がるほどの情けなさ。
 「でも夏は北アルプス!」というわけで昔から憧れていた雲ノ平、水晶岳の北アルプス最深部の縦走を思い立ったのはいいが、
 高い標高での長期縦走に出発まで不安の種はつきないのであった…。


◆トレッカー憧れの地「雲ノ平」 雲上の楽園、日本最後の秘境、などと色々言われる。2500mを超える標高に、これほどまでの面積を
 有する高原は日本では皆無。どこからも長大なアプローチが必要で、その極端なアプローチの長さがこの地を通俗化から守っている。
 まさにトレッカーのみがその素晴らしさを享受できる聖域。
 この雲ノ平、周りを薬師岳、水晶岳、祖父岳、鷲羽岳、黒部五郎岳という蒼蒼たる名山に囲まれている。その名山たちとの間には黒部源流
 が渓谷を刻んでいる。


◆今回の登山口は富山側。折立登山口から接近し、まずは薬師岳(2926m)にご挨拶することとする。
 前夜、川越からの夜行バスに乗り、富山駅に6:00に到着したあと、電鉄富山駅から電車で「有峰口」まで行き、そこからバスで折立に向かう。
 バスは朝は1本だけなので金曜日の朝にもかかわらず登山者で満員であった。


◆バスは折立に8:15頃到着。さっそく水を2リットル補給し、登り始める。太郎平小屋までコースタイムは5時間。最初は樹林帯の急登。4日分の食料と補給した水の重さが肩にぐっとのしかかる。暑い。樹林帯なので直射は避けられるが、15分も登らないうちにイッキに汗が噴出す。30分おきに小休止を取り水分補給、ビタミンCのアメをなめながらリズムを大事にして登る。体調は悪くないが、なんと両足のふくろはぎがつりそうだ。「あちゃーさっそくかよ〜」。鍛えていない足は正直だ。ごまかしごまかし2時間ほど登ると森林限界に出る。普通は展望がよくなって喜ぶのではあるが、今回は真夏の日差しがイッキに襲い掛かってくる。ヒエー〜。
森林限界を超え薬師岳が姿を現す。


◆3回に1回は中休止(こんな言葉あるか?)をとってレーション補給。今回のレーションはミニどら焼きとオールレーズン。また、ドリンクの粉末も普段のポカリに加えて最近はやりの「アミノ」系を用意。(結果これがよかったみたい)。ルートは伸びやかな草原を左手に薬師岳の雄姿を見ながらの痛快登山なのだが、なんせ日差しがきつい! 下界は猛暑なんだろうなあ(ヒヒヒ…いじわるRIKI)。斜面がゆるくなって後足を蹴り上げる必要もなくなったため「足のつり」からは何とか逃れられたようだ(ラッキー♪)。遠くに見えていた太郎平小屋がだんだん近づいてきた。ふりかえると有峰湖や遠く富山平野が見える。
太郎平小屋が近づいてきた。


◆13:10 太郎平小屋に到着。久しぶりの割りににはまあまあのペース。
今まで見えなかった北アルプスの最深部の山が目に飛び込んでくる!おー水晶岳だあ!黒部五郎だあ!雲ノ平が下からグッとせり上がっているのもわかる!やあーすごいなあ!感激なのである。水晶の頂は明後日アタック予定、先が長いなー。天気は持つかな?(結局心配なかった)
小屋の前の広場で昼食を食う。小屋にはビールがあるが、まだガマン。初日からアルコール分解のためのビタミンやミネラルの余計な消費は自重自重…。
ごはんを食べたあとトイレを済ませ、水を補給して(薬師岳小屋は水は期待できない)出発。
太郎平からの水晶岳 威厳たっぷり!


◆太郎平小屋をあとにして、いよいよ薬師岳の稜線に取り付く。20分ほど歩くと薬師峠のテン場がある。途中で大学生らしきオネエさんが走ってきてすれちがった。きっと太郎平小屋のバイトの娘だろう。小屋とテン場を仕事で行き来しているのかな?オツカレサマ。
テン場を過ぎるとゴロ岩の沢の急登だ。息があがる。本日一番の斜面。小1時間ほど頑張ると大きなケルンがある広場に出る。小休止してさらに頑張る。稜線を歩いているゾ!というかんじの尾根をヒーヒー登る。本日の宿・薬師岳小屋はもうすぐだ。
太郎平からの薬師岳 ゴロ岩の沢を登る



◆太郎平から2時間強、ハイマツのかげから薬師岳小屋がふいに現れた。時間は16:00、山頂まで往復できない時間ではない。
(本日中に往復しておけば、明日は予定している雲ノ平山荘ではなく水晶小屋まで行けるかもしれない、と欲が出る)
「まあ、でも初日からムリすることもないや」と自重し本日はこれで終了とする。


 薬師岳小屋と薬師岳


◆夕食の天ぷらを平らげ、屋根裏部屋の寝床で8時過ぎには熟睡した。(明日はメチャ早いゾ)


◆本日の登り +1420m、 下り -85m 



山行記 二日目


薬師岳小屋 4:15 → 5:00 薬師岳頂上(ご来光) 5:30 → 6:10 薬師岳小屋



◆3時に起きる。でもたっぷり寝た。ザックを担いで屋根裏部屋からサクサク下に下りる。宿泊者は30人程度か。小さく見えるわりには結構収納できる小屋だなあ。
 案の定この小屋は天水に頼っている。昨日太郎平小屋で補給しておいてよかった。 小屋の外に出て一服、至福の瞬間だが、メチャメチャ寒いぞ!おまけに風が強い。
 この山は日本海側からの風をまともに受ける。1階でサブザックに水、カメラ、レーションを詰め、フリース(真夏でもアルプスでは持参は常識)を着込む。
 時刻は4:00.さあ薬師山頂にアタックだ!


◆4時には明るくなるかと勝手に思っていたが、まだ真っ暗。ヘッデンをつけて広い砂礫の尾根道を登る。どこがルートかよく分からない、が何となく分かる、
 というわけの分からない表現しかできない状況を息を切らして登る。富山側からの強風が左耳を強烈に襲ってくる。寒さで引きちぎれそうな感覚。闇夜に
 ゴオオという音が物凄い。久々に恐怖感を覚える。辛抱して登っているとやがて空が白みはじめてきた。


◆別に意図したわけではないが、ひょっとしたら山頂でのご来光が拝めるかもしれない。手前のニセ頂上を過ぎほどなく歩くとまもなく祠がある薬師岳の山頂に到着した。
 不思議と山頂は風が全くなかった。
 やがて東の空がオレンジ色に光り輝き、燃え上がるような太陽が顔を出した。


2007年8月25日 5:00 薬師岳(2926m)登頂








 ◆山頂からは息を呑む展望が。。

 (上左)山頂より登頂ルートを振り返る。
 (上右)朝焼けの雲海に浮かぶ剱岳、立山。
 (左)  壮絶な金作谷カール。実に見事なカール。



ご来光




薬師岳より下山

薬師岳頂上 5:30 → 6:10 薬師岳小屋 6:45 → 8:30 太郎平小屋
8:50 → 11:30 薬師沢小屋 12:40 → 15:00 雲ノ平・木道末端
15:20 → 15:40 アラスカ庭園 15:50 → 16:50 雲ノ平山荘(泊)


(ちょっとわかりずらいが真ん中の●印が雲ノ平山荘の位置)




◆山頂で30分ほど至福のドラマを堪能し、薬師岳小屋に下山する。小屋の前のテーブルでお湯を沸かして卵スープを作り、弁当を食べる。
 弁当は昨夜受け取ったものだ。食事が終わったらすぐにまた太郎平にさらに下山する。途中のケルンでは昨日折立の登山口でお会いした
 関西から来た夫婦とバッタリ。昨夜は太郎平小屋泊まりで今日薬師を往復し、また今夜は太郎に泊まるそうだ。 のんびりした日程。
 いつかは自分もこんなゆとりある山歩きを楽しみたいものだ。
 約2時間で太郎平に戻り水を補給し、トイレを済ませ、次の目的地(いよいよ雲ノ平)に向かうべく、薬師沢を下る。



太郎平小屋に戻る。



◆薬師沢小屋までは樹林帯で暑さもしのげるかな〜♪ なんて勝手に考えていたのが大間違い。樹木はそれなりにあるが、この沢結構開けていて、
 下っているあいだ中ずっと太陽の直射攻撃を受ける。目の前には雲ノ平の台地がデーンと座しており、見上げただけで憂鬱な気分になる。
 2時間半黒部川に立つ薬師沢小屋めざしてもくもくと下る。せっかく登ったのにもったいない、、と思いながら下る。下ったらまた雲ノ平まで登り返さな
 きゃあいけないジャン、イヤだなあ、と思いながら下る。あきらめが悪い無体力トレッカーであった。


◆四の五の言っているうちに薬師沢小屋が見えてきた。おー、黒部川の源流部だよー、ついにここまで来たよ!時間もお昼近くになっているのでここで
 食事&大休止とする。このあと秘境・雲ノ平への過酷な登りが待っているしー。



薬師沢小屋と黒部川にかかるつり橋。
足を踏み外すと確実に下に落ちる
シャレにならない楽しい作り♪
黒部川源流部(「奥の廊下」) 雲ノ平へはここを登る!



◆薬師沢小屋まで来たらさすがに日陰だろう、と思ったのがまたまた大間違いで、時間的にちょうど太陽が真上にきてしまい、
 昼食を食べているあいだはずっと炎天下。逃げ場がないのである。
 メシを食べ、水を補給し、心の準備が整ったところで、さあ雲ノ平へアタック開始だ!


◆写真にあるシャレにならないつり橋を渡り、一旦黒部の川原に下りて、それから樹林帯の黒部が削った急斜面に取り掛かる。
 よくもまあこんな急斜面に道をつけたぜ。最初は木の根や枝をつかんで這い上がっていくというかんじである。そのうち道という
 よりはゴロ石の沢をひたすらよじ登っていく。深呼吸をしながらガマンの登り。ガンバレ!ここを乗り切ったら、別天地「雲ノ平」だ!


◆苦闘2時間ちょい、斜度がだんだん緩みはじめ、やがて木道が現れた!やったあとうとう上まで来たぞ!このコース一番の急登
 (であってほしい)を登りきり、精根尽き果てる。このあとは木道の緩い道が山荘まで続く(とは言ってもアラスカ庭園まではそこそこの登りもまだある)。



精魂尽き果てる が、すぐに復活。バックは水晶岳!



◆雲ノ平は溶岩台地だ。木道の下は大きな岩がゴロゴロしている。色々な高山植物が咲き乱れ素晴らしい景観。周りは薬師岳、
 水晶岳、黒部五郎岳などの名山に囲まれ「北アルプスの一番奥に来たなあ」としみじみ感じる。アラスカ庭園からおよそ1時間で
 今宵の宿、
雲ノ平山荘に到着。



北アの楽園 雲ノ平 雲ノ平山荘




◆小屋の食事はなんと「石狩鍋」。心遣いが登山者にはうれしい。涙ものの旨さだ!
 今日はかなり体力を消耗したので食べる食べる。7時前にNHKの天気予報を見る。
 「明日も太平洋高気圧に覆われ…35度を越す猛暑で…」のアナウンサーの説明に
 みな歓声を上げる。申し訳ないけど下界の人たちには猛暑でガマンしていただこう(^ ^)
 ここは標高2500m雲上の楽園(それにしては昼間は暑いが…)
 
 明日も早い。8時過ぎには熟睡する。
雲ノ平山荘のベンチにて
草原の楽園の向こうは祖父岳



◆本日の登り +1000m  下り -1170m



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