大峰山(弥山1895m) 弥山川ルート

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<佳境に突入>

一ノ滝の上には二ノ滝が見える。その上には三ノ滝があるらしいが、確認できなかった。ここから対岸へ吊り橋で渡る。ガイドブックによるとここからが一番の難所で、垂直ハシゴの連続らしい。地図にもそう書いてある。帰宅して山岳ソフト「カシミール」で確認したが、ここ一ノ滝から滝見平までは、水平距離680mに対し高度440mを稼ぐ。いかに急峻な地形かがよく分かると思う。


紅葉の吊り橋は絵になるなあ〜
でも、この先から佳境に入る



うわさ通りの垂直鉄ハシゴの連続である。せいぜい10個か20個くらいだろうと、たかをくくっていたがとんでもございません。ヨシどんがハシゴの番号を数えていたらしいが二十以上になって、やめたらしい。感覚では40以上あったかも?(正確ではありません)
ハシゴがなくても、クサリ場やロープ場のオンパレード。太ももの筋肉も悲鳴をあげるが、上半身も絶叫する。
疲れてボーっと登れば、ハシゴの段の間に足が挟まれる。もうハシゴは終わりかな?と期待して、でもやっぱりまたハシゴが現れると吐き気がしそうだ。


岩壁の景観は素晴らしいのだが。。 写真では分かりずらいが、
ほぼ垂直のハシゴの大群


でもハシゴやクサリが無ければ、このコース、完全なクライミングルートである。厳しいながらもこうやって我々一般ハイカーも楽しめるということは感謝しなければならない。一生懸命ガマンして登っていると、ほら下の写真のようなきれいな展望もプレゼントされるのだ。


ヤセ尾根を登りつめると、それまでのルートが
突然開けた。見事な紅葉のV字谷だ。


<滝見平到着。日本百名瀑「双門の滝」と大岩壁「仙人ー」>

さてハシゴ攻撃もようやく終わりを告げ、少し川側に下ると、弥山川ルート最大の見所「滝見平」に到着する。ここは日本の名瀑百選のひとつ「双門の滝」の展望台である。落差約70m、見事な大瀑布。この滝もスゴイが、もっとすごいのが目の前に立ちはだかる大岩壁「仙人ー(せんにんぐら)」。クライマーが泣いて喜びそうな壮絶な、垂直に切り立った岩カベだ。目の前にあまりにも近く、あまりにも大きいので、写真撮影が不可能なほどである。
ここで大休止する。


双門の滝。右は仙人ー。この写真でも全てを表現
できないほどスケールがデカイ。
記念撮影。気のせいか笑顔が
消え失せているような。。。


<さらに悪場は続く>

「もし無理だったら、双門の滝あたりで引き返そうね〜♪」なんて、朝に能天気なこと言ってたけど、絶対無理や〜。あのハシゴ地帯は引き返せない。下るのは絶対に危険。またRIKIは「テントかついでここでの幕営を10月に計画し、雨模様で中止した」と先に述べたが、「神様〜、よくぞ雨を降らせてくれました!」。本気でそう感謝するのであった。行っていたら、えらい目にあっていたぜ。


さて、ここからも厳しい登りは容赦なく続くのである。なんたって標高差1200mである。そう甘くは無い。
滝見平から山道(登山道とは言えない。リボンを頼りにタカシどんがルートファインディングしていく)は、いったん尾根側に登っていく。かなりの急斜面でみな口数も少なくなる。黙々と登る。この弥山川の谷の東側の尾根上には迷ヶ岳(すごい名前だ)がある。遭難碑(ここから下を覗いたが、垂直でもの凄い高度だった)を見送って迷ヶ岳方向に方向にかなり登ってから、また川筋に下る。ありがたや、疲労倍増。


写真を撮っていたら皆から少し後れを取ってしまい、本来は下るべきところを焦ってドンドン上に登っていったら、ずいぶん下からニシどんから「こっちですよ〜」と声を掛けられた。あやうく山の名前の通り、迷うところであった。


ロープやクサリを使って弥山川の河床に戻る。そこから先、川筋は何度も渡渉したり、大きな岩の上を飛んで進んだり。
実はRIKIはこの岩の上をピョンピョン進んでいる時が一番怖かった。クサリやハシゴは全くどうってことはなかったが、この川の岩は滑りそうだし、登山靴のソールは磨り減っているしで、精神的疲労がガンガン溜まっていく。


岩の上を飛んだり、川を渡ったり、
精神的疲労が溜まっていく。


<狼平の手前のダメ押しふたつ、「鉄吊りハシゴ」と「空中回廊」>

川筋に降りてからは傾斜はそんなにきついものではなくなったが、前述の通り、歩きにくい場所で疲労がドンドン蓄積される。そんな中、河床の巨岩が再び現れだし、トンでもないものが目に飛び込んでくる。なんと鉄製の吊りハシゴのご登場である。しかもオーバーハング。「三点支持」の号令のもと一人ずつクリアしていく。吊りハシゴの最初はブラブラ揺れるし、上の方は岩とハシゴの段がくっついて手や足を掛けにくいし、ちょっと冷や汗ものである。


鉄の吊りハシゴを無事通過し「もう何もないよな〜」、と思っていたら、だんだん川幅が狭くなり、ゴルジュ帯の様相になってくる。なんとなくイヤ〜な予感が。。。そしてハイ現れました!「空中回廊」のご登場です(パチパチ)。断崖の岩にボルト(鉄の棒、アングル)を打ちこんであるだけの、とてもご親切な作りの道です。このボルトに足を掛け、渡してあるクサリにつかまって、アクロバットのように通過します。たぶん1万人が通れば一人か二人は足を踏み外すかも知れないなあ。ヘヘヘ。。もう笑うしかない。


鉄の吊りハシゴ。
いまどきこんなモノ。
足元はボルトだけの空中回廊
笑うしかないぜ!!


足元の決死の撮影を試みた。高所恐怖症ではないため
実は怖くは無かったが、中にはビビッられたお方も。。。


<ついに狼平に到着>

もはや何が出てきてももう驚かない。次は何が出てくるのかな〜♪ と思っていたら、なんと普通の吊り橋が現れ、狼平に到着した。ここは天川川合から栃尾辻経由で登ってくる一般登山道との合流点である。ということはようやく点線(難路)が終わったのだ。バンザーイ!みんなよく頑張りました。


時間も時間なので、ここで昼食を摂る。予想に反して雨もパラつきだしたので、立派な非難小屋の軒先で塩ラーメンを作ってみんなで食べる!最高の味!


<弥山へ>


狼平から弥山までは一般の登山道。これまでのルートと比べるとまるで舗装道路のようなもんだ。雨具をつけているのでちょっと蒸し暑いが快適だ。足元に気を使わなくていい。1時間ほどで弥山小屋が建つ弥山に到着する。時間は15:00。


弥山から行者還トンネル西口の下山口まで約2時間、暗くなるギリギリなので近畿最高峰の八経ヶ岳(1915m)はパス。さっさと下山を始める。大峰山脈の主稜線をたどり、分岐から急斜面を急下降。下山口には17:30に到着する。
登山開始から実に11時間が経過していた。


上左:弥山山頂付近の立枯木
上中:弥山頂上にて
上右:倒木とコケ
下左:大峰主稜線の行者還トンネル西口(下山口)への分岐。



車でキャンプ場に戻り、天川村の温泉で汗を流し、ようやくほっとする。

全く想像以上のルートである。9月に行った剱岳の数倍は疲れた。このコースにトライする場合は、できるだけ早朝に登山口を出発し、かつ経験者と一緒に必要最小限の荷物で行くことである。(間違っても最初から単独でテントを担いで、なんて計画しないこと。)

しかし、気をつけて時間をかければ、「楽園のような河原」「連続する大瀑布」「壮絶な渓谷美」「そびえ立つ大岩壁」「鬱蒼たる原生林」、これら大峰の魅力が十分に味わえる素晴しいルートでもある。

大峰山、恐るべし。


やっぱり公開。前夜祭
(=前祝)は正しかった。


11月4日に出社したが、全身疲労で過労死寸前であった。


おわり

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