T2のフライトシュミレーター体験記

2002年6月3日

T2のフライトシュミレーター体験記

先日、航空自衛隊浜松基地広報館に遊びに行ってきました。広報館には機体・装備の展示、書籍の閲覧、フライトシュミレーターの体験が出来ます。入場は無料、常設の映画館では関連の映画などを上映しています。

今回は機体の展示をしてある格納庫のような大きな建物の片隅にあるT2のシュミレーター体験をしましたのでご報告します。

T2とは三菱が開発した国産の高等ジェット練習機で以前はブルーインパルスの機体として親しまれてきたのでみなさんには改めて説明するまでもないでしょう。

今回搭乗させていただけるシュミレーターはこの機首部分が油圧で稼働し、前席後席の両方に搭乗しての起動が可能になっています。

搭乗の資格は10歳以上、120cm以上の身長で妊婦や心臓に障害がある方などは遠慮してくださいとされています。ものすごい機動するのかとちょっとびびります。受付で搭乗時間を予約します。たいがい先約がいますので私は常設の映画館の上映が終わる時間を予約して他を廻ることにしました。予約時には住所氏名年齢電話番号を記入するので筋が良いとあとから電話がかかってきてパイロットにならないかと誘われるそうです(嘘)シュミレーターのコースは初級・中級・上級の3コースがあるのでどちらになさいますか?と聞かれます。各コースは下記のようになっています。
初級:操縦は自動操縦、訓練者は乗っているだけ(訓練というのか?)
   おじいさんおばあさんでも大空を体験できます
中級:マニュアルによる離着陸
上級:中級の離着陸に加えて戦闘訓練(!)

もちろん私は上級をお願いしました(笑)

搭乗の前に機内用の上履きを貸してくれるので履き替え、マンツーマンで若いお姉さんから搭乗に際しての注意があります。ここの専属の職員の方なのか、立て板に水のように説明してくださいます。黄色のポロシャツに青い鮮やかなパンツの制服が素敵です。できれば膝の上に乗せてフライトしたいなどと思っても絶対口に出せません。もし自衛官の方だったら同僚の男性自衛官がすっ飛んできて許さないだろうし、当人も柔道や空手の達人に違いありません、そっと物わかりの良いマニアを演じつつはいはいといい返事をしておきます。注意されるのは下記のようなことです

・離陸速度は120ノット、このスピードになったら操縦桿を手前に引いてください
・気分が悪くなったら赤いボタンを押してください、すると座席が射出・・・じゃなくて機動が止まりますのでその場で落ち着いてお待ち下さい
・戦闘訓練では仮想敵国機が画面に現れます、□がミサイル、太陽のようなマークが機関砲の照準になっていますので撃墜してください(さらっといいます)
・スロットルは左手のレバー、止まるところまで押し出した後金具を握り引き上げながらさらに押し出してください(夢に見たアフターバーナー!!)
・フラップレバーはスロットルのさらに左です、着陸時に下げてください。
・車輪のレバーは左上、離陸と着陸時に操作してください。
着陸の速度は130ノットで行ってください。
・青いボタンが点滅すると操縦権が後席に移ります。今回は一人ですのでスイッチを押して操縦権を前席に戻してください。

さて、いよいよ搭乗です。妻と子を地上に残しタラップを上がります。そこには別のきれいなお姉さんが待っていて搭乗をアシストしてくれますので又目尻が下がりそうになります(この時は妻も子供も忘れてる)、実際はこんなに若くてきれいな女性が航空自衛隊の現場にそろっているわけでは絶対ないはずです・・・そう私は思い出しました・・・大学の部活やサークルの新入部員の勧誘の光景を・・・私が通った大学は工学部でしたので女性は全然いません、それなのに勧誘の時にはなぜかきれいなお姉さんが優しげにパンフレットをもって説明してくれたりしてくれますがサークルには綺麗なお姉さんがいたためしがありません。みんなこんなところで人生の厳しさを覚えていくのでしょう・・・

座席のお尻がある部分に赤で靴の足跡が書いてありその部分に脚をついて乗り込むように説明されますがなかなか土足でシートに脚を入れるのは勇気がいります。さて座席に着くと先ほどのお姉さんが再度説明してくれます。すらすらと説明するお姉さん、ところがスロットルのことろで「アフターバー・・・」と言ったきりだまってしまいました。そうですよね綺麗な年頃のお姉さん、アフターバーナーなんて知っているのはてらちんさんぐらいでしょう(?)私は小さな声で「スロットル?」と助け船を出したところにこっとして、そうですスロットルを押してくださいと素敵な笑顔で説明をしてくれました。「ありがとうすてきなお兄さん」、そんな風に彼女の記憶に残っていないことを確信しながらキャノピーは閉じられいよいよシュミレーターの始まりです。ここで不安が・・・ベルト絞めないんです・・・ということは油圧で動くけど逆さになったりしないと言うことです(あたりまえだ)しかし少し不満・・・

最初に始まるのは通信の確認です。最初のお姉さんが「聞こえますか?聞こえたら手を上げてください」とマイクでおっしゃいます。ヘッドアップディスプレーの隣にはカメラが設置されているので私の大きな顔がモニターされているはずです、私は「はいっ」と返事をして操縦桿を握っていない左手で返事をします。きっとこっちの戯言は聞こえなくなっているに違いありません。

さてテイクオフです、アナウンスで最大パワーを指示されます。スロットルを最大まで押し上げ金具を握ってアフターバーナーに点火します。小学生の頃からこのシーン何度繰り返し練習したことでしょう、しかし今回はちがいますまがい物とはいえ左手には実物のレバーが握られています、いまここにアフターバーナーに点火した私がいるのです。今日をアフターバーナー記念日とすることにします(?)

さて離陸です、スロットルを押し込みゲートに入れ離陸です。ここで私は乗る前に決めていたのを実行です。エルロンを利かせ離陸と同時に左右に揺すって岩国上がりのようにカッコつけました、ところが最初にやるにはさすがに無理があるようで気持ちとしては両方に45°のバンクを振るはずが80°ぐらいのよたよたしたバンクになってしまいました

おどおどしながらギヤーを収めるといよいよ交戦訓練です・・・・

交戦訓練・・・それはなければそれに越したことのない訓練です。シナリオは領空侵犯した航空機に対して警告しているところに背後からいきなりミサイル攻撃された!そんな衝撃的なとことから始まります。そんな例はいままで全くないでしょう、でもシュミレーターではあるんです。右に急速離脱それから視界に入る垂直尾翼が2枚の見るからに大きなエンジンを積んだ戦闘機が沢山視界に現れますどこから見てもF15・・・・ご丁寧に真っ赤に染まった画像で・・・それも沢山・・・視界には4〜5機の適正航空機がタリホー!それも距離が近いです数百メートルです・・・・スロットルを閉じても離れません。スロットルを開けてもオーバーシュートしません・・・うむむむ・・・・これは落としてくださいと敵機がじっと待っている状況・・・・GUNとミサイルを撃つ私・・・当たっているのかそうでないのかわかりません・・・あせっている間に時間が来たようで操縦桿の反応が無くなりいきなりランディングです。

さっきまで機関砲を打っていたその右手で滑走路に導きます。速度はみると200ノットをオーバーしています、すぐにエンジンをアイドルに落としたのですが速度は落ちません、脚を急いで出してフラップのレバーをレバーを見ながら操作していたら滑走路のエンドを割りそうな勢いで接近しています。高いし速い!普通ならゴーアラウンドにしなければいけない状況ですがシュミレーターではそうはさせてくれる時間がないのは明白です、意地でも下ろす決断をした私は高い降下率を確信犯的に認めながら何とか速度を落とし滑走路中央を過ぎ去ったところにタッチダウ運させることに成功しました。実機なら許容加速度をオーバーして機付きの整備士に大目玉を食らったことでしょう。そこからが止まりません、ラダーペダルの上端を踏み込んでブレーキをかけたつもりですがそんな機能はシュミレーターには無いようで減速Gはかかりません。最終的には滑走路を全部使って止まる事が出来たのでなんとか事故にはなりませんでしたが次回からはゴーアラウンドする勇気を持たねばなんて考えちゃいます。

装置の癖もあるでしょうから最初の一回で降ろせるのは自慢して良いのでは・・・なんて個人的には思います。さあ週末には浜松に脚を伸ばして見ませんか?