山行記 八ヶ岳 赤岳主稜 変更 阿弥陀北稜(2005年12月23〜25日)編


八ヶ岳 阿弥陀北稜:初の冬バリエーション
2005年バリエーション締めくくりとして赤岳主稜を目指しました。結局、天候と雪の状態から赤岳主稜は困難を極める(遭難しに行くんじゃ無い)と判断し阿弥陀北稜に変更し完登。

23日(曇り)美濃戸〜赤岳鉱泉 & アイスキャンディー
9時45分
美濃戸口の八ヶ岳山荘に集合!A夫婦の車に便乗し(ちゃたろう君でも行けるのですがチェーンはめないといけないので、ちょっとおさぼりです<-前2週はちゃんとちゃたろう君で行きましたよ!)で美濃戸の赤岳山荘(おばちゃんとこ)に入り、いつもながら肉うどんを食べ、犬のポッコにお肉をご馳走してからいざ出発!
11時10分〜13時50分
てってこと歩き今回の基地となる赤岳鉱泉へ。結構寒いです。前週の雪訓の時よりはまだましですが、前々週のアイスキャンディでのアイスの時よりは寒い...(3週連続で鉱泉入り(^^; )
14時30分
アイスキャンディーでアイスの練習です。今回からの新兵器、(格安で買った)simond Naja Evolution piolet & Naja Cup marteau(ハンマー部分を取り外して軽量化)の登場です。歯を入れていないので振りだけでの刺さりですがなかなか良好なようです(casin X-Alp、X-Ice、simond Anaconda Cup、Naja Evo、Petzl Charlet Quark いろいろと試した結果買っているので使い勝手はよく分かっているつもりです)。が、あまりの寒さで氷が硬く、刺さりが悪いです。刺さったと思っても実際には割れていて苦労しました。
悪い情報...前週、赤岳周辺では20人凍傷にかかったとの事。この寒さでは当然か?前週のジョウゴ沢では氷点下20度を実測(SUUNTO X6 と 他の通常温度計)しているので、あの天気では頂上では相当過酷な状況だったはず。明日の赤岳主稜は回避した方が無難か?人数的なこと(14人=大森さん、ひろけんさん、A嬢(JECC所属)含む)を考えると待ち時間が長く非常に過酷なものになりそうだし、雪の付き方が悪ければグレードも上がり技術的な問題も出てくるし、ラッセルで時間を取られればそれだけ時間的危険度が上がる。阿弥陀北稜に変更することも視野に入れ、最終結論は明日出すこととします。

夕方〜夜 宴会
アイスの後はいつもながらの宴会です。夕食時にはT女史、S女史、A夫人が持ってきたケーキでクリスマスイブイブを祝います。最高齢63.8歳のT女史が持ってきてくれたケーキ、T女史の気持ちも伝わりおいしさアップです。鉱泉の夕食はいつもながら豪勢で、今日はハンバーググラタンです。ちなみに前週はビーフシチューでした。
夕食後、小屋の方から”明日の夕食は何が良い?”と聞かれ全員一致で”ステーキ!”となりました(^^;
S女史は仕事の関係で24日までの参加予定ですが、なんとか調整してステーキ食べるぞ!と張り切っています(^^;

24日(雪後晴れ) 阿弥陀北稜
7時 アイゼン付けて、Naja Evo を持って、余計なものは部屋にデポして出発。天気は...最悪、雪です。
8時〜8時20分 行者小屋
雪は止む気配なし。これじゃぁ赤岳主稜は無理(帰着後、鉱泉で聞いたところ全員敗退か撤退したとのこと)と判断し目的地を阿弥陀北稜に変更。
途中までは先行者(3人パーティー)のラッセルを借りてズンズン進みます。雪は止んでいますが、寒さは相変わらずです。先行に追いついたところでラッセル交代。男性陣&A嬢、S女史の8人でラッセル開始。あまり言いたくないけど、この3人パーティーってのも嫌味なやつらで、A婦人に”10何人にガイド1人か”等と嫌味を言っていたそうですが、”ひろけんさんもいるんだけど”と言ったとたんに何も言わなくなったとか。しかも屁をこきまくるとなってはもぉ最悪。でもっていまだに肩ガラミと来たもんですよ(^^;
途中、追いついてきた2人組みも入れて都合13人でのラッセルで一気に岩峰取り付まで進みます。

11時20分 岩峰取り付き到着。
先に嫌味な3人組と2人組を行かせて、1+3が2班、1+2が2班の合計4班で登攀開始。

第1岩峰:リッジよりもわずかに左側のかすかな凹角から取り付きます。途中1手、フッキングを使い4手ほどでリッジに出ます。リッジに出た後もフッキングと木をホールドにしつつ詰めると傾斜が緩やかになり、その先には第2岩峰の取り付き。
支点はペツルが2個のみ。我々第1班(班長大森さん、A旦那、T女史、Rhyme)が着いた時は、まだ先の3人組がいたために支点が使えず、手前の木を仮支点としてフォロービレーに利用。3人組が行ってから正規の支点に移動。

第2岩峰:後続班がどんどん上がってくるので、支点から延長したスリングにはセルフがどんどん取られいっぱいいっぱい(^^) それはさておき、第2岩峰は正面から取り付きます。アイゼンをしっかり乗せないと滑りそうで、部分的にムーブを入れて登ります。大森さんが取り付く間際に、S女史が来たら右側に注意するように伝言を、と言っていたのですが、特に注意するような”右側”は無く、?と思いつつ5手ほどで右に少しトラバースしてからリッジに登り返します。手が無いのでフッキングを多用します。リッジに出るとそこは!左70度、右85度(体感)に切れ落ちたナイフリッジ!”右に注意”はこれだったのですね。右に落ちたら大変な事になるわ(左だったら怪我はしても何とかなって救助も普通にできるけど、右だと...救助も困難だろうし...)、と踏む抜かない程度に気持ち左に進路を取りナイフリッジを10m強進んで終了点。

12時55分 終了点
終了点の先の尾根に出て行動食で食事しながらコーヒー飲みながら、みんなが揃うのを待ちます。天候も回復してきて、晴れ間が覗き始めます。

終了点でビレー中のS女史とA嬢->

最終班で、ビレー器の環付ビナの安全環が凍りつきビレー解除できないトラブルがあったものの(3人とも初冬バリで、ひろけんさんの班が後についてフォローするはずが先に上がってしまったので初冬バリメンバーのみが取り残されてしまったのは想定外)、無事に自力で解決し少し遅れてみんなに合流。

<-終了点から赤岳を望む
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この頃にはすっかり天気は回復し景色がきれいですが、本日の最低気温氷点下20度を記録しました。赤岳、大同心、硫黄岳はおろか、天狗岳まで望めます。この日、一瞬でも日を浴びれたのはここだけでした。

SUMでの記録->

14時20分 下山開始
中岳沢を下り行者小屋へ。

15時40分〜16時00分 行者小屋
ここから先は登攀装備解除の上、自由行動とします。天気が良いので景色を堪能してから最終組で鉱泉へ向かいます。

16時25分 鉱泉着。

夕方〜夜
一番ステーキが食べたかったS女史は、結局仕事の調整が付かず、ステーキに後ろ髪を引かれつつ夕方下山です。残りのメンバーは明日の裏同心ルンゼに向けてステーキと食後のアイスクリームで栄養補給です。その後はいつもどおりの宴会。21時過ぎドクターK合流、消灯後なので宴会は静かに盛り上がります。
※夕食時、TeamAnts の BAKUさん・HIBARIさんご夫婦とニアミスしていたようです。


25日(晴れ) 裏同心ルンゼ F2まで

7時30分 鉱泉出発。アイスしないメンバーはここで解散。
順調に進みF1到着。1+4×2班で、Rhymeは班長ドクターK、左フォローA女史・テールA夫人、右フォロー エイキチくんのテールに着きます。アイス開始。相変わらず氷は硬く、縦横での打ち込み中心でど真ん中から行きます(左の方が少し楽で右に出るとミックスです)。
F1を登りきってずんずん進むとF2取り付き。借り物のモノポイント・simond PidBull はアンチスノープレートが無いので新雪が玉になってくっ付くので落とすのが手間です。
F2の1段目は難なく登るものの、前を見ると2段目取り付きに不安定な格好でみんながひしめき合っています。班長のドクターKから、”そこら辺にいた方が楽だよ”とコール。7・8m位離れたところで落ち着き、A婦人が登ってくるのを待ちます。ドクターKが取り付く前には2段目下に合流します。みんなが行った後、スクリューを回収してから取り付きます。

<- F2の2段目にひしめく

回収後は直ぐにスクリューの中の氷を排出しなければなりません。氷が詰まっていない場合は、スクリューの中に息を思いっきり吹き込み細かい氷を吹き飛ばします。この時、唇をスクリューに付けてしまうと唇がスクリューにくっ付いてしまうので、指で輪を作り間に挟むのがミソです。詰まっている場合は吹いただけでは取れないのでカラビナなどで軽くたたいたり、かき出し用のフックでかき出してから吹き飛ばします。たたく時の注意点は、ねじ込む側ではなくハンドル側をたたくことです。そうしないと歯を痛めてねじ込めなくなる可能性があります。
2段目も難なく突破、3段目取り付きに到着します。
3段目で、班長ドクターKが苦戦します。アックスの歯がなまっていて、打ち込んでも刺さりません。無理やり打ち込むと氷が割れて剥がれてしまいます。氷が軟らかければ刺さるのでしょうけれど...スクリューを打ってからチャレンジしようとするもののスクリューも入りません。何度かチャレンジしましたが、最終的にA婦人のアックス(camp Nomix)と交換し登り直しました。さてここで一思案。ドクターKはアックスを交換した後もそれなりに苦労して登ったのだから、歯がなまったアックスでA婦人が登れるものか?無理ではなくてもかなり難しいのではないか?という事で、RhymeのNajaをA婦人に渡し、RhymeはドクターKのアックス(久しぶりの Quark です)で登る事に。登る前に、ドクターKが落とした氷塊で刺さり具合を試すと、3打しないと効いた感じがしないし、大抵は2打目で割れてしまう...自分自身大した腕じゃないのに、格好つけてアックスを交換したことをちょっと後悔。しかし、やるしかない!フォローが登っている間に大森班は下降してきます。どうやらF3も登れたようです。
打ち込めないのなら全フッキングでチャレンジ。先行者が打ち込んだ跡や隙間を使いながらフッキングで行きます。今回の一番の核心部分では右足が滑りきわどい姿勢になりながらもアックスは抜けなかったのでテンションも掛けず、自力復行できなんとかクリア。最後の乗越しだけは打ち込みでクリア。ふぅ...
ドクターK班はここで終了、懸垂に入ります。滝上端から10m弱ほどの左手の岩にしっかりしたペツルが2個打ってあり、残置スリングも新しいでので安心して使えます。

F2から見たF3 ->

さて懸垂となったところで気が付きました、エイキチくんとA女史は初懸垂であることに...ドクターKかRhymeが先に下りてロープを均す必要がありますが、Rhymeも積雪期の懸垂は鹿島槍の時のみなのでドクターKにお願いし、懸垂開始のフォローをすることに。ガチャを見ると、A女史は8環を持っているが、エイキチくんはルベルソ。ま、基本は同じだから良いか、という事で使い方と降り方を教え、いざ懸垂へ!A女史、さすがにいっぱいいっぱいなのか表情が強張っていますし、エイキチくんも珍しく緊張した感じですが、下りてもらわないと帰れません。大森班はすでにF1を下っていますので早く早く!です。2人が無事に下り、A婦人はファシルで、Rhymeはキューブで(8環を忘れたかみさんに8環(カーディアックアレスター)を貸していたのです)懸垂です。
※何があっても登攀の時は確保器+環付ビナ以外にも自分の身を守るものとして、環付ビナ1枚、ビナ数枚、スリング数本、8環は持っていないといけないですね。
すでに大森班は影も形も無く、直ぐにF1の懸垂準備です。滝上端から5mほどの左手の木の根元に残置スリングが上下で2つ。木は生きているので大丈夫だと思うのですが、体重掛けると結構しなります。バックアップが取れそうなところは...無いです。懸垂はF2と同じ順番で行います。
懸垂終了後、さっさと鉱泉に下山を開始します。そういえば、この日初めて日向に出たのはこの時でした...3m先に日が当たっているのにそこに行けない虚しさ...
鉱泉に着くと、すでに大森班はアイスキャンディーで練習中。我々も練習に加わります。
オーバーハングに挑戦しましたが、足運びがうまくなくて登れたものの腕がつらいです。フッキングしても抜けてしまうのは角度が悪いか、足元を見ようとした時に腕が動いて角度が変わっているか...Rhymeは、今のところフッキングより打ち込みの方が安定するようです。

15時30分 下山開始。
さくさく下りて1時間足らずでおばちゃんところへ。定番肉うどんを食べて帰路に着きます。駐車場のちゃたろう君は美濃戸口で雪に埋もれていました。靴を履き替える前にエンジンをかけて暖房をがんがんかけてフロントウィンドウだけに暖気を当てます。リアは電熱をオンにしておきます。靴を履き替えていると赤岳山荘のおじさんが”お湯あるよ!”と声を掛けに来てくださいました。フロントウィンドウを十分に暖めてからワイパーで雪を落とします。凍りつくことも無く3回ほどで雪が取れました。リヤはとりあえずそのままにして八ヶ岳山荘の前に移動すると、山荘のおじさんがやかんでぬるま湯を持ってきてリアの雪を溶かしてくれました。多謝です!”家に帰るまで登山だよ!”のおじさんの一言に素直に”はい!”と返事ができてしまいます。
バネキチコンビとA女史はここで解散。A夫婦とRhyme夫婦は大森さんと”どこでも撮影班B”さんを茅野駅に送り届けてから”金鶏の湯”で温まり夕食を食べてから解散です。

みんな3日間、お疲れ様でした! いや、本当に疲れました。


ルートのGPSデータ(カシミール3DのGPSファイル=GDB形式)

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