児  企  第 13 号
                                平成10年3月31日
 
  都道府県
各      民生主管部(局)長 殿
  指定都市
 
                     厚生省児童家庭局企画課長
 
       児童虐待に関し緊急に対応すべき事項について
 
 児童虐待への対応については、既に「児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運
用について(平成9年6月20日児発第434号厚生省児童家庭局長
通知)」により通知したところであるが、最近、保護者の虐待により児童が死亡す
るなどの痛ましい事件が多発している。
 このため、緊急に対応すべき事項を下記のとおりとりまとめたので、御了知の
上、児童相談所をはじめ管下の市町村等に対してその周知徹底を図り、運用に遺漏
のないようにされたい。
 
                                     記
 
第1 国民の通告義務についての周知徹底
 児童虐待については、早期発見・早期対応が肝要であるが、その殆どが家庭内で
行われるため顕在化しにくく、地域住民、関係機関による通告が重要であることか
ら、児童福祉法(以下「法」という。)第25条には「保護者のない児童又は保護
者に監護させることが不適当であると認める児童を発見した
者は、これを福祉事務所又は児童相談所に通告しなけらばならない」と規定されて
いるところである。
 このため、都道府県、指定都市(以下「都道府県等」という。)におい
ては、児童虐待に関する国民の通告義務について自ら広報・啓発に努めるととも
に、より住民に身近な自治体である市町村においても広報紙やチラシ、
CATV、町内会回覧板等、あらゆる媒体を通じて周知を図るよう適切な指導及び
協力依頼をお願いしたい。
 なお、市町村における広報掲載記事の例を別紙1に掲げるので参考とされたい。
 
第2 児童相談所における即応体制の整備等
 児童虐待は家族が集まる夜間や休日に発生することが多く、通告もこれら夜間や
休日に多いものと考えられるが、一部の児童相談所において夜間・休日の緊急対応
体制が全く整備されていないか、整備されていても夜間・休日の連絡先が国民一般
に周知されていない等、その体制が不十分な例が見られることは誠に遺憾である。
 都道府県等によっては、児童相談所に職員を宿日直させたり、夜間・休日の対応
を一時保護所が行うこととし、その旨住民や関係機関に周知を図る等の方法により
夜間・休日の一義的な対応を行い、緊急対応が必要な場合は児童相談所職員の自宅
に連絡することとしている例などがあるので、これらの事例(別紙2)も参考とし
ながら、夜間・休日における通告や相談への対応体制の整備について早急に工夫さ
れたいこと。
 また、夜間・休日における児童の緊急保護や調査等に当たっては、児童相談所職
員がこれを行うことが原則であるが、交通手段や地理的要件等で児童相談所職員に
よる対応が困難な場合は、児童委員、主任児童委員に協力を要請するとともに、一
時保護委託等も積極的に検討すること。
 
第3 児童相談所における対応のあり方について
 児童相談所において受付けた事例については、担当者1人で対応方法等を決定す
るのではなく、受理会議等による機関決定を行うこと。
 また、受理会議については、「児童相談所運営指針」により原則として週1回開
催することとされているが、虐待の事例については緊急の対応が必要な場合が多い
ことから、即日受理会議を開催する等、柔軟かつ弾力的に対応すること。
 さらに、虐待の事例については、調査等の客観性がより強く求められることや、
保護者による加害行為の危険性が想定されること等から、調査の実施に当たっては
複数職員で対応することを原則とすること。
 また、指導に当たっても必要に応じ複数の職員で対応する等、柔軟かつ弾力的な
対応に努めること。
 
第4 立入調査等について
 調査に保護者等の協力が得られず、しかも虐待の蓋然性が高い場合には、警察と
事前協議を行いこれに基づく連携を図る等により、躊躇なく法第29条による立入
調査を行い、必要な場合は児童の一時保護を行うこと。
 
第5 法第28条第1項又は法第33条の6の積極的活用
 施設入所措置等が適当と判断される事例で、親権者等の同意が得られない場合で
あっても、親権者等とのケースワーク関係を重視するあまり、法第28条第1項や
第33条の6(平成9年法律第74号による改正後)の申し立てを躊躇することも
あると考えられるが、必要な場合はこれらの申立てを積極的に行う等、児童の保護
を最優先した毅然たる対応を図ること。
 なお、法第33条の6による申立てを行う事例で、審判のあるまでの間、緊急に
児童を保護する必要がある場合には、家事審判規則第74条第1項に基づく審判前
の保全処分(親権者の職務執行停止及び職務代行者選任)の申立てを行うことも積
極的に検討すること。
 また、現に児童相談所において一時保護している児童で、法第28条第1項又は
法第33条の6による申立て等により一時保護期間が長期化すると推測される場合
においては、児童養護施設等への一時保護委託を検討すること。
  
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(別紙1)
 
(広報掲載記事の例)
              厚生省児童家庭局企画課

    聞こえますか?子どもからのSOS   
                        
   
  子どもの虐待が増えています。親の虐待によって尊
 い命が奪われる痛ましい事件も起きています。次のよ 
 うなことに気づいたら虐待が疑われます。ぜひ当市の 
 福祉事務所か児童相談所に早めにご連絡・ご相談くだ 
 さい。「虐待でなかったらどうしよう」と不安を感じ 
 る必要はありません。             
   
  ・叩く音や叫び声が聞こえる。        
   
  ・不自然な傷が多い。            
   
  ・衣服や体がいつも極端に汚れている。    
   
  ・小さな子どもを置いて頻繁に外出している。 
   
  児童相談所では、専門の職員が調査、指導を行い、
 必要な場合は子どもを緊急に保護したり、施設入所さ 
 せたりします。                
   
  連絡をいただいた方の秘密は守ります。    
                          
   
    ○○市福祉事務所○○課         
 
    TEL ○○−○○○−○○○○        
  
    所在地                 
  
                     
   
    ○○県○○児童相談所          
   
    TEL ○○−○○○−○○○○        
  
    所在地                 
   
  なお、次のところでも電話相談に応じています。
  
    ○○虐待防止センター          
   
    TEL ○○−○○○−○○○○        
 
                        
   
 ※児童福祉法第二十五条:           
   
 「保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適
 当と認める児童を発見した者は、これを福祉事務所又は
 児童相談所に通告しなければならない」     
                       
   
    あなたの一報が子どもの命を救うのです。
    ぜひご協力を!             
   
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(別紙2)
   児童相談所における夜間・休日の対応について(参考事例)
 
T.児童相談所(一時保護所を除く)での対応
    @緊急対応に備え、児童相談所に職員(児童福祉司等)を配置
 
    A緊急対応に備え、児童相談所に警備員、宿日直員を配置
 
U.一時保護所での対応
    @一時保護所に所長以外の全職員が交代で当直
 
    A各児童相談所にかかった電話を一時保護所に転送もしくはテープで一時保護所に
      かけ直すよう案内、緊急対応が必要な場合は所属長等に連絡・相談
 
    B夜間・休日は一時保護所で対応、その旨住民に周知
 
V.その他の対応
 ・夜間・休日の電話を予め契約した施設に転送


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