世界海事遺産賞受賞記念艦「三笠」
記念艦”三笠”長官公室の復元工事完成!



- update 2006.05.06 -


「三笠」でウンチク語るなら要チェック!

この度(2006年4月末)、1870万円の寄付金を投じて三笠の長官公室等の復元工事が完了したとの報に接し、不肖、ミンダナオ会長、直ちに出撃、之をさっそく拝見してきました。

長官公室

長官公室のテーブルが今回修復されました。これは1902年に英国で製作されたものだそうです。また当時の写真を元に形状の似た椅子をアンティーク市場から調達したそうです。「三笠」オリジナルのものではありませんが。1910年代の英国製ものだそうで、雰囲気はよく出ています。

見逃してはいけないのが天井の換気扇(写真左)。これはダミーで実際の換気機能はありませんが、今回の復元工事がかなり細部にこだわられていることが感じられます。

より艦尾側の長官室の右舷側に置かれているロールアップデスクは東郷平八郎元帥が軍令部長時代に使用していた実物(ということは「三笠」とは直接関係ないが)だそうで、椅子のほうの背もたれには「桜と錨」が彫刻されています。ただ、内側なのでちょっと見づらいかな・・・。

艦尾正面には明治天皇の御真影が掲げられていますが、その額縁(っていうのかな?)は実際に駆逐艦で使用されていたものだそうで、(御真影を保護するためではなく)額縁自体の劣化を防ぐためにクリアケースに収められています。

また、長官公室両舷に装備されていた47ミリ砲(キャビン砲)がこの度再現されました。もちろん現代製のダミーですが、映画の小道具メーカーに依頼されただけあって、ウェザリング塗装など、なかなかリアルな仕上がりになっています。ただ、予算の関係や資料不足により、本来の砲門の蓋までは再現できなかったそうです。でも外から見ると(写真左、砲身先端)、砲身を収めるための船体側切り欠きの凹みにピッタリ収まっていて、あるべきものがそこにある、という感じがしますね。


長官浴室

長官浴室の洗面台も今回復元された、というか再装備されたものです。 これは「三笠」オリジナルのものだそうですが、一般士官用のもので 長官用のものはもう一回り幅が広かったようです。なお、長官用の「実物」 は九段小学校の校長室にあって、代々の校長先生が使われているのだとか・・・。

この洗面台上半分は水タンクになっていて、 毎朝従兵がここに水を貯めておく構造になっています。 また、シンクの壁側が注ぎ口のような形状になっていますが、 これはシンクを格納するとき、そのまま残り水が洗面台下部 の水タンクに流れ込むようになっているためです。 なかなかに合理的な構造なのであります。


番外編

今回の復元工事とは直接関係ありませんが、最近資料展示室に測距儀が所蔵されました。これは1902年に英国バー・アンド・ストラウド社で製作されたもの(いわゆる武式)で、呉で大破着底した重巡洋艦「青葉」から回収されたものだそうです。基線長1メートルのものですが予備品として装備されていたのでしょうか。なお、この測距儀は分解修理されて、現在でも1万8千メートルまで測距可能とのことです。しかし、現在の測距儀は両目で対象物を見ることができますが、この武式の測距儀は左右の目を交互に閉じながら使うものであることがわかったそうです。

この修復された測距儀を見学に来艦したタレス社の技術者の意見から、有名な「三笠艦橋の図」で測距儀を覗いている長谷川少尉が左手に握っているものはテレグラフの操作器具だということがわかりました。「三笠」では主砲塔に対して測距の結果は艦橋からセルシンモーターを介して伝達されていたようです。

また、士官室に掲げられている、「海戦之図("The view of Night Attack by a Torpedo Boat")」も表面の汚れが洗浄されて、美しい紺青で精密に表現された海の繊細な色調や、月光にほのかに浮かぶ僚艦や敵艦のシルエットがはっきりわかるようになったとのことです(通常は作品保護のため、照明を暗めにしているのでちょっとわかりづらいかもしれませんが・・・)。ちなみにこの絵、原題は"Betrayed by the Moon"といい、英国の海洋画家Charles Napier Hemy(1841-1917)によって1915年に描かれたもので、有名な松方コレクションの一品として日本に渡り、水交社に掲げられていたものだそうです。

最後に、今回いろいろと丁寧に解説していただいた(財)三笠保存会の古宇田氏に深く感謝いたします。


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