「♪まるたけえびすに~」で知られた京都の通り名の歌(通り名はやし唄)をご存知でしょうか? その起源などは、最下部の「考察」で触れますが、このわらべうたは手まり歌としても知られています。
この「通り名はやし唄」は、碁盤の目状に走る京都の路の並びを容易に示すことができるため、現代においてもさまざまな場面で引用されることがあります。
例えば、「名探偵コナン」という人気アニメシリーズ。TVシリーズと劇場版がありますが、このうち劇場版の第7作「名探偵コナン 迷宮の十字路(クロスロード)[2003年4月公開]」の劇中において、この「通り名はやし唄」が登場します。
(補足:コナン劇中において、一部歌詞が異なる部分がありますが「あねさんろっかく」⇔「よめさんろっかく」、正しいのは「あねさんろっかく」です。これについては、物語の進行において重要なキーワードとなり、またネタバレを多く含むため、当ページでの詳細解説は避けます。)
まるたけえびすに おしおいけ
あねさんろっかく たこにしき
しあやぶったか まつまんごじょう
せったちゃらちゃら うおのたな
ろくじょう ひっちょうとおりすぎ
はっちょうこえれば とおじみち
くじょうおおじで とどめさす
(解説)
丸 竹 夷 二 押 御池
姉 三 六角 蛸 錦
四 綾 仏 高 松 万 五条
雪駄 ちゃらちゃら 魚の棚
六条 七条 とおりすぎ
八条 こえれば 東寺道
九条大路で とどめさす
これが「通り名はやし唄」として最も知れ渡っているもので、京都の東西の通りを北から南へ歌ったものです。
丸太町(まるたまち)、竹屋町(たけやまち)、夷川(えびすがわ)、二条(にじょう)、押小路(おしこうじ)、御池(おいけ)、姉小路(あねこうじ)、三条(さんじょう)、六角(ろっかく)、蛸薬師(たこやくし)、錦小路(にしきこうじ)、四条(しじょう)、綾小路(あやのこうじ)、仏光寺(ぶっこうじ)、高辻(たかつじ)、松原(まつばら)、万寿寺(まんじゅじ)、五条(ごじょう)、雪駄屋町(せきだやちょう)、魚の棚(うおのたな)、六条(ろくじょう)、七条(しちじょう)、八条(はちじょう)、東寺道(とうじみち)、九条(くじょう)
*「♪ちゃらちゃら」は「鍵屋町」(かぎやまち)を表してるという説もあります。
鞍や寺、上立五つ、今や元、
武一、中立、長者三通り、
出水下、椹木、
丸竹夷二、押御池、
姉三六角、蛸錦、
四条綾仏、高辻や、松万寿に、
五条雪駄屋、魚の棚、
珠数二筋万年寺、
七条越えて、通り道なし
(解説)
「丸竹夷」では丸太町以南の通りが歌われていますが、別バージョンとして丸太町以北の通りも含めたものです。
鞍馬口(くらまぐち)、寺之内(てらのうち)、上立売(かみだちうり)、五辻(いつじ)、今出川(いまでがわ)、元誓願寺(もとせいがんじ)、武者小路(むしゃのこうじ)、一条(いちじょう)、中立売(なかだちうり)、上長者町(かみちょうじゃまち)、中長者町(なかちょうじゃまち)、下長者町(しもちょうじゃまち)、出水(でみず)、下立売(しもだちうり)、椹木町(さわらぎちょう)、丸太町、竹屋町、夷川、二条、押小路、御池、姉小路、三条、六角、蛸薬師、錦小路、四条、綾小路、仏光寺、高辻、松原、万寿寺、五条、雪駄屋、魚の棚、上珠数屋町(かみじゅずやまち)、下珠数屋町(しもじゅずやまち)、万年寺(まんねんじ)、七条
坊さん頭は 丸太町
つるっとすべって 竹屋町
水の流れは 夷川(えべすがわ)
二条で買うた 生薬(きぐすり)を
ただでやるのは 押小路
御池で出逢うた 姉三(あねさん)に
六銭もろうて 蛸買うて(たここうて)
錦で落として 四かられて(しかられて)
綾まったけど(あやまったけど) 仏仏と(ぶつぶつと)
高(たか)がしれてる 松(ま)どしたろ
てら ごこ ふや とみ やなぎ さかい
たか あい ひがし くるまやちょう
からす りょうがえ むろ ころも
しんまち かまんざ にし おがわ
あぶら さめのいで ほりかわのみず
よしや いの くろ おおみやへ
まつ ひぐらしに ちえこういん
じょうふく せんぼん はてはにしじん
(解説)
寺 御幸 麩屋 富 柳 堺
高 間 東 車屋町
烏 両替 室 衣
新町 釜座 西 小川
油 醒井で 堀川の水
葭屋 猪 黒 大宮へ
松 日暮に 智恵光院
浄福 千本 はては西陣
こちらは南北の通りを東から西へ歌ったもの。
寺町(てらまち)、御幸町(ごこまち)、麩屋町(ふやちょう)、富小路(とみのこうじ)、柳馬場(やなぎのばんば)、堺町(さかいまち)、高倉(たかくら)、間之町(あいのまち)、東洞院(ひがしのとういん)、車屋町(くるまやちょう)、烏丸(からすま)、両替町(りょうがえちょう)、室町(むろまち)、衣棚(ころものたな)、新町(しんまち)、釜座(かまんざ)、西洞院(にしのとういん)、小川(おがわ)、油小路(あぶらのこうじ)、醒ヶ井(さめがい)、堀川(ほりかわ)、葭屋町(よしやまち)、猪熊(いのくま)、黒門(くろもん)、大宮(おおみや)、松屋町通(まつやまち)、日暮(ひぐらし)、智恵光院(ちえこういん)、浄福寺(じょうふくじ)、千本(せんぼん)
歴史的には、室町時代からの伝承と思われる資料に、随筆集『翁草』の中に京の縦横の通りを読んだものがうかがえること。また、謡曲『便用謡』の「九重」にもみられます。ここに書かれた文章が、わらべ歌・手まり歌として愛唱され江戸時代に広く普及したと考えられます。
冒頭に述べましたように、これらの歌は現在もいろいろな場面に登場します。「寺御幸」は京都の某地方銀行が長編のラジオCM内で使っていたことでも知られています。
わらべうた・手まり歌の持つ特性として、歌詞・節については各地方・地域でさまざまな派生バージョンが存在するため、ここに挙げたものはあくまで一例として参考いただければ幸いです。
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