母と子のアジス奮戦記


10、初めての美容院<15,04,98>


先日、アジスへ来て初めて、美容院へ行ってみました。1年前にアジスに来る前、当分
美容院にお世話にならずにすむような髪型にしてきた私は、そろそろ切り時かな、と
思ったのでした。

やはり、初心者としては無難な線で、ヒルトンホテルの美容室に行くことにしました。

まず、入り口を入ると、左側が男性、右側のアーチをくぐると女性のコーナーになって
いました。女性のコーナーに入っていくと、先客が1人いました。

魔女のようなおばさんが近寄ってきて、「何がしたいの?」と聞いたので、「切って欲しい」
というと、片隅のいすをすすめられ、「ここで5分待っていて。すぐにこの人は終わるから」
とその人の目の前で言ってくれました。

いすにすわって、ぼろぼろになっている雑誌なんかを読もうとしていたら、いきなりおじ
さんが現れ、奥の部屋に来い、と言いました。「なんだー??」と思いながらついていくと、
簡単な洗髪コーナーがありました。「シャンプーはするのか?」と聞かれたので、「いらない、
してきたから」と言うと、いきなり水で髪を一通りぬらし始めました。終わる頃にやっとぬ
るま湯になったところをみると、どうやら、水がお湯になるまで待ってくれなかったようです。

水でぼとぼとになった髪を、拭いてくれることもなく、肩からバスタオルをかけてくれた
だけで、さっきのいすのところへ戻るように言われました。

しかも、ぬらしている間じゅう、アムハラ語の挨拶のしかたを講義され続けるという、
不思議な洗髪タイムでした・・・。

先客は、本当にものの5分でカットが終了し、すぐに私の番になりました。

「ヒルトンの美容室は、ものすごく短くカットしたがる」という噂をかねてから耳にしていた
ので、実際にして欲しい長さよりも長めに御願いしました。

魔女のおばさんは、「横から後ろへかけて、まっすぐにする?それともVの字?」と聞い
てきたので、まっすぐにするよう御願いし、どきどきしながら見守っていました。まず、後
ろの髪を上へ上げて奥の方から切り始め、徐々に下ろしながら切っていったあたりはよ
かったのですが、横へ移ると、左なら左だけに集中、右に移れば右だけに集中ってい
うのは、どうなることかと思いました。しかも、切っている間中、鏡を見てチェックというの
が一度もなかったのです。これで、左右がそろうんだろうか・・・とかなり不安になりました。

ところが、一通り切り終わると、いきなり髪をてっぺんから前に持ってき始め、そこで左
右を揃えるという荒技があることがわかりました。

髪で顔全体をおおわれてしまっている間、何をされているんだろう・・・と不安でしたが、
なんとか指定したよりも短めになって終わりました。

噂通り、切っている間中、「あなたの髪、長すぎるわよ。もっと切るといいのに。」を連発
していましたが、「いいの、これで」で押し通し、なんとか希望よりも少し短めで終了。切
ったあと、乾かすかどうかを聞かれ、「そりゃあ当然だろう!」と思いましたが、きちんと
乾かして欲しいと御願いしました。

下を向かされて、後ろの奥から乾かしていましたが、あまりの熱さに首がやけどするん
じゃないかと思ってしまいました。

奥の方だけ丁寧に(やけどしそうなくらい)乾かすと、あとはものすごく大ざっぱにほぼ
半乾きで終了しました。

最後に、魔女のおばさんは、「まぁ!!さっきより、ずーーーっとよくなったわよ」ともの
すごく満足げでした。

かかった時間は、水で洗うところから料金を払い終えるまでで、約20分。
料金は、日本円で700 円にも満たない金額でしたが、アジス生活1年でこちらの物価
が身に付きつつある私にしては、「いいお値段だなぁ・・」なんて思ってしまいました。

帰り道、なんだか背中がかゆいなぁと思い、家に帰って服を脱いでみると、細かい髪の
毛がびっしりはさまっていました。一応、ケープみたいのをしてくれたのになぁとびっく
り。しかも、そのケープは水を通すらしく、服が所々濡れていました・・・。

エチオピア人女性は、一般に長くてストレートな髪を好む傾向があるのは本当らしく、
家に帰ると、メイドが「Oh!!! I'm sooooory!!!!!」と言って残念がっていました。どうして切
っちゃったの?と、かなりしつこく聞かれ、前はとってもよかったのに、なんていわれて
しまいました。

前に、パーマヘアの私に、「ストレートの方がいい」とのたまった彼女ですが、今回はし
っかり、「ロングの方がいい」とのアドバイスをくれました。

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