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荒々しい断崖や岩場が展関する海辺を思う。今しも浮上した海女が片手を桶に掛け、片手で獲物を差し上げている姿を想像する。徒人(かちど)海女であろう。 蛸か飽か、したたる潮と海女の眼鏡が夏日に輝く。 波間に漂いながら笑顔を見せてくれた海女を、おもわず「涼し」と見たのである。 海女にとって磯から得る獲物はすべてが「わだつみの幸」に外ならない。わけても徒人海女にとってその「幸」を得る喜びは大きかろう。 「わだつみの幸」は「海の漁猟に獲物の多いこと」の意を含むが、「かゝぐ」と考える方が、「涼し」が生かされるのではなかろうかと思う。 「わだつみの幸かゝぐとき」の言葉の響きが美しく、海女の姿を立体的にとらえて印象を深めている。 (高田菲路) |
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海女涼しわだつみの幸かゝぐとき 加藤三七子 |
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社団法人俳人協会 俳句文学館387号より |