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阪急宝塚駅を降りるとすぐ「花の道」と名付ける歌劇場へ続く散歩道がある。花車には色とりどりの花が溢れ、ところどころに飾りのごとくベンチがある。道の両側には個性的な日覆の店が並ぶ。ロマンチックな道である。掲句はこの道で詠まれたのだろう。 「歌劇生に会い、初蝶にも会いましたよ」と平明に何の飾り気もなく詠まれている。しかし単純化された言葉そのままで喜びにあふれている。この道を歩く作者のうきうきした気持ちまでもが伝わる。 歌劇生が場面をパッと明るくし、そこに初蝶がきらきらする光をまとって登場する。歌劇生の持つムードと初蝶の持つ雰囲気がお互いを生かしあって、明るい日ざしのこぼれてきそうな洋画の世界を創り出してしている。 軽快な靴音が聞こえてくる。作者の胸の鼓動も聞こえてきそうだ。何故だろう。 「……あひ……あひにけり」のリフレインと句の調べの破調が一句の中に軽やかなリズムを生み出しているようだ。 読者も歌劇道をスキップしているかの気分にさせる楽しい作品。 (村手圭子) |
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歌劇生にあひ初蝶にあひにけり 岩崎照子 |
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社団法人俳人協会 俳句文学館383号より |