流し込みレジンを用いた簡単リベース法

Easy Rebase Method using by Resin Pour Technique


はじめに

 新製義歯は、その時点での口腔内に最も調和するように製作されるが、生体は経時的に変化する可能性をはらんでおり、装着したその日から様々な不調和が生じていくことは避けられない。義歯自体が生体の変化に対応できないものである以上、製作した義歯を長期にわたって快適に使用していただくためには、装着後のメインテナンスが不可欠になる。
 義歯のメインテナンスのうち、臨床において頻度の高いものが粘膜面の変化に対応するためのリベース・リライニングである。その方法は間接法・直接法に大別され、それぞれに長所・短所がある。
 間接法は義歯床との接着、レジンの物性などの点で直接法より優れているが、患者から使用中の義歯を預からなければならないという短所のために、臨床においては避けられる傾向が強い。
 そこで筆者は、技工操作の時間を短縮するため、シリコーン印象材と即時重合流し込みレジンを使用した、簡便なリベース・リライニングの術式を用いている。臨床でも良好な結果を得ているので、本稿にて紹介する。


T.技工作業

 義歯床用材料としては加熱重合レジンが最も一般的な材料であり、リベース・リライニング材としてもこれが用いられることが多い。しかし加熱重合レジンは重合時間が長いため、これを使用するかぎり、技工操作の短縮には限界がある。本法では、流し込みレジンを使用することにより、重合時間の短縮を図っている。
 またこの技法では、埋没操作にあたってシリコーンパテを使用できることも大きな利点である。通法では、粘膜面の印象材(粘膜調整材)の削除やレジン分離剤の塗布を、義歯が石膏に埋没された状態で行なわなければならないため、その作業がかなり煩雑で手間がかかる。
 シリコーンを応用した場合、埋没後に義歯を取り出して作業ができるため、これらの工程を手早く簡単に行なうことが可能になり、重合後の取り出し・研磨にかかる労力も軽減される。


U.臨床例

 以下コンプリートデンチャー、残存歯数の多いパーシャルデンチャー、単独残存歯のパーシャルデンチャーの3ケースについて、図を中心に紹介する。


1.コンプリートデンチャー(図1〜16)

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1 2
1,粘膜調整材で採得された機能的な粘膜面の印象。辺縁形態を正確に保存するため、ボクシングして作業用模型を製作する。
 顎堤に強いアンダーカット部がある場合には、内面の粘膜調整材の厚みが十分であることを確認する。アンダーカット部にレジン床があると、模型から義歯が外れないおそれがある。
2,作業用模型。辺縁は全周にわたって5mm以上の石膏スペースを与える。

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3 4 5 6
3,ユーティリティワックスでレジン流し込みのスプルーを付与し、義歯全面にシリコーンパテを圧接する。シリコーンが硬化する際、加圧釜に入れることにより滑沢で気泡のない印象面が得られる。シリコーン硬化後、模型辺縁に石膏分離剤を塗布、ガムテープでボクシングして二次石膏を流し込む。石膏でシリコーンを補強することにより、人工歯の位置の変位を防ぐためである。
4,石膏流し込みに際して、上下の石膏を正確に復位できるよう、作業用模型の辺縁にスリットを入れておく。またシリコーンパテが二次石膏にしっかりと保持されるよう、辺縁をカッターナイフでアンダーカット形状に形成しておく。
5,埋没が終わった状態。石膏が硬化したら上下の模型を開く。義歯外周のアンダーカットが強い部分は、シリコーンを厚くしておくと開きやすい。
6,シリコーンパテから義歯を取り出したところ。

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7 8 9
7.8.9,模型から義歯を取り外してモデルトリマーで外周を大まかに削り取る。残った粘膜面はカーバイドバー(スタンプバー)で粘膜調整材を削除する。粘膜調整材が薄い部分はレジンの流れが悪くなるので、リベース材が最低1mm以上の厚みになるよう調整し、義歯を印象面に確実に戻す。

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10 11 12 13
10,義歯床に劣化や変色がある場合は換床を行なう。この症例では、上顎は床裏装(リライニング)、下顎は換床(リベース)を行っている。換床の場合、人工歯を残してレジン床部分を全て削除しなければならない。陶歯の場合は、トーチなどを用いて義歯から人工歯を取り外せばよい。ただし人工歯に直接火炎を当てると破損することがあるので注意が必要である。レジン歯の場合、は歯頚線まで床を削り取る。取り出した人工歯をシリコーンの印象面に確実に戻す。
11,粘膜面にレジン分離剤を塗り上下の模型を確実に合わせてから、瞬間接着剤で全周を固定する。バイブレーターで気泡を入れないようにレジンを流し込み、加圧重合器で20分間重合する。
12.13,重合が終わった状態。旧義歯の床とリベースのレジンの境目はバリもなくきれいに仕上がっている。これはシリコーン硬化時に加圧釜を使用している効果である。

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14 15 16
14.15.16,スプルーをディスクか石膏ノコでカットし、通法どおり研磨して完成する。


2.残存歯数の多いパーシャルデンチャー(図17〜24)

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17 18 19 20
17,パーシャルデンチャーでは、床内面を粘膜調整材で印象した後、義歯を装着した状態で残存歯を含めた印象採得を行ない、まず残存歯部分に石膏を流しておく。
18.19,ボクシングを行ない作業模型を製作する。
20,模型の補正作業。シリコーンパテが外しやすいように、クラスプ下のアンダーカットを石膏かシリコーンを用いて補正しておく。残存歯のクラスプより上の部分は、義歯が取り外せるように、移行的に削り落としておく。

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21 22 23 24
21,スプルーを付与し、シリコーンパテを圧接する。アンダーカットをシリコーンで補正した場合はワセリン等の分離剤が必要である。この症例では石膏埋没は行なわず、シリコーンのみのコアとした。石膏による補強がないので十分なシリコーンの厚みが必要になる。
22,義歯を模型から取り外して粘膜部を削合、模型に分離剤を塗布して模型に戻す。遊離端義歯では床最後尾にストッパー(赤丸部)として未削合部分を残しておく。
23,シリコーンを戻し、瞬間接着剤で固定してレジンを流し込む。
24,研磨完成。床後方の白い部分はストッパー。その部分を削り取り、掘り出した模型をもとに即時重合レジンで修正する。


3.単独残存歯のパーシャルデンチャー(図25〜31)

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25 26 27 28
25,残存歯が少ない場合、粘膜面の印象だけでリライニングする場合もある。
26,残存歯の歯頚部(粘膜移行部分)までをワックスで塞いでボクシングを行なう。
27,作業用模型ができたらクラスプ内部の残存歯部分にシリコーンパテを圧接成型する。
28,圧接した歯牙部分のシリコーンに分離剤を塗り、義歯全体にシリコーンパテを圧接する。この症例も二次石膏は使用していない。

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29 30 31
29,同様に粘膜面を削除、分離剤を塗布、シリコーンコアを瞬間接着剤で固定してレジンを流し込む。大連結子でレジンに連続性がない部分にはバイパスをもうけている。
30,重合後の状態。レジンの過不足はなく、クラスプ周りもきれいに仕上がっており、研磨の手間も最小限で済む。
31,研磨後の粘膜面。


まとめ

 以上のような方法で技工操作を行なえば、片顎で約2時間、上下顎でも3時間以内で間接法リベース・リライニングを行なうことができる。
 実際の臨床では午前中に義歯を預かり、夕食前に仕上げるケースがほとんどであるが、事前に患者のアポイントと技工室のスケジュールを調整しておけば、朝昼食の間、あるいは昼夕食の間に仕上げることも可能である。
 このように短時間で正確なリベース・リライニングを実現することは、患者・術者双方に有益な技術であると考える。


*注:図説一部には同一症例以外の写真も使用している 。

技工室

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