クラウン・ブリッジの適合性の追求
パターンレジンを利用したワンピースキャスト・ブリッジ
Production Plan Of One Piece Casting Bridge With Pattern Resin
Key Words:ワックスの凝固収縮,内部応力,応力解放,
はじめに
歯科補綴治療において重要な部分を担う歯科技工作業は、理工学的かつ材料学的な知識を必要とする。しかし、このことと正反対の位置にあるかもしれないが、熟練や勘といったような技能的な要素、いいかえれば文字や数値に表せない不確定要素が、かなりの部分、技工作業の中に介在していることも事実である。それゆえに、その不確定な要素のうえに立って論じられる精度では、諸材料の理工学的性質を判断したり、またこれを的確に利用することはできない。
クラウン・ブリッジ製作におけるワックス操作は、その中でも熟練を要する最たるものであると思われる。なぜなら確実なパターンを採得することで、はじめて埋没材の混液比や鋳型の焼却温度を調節し、設定できるからである。
そこで、クラウン・ブリッジ製作の注意事項を踏まえながら、これまでのワックス操作の欠点を補い、熟練を必要としない確実なワックスパターンの採得方法と強度的に問題のあるろう付をしなくてすむ、クロスアーチのロングスパンブリッジのワンピースキャスト・テクニックについて、一連の製作手順を紹介させていただく。
T.ワックスの性質
ワックスは歯科材料の中でもっとも安定性を欠く材料である。そこで、ワックスを扱ううえでつねに心に留めておかなければならないことは、液体から固体となるときの大きな収縮と凝固した時点から室温に至るまでのほぼ規則的に起こる収縮である。
この性質は水が凝固するとき膨張する現象を除けば、自然界のあらゆる物質にほぼ共通する性質である。
ワックスアップ時の変形としては、ワックスの凝固収縮による築盛時の変形収縮がある。ワックスアップの後に均等な冷却が行われた場合、ワックスの収縮率に応じた、相似形の少し小さいパターンができるはずである。しかしワックスパターン表面が接する、内面の支台歯と外面の空気との熱伝導率の違いにより、またワックスパターンの各部分の厚みの違いにより、凝固速度の差ができて不均等な変形収縮を起こす。加えて、収縮を起こさない支台歯があるために、ワックスの収縮は応力と言う形で内部に残留してしまう。
一般的に行われるワックス盛り上げで形成する場合は、加熱のときに応力が解放され、それが凝固するときに応力が残留する。このことはワックスを扱ううえでは忘れてはならない大前提であり、つねにワックスの性質を意識しながら、よりよい形で応力を閉じこめることを考えて、ワックスアップしなければならない。そして埋没材が硬化し終えるまでの一連の作業を、応力を内部に閉じこめたまま終えなければならないのである。
U.ろう付の問題点
無造作なワックス操作や不注意な埋没作業を行うと、鋳造体においては、ブリッジ支台歯の連結部分のマージンが開いてしまうことがある(1)。その他、不慣れや不注意などに起因するミスは、不適合を引き起こす。
ブリッジをろう付で制作すれば、陶材焼付用メタルの場合、ワンピースキャストに比べ前ろう付で約3割、後ろう付では4割から5割の引っ張り強度の低下を起こす*)。このことはブリッジを制作する場合、キャストかろう付か、それも前ろう付か後ろう付かによって、連結部分の面積を変えなければならないということである。咬合関係に制約のある臨床ケースではそれができない場合も多い。
またろう付か否かによって連結部分の面積が異なれば、ロングスパンのブリッジなどでは不均一なたわみが生じ、金属の疲労がある一点に集中するのは予想される結果であろう。
ブリッジ製作において、ろう付を行うことは、ろう付部分の強度の問題や、ろう付用埋没材の膨張収縮、ろう材自体の収縮、ろう材及びメタルの劣化と気泡や巣の問題、それに伴いポーセレン焼成時の溶着性、メタルの変形、ポーセレンの変色、そして口腔内における金属の変色と腐食など、思いつく限りでもさまざまなリスクを伴うのである。
そこで、ワンピースキャストでメタルフレームの製作を行えば、(2,3,4,5)これらのろう付に関するさまざまなリスクを、回避することができるのである(6,7,8,9,10,11,12)。
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1,不注意なワックスアップによって、ブリッジ支台歯のマージン部分が開いてしまうことがある。
2,3,4,5,ロングスパンブリッジのワンピースキャストのメタルフレーム。技術的な問題と、材料の適切な利用、理工学的な知識などの要素が、高次元で調和して、はじめて適合のよい鋳造体ができあがる。
6,7,8,9,メタルフレームに焼成されたポーセレン。ワンピースキャストで作られたメタルフレームは、ポーセレン焼成時の諸問題に関して、ろう付によるそれとは違い、さまざまなリスクを回避することができる。
10,11,12,注意深く制作した補綴物が、患者さんの口腔内で、できるだけ長い間生体の一部として機能してくれることを望む。
V.正確な鋳造体を得るには
ワックスは温度による膨張収縮だけではなく、外力により容易に変形するというレジンなどとは違った硬度に関する問題をもっている。それは、支台歯よりワックスパターンを撤去するとき、とくにロングスパンになればなるほど顕著に現れてくるものである。それゆえに、ワックスを扱う際には、熟練や勘といったような、技能的な力量が問われてしまうのである。しかし現状では、操作性、再現性などを考慮して、ワックスに代わるものは見あたらない。
そこで、ワックスパターンをレジンで補強してやれば、ワックスの外力により容易に変形するという問題点を補えるのである。
以下にその操作手順についてスライドで紹介させていただく。
13,11歯の陶材焼き付けブリッジ
14,軟質ワックスを支台歯に1層盛り、マージン部分1oを残して、その上をパターンレジンで補強する。
15,この時点でパターンを取り外してはいけないが、0.4o程度の厚みを確保する。
16,17,パターンレジンをサンドイッチして、ワックスにより形態を回復する。
18,シリコーンパテにて印象し、窓開けの目安にする。パターンレジンで厚みを確保してあるので、パターンがうすくなる心配はない。
19,マージン部分1oをカットして軟質ワックスで焼き付ける。
20,21,窓開けを終えたら埋没までは、なるべくワックスパターンに熱を加えないようにする。コネクト部分はパターンレジンだけでは外れやすいので、はじめに少量の瞬間接着剤で固定し、レジンで形状を回復する。
22,1度に支台歯3歯以上の連結はさけ、1歯おきに連結をし硬化を待つ。
23,最後尾をプラキャストバーで連結し、残りを、同じように連結する。このときも1度に連結せずに、2ピースずつを連結して硬化させることを忘れないようにする。
24,スプルーのランナーバー部分は、ワックスパターン撤去の際の補強のためプラキャストバーを用いる。熱可塑性のため、後部をプラキャストバーで補強する。
25,スプルーの連結は、長さをそろえて、やはりパターンレジンで行う。円錐台に固定する際も、熱の対流に気を付けることを忘れずに、リングの同心円上に埋没する。
26,27,28,十分な注意を払えば、ワンピースでも適合の良い鋳造体が得られる。
29,30,ワックスアップ時のシリコーンに歯冠色ワックスをながし、口腔内試適。
31,最後尾のバーは最後まで残したまま焼成する。
32,33,34,ワンピースキャストのため、焼成時の変形を気にしなくても良い。焼成用のスタンドは簡単なものである(プレシャスメタルの場合変形の可能性があるので、焼成用スタンドについては考慮を要する)。
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35,36,グレーズ終了
まとめ
ワックスアップから埋没に至る一連の作業では、細心の注意を払っても人為的ミスが生じるものである。今までは経験や技、勘などでこれらのミスを補ってきた。パターンレジンを併用したワックスパターン採得法は、この経験と技を補う方法である。
実際に筆者らのスタディグループでは、経験の浅い歯科技工士も、フルブリッジのケースをワンピースキャストで行い、良い適合を得ている。確実なワックスパターンを採得することによって、製品誤差をなくすことができる。そのうえで埋没材や混液比、リボンの厚み、鋳型の焼却温度などを自分なりにみつけて補綴物の適合性を追求していけば、口腔内で長く機能する補綴物を制作することができるのである。
参考文献
*,QDT誌特大別冊、現代の歯科ろう付テクニック、P367−P369、クインテッセンス出版、東京、1989年