強度と精度を考慮したブリッジのろう付法

Soldering Plan of Consideration to Strength and Precision


Key Words:荷重、応力,ひずみ,比例限度,弾性限度,極限強度,許容応力,


ろう付15.4k

はじめに

 ブリッジ製作において、適合精度などの要件をクリアすれば、ワンピースキャストで製作することが、ろう付によるそれよりも、強度面において優れていることは周知の事実である。しかし、現状においては、すべてのブリッジをワンピースキャストで製作することはできない。たとえば、ワンピースキャストの適応である同一金属のブリッジの場合でも、一部分の鋳造欠陥や適合不良においてはろう付を行なう。
 フルキャスト・クラウンと金属焼付ポーセレン・クラウンとにみられる異種金属の連結の場合においては、レーザーによる溶接も実用化され、注目されているが、ろう付で製作することがまだ一般的ではないかと思われる。しかしながら、臨床においてブリッジの破折はろう付部分に集中していることもまた事実である。
 ろう付に際しての強度の問題は、ブリッジの寿命に関わる大問題であり、強度を確保するろう付の工夫が必要となる。そこで、筆者が日常行っている、強度を確保するとともに、精度も向上するろう付法を紹介する。


T.ろう付の概念

 ろう付とは、金属の接着に関して、接合される金属の融点より低い温度で溶ける合金を融着させて接合する方法で、母材の金属を溶融させることなく行なわれる。ろう材の一般的な所要性質はいろいろ求められるが、そのなかでもろう材の融点は、熟練度合いによるが、一般に母材の融点より100℃以上低くなければならない。
 適切な操作と材料で行なえば、この温度差がろう付部分に適度な原子の拡散を起こし、化学的な結合力が増す。しかし、ろう材と母材の融点の温度差があまりにも大きいと、化学的結合よりも、むしろ表面の濡れによる物理的結合力に頼る度合いが多くなってしまう。 前者が一般の鋳造用合金のろう付や、陶材焼付用合金の前ろう付にあたり、後者が後ろう付にあたる。それについては、陶材焼付用合金では、ろう付で製作すればワンピースキャストに比べ、前ろう付で約30%、後ろう付では40%から50%もの引張り強度の低下を起こす、との計測値が発表されている(*2)が、強度の低下がその数値の差に現れているものと推察できる。


U.ろう付の問題点

 ブリッジ製作において、ろう付を行なうことは、ろう付部分の強度の問題や、ろう付用埋没材の膨張収縮、ろう材自体の収縮、ろう材及びメタルの劣化と気泡や巣の問題、それに付随するポーセレン焼成時の溶着性、メタルの変形、ポーセレンの変色、そして口腔内における金属の変色と腐食など、思いつく限りでもさまざまなリスクを伴うのである。
 臨床に携わっていて、口腔内で多くみかける補綴物の破折のケースに、ろう付部分からの破折がある。とくに、前歯部のポンティックの途中にあるろう付部の破折をよくみかける。これらの多くは、ワンピースキャストの連結部分とほぼ同じ面積で、後ろう付された、明らかに強度不足と思われるものも少なくはない。
 ブリッジを製作する場合、陶材焼付用合金では、ろう付で製作すればワンピースキャストに比べ、引張り強度の低下を起こすことは前に述べたが、このことは、ブリッジを製作する場合、連結部分に同じ強度を得ようとするならば、キャストかろう付か、それも前ろう付か後ろう付かによって、連結部分の面積を変えなければならないということである。 たとえば、後ろう付による50%の強度の低下を、同等の強度を得るためにろう付面積で確保しようとすると2倍の面積が必要となる。咬合関係に制約のある臨床ケースではそれができない場合も多い。また、ろう付か否かによって連結部分の面積が異なれば、ロングスパン・ブリッジなどでは不均一なたわみが生じ、金属の疲労がある一点に集中するのは予想される結果であろう。


V.材料力学からみた歯科鋳造用合金

 金属に荷重を加えた場合、応力とひずみが発生する。比例限度以内では応力とひずみは正比例する。これは材料力学の基礎をなすフックの法則である。

   フックの法則
      応力/ひずみ=一定
      応力=比例定数(弾性係数)×ひずみ

 荷重の種類としては、引張り荷重、圧縮荷重、せん断荷重などがある。歯科用合金の場合、引張り強度の試験結果については目にする機会は多いが、実際の使用に際しては、金属に一種類だけの荷重が加わるわけではなく、複合的な荷重が加わる。また、荷重の速度による種類として、静荷重と動荷重に分類され、動荷重は、繰返し荷重、交番荷重、衝撃荷重などに細分化される。
応力ひずみ図  応力とは、これら外部からの荷重に対抗して金属内部に生じる力であり、そして、金属が荷重を受けて応力が生じれば、その金属は変形する。それがひずみである。
 金属に荷重が加わる場合、比例限度内なら応力に比例してひずみが生じる、弾性限度内ならば荷重を取り除けばひずみは残らない。弾性限度を超えた荷重が加わる場合には、荷重を取り除いても、永久的なひずみが残ってしまう。そして極限強度に達したのち、その金属は破断してしまう。(応力ひずみ図)
 口腔内で金属補綴物が破折するまでの行程は、このような直線的な破折は少なく、摩耗や繰返しの荷重により金属が疲労して、より小さな荷重により、破断限界に達してしまうことが大部分である。
 われわれが知ることのできる引張り強さの数値は、この極限強度のことである。しかし、実際に利用できる強度は、瞬間的には弾性限度までであるが、口腔内での安全な長期使用を考慮した場合、材料力学の分野からみて、安全率から導かれる許容応力以内までであることを承知しておくことが必要である。
また許容応力は極限強度から安全率によって導き出すことができる。

許容応力=極限強度/安全率
安全率の例(Unwin氏)
材料 静荷重 繰返し荷重 衝撃荷重
片降り 両降り
3 5 8 12
鋳鉄 4 6 10 15
5 6 9 15

筆者が主に使用している金属の許容応力試算値(安全率は試算) 引張り強度、比例限界は、ヘラウス社カタログデータ
引張り強度 比例限界 許容応力
静荷重
(安全率 5)
衝撃荷重
(安全率 15)
(陶材焼付用)
ハラボンド
75kg/mm2 60kg/mm2 15.0kg/mm2 5.0kg/mm2
(鋳造用)
マインゴールドSG
73kg/mm2 67kg/mm2 14.6kg/mm2 4.9kg/mm2

 咀嚼中に生じる実際の応力は、動荷重のため測定は難しいが、静荷重に関しては最大咬合力は人により差があり、11sから125sにまで及んでおり、平均値は78sであるとの報告がなされている(*4)。動荷重となれば、この数値よりはるかに大きくなることが予想される。このことが補綴物の耐荷重能力を工業製品や機械部品のように明確に想定できない最大要因である。
 骨、歯牙、歯根膜の衝撃吸収能力を想定せずに、静的荷重平均値の78sで許容応力をもとにブリッジ連結部の面積を求めると、衝撃荷重に耐えるためには15.6〜16.0o2必要である(直径4.5oの円に値する)。この部分を後ろう付によって回復するには、この2倍の約32o2もの面積(直径6.4oの円に値する)が、必要になってしまう。これは、臨床ケースにおいては、とても達しえない数値である。 
 このことから、補綴物の製作にあたっては、できる限りの強度を与えることが想定できない荷重に対する最善の措置である。
 歯科補綴における金属の工作法は鋳造が主体であるが、将来的には鋳造に比べより強度があり精密な加工が可能な鍛造などの塑性加工が取り入れられるものと筆者は考える。


W.強度を確保するろう付の工夫

 ろう付の強度を考えた場合、ポンティックの連結部分は、キャストの場合と同じ面積で同じ強度をもったろう付が理想的ではあるが、これは不可能なことである。唯一の解決策がろう付面積の拡大である。歯周組織の応力負担を考慮すれば、症例にもよるが、両側が支台歯の場合は、問題なくろう付が行なえる。
 問題となるのは欠損部位の、ポンティック部でのろう付である。それでは、いかにすれば強度を確保したろう付が行なえるのか。筆者が日常臨床で取り入れている、前ろう付、後ろう付それぞれの場合について、有効なろう付法を紹介する。

  1.前ろう付

 前ろう付の場合、面積を拡大する方法として、ポンティックの中央部でのろう付が有効な方法である。金属の断面積を単純比較すれば、隣接部の約3倍、耐荷重比較では2.1倍になる。ポーセレン焼成時の諸問題は抜きにしても、ろう付による強度低下に限り、不利益はない。
 しかし、ポーセレン焼成時の変形に対処するために、焼成用のブロックやスタンドは考慮すべきである。筆者の場合は、極力ろう付を避けるために、基本的にワンピースキャストで対処しているが、鋳造不良や一部分の不適合、またテンポラリーの破折などによる口腔内での不適合によっては、前ろう付は不可避である。

ろう付1 ろう付2 ろう付3 ろう付4 ろう付5
1 2 3 4 5
 1:両側が支台歯の場合は問題なくろう付が行なえる。
 前ろう付を行なった場合は、陶材焼成時の変形に対処するために、焼成用スタンドは不可欠である。
 2,3:クラウン内面にワックスを流して、鋳造用埋没材で作ったスタンド
 (強度がないので小さいケースのみに使用している、十分に空焼きをしておくことが必要)。
 4,5:ろう付部分が多く、ポンティックを含む場合には、金属製の陶材焼成用スタンドを自作して対応している
 (自作スタンドは陶材焼付用非金属合金)。

  2.後ろう付

 強度に対する認識が重要なのは、後ろう付である。これに関しては、継ぎ手による工夫で対処することが、良い結果を導き出す選択肢の上位に位置するものである。
 後ろう付の強度は、キャストの50%であるが、連結部分の面積の1/3をレスト状に三角柱の形態で、2/3だけ延長した場合のろう付面積は、頬舌幅:2、高さ:3の比率の長方形と仮定した場合、平面でのろう付面積の約1.8倍になる。この数値はキャストによる強度に対して90%を回復できることを示している。
 ろう付に際しては、ろう付面積を少しは意識的に拡大して行なうが、10%強の断面積の拡大で、ろう付の強度はキャストによるそれと同等の値にすることができるのである。この数値はろう付の接着力の単純計算値ではあるが、隣接面の平面強度においても、この状態で約75%を回復している。
 実際の荷重負担は、単純に平面でろう付したものに比べて、ろう付面の方向の分散による荷重の種類の分散(引張り、圧縮、せん断など)によって、耐久性にはより有利に働くのである。このことは強度のみならず、ろう付精度に関してもいえる。ろう付面の方向を分散することによって、ろう材の凝固収縮が各方向に分散され、互いにうち消しあう結果、精度向上に貢献していることも、このろう付法の意図するところである。

ろう付6 ろう付7 ろう付8 ろう付9
6 7 8 9
 6,7:ろう付の強度を考慮すると、ろう付面積は広いほど良い。平面的に面積の確保ができなければ、継ぎ手による強度の確保が有効である。
 8:貴金属合金のろう付で高純度の金ろうを使用した場合、毛管現象により、ろう付の間隔は、ほぼ適合している状態(50〜100ミクロンで接触しない程度)で十分流れる。間隔が狭いために必要最小限のろう材で良く、ろうの収縮の影響も、ろう付面が分散されることと相まって、わずかである。
 9:ろう付面積が大きく毛管現象が全体に及ばないと思える場合、ろう付面にろうの流れる道を付与することで解決する。

ろう付10 ろう付11 ろう付12 ろう付13
10 11 12 13
 10:後ろう付は、すべて炉内ろう付を行なっている。埋没材全体が均等に加熱されるように、底をもち上げて、熱のまわりを良くする。
 11:最小限のろうで、十分に流ろうしている。強度の確保も十分である。
 12:レスト型継ぎ手によりろう付けされたブリッジ。ろう付部分からの破折は、回避できるのではなかろうか。
 13:分割されないリジッドな模型に適合させることにより、ろう付精度についても十分なレベルにあることがわかる。フルベイクタイプの場合に、咬合面全体をポーセレンにより回復できる利点もある。

 実際の臨床で、ろう付強度の問題が顕著に現れるケースとしては、欠損部位の多いブリッジや歯冠長の短いブリッジ、不適合によりろう付を想定していないポンティク部分の後ろう付がある。この場合にも、適切な継ぎ手の使用によって対処することが、口腔内での想定できない荷重に対抗するためには有効である。
 このように、少しの工夫とわずかな時間で、ろう付の強度と精度を、格段に向上させることができるのである。

ろう付14 ろう付15 ろう付16 ろう付17 ろう付18
14 15 16 17 18
 14:咬合面にスペースがなくレスト形態がつくれない場合、わずかでも維持形態をとることにより、ろう付強度は飛躍的に向上する。
 15:ポンティック中間部分のろう付は、総面積を少しでも多く確保できるような形態にする。
 16,17:欠損部分の多いブリッジ。一番不利と思われる犬歯部分でのろう付。十分な強度を確保する形態を考慮する。支台歯にポンティックが乗る形で、できる限り広く、太いろう付面を与える。
 18:大きいブリッジの場合、強度を考慮したろう付が、いっそう重要になる。

ろう付19 ろう付20 ろう付21 ろう付22 ろう付23
19 20 21 24 23
 19:歯冠長の短いブリッジ。やはりろう付は不利である。
 20,21,22:ろう付面を、隣接部以外の場所に設定する。このケースは、ポンティックを上下斜めに分割して、ろう付面を設定している。
 23:ろう付部は十分な強度を確保できた。しかし、鋳造の隣接部は厚みが確保できないため、できる限りの幅径を与える。

ろう付24 ろう付25 ろう付26 ろう付27 ろう付28
24 25 26 27 28
 24:ワンピースキャストによって製作したブリッジ。口腔内での不適合により正中部でろう付を行なう。
 25:金属の断面は、ろう付を想定していないために、このままでは明らかに面積が不足している。
 26:継ぎ手を用いてのろう付を行なう。隣接部平面上からろう付面を外すことにより、隣接面の強度はキャストした継ぎ手の金属の強度が得られる。継ぎ手は切断面いっぱいに入れる
 27:炉内ろう付を行なう。火炎ろう付に比べて技術的要件の占める割合が少ないため、安心である。
 28:ろう付を終え、研磨完成したブリッジ。結果的には、突き合わせろう付に比べ、約2倍の強度を得ることができる。このように、少しの工夫とわずかな時間で、ろう付の強度と精度を、格段に向上させることができるのである。


まとめ

 今回取り上げた、強度を考慮したブリッジのろう付法は、これまでもいろいろな文献で諸氏により系統立てた論文が発表されており、すでに日常の技工作業に取り入れている方も多いものと思われる。筆者は長期にわたりこの方法を用いているが、その後の補綴物の予後をみてみると、ろう付部分の強度の問題に起因する破折に関しては、克服できたと思う。
 しかしながら、数多い技工作業の中で、ろう付に範囲を絞っただけでも、本稿の中の(ろう付の問題点)で示した数々の問題が残されていて、まだまだ改善の余地がある。われわれ臨床に携わっている歯科技工士は、ろう付に関する強度や、ろう材の物性などの材料学的な諸性質の検証を、みずから行なうことはできないといってもいいだろう。それらのデータに関しては、メーカーや研究機関、または各文献によって得るしかない。
 しかし臨床に携わっていることによってわれわれが得るものは、数値によるデータではなく、積み重ねてきた経験とそれに基づく応用力、すなわち想像力による創意工夫ではないだろうか。
 ろう付の強度向上の工夫は、口腔内で破折した補綴物を目にしたときから始まることであり、いかにしてより良い補綴物を長く機能させることができるかを模索して進むべき道の、通過点である。そして本稿は、強度不足で破折する補綴物をつくる前に、早く通過点にいざなってくれる先人たちの工夫として受け止めていただきたい。


  参考文献
*1,井上規:クラウン・ブリッジの適合性の追求,−パターンレジンを利用したワンピースキャスト・ブリッジ−,QDT,22:695〜698,1997年5月
*2,K.Eichner/W.Hannak:西ドイツにおけるろう付に関する研究−ろう付された歯科用合金の機械的性質ならびに顕微鏡的観察−,野口八九重 訳,QDT誌特大別冊,現代の歯科ろう付テクニック,367〜369,クインテッセンス出版,東京,1989年
*3,森茂樹:材料力学 9〜26,名現社,東京,1988年
*4,E.W.Skinner/R.W.Phillips:スキンナー歯科材料学(上)三浦維四 川上道夫 林一郎 塩川延洋 共訳,39,医歯薬出版,東京,1969年
*5,E.W.Skinner/R.W.Phillips:スキンナー歯科材料学(下)三浦維四 川上道夫 林一郎 塩川延洋 共訳,468〜485,医歯薬出版,東京,1969年

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