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AZTEC's Mexican Journey Title

最終更新日:1997/07/21

メキシコへ旅行したときの印象を詩にしました。
Special Thanks to Mr.Dylan Robertson

[ メキシコに行くんだよ ][ 火吹き男 ][ 蛇と玉蜀黍 ]
[ 死者の道 ][ 鳥になるため 神になるため ][ 夜間飛行 ]
[ 密林の幻視 ][ 遠き夢 ][ カンペチェの夜 ]
[ 尼僧院にて ]


メキシコに行くんだよ

Photo by Kohichi Tsuda メキシコに行くんだよ
やっとこさ
メキシコに行くんだよ

三度目の正直さ
長かった 本当に
17年
待ってた甲斐があったよね

ついにこの日が来るなんて
今でも信じられないよ

待ってておくれ メキシコよ
俺ら 今から行くからさ
待ってておくれ セニョリータ
もう少しで 逢えるからさ

メキシコに行くんだよ
麗しの
メキシコに行くんだよ


 「なぜメキシコなのか?」と問われても明確な答えはないのですが、とにかくメキシコに魅せられています。
 メキシコを意識し出したのは、小学6年生ぐらいの頃からです。当時NHKでやっていた「未来への遺産」という番組で歴史に興味を持ち、父親に「アステカ文明展」へ連れて行ってもらったことが決定的でした。これで、将来は大学でアステカ史を勉強しようと決めたのですから……。しかしまぁ、大学で勉強したことは、社会人になった今では何の役にもたっていませんねぇ(笑)。
 ちなみに、この写真はソチミルコで船遊びをした時のものです。




火吹き男

Photo by Kohichi Tsuda 交差点の角で
信号待ちの車の前で
ポリタンクを片手に
彼は火を吹く

妻と子を養うために
自分自身が生きるために
彼は火を吹く
癌になる恐怖を抑え込みながら

「これしか仕事がないんだ」
子供の頃は車の窓拭き
今は大道芸で日銭を稼ぐ

命を賭けて
今日を生きる
明日は見えない


 メキシコは貧富の差が激しい国です。
 メキシコ・シティのソナ・ロッサ地区(東京で言えば銀座に相当するところです)を歩いていても、物乞いをしている人に何人も遭遇します。しかも,それが3〜4歳ぐらいの女の子だったりするので、ものすごくやりきれない思いがしました。
 また、道路で信号待ちをしている車めがけて、窓拭きの少年達がむらがってきます。この詩のように、火を噴く大道芸を見せている若い男もいます。
 かれらはみんな、インディヘナです。白人系は一人もいませんでした。これが、メキシコの現実です。




蛇と玉蜀黍

Photo by Kohichi Tsuda 失われた神殿のそばに立ち
石彫りの蛇と玉蜀黍を眺め見て
人の想いの不可思議を
今一度 考えて

微風よ吹け
陽の光 燦々と
草原の匂い あおあおと
もういない人々よ
何処へ消え去っていったのか

塗り込められた千年の
歴史の重さに耐え続け
独り立ち続ける神殿よ
神に見捨てられたというのに

Quo Vadis,Domine?

祭祀する人もなく
祭祀される神もなく
時空の狭間に ただ
微風よ吹け


 テオティワカン(Teotihuacn)遺跡にある「ケツァルコアトルの神殿(Templo de Quezalcoatl)」の側面は、ヘビとトウモロコシのレリーフで飾られています。
 でも、なぜヘビとトウモロコシなんでしょうねぇ?
 ちなみに、この写真はケツァルコアトルの神殿のタブレロ"髪飾りにリボンを結んだ神”と蛇頭を撮したものです。




死者の道

Photo by Kohichi Tsuda どろどろでんでん
どろどろでんでん

骸骨の葬列が
一本道をのろのろと

色とりどりの旗がぱたぱた
朱い太鼓の音色が

どろどろでんでん
どろどろでんでん



うろうろきょろきょろ
うろうろきょろきょろ

土産物屋の隊列が
一本道をぞろぞろと

いろんなガラクタを手にとって
「1円。1ドル。安いよ!」

うろうろきょろきょろ
うろうろきょろきょろ


 なぜそのような名前がついたのかは知りませんが、テオティワカン遺跡のメイン・ストリートには「死者の道(La Calla de los Muertos)」という名前がついています。
 この写真は、「死者の道」の突き当たりにある「月のピラミッド(Pirámide de la Luna)」と、向かって右手にある「太陽のピラミッド(Pirámide del Sol)」を撮したものです。
 写真では人気がありませんが、実はまことに怪しげな土産物屋のおっちゃん達がたくさんたむろしています。で、これがまたしつこいのなんの。(^◇^; いくら「いらない!」って片言のスペイン語で言っても、「1円。1ドル。安いよ!」と日本語で(!)せまってくる訳です(実話)。まぁ、誰も買わないんですが、マジで1円玉を出してやろうかと思いました(笑)。




鳥になるため 神になるため

Photo by Kohichi Tsuda 見上げるばかりの
pirámideの石段を
一歩一歩
ゆっくりと登りつめ

鳥になるため
神になるため
頂上から飛び降りる


 テオティワカンの「太陽のピラミッド」では人身供儀(要するに人身御供ですね)が行われ、供えられた人は「神」になったとか。
 右の写真は、「月のピラミッド」の頂上から「死者の道」と「太陽のピラミッド」を望んだところです。まぁ、どこにでも見られるある種「有名な」アングルですが、テオティワカンの全景を撮ろうと思うとこのアングルが一番なんですよね(笑)。
 ちなみに、私はこの「月のピラミッド」に上った後、「太陽のピラミッド」のてっぺんに登ったところで、酸欠状態になってへたりこみました。(^^ゝ
 だって、標高が2,000m以上あるところなんですよ、テオティワカンって。




夜間飛行

Photo by Kohichi Tsuda 満天の 星明かり
青い河 瞬いて
一面の 街明かり
白い河 煌めいて

幾百万の 人の溜息
翼の下に 抱え込み
幾千万の 人の悲しみ
闇の中に 溶け込んで

全てを振り捨てるために
友よ こんなに遠くまで
旅する僕を 笑うがいい

点描されたこの街の
輪郭すらも定かではなく
唯 忘却の彼方へ消え行くのみ


 メキシコ・シティは排気ガスの街です。しかし、飛行機の窓から見る夜景は、何とも言えない美しいものでした。
 この写真は、パレンケ(Palenque)遺跡の「葉の十字架の神殿(Templo de la Cruz Foliada)」の上から「太陽の神殿(Templo del Sol)」(左)「14号神殿」(中央)「宮殿(El Palacio)」(左)を撮したものです。



密林の幻視

Photo by Kohichi Tsuda 密林の大樹海の中より現れる
神殿群を垣間見て
私の心は打ち震える

「ついに来た。ついに見た」
私の内にこだまする叫び声

1月だというのに
真夏の陽射しを浴びながら
石灰岩質の神殿の
急勾配の石段をよじ登る

頂上で汗を拭いながら
深緑色の地平線と
蒼穹に浮かぶ積乱雲を
眺め見るこの快感

その昔 神官達は
金星の運行を観測し
暦を決めたという
あふれんばかりの銀河の下で

この一大パノラマでは
確かにそうかもしれない
私は神官の幻を見たようだ


 マヤ文明では、天文学が発達していました。
 なぜそんなに天文学が発達したのか? それはピラミッドの頂上に立てば答えが出てくるかもしれません。樹海の上に広がる蒼穹を見上げれば、夜ともなれば満天の星空が広がるであろう事は、容易に想像がつきます。
 この写真は、パレンケ遺跡の「碑銘の神殿(Templo de Las Inscripciones)」を撮したものです。




遠き夢

Photo by Kohichi Tsuda いつの日か夢見てた
異国の街をあてもなく旅をする
きみとふたりで

いつかまた逢えるよね
約束しても
蒼い空にはばたく鳥は答えない

旅の重さをはかるように
胸の痛み かすかに
いつのまにか消えていった
夢のかけら 探しながら

流れ行く白い雲 茜色に染めて
遠き夢 遥かな想いの彼方へ


めぐり逢い別れ行く 季節の中で
駆け足で走ってく きみとぼくだね

淋しげに微笑んで さよなら言った
河の流れ 静かに
時は戻らない

風に揺れる木々の梢
夏の光 輝き
煌めく星 銀河の下で
ぼくはひとり さまよい歩く

めくるめく時の中で
夢見た数だけ
裏切られ 傷ついて
あふれるきみの涙


 私が初めて行った外国がメキシコです。
 もちろん、子供の頃からあこがれていた国ということもありますが、この時は、センチメンタル・ジャーニーでもありました。(^^;




カンペチェの夜

Photo by Kohichi Tsuda 驟雨に濡れし石畳
カテドラルの影 ほのかに映えて
街角に流るる ラジオの歌声

古き街並み 人の姿もなく
遠くに聞こゆ 潮騒の調べ
遥か異国の懐旧の情

港町の賑やかさも
今はただ寝静まり
夜の静寂に映る星影

海賊の姿 今はなく
過ぎ去りし幻
ただ うたかたの夢


 カンペチェ(Campeche)はメキシコ湾に面した植民地時代の名残が色濃く残る港町です。
 カリブ海を荒らし回った海賊に備えて作られた砦が、この町の「観光名所」といったところでしょうか。この写真はカンペチェの旧市街の夜景です。




尼僧院にて

Photo by Kohichi Tsuda ぢりぢりと
夏の陽射しを背に受けて
尼僧院の中庭に
立ち尽くす

いつかしら
ガイドの声も溶け失せて
古の風の詩に
耳をかす

複雑怪奇な石彫りの前
ただ声もなく
じっと見つめる

白亜の神殿の中
青光る蜥蜴
顔を出す


 メキシコはとても不思議な国です。
 先コロンブス期と植民地期と現代の三つの文化が、入り交じり、連続し、断絶しながら存在しています。
 いつかまた、この地を訪れたいと思っています。



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