両神山
無体力トレッカー、ゾンビになるも秩父の森に癒される
1999年5月29日(土)曇り
メンバー:単独行
コース :自宅3:00−5:00白井差5:30−7:00一位ガタワ7:20−8:30両神神社8:40−9:00両神山頂10:00−(梵天尾根)−12:20大峠12:45−13:45白井差
- 「山登りに行くの?今夜マンションのお友達と飲みに行くから、早く帰ってきてよね!」「ハイハイ」。九州の出張からもどった金曜日の夜、妻の言葉に適当に生返事を返しながら用意をする。2時間ほど仮眠を取り3:00に自宅を愛車オデッセイで出発。途中秩父市内のコンビニで買い物をして5:00に白井差の民家Pに到着。一番乗り。早く着きすぎて迷惑かな?と思ったら、玄関から人がよさそうなご主人が領収書を持って出てくる。駐車料金1日1000円也。毎週ご苦労なことと思う。
- 天気は午後から晴れるということだったが、山はガスで覆われて山頂展望に不安を抱く。白井差小屋の注意書きを読んで、登山届に記入、いざ出発!と、元気をだしたものの出張帰りの疲れた身体は正直で、昇竜の滝に着いた頃(15分くらいか?)には情けなくもすでに息があがる。足が重く、ザックも重い。汗も滝のように吹き出す。あたりはは森の静粛が漂う。人の気配もない。
・「きついよう」「つらいよう」 沢沿いの道はさほど急登とは思えないが、一足毎に体力を奪っていく。普通は30分くらいで身体が順応してくるのだが、この日は本当に調子が悪い。 いつになっても10m登っては立休憩で息を整えるありさま。しかも集中力を失っているのか何でもないところで道を間違える(これが山の恐ろしいところ)白井差−山頂は高度差800m近くあり、泣きそうになる。ふと「敗退」の2文字が頭をよぎる。
両神の森は素晴らしい!
- 一方で両神山の原生林は本当に素晴らしい。高い木立、広い空間、しっとりとした雰囲気、新緑の間から適度にこぼれてくるやさしい光線。 森の中に独特の何かが漂っている。こんな森は初めてだ。 調子は相変わらず超最低。ついにサヨナラホームランを打たれた投手のように両手をヒザにおいて頭をガックリと垂れる。ふと地面を見ると偶然にもそこにミツバツチグリの可憐な黄色い姿がある。「がんばりなさい」と言っているかのようだ。素直な私はさらに頑張る。
ガイドにあった水場を過ぎて、力をふりしぼりやっと一位ガタワ(変な名前だ)に到着。大休止。ここまで一人も会わず、両神の森を独り占めにしたような気分になったことが嬉しい。
一位ガタワ
鎖場を超えて
・コンビニで買ったバームクーヘンを5個食べ、サプリで喉を潤す。15分位して一人上がってくる。聞けば群馬・渋川から来られたという。さらに5分ほどして大学生風の3人組が上がってくる。久しぶりに人間に会ったような気がする。
身体にむちを打ち再び歩き出す。いきなりの鎖場をクリアすると、木の根が階段のように続いている登りに出くわす。また徐々に体力を消耗する。この頃から先ほどの「渋川氏」と行動を共にする。かなりのベテランで5月連休中に百名山5つ登頂したという。怪物だ。
- 木の名前、山菜の名前を教えてもらいながら、無事両神神社に到着。途中によった「のぞき岩」からの展望はガスのため何も見えず。ただ咲き残りのヤシオツツジ が麗しいピンク色で迎えてくれた。
神社のこま犬は狼だ。神社から鞍部の休憩舎(あずまや)までは新緑のプロムナード。今までの奈落の底モードからルンルンモードに変わる。
小休止しているとガスの合間から山頂が幻想的に垣間見える。いよいよファイナル・アプローチだ。
両神神社のこま狼山頂が一瞬見えた!
- あずまやから一旦下り、鎖場をいくつかこなし、ほどなく山頂に到着。最低の体調とは言え、こんなにつらかった事は初めてで、3時間半の激闘を思い、心の中で何回もバンザイをする。(単独行ではなかなか本当のバンザイはやれない)山頂は先行組が4人ほど。ガスで展望はなし。ほんの一瞬、三宝山(埼玉県最高峰)が見えたときは山頂が一時盛り上がる。展望がなくても達成感とすばらしい森をひとりじめできた気分で大満足。小学生のとき以来、何回山頂に立ってもうれしさは変わらない。
- おにぎり4個と、お湯を沸かして味噌汁を作り午前9時の昼食をとる。先ほどの「渋川氏」と3人組が先に出発する。お礼を言って見送った私はさらにコーヒーを作る。極上の味。このために山に登っていると言っても過言ではない。うっかりバームクーヘンをひとつビニールがついたまま崖に落としてしまう。取りに行こうと思ったが、足を滑らすとあの世に行きそうなのであきらめる。この場をお借りして山の神様と皆様にお詫びします。1時間ほどうだうだして、そろそろ重い腰を上げ、梵天尾根縦走に向かう。
山頂にて(渋川氏撮影) うれしかった
みよし岩より幻想的な世界
- ・赤城で味を占めた「2本ストック」でぐんぐん下る。登山口に「ストック禁止」の注意書きがあったことを思い出す。登山道の土の部分だけにストックがつくよう注意しながらの下降。
先行した3人組に追いつく。「早いですね」と言われ気を良くしているのも束の間、ミヨシ岩への登りはこれまでに無く厳しい登りで、また泣きそうになる。立ち直りモードから一転、奈落の底モードに戻る。半ばゾンビ状態で辿り着いたミヨシ岩では展望は無いが秩父の原生林と岩峰がガスに巻かれており、その幻想的な姿に感動する。
その後登ったり下ったり(下ろうとしたらロープが張ってあり、おかしいなと思って戻ろうとした瞬間ふと上を見上げると鎖があって、眼が点になった)足を滑らしたり、岩の上でバランスを崩したり、さすが百名山と思ったり、悪戦苦闘しながら、ほうほうの体で大峠に到着。お湯を沸かしてコーヒー大ブレイクで生き返る。山頂で中判カメラを重そうな三脚で写真を撮っていた人が後から降りてくる。さすがにザックは重そうだ。25キロはあるという。怪物だ。
- 登山口の白井差まで1時間30分と書いてあるが、うっそうとした原生林の沢を楽しみながら、飛ぶように1時間ほどでPに到着。登りで泣きそうになったり、岩場で緊張したり、立ち直ったり、ルンルン気分になったり、幻想的雰囲気に感動したり、嬉しくなったり、感情的に大変忙しい一日であった。
次回は展望の良い時期に再登を目指したい。もちろん体調を整えて・・・・・
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