武尊山
無体力トレッカー、山で食いまくり!
1999年6月5日(土)晴れ
メンバー:単独行
コース:
自宅0:00−3:30武尊神社5:40−(避難小屋経由)−10:10沖武尊頂上
(武尊山最高峰2158m)11:30−12:30剣ヶ峰直下分岐13:00−(武尊沢)−16:20武尊神社
- 今回は体調を整えて準備万端で出発・・・・と思うだけで、結局うだうだして午前0時の出発となってしまう。愛車で埼玉・新座を出発、一路水上ICへ向かう。途中ちょっと道に迷ったりしながらも無事、武尊神社P(=裏見の滝P)に3:30頃到着。すでに2台先客がいる。テントを張って寝ているようだ。こちらも夜が明けるまで仮眠を取ることにする。起床予定は4:00、登山開始は4:30だ。
- なんて、30分で起きれるわけがなく目を覚ますと5:00、慌てて仕度をする。みると先客のテント組は朝食をとっている最中。中高年数名のグループだ。軽く挨拶をして出発する。今日は先週よりも体調はよさそうだ。武尊神社で安全山行を祈願し、快調に林道を進む。やがて山道に入り、途中の沢で道に迷ったものの無事剣ヶ峰方面との分岐に到着。ここで登山口から山頂までの標高差を改めて確認する。なんと1100m程度あることに今さら気付き、先週の両神山(標高差800m程度)の苦闘を思いだし戦意がダウンする。そのうち先ほどの中高年グループ(女性あり)が追いついてきたので先に行ってもらい、私は後ろを付いていくことにする。
- 分岐からは初級レベルの急登で、最初は何とか彼らのペースに付いて行けたものの、「1100m」が頭から離れない私は徐々に離されてしまう。恐るべし中高年パワー、と自分の無体力さを棚に上げて変に感心する。急登にあえぎ小休止していると、どこからともなく羽虫の大群がやってきて廻りをぶんぶんまとわりつく。まるで早く登れえ、と急き立てているようだ。やがて中高年グループには完全に見えなくなり、孤高の戦いが始まる。分岐から1時間以上登っただろうか、避難小屋付近の尾根筋に辿り着いたときは、すでに息は絶えだえ汗まみれ、腕時計の高度表示は1600mを指している。
大休止にてポーズをとる無体力トレッカー
- 尾根筋にピンクとホワイトのシャクナゲがそれぞれ一株ずつ咲いていた。しばらく休んでいると、やはりこれまたかなり年配の夫婦が登ってくる。またか、たまにはルーズソックスをはいた女子高校生の団体でも登ってくればいいのに、なんてお馬鹿なことを考えながら「シャクナゲが綺麗ですね」などと笑顔で会話する。「今の登りはハードでしたね」と言うと、「この先がもっと大変らしいですよ」の言葉にあっという間に憂鬱のきわみに達する。地図で確認すると、なるほど等高線がバームクーヘンの年輪のようだ。立ち直れないまま半分ヤケで先に進む。
- 私にとっては上級レベルの急登にヒーヒー言いながら、年配の夫婦の後を追う。何で休まないんだあ、と心の中で絶叫するもどんどん彼らは登って行く。いいもんね、どうせ俺は無体力だもんね、ついに半ば開き直り途中大木が倒れているところで大休止。ポーズをつけて写真を撮ったり(ミニ三脚持参)、コーヒーを沸かしたり、パウンドケーキを食べたり、とことん自分の世界を堪能する。蒟蒻畑も袋の中の半分をたいらげる。何組かやり過ごした後、おもむろに立ち上がり核心部へ突撃。バカ食いしたおかげでザックは少し軽くなるが、身体が重くなってしまい後悔する。
この景色に感動!(写真がへた)
- ロープがかけてあるところや鎖場では無体力のくせに気分はまるでアルピニスト。鎖場では、岩場の途中で手を伸ばしてセルフポートレートを撮る始末。時折雪渓もあらわれ、さすが2000m峰と思いつつも、ぬかるんだ土が無体力トレッカーを容赦なくいじめにかかる。雪で道に迷うところもあり、単独行での冬山は決して行かない、と心に誓う。
- 鎖場を何度か過ぎ、ついに藤原武尊の肩に飛び出した。突然視界が開け、思わず我を忘れて叫び声をあげてしまう。(本当だよ!)
- 凝視したその先には、新緑に染まった見事な黄緑色のすそ野が悠然と足元からなだらかに遥か遠方に流れ、それが朝日に眩しくキラキラ輝いている。そしてその黄緑が終わるか終わらないかのところに、見よ、谷川連峰や朝日岳、巻機山(と思う)が誇らしげにそそり立ち残雪を光り輝かせているではないか。思わず涙をうかべながら神を崇めるかのごとく両手を前方に差し出し・・・なんて、深田チックに感動を覚える。しかもここから沖武尊山頂までは咲き始めのシャクナゲと好展望のプロムナード。夢心地で武尊山初登頂。時間は10時10分、苦闘の4時間半であった。
シャクナゲと剣が峰ついに頂上に立つ
至仏山と右遠くにヒウチ
- 円形脱毛症的な山頂では、360度さえぎるものなし。至仏山が近い。2週間前の赤城の展望も見事だったが、ここはそれをはるかに上回る。稜線もアルペンムード満点。写真を撮っているうちに30分ほどで急にガスが出てきて、谷川連峰方面以外はとたんに何も見えなくなる。近くの中ノ岳、前武尊もガスの中に消える。30分登頂が遅ければ感動も半減だったことを思い、神社にお参りしておいて本当に良かったなと思う。雪渓をあえいで登ってくる登山者を肴にゆっくり食事をして、体力は完全には回復してはいないものの、11:30剣ヶ峰山への縦走を開始。
- 沖武尊からの下りは恐ろしく急斜面で、すれ違う人はみんな目は虚ろである。一方こちらは大きな雪渓を超え、平坦な稜線に入ると気分は快調!(体力は最低)適度なアップダウンを楽しむ。この稜線はシャクナゲが群生しており、まだ二分咲き程度であるが、充分目を楽しませてくれた。沖武尊から前武尊に続く尾根線と、そこからしなやかに下降する川場谷が、まるで穂高と涸沢のような雄大な景色を形作っている(行ったことはないが・・・)。武尊がこんなに素晴らしいとは全く想像していなかった。
- 1時間ほどで、剣ヶ峰山直下の分岐に到着。無体力なので剣ヶ峰へは寄らず、ここで大休止。
中ノ岳・前武尊方面。アルプスに負けない稜線
- 目の前にゼンマイとタラノメが群生していたので頂戴する。30分後、武尊沢めざして下降を開始する。この下降では地獄を見る。よくこんなところに登山道を作ったものだ、ガケ以外の何物でもない。雪解け直後の斜面は土が完全にぬかるみ、神経を完膚なまでに衰弱させてくれる。賛否両論はあろうが木道(階段)を作るべきだと思う。靴の底は泥で目詰まりして完全なスリッパ状態、途中3回滑り、そのうち一回は岩に激突しそうになるが、祈願のおかげか軽い打撲で済む。ズボンの裾とお尻はすでに泥まみれだ。小休止している時の、学生らしき3人組が笑いながら通り過ぎていく姿が大変まぶしい。
- 苦労の末傾斜が緩むところまで降りてきて、ほどなく武尊沢にて一息つく。豊富な水量だ。バンダナを固く絞り身体を拭く。冷たくて気持ちがいい。ついでにズボンの泥をふき取る。コーヒーを沸かし、パウンドケーキの残りを平らげる。例によってミニ三脚を立てカッコつけて写真を撮る。武尊沢から2時間?ほどで武尊神社到着。到着時刻は16:20。最後はヨレヨレでびっこを引くありさまであった。神社で何とか無事に戻れたお礼をし、車で1時間ほど仮眠後、帰宅の途に着いた。
- 今回は得られたものは大きいが、失われたもの(体力、おにぎり5個、カレーライス大盛り、蒟蒻畑1袋、パウンドケーキ、サプリ1本、水1リットル よく食べた)も大きい山行であった。
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