鹿島槍ヶ岳記録



山行記



殊に印象的だったのは、糸魚川街道の湖の向こうを仕切る前山の上に、二つの槍がスックと頭をもたげているのを見つけた時だった。(深田久弥)
   そのカシミール画像→
五竜岳の頂に立って、深い谷を距てたすぐ真向かいに、流れ行く薄雲の合間に隠見する吊尾根を望んだ時だった。(深田久弥)
  そのカシミール画像→



日程・コース
    2005年

<9月1日(木)>
前夜大阪発急行「きたぐに」→糸魚川→信濃大町(taxi)→柏原新道入り口 9:30 → 13:10 種池山荘 13:40 → 14:40 爺ヶ岳→ 16:10 冷池山荘(泊)
<9月2日(金)> 冷池山荘 5:00 →布引山→ 7:00 鹿島槍ヶ岳(南峰) (八峰キレット縦走断念 往復)→赤岩尾根分岐 10:30 → 14:00 西俣出合 14:50 → 15:45大谷原(taxi)→信濃大町
累積標高  山頂までの登り +1944m -413m  赤岩尾根下山 +37m -1397m
9月1日(木) 9月2日(金)



山行記 初日


◆ちょっとマジな出だしとなったが、無体力トレッカー健在なのである。本来タイトルは「鹿島槍・五竜 八峰キレト
縦走!!」となる予定であったが、途中ですっかりホキてしまい、縦走は断念、鹿島槍登頂のみとなってしまった次第。


◆「さわやか信州号」やJRは関西には冷たい。首都圏からは9月になっても早朝着のバスや夜行が運行されるが、
関西では一切ない。最寄の信濃大町に早朝到着すべく(それでも8:30が精一杯)、日本海まわりの急行「きたぐ
に」で糸魚川に行き、そこから大糸線で信濃大町まで南下する。夜明け直後姫川沿いに走る列車は旅情バツグン、
ヒスイ峡と呼ばれる絶景の谷を縫うように列車は走る。ナカナカなのである。途中で高校生がどんどん乗り込み、
夏休みが終わった平日であることを実感させられる。南小谷で電車を乗り換え、しばらく走ると車窓に白馬連山が
圧倒的な迫力で迫ってくる。8:30に信濃大町到着。


◆信濃大町を下車、すぐに柏原新道入口までタクシーに乗る。遠くに鹿島槍が赤茶けた色でそびえているのが見える。天気予報は今日は晴れ、明日以降は曇り。ま、いつもの晴れ男パワーで何とかなるやろ。登山口に9:00頃到着、準備をしていると、「あれ!しもうた!タクシーの中にケイタイ忘れた!」あちゃ〜、出だしからついてないのである。運転手さんが気がついて戻ってくるかな〜と思って、出発を遅らせていると、案の定扇沢まで行っていたタクシーが戻ってきてくれた。てなかんじで9:30頃出発!!
登山道から見る扇沢P
◆今日の予定は冷池山荘まで。行程6時間強(明日は五竜山荘までの9時間。)。出だしは急坂で息が切れる。出発が普通より遅いので、せっせと登る。いつもは「休憩魔王」と呼ばれるRIKIも今回は30分に1回のペースでグイグイ高度を上げる。種池山荘までは約4時間。途中から山荘が稜線に見えるが、なかなか近づいてくれないのである。
種池山荘がいつになっても小さい
◆13時をまわったころようやく種池山荘に到着。いつもよりペースが早いためちょっとバテ気味。バイトのお姉ちゃんが二人窓から顔を出して「お疲れ様〜、ビールありますよ」「うっっ(口から手が出る)」。だけどまだ我慢。ここで昼飯。ごはんにカンズメの焼き鳥をまぜて、簡単焼き鳥丼。針の木岳や爺ヶ岳への緩やかな稜線を眺めながらのゆったりとした時間は至福の瞬間なのである。
ようやく種池山荘に到着


◆メシ食って出発!爺ヶ岳への稜線を登る。ゆるい登りに見えたが結構な斜面である。ペース
がなかなかあがらない。息が切れる。体調は悪くないはずなのに、足が上がらない。栄養補給
は十分なのに、ザックもそんなに重くないのに???なのである。



  左:爺ヶ岳への登りから種池山荘を振返る。
右:鹿島槍方面はガスがかかる



◆14:40に爺ヶ岳・中峰に到着。ほうほうの体である。雲が出てきてあまり視界はよくない。つまらないのである。山頂で日本海・親不知から縦走してきた大学生らしき奴と会話を交わす。別れを告げ、山を下ると、クウクウと声がする。ふと足元の横のハイマツを見ると雷鳥の親子が現れた。Oh〜感激、初対面なのである。子供が草をついばんでいる間、親鳥はじっとこちらをにらんでいる。丸々してて食ったらうまいかも。(ちなみに特別天然記念物)
雷鳥の子供
◆やっとこさ冷池山荘に到着。ちかれた〜。まずはビールでのどをうるおし、♪*☆×△▼&〜 極楽気分。自炊でメシ食って6時すぎには寝てしまうのであった。明日は4時起きだあ。
冷池山荘に到着


山行記 二日目


◆たっぷり寝た。4時起きで、5時出発。その間にメシを食べ、水を2リットル購入。







◆歩き始めるとすぐに夜が明けだした。雲海の向こうに素晴らしい朝焼け。山々がモルゲンロートに染まる美しい瞬間だ。

(上左)朝焼けの戸隠方面
(上右)鹿島槍 迫力の岩壁
(左)  冷池山荘と爺ヶ岳を振り返る。



◆しかし、足が上がらない。息が上がる。ガスが湧き出し、風が黒部側から吹き出してくる。
風速は10m程度。間断なく吹くのでイライラしてくる。視界は100mほどの先の斜面しか見えない。
つらい。顔や髪の毛がぬれてくる。不思議とズボンは乾いたままなのでレインウェアは着ない。
だんだん気力が失われていく。

◆先が長いのでつらくても黙々と登る。布引山というのが鹿島槍の手前にあるのはわかっていたが、この急斜面のジグザグの道はかなり堪える。なんでこんなに気力があがらないのだろう。バテたか?キレット越えのモチベーションが足らないのか?何も見えないつまらない天候?強風?そんなことをあれこれ考えながら黙々と進む。髪の毛はビショビショにぬれている。
ガスで視界はこのくらい
◆布引山も過ぎ、視界のきかない斜面をひたすら辿った末、ようやく鹿島槍山頂(南峰)に飛び出した。本当にバテバテ。冷池山荘からちょうど2時間、時間は7:00.とりあえず息を整え、粉末でポカリを作る。風の強さは相変わらずで一向にやむ気配なし。ガスが薄くなり青空が見えたが、ほんの数十秒だけ。最初は一人だけだったが、あとから3名登ってくる。


とりあえず記念写真ということで
鹿島槍ヶ岳・南峰山頂 ホントに一瞬だけの青空


◆この先五竜まで行こか行くまいかウダウダする。行きたいけど行きたくない微妙な心境。意
を決してエイッと踏み出す。
その瞬間ブワッと強風が。。。。
ふにゃふにゃふにゃ〜と一気に萎える気力。
「やっぱ、やーめた。」 決心はわずか2歩で潰えた。。初の敗北であった。


◆もと来た道をトボトボと帰る。みじめな気持ちであった。
冷池山荘まで戻り、ベンチに腰掛けてあれこれ考える。気力がわかなければキレットは危険なので引き返したのは正解なのだろうが、なぜ気力が沸かないのだろう?




◆帰りは赤岩尾根を下ることにする。この尾根は急斜面だけど種池山荘までは爺ヶ岳の登りがあるのでイヤだ。ほんとに気力無しである。膝がおかしくなる尾根をヘロヘロ降りる。本当に膝が痛くなりやべ〜と思ったが、コースタイム通りに下る。西俣出合でゆっくり昼食をとって、大谷原まで林道を歩き、待たせてあったタクシーに乗った。
信濃大町で宿を取り、翌早朝に帰途に着いた。




(上左) 剣岳方面
(上右) 赤岩尾根上部
(下左) 西俣出合



「よ〜く考えよう、気力は大事だよ♪」   おわり


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