奥穂高岳・西穂高岳縦走
一般山岳ルート日本最難関(だそうだ)

主なピーク:奥穂高岳(3190m) ジャンダルム(3163m) 西穂高岳(2909m)
目標:「ジャンダルムでラーメン食うぞ!」

「穂高よ、涸沢よ、待たせたぜい!」
無体力トレッカーRIKI、ついに穂高に初登場!!
(ザイテングラート取付点にて)

  


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プロローグ 穂高岳 北アルプス 

穂高は日本の山岳界の聖地である。3000mの稜線上に奥穂高(3190m日本第3位)、北穂高、前穂高、涸沢岳、明神岳、西穂高、etcそうそうたるピークが大岩壁、大カールを擁してそそり立つ大伽藍である。昔から先鋭的な山岳会はみな競ってこの山を目指した。
まさに日本のアルピニストのメッカ。



(99年、家族で上高地ハイキング。背後が穂高岳)

穂高に行くのを多少躊躇していたのは、夏場、全国からこの山を目指して人がおしかけ、静かな山行がなかなか期待できないからであった。しかし、穂高に行ってないというのは、野球で言えば巨人戦を見に行ったことが無いようなもの(関西で言えば甲子園の阪神戦)。ついに9月、この聖地にチャレンジするチャンスが到来した。しかもルートは日本最難関のルートと言われる「奥穂・西穂縦走ルート」である。日程的には上高地から一日で奥穂まで上がってしまわなければならない。緊張感が全身を包んだまま、上高地への夜行バスの人となる。



<第1日> 上高地⇒横尾⇒涸沢⇒(ザイテングラード)⇒奥穂高岳山荘


2004年9月1日(水)
大阪⇒上高地(翌朝)

9月2日(木)
上高地 7:00 ⇒ 10:30横尾 ⇒ 11:35本谷橋
⇒ 13:40涸沢ヒュッテ ⇒ 15:45ザイテングラード
取付点 ⇒ 17:30穂高岳山荘


標高差:約1500m
涸沢大カール(カシミール画像)



大阪からの夜行バス、しっかり寝たつもりでも、上高地に着くとなんとなくけだるい。雨もぱらつく。予報では午前中まで雨でその後天候は回復するらしい。レインウェアを着て横尾に向かう。この道は3回目、過去2回は槍を目指して息子とたどった。何回歩いても横尾まで本当にかったるい。平地を歩くほうがかえってずっしりと肩にザックが食い込む。体調も悪い。寝不足だ〜。横尾までの2時間半、なんとかならんかのぉ。
横尾から初めて横尾谷(涸沢方面)に入ったぞ。やっぱ体調最悪。全身から「やる気」というものがまるで沸き起こらないのである。ピンチ!おまけに雨はやまないわ、空は暗いわで、お先真っ暗。おーい、午後になったら雨あがるんじゃなかったのぉ?暑いよぉ〜、蒸れるよぉ〜、最悪ぅ。
はたして今日中に穂高岳山荘まで行けるのだろうか?そして明日は西穂まで縦走できるんだろうか?

梓川。雨はずっとふっている やっと横尾。あ〜あ屏風岩が
見えないよ〜
涸沢への道は初めてだ!
これが本谷橋


9月に入り、平日ということもあって、人はまばら。この北アルプスで一番人通りが多いと思われる涸沢への道も、すれ違った人は少ない。さびしいなあ。レインウェアの中は汗でダクダク、だんだん気持ち悪くなってくる。本谷橋を過ぎると、道が険しくなる。いつもの疲労感ではない。繰り返すが体に力が入らないのだ。しかし、長年夢見た明日の西穂への縦走、ジャンダルム登頂という、強力なモチベーションは無体力トレッカーを確実に涸沢カールに一歩一歩近づけるのであった!

「こんなの涸沢じゃな〜い」通りすがりのおばちゃんが、ぶつぶつ言っている。雨は止む気配どころか、強くなってくるようなかんじ。ガスで屏風岩も何も見えない。少しでも景色が見えれば多少は元気が出るのに。。。と思って我慢して歩いていると、一瞬だけガスの向こうにカールが見えた。「おー」「おー」元気が少し出た。単純なのである。しばらくまた我慢すると、涸沢ヒュッテと涸沢小屋の分岐が現れる。そしてほどなくして涸沢ヒュッテに到着した。

「おー」「おー」やっと着いたぜ。ここがあの有名な涸沢ヒュッテかぁ!でも誰もいないもんね。誰もいないテラスを雨が激しく叩きつけている。つい数日前までは夏登山客の喧騒だったかと思うが、今はさびしい限りだ。ここでしばし休憩。水を補給し、レーションも補給。30分くらいたつと何となく周りが明るくなってきた。予報では午後から天候回復だが、遅ればせながらそうなってきたのか。


ふ〜っと息を吐き、ザックを担ぐ。明日の最難関縦走路に備えなるべく軽くしようと思ったが、着替えやら食料やらでやっぱり重い。明日は大丈夫なのかなあ?単に奥穂だけの登山なら、間違いなく今日はこれで終わり、ここに泊まっているはず。
重い足をひきずってヒュッテを出る。テントは10張程度。見上げるとガスが一瞬消えたりして、涸沢の大カールが顔を覗かせる!


「おー」「おー」(またかよ。。)写真で見るよりずっと迫力あるなあ!うん、すごいすごい!さすがは聖地・涸沢、おおお!RIKIが好きな「涸沢槍」が見えたよ!!わーかっこいいなあ!涸沢カールは涸沢槍でもっているようなもんだもんなあ。やー本物見ちゃたよ!(初心忘れず、我ながらカワイイのである)
いやー元気出てきたぞ。


涸沢ヒュッテ付近からのショット

寂しい涸沢ヒュッテも
レアでラッキーか
屏風の頭が見えてきた
ヨシヨシ
ガスの切れ間に涸沢カールと涸沢槍!
穂高で2番目に好きなピーク



涸沢カール、写真から想像するより結構急なのである。想定外なのである。聞いてないのである。ヒュッテを出てから登山路のザイテングラードまでほんの少しかと思っていたら、これ大きな勘違い、大きな岩クズにうまくつけられたルートを延々と登る。ジワジワと身体に応えてくる。ガスもじわじわと薄くなり始め、涸沢槍が見える頻度が増えてきた。前穂の北尾根のギザギザも姿を現す。あこがれの聖地が姿を現しはじめ、僕は一人そこにいる。涸沢を独り占めしている気になる。カールの途中で何度も力尽き、石クズの上に大の字になる。体調はあまりよくない。苦闘の末ザイテングラードの末端に到着する。


前穂・北尾根。カールからは
予想以上にせりあがる。
やっぱ涸沢槍はかっこイイ! 振り返れば、屏風の頭の向こうに、
常念岳も姿を現しだしたぞ


ザイテングラード末端 末端にてカッコつけるRIKI
(疲れてるのにようやる)



ザイテングラードとは独語で「支稜」「側稜」の意味。普通はリッジと言うが、この名称は穂高の固有名詞となっている。奥穂高への登山道はご丁寧にもこのザイテングラードについている。ここから岩登り的要素が強くなる(が、たいしたこと無い)。去年の剱岳や四国の石鎚山、先週の六甲・西山谷、それに比べればカワイイもんだ。


「ザイテンまでくれば、もう穂高は俺のもんだぜい!」とこれまでのヘロヘロを棚に上げ、息巻くRIKI。しかも恐ろしく長い休憩(40分)を取ってしまうのであった。ちょっとでも先が見通せると、思いっきり手抜きをしてしまうというのが無体力トレッカーの悪い癖。


案の定ザイテンを上り始めると、もう青息吐息。ヒーヒー言いながら高度を詰める。しかし、青空も見え出し、湿気もなくなり、気分は爽快!陽は西に傾き、見よ!前穂高が赤く輝いているではないか!(モルゲンロートとは言わない。モルゲンは朝焼けに輝くこと)。ザイテンを詰めること約1時間、ようやく今宵の宿・穂高岳山荘が見え出した。


ザイテンをえっちら詰める 穂高岳山荘が見えた! 天気も回復!夕日に輝く前穂高岳



山荘には17:30に到着。不調とは言え、上高地を出発して10時間以上もかかってしまったわい。夕食はキャンセルしようかと思ったが「ご遠慮なくどうぞ、今用意しますから」という優しいお姉さんのお言葉に「そうですかぁ〜♪」と甘えることにする。18時頃に遅く到着された単独行の方と二人で夕食を採る。聞けば上高地を9時に出発し、岳沢を上ってこられたと。明日は?とお聞きするとRIKIと同じく西穂まで縦走するという。


山荘の中が真っ赤に染まってくる。夕焼けが最後の輝きを増す。明日は一日好天のサインだ。日本最難関ルート縦走にはこれ以上ないサイン。緊張感は無い。静かに今日の疲れを癒す。zzzzzz


 穂高岳山荘の夕暮れ



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