2004 May.22 | 石鎚山(1982m) | 登山 |
「天は青く澄み、風もなく、この秋の好日に、ただ一人、四国の最高の地に立っているのだ。
四国一円がわが眼中に収まっているような気がした。」(深田久弥)
石鎚山は四国だけでなく、西日本最高峰(1982m)である。伊予の国の空に突き上げる尖鋒にはかなり登高意欲をそそられる。関西に赴任したRIKIは、この名山を虎視眈々と狙っていたのだ。 (上の写真:天狗岩の岩場のクライマー) |
2004年5月22日(土) (交通) 西宮から車で土小屋Pまで(片道300km) (コース) 土小屋P(7:50) ⇒ 東稜分岐(9:00) ⇒ (東稜・点線ルート) ⇒ 南尖鋒 ⇒ (11:00) 天狗岳(最高峰) ⇒ 弥山(12:00) ⇒ 二の鎖小屋 ⇒ 東稜分岐 ⇒ (13:30) 土小屋P (標高差) 600m(累積)くらい。 |
「土日はメチャメチャ暇なんですよ〜」と言う会社のO氏、独身。山登りをやるという。軽い気持ちで「じゃあ今度の土曜日、石鎚に行く〜?」と言ったら「ぜひ」と。聞けば車が出せるという。「こりゃラッキー♪」
車があれば土小屋まで入れる。土小屋からであれば、石鎚山のゴツゴツした山頂部の岩尾根を辿る「東稜コース」へのアプローチが楽だ。(ちなみに東稜コースは地図では点線、いわゆる難路)。石鎚山はロープウェイがある北側の表参道から登る人がほとんどだが(9割近いのではないか?)、こちらからのコースは本来鋭い尖峰である石鎚の姿が全くよろしくない。時間もかかる。そもそも百名山を普通に登ったのでは面白くもなんともない。
石鎚スカイラインから | アタックルート(カシミール画像) |
O氏の車はホンダのS2000。2シーター&オープンカー、おまけにマニュアルシフト。。「う〜ん、ちょっと山に行く車ではないな〜」。ナビで検索すると西宮から土小屋までは約300km、ちょっとハードなナイトドライブが始まるのである。9:00に出発、淡路島・高松自動車道・松山自動車道を経由し、川内ICでOUT。R494を南下、面河村に入る。石鎚スカイラインの入り口には2:00過ぎに到着、ここはゲートが朝7:00まで閉じているので、ゲートの横の駐車場で車中泊とする。(ちなみにR494はとてもハードな峠越えなので松山方面からのR33経由をお勧めする)
翌朝7:00のゲートのオープンと共に出発。石鎚スカイラインを快調に走る。「天気が思ったより良くないなあ〜」雨の気配はないものの、ガスがかかり気味。石鎚の姿は見えないかな?と思ったものの、途中槍ヶ岳のような鋭い姿を現してくれた時は「おお〜すげ〜」、やや興奮気味のRIKIであった。土小屋には7:30に到着、支度をしてすぐに出発する。
ゆるやかな尾根を1時間も歩くと、東稜基部に到着する。さあここが運命の分かれ道なのである。
O氏とS2000。土小屋Pにて。 | 1時間程度はゆるやかな尾根道 | 東稜基部に到着。一般ルートも あるが男の子なら東稜でしょう! |
今日は景気付けにスリングとカラピナを持参。気合を込めて「さあ、出発!」
いきなり急登。ここからイッキに尖峰群に向かう。
踏み跡は割と明瞭についており、赤いテープも所々にある。それらを慎重に確認しながら登っていく。二本足だけで登れるところは少なく、木の枝や笹を掴んでの登りがほとんど。もがき上がると目の前にドーンと岩山が現れた。おそらく矢筈岩だろう。第1の関門である。
笹をつかんでもがき登るO氏 かなりの急斜面だ |
視界が突然ひらけ、矢筈岩が現れた |
岩山はガスがかかり不気味さを増している。岩と岩の間の笹の超急斜面を這って登る。
矢筈岩の基部。バックの 笹の急斜面がルート |
笹の急登で余裕のO氏 |
急斜面はつらいものがあるが、高度がみるみる稼げて痛快だ。スゲ〜、と見上げていた岩峰があっという間に眼下に見下ろすようになる。RIKIは今まで眠っていた身体がそろそろ目を覚ましたのか、だんだんハイな気分になってくる。ぐいぐい高度を上げ、矢筈岩の上部についに到着〜!
やり〜!と思ったのもつかの間、前を見ると南尖鋒がドドドーンとそびえ立っているのである。「石の上、3年経ったら次の石」昔のサラリーマン川柳を思い出すRIKIであった。
矢筈岩に到着。 | やせ尾根の稜線を振り返る。 | 「次の石」の南尖峰。いったいどこ登んねん? |
ここから踏跡がだんだん怪しくなってくる。矢筈岩と南尖峰の鞍部では、ルートがわからず、絶壁の上で立ち往生したりする。O氏が前方で立ち止まっているので「どうした?」と言ったら、「あの〜、この先、絶壁なんですけど」「・・・・・」 こんな調子だ。
一般ルートなら鎖やロープが掛けてあるだろうな、というようなところには何もない。なんていったって点線ルートなのだ。自分の技量でルートファインディングして進むしかない。
景気付けだけのつもりで持ってきたスリングが結構役に立つ。これを木に引っ掛けて、手がかりにするのだ。
岩場を喘ぎ登っていると、ついに目の前に高さ30mはあろうかという岩壁が立ちはだかった。「どこ登るんだろうな?」しばらく岩のまわりをウロウロする二人。「ルート間違ったかな?」 でも戻る気はさらさら無い。ルートはこの岩壁の上に続いていることは間違いないので、何とか登るルートを考える。By
All Means。 しばらく考えて「このクラックを左上に登り、そこから怖いけど右にトラバース。そして次のクラックから何とか上に上がれそうだね。それが一番安全で確実みたいだ」
まずはRIKIがチャレンジ、考えていたとおりにうまく登れた。途中でO氏が上りやすいようにスリングを木に掛ける(ホントこれ便利だ)。だんだん楽しくなってくる。
「戻ったほうがいいですか〜?」遠くから声が聞こえる。岩に取り付いているO氏が「戻ったほうがいいです〜!」と大声を返す。中高年のご夫婦が戻るのが見える。きっと岩に貼りついている我々を下から見て不安になったのだろう。あの二人じゃ無理だよな〜、と思っていたが、いざ岩の上に上がってみると、別方向から踏み跡が来ているのを発見!「あれ〜、やっぱルート間違えてたのかな?」「こんな苦労しなくてもよかったのかな〜?」「あの二人にひょっとしたら悪いことしちゃったかな?」
でも、しょうがないのである。
岩の上に立つと、目の前に天狗岩(石鎚山最高峰)とその向こうに弥山が見えた。もう一がんばりだ!
南尖峰の岩壁の上から。 よじ登るO氏。 |
南尖峰より。天狗岳(最高峰)と弥山 |
南尖峰からほどなくして石鎚山最高峰、かつ、西日本最高箇所の天狗岳に到着。時間は11:00、東稜基部から2時間が経過していた。
「O君、死ぬな!もうすぐ頂上だ!」 | なんちゃってピース。天狗岳にて |
天狗岳から臨むと北側はガスで何も見えす、南方面は高曇りでまあまあの展望だ。今日ロープウェイ経由の人はおそらく何も見えなかったのではないか?弥山は人でにぎやかそうだ。天狗岳は風が避けられるところが無いので、弥山の小屋で昼食を食べることにする。およそ15分で弥山に到着、新しい弥山小屋の中で気分よくメシを食らう。
弥山から見た天狗岳。北側はガスで視界ゼロ |
このあと、二の鎖小屋までイッキに駆け下り、東稜基部に至るトラバース道(一般ルート)を辿り、土小屋には13:30に到着した。弥山から1時間半。
群馬の表妙義、剣岳、大峰山ほどのハードさは無いが、とても楽しい痛快なルートがアプローチ良く楽しめて満足満足!
帰りはR494のハードな峠越えではなく、R33を使って久万町を抜ける。やや遠回りだがこっちの方が絶対に楽。途中、川内IC近くの温泉に浸かり、豊浜SAで讃岐うどんを食べ、瀬戸大橋から夕暮れに美しく浮かび上がる瀬戸内海の島々を眺め、長距離ドライブを楽しみながら帰る。西宮には9:00頃帰還した。
途中で見た「讃岐富士」の美しさには目を見張った。
瀬戸大橋からの夕景
おわり