ファミリー登山の極意(作成途上です)

まず知っておきたいこと。

子供は大人の感性・感覚を理解しない。
素晴らしい森を歩いてリラックスした気分になる、きれいな花も咲いているよ、ああ自然っていいなあ。・・・・悲しいかな、こんなことに子供(特に小学校低学年)はあまり興味を示しません。その他にも、今まで見たことがない絶景、登高欲湧く山容などなど、おおよそ大人が山に行くインセンティブのほとんどに対して子供は興味がないのです。


したがって大人がイイ気分で歩いて充実していても、子供はとてもつまらなく「飽きている」可能性も大いにあり。いくら景色・気分の良い稜線でも、子供にとっては長時間の縦走などは迷惑そのものなのです。
子供が興味を持つのは、昆虫、へびやトカゲ、サワガニやおたまじゃくし、鹿や猿などの動物、植物ではキノコです。また山登りそのもので興味をもつのは、例えば岩などを攀じ登ること、そしてこともあろうかクサリ場なのです。後者は学校のジャングルジムなどと同じで彼らの感覚では「遊び」と同じこと、いくら「危険」を警告しても彼らは本当の恐さは分かっていません。


小学校の頃に先生や親に山に連れて行ってもらったことがある方は、その時の感覚を思い出してください。あれはきつい思い出だなあ、あれはイヤだったなあ、あの時は楽しかったなあ・・・自分の子供の頃の感覚を思い出し、自分の子供の感覚を理解する、これがまずはファミリー登山の第一歩だと言えるでしょう。


決して大人のフィーリングを子供に押し付けてはいけません。逆に子供のフィーリングは尊重することです。


最初はコースタイムで3時間以内、標高差は300mまで。


ということでファミリー登山は子供のペースで考えます。どういうことかというと、子供が虫か動物か面白い形の石などを発見、興味を示して立ち止まった場合、親はイライラせずに付き合ってあげる義務があります(私の知っている方は、山で鹿に遭遇して40分我慢したそうです。ものすごい忍耐力)。


また子供が「疲れた」「休みたい」と言ったら、よっぽどの理由がない限り休ませるべきです。几帳面な人は「30分歩いて5分休憩」だとか「ここで小休憩、ここで昼食・・・・」とか綿密な計画を遂行すること自体に喜びを感じ、それを子供に強要する場合が想定されます。が、それはB型的に言えば「アホらしい」。休みたいときに休む、腹が減ったらメシを食う、眠くなったら寝る、そして頑張り所は頑張る!


したがって、登山開始から下山までは子供のペースを全てに優先させますので、かなり余裕を持って、所要時間はガイドブックの1.5〜2倍はみておく必要があります。ガイドブックで3時間だったら、実働6時間。これで一日の日程は終了してしまうでしょう。標高差も最初は300m以内に押さえてあげましょう。


何?物足りない?そう思った瞬間あなたはファミリー登山隊失格です。大人の登山に子供を参加させる意識ではいけないのです。一般的に小学校まではファミリー登山と一般登山ははっきり区別されるべきです。子供をあなたの趣味の犠牲にしてはいけません。
ただし、山行を重ねてメンタル・体力的に慣れてきたら時間も標高差もだんだん上げていっても良いでしょう。


 Bファミ隊の失敗例 → 谷川岳登山
 逞しくなったBファミ隊 → 武川岳登山、至仏山登山、槍ヶ岳


子供にもコースと目的地、計画をよく伝えておくべし。


どんなにインセンティブを高めて出かけても、やはり山登りは子供にとってきついものです。こんなときは「ほらあそこが頂上だ!ここでちょっと休んでもうちょっと頑張ろう」「この坂を登ったらおやつ食べよう」なんて、なだめながら登らざるを得ません。


でもそれが通じるのはいわゆる「ファミリー向きの山・ハイキングコース」だけ。少々長時間の行程を要する山では通用しません。ただ単に親の後を付いていくだけの山登りだった場合、あなたのお子さんは座り込んで「もう帰る!」状態になってしまうでしょう。そして2度と一緒に山には付いてきてくれません。これでは最低です。


行く前や登っている途中でも、マップを見せて「ほら、ここから登ってここでおやつ。ここは水が流れているので休憩〜。ここからここまではちょっと長いけど頑張ろう。」「最後にすごい坂があるけどそれ頑張ったら終わり〜。」「今日はこの池までで、ご飯食べたら帰るよ」などと頻繁にコースととりあえずの予定を教えてあげましょう。地図がわからなくても、この先どうなるのかなんとなく分かって子供は安心します。そして頑張ります。「ここに着いたら超スゲー眺めだぜ!」「ここちょっと頑張ったら雪があるんだぜ。雪食べようぜ」・・これで子供が「本当?」と言ったら最高です。


「子供だから地図で説明してもわからないだろう」「短い行程だから別に説明しなくてもいいや」・・・これもファミリー登山隊失格です。
  Bファミ隊の失敗例 → 八方尾根
  Bファミ隊の成功例 → 谷川岳(肩の雪田で子供に元気が)、至仏山


ダラダラしたところよりはピリッとしたところを



どういう事か?「山登りはある程度頑張らなければいけない」こともやはり子供には教える必要はあるでしょう。最初は楽な山を選ぶのは鉄則ですが、二回目も三回目も大した苦労もせずに登れる山を選ぶと子供が「山を勘違い」してしまいます。


「一生懸命頑張って登れば眺めが良い頂上に行ける。ごはんもおやつもジュースも飲める」という教育的な山を選びましょう。行程が片道1時間30分だったとしたら、せめて20‐30分はきつい登りがあるほうが1時間30分ずーっとダラダラしてる山より「教育的」になります。



もしお子さんが頂上まで頑張ったら、帰宅するまで「頑張ったなあ」「すごいぞ」と言い続けましょう。



 おすすめの山 → 小沢岳、筑波山、那須岳


一般的注意

低山でも山をなめるな!



これは鉄則です。高尾山でも筑波山でもなめてはいけません。筑波山の女体山頂は危険な岩場、奥武蔵のやさしそうな山々でもうっかりすると転落の危険があります。なんとあの尾瀬でも遭難・行方不明者も出ているのです。低山ではありませんが私は7月の根子岳で凍えそうになった経験があります。小学校の時は600m級の低山で級友が一時行方不明になった事件もありました。


ファミリーハイキングの場合、低山を選ぶことが多いと思いますが、子供は大人の予期しない行動をとることがあります。「山では油断は絶対禁物」



・防寒着・レインウェアは必ず持って行こう。(夏はレインウェアが防寒着兼用) → 筑波山

・足元が悪い場所(頂上も含む)では絶対目を離さないように。 → 那須岳 谷川岳
・子供を先に行かせて単独行動をとらせることは絶対禁物。 → 失敗例:鐘撞堂山
・万が一先に行ってしまった場合、分岐のところは必ず待っているように教える。 → 失敗例:鐘撞堂山


子供にもきちんとした装備を



子供の山道具は適当なもので間に合わせて・・・こう考えるのは間違いとは言えません。お金持ちの中高年を狙っているのか山道具は納得がいかないくらい高価なものが多いこともあり、低山やハイキング程度であれば学校の遠足と同じで結構だと思います。


ただちょっと高い山やコースの途中に岩場や急斜面がある山ではそうはいきません。たとえ高価でも下記のものはきちんとしたものを用意すべきでしょう。「命に関わること。金で済めば安い!」(業者の思うつぼ!という声も・・・)



 レインウェア・・・ゴアでなくてもOK。ピクニック程度でも絶対(Repeat 絶対)持っていこう!

 シューズ・・・あたりまえ!
 ソックス・・・専用のものでなくても、厚手のものを。
 ズボン・・・専用のものでなくても「伸縮性」のあるものを
 速乾性のウェア・・・高価ですがアルプスなどを縦走するときは目をつぶらざるを得ない?


*ストックについて

山でストックを使うことを「生理的に」嫌う人がよくいます。ましてや子供にストックを持たせるなんてとんでもない・・・
実は私はストック肯定派です。
理由1「長く山登りをしたいから」
そもそも人間は、山岳地帯を歩き回るには適していない動物なのです。平地に住む前提で2本足歩行に進化したものだと考えられます。山に適していない人間が山を歩くとどうなるか・・腰やヒザに想定以上の負荷がかかっていることになります。本来山歩きには適していない人間の腰とヒザ、これを頻繁に山登りで酷使したらどうなるか・・ヒザの靭帯がゆるみ(ゆるんだら医学的に二度と元にもどりません)関節にひずみが生じ、時折襲ってくるヒザ通に悩まされるハメになるでしょう。そして年をとるにつれある日突然山に登れなくなってしまいます。ストックを使ってみると分かりますが、腕やわきの下が筋肉痛になります。それだけ足への(特にヒザ)負荷を分散している証拠です。私たちは競技登山をやっているわけではなく、プロの登山家でもありません。長〜く趣味としてやって行きたいのです。「山にストックは邪道だ」「初心者まるだし」「巷のおばちゃんと一緒」などと言う非論理的な理由でストックを否定するのは山寿命を縮める結果となるでしょう。

理由2「転ばぬ先の杖」
子供にストックを持たせるのはこちらの理由からです。登りでは身体の姿勢は割と安定しており私もストックをあまり使用しませんが、下りの場合は非常に不安定になります。不安定であればストックを用いて支点を増やし、安定性を高め転倒などを事前に防ぐことはリスク回避の当たり前の思考です。
2本ストックを用いることで、支持点を最大4つまで増やせることになり、変な使い方をしない限り事故率はかなり軽減されるはず。岩場などでは「3点支持」を声高らかに訴える人で、一般登山道ではストックを否定する人がいましたが、全く論理の一貫性に欠けていると言わざるを得ません。
私がストックを使わない人の理由で納得がいったのは、「ストックで山を下ると身体の自己バランス感覚が狂ってしまい、競技スキーに影響する」・・これだけです。

もちろん以上のことは「ストックを正しく用いる」ことが大前提。長さをきちんと調整する、岩の間などに差し込むような使い方は避ける、クサリ場などでは使わない・きちんと仕舞う、岩の上などストックが滑りそうな所は避ける、など基本をきちんと押さえた使用方法を守ることはマスターし、子供にもきちんとレクチャーしてください。
あくまできちんとした使い方ができたらという前提ですが、きれいに整備されたハイキングコースでもストックを使うことに子供が興味を持ってくれて、「ストックが使いたいから、また山に行きたい!」と言ってくれたら、それはそれでいいじゃないかと思っています。

また以下のような人は、ストックを用いるどころか山には出入り禁止です。
・草花にストックを平気で刺す。
・土などを穿る。
・山小屋の床、休憩の木製ベンチ、などに刺す。
・ストックを振りまわす。
・ストックの先を剥き出しにしてザックに着ける。


・混雑を避けて一日を有意義に

 朝6:00に起床、用意して、朝ゴハン食べて7:30に出発〜つ・・・・・首都圏などでこれを春・秋の行楽シーズンなどに行うと大変です。渋滞に巻き込まれ到着が昼過ぎに・・・これではもう山登りはムリです。関東地方でスムーズに行動をするには人と同じことを考えていたら負けです。時間差攻撃、場合によっては前夜から行動を起こしましょう。6:00以降に出発した時点で、もうすでに「負け組」と思ってください。逆に午前中に登山・ハイキングを済ませておけば、ちょっと寄り道しても夕方には家に到着できることもあります。そうすると子供達はまだ遊べ、親は次の日に備えて英気を養うことができます。
そもそも山というものは、明るくなったら行動開始、午前中にすべての行動を行っておくのが理想。普通の行楽と同様に考えていると、午後からの天候の急変(山では非常に多い)など、思わぬ事態に巻き込まれます。


・下調べは入念に

現地までの交通、所要時間、駐車場の有無、トイレの有無、ロープウェイなどの始発・最終時刻、コースの状況、水場の有無、エスケープルート、面倒くさがらずにできるだけ調べておきましょう。「行き当たりばったり」・・・下界では楽しい冒険旅行も山では命取りになることもあります。
また、計画したコースは複数の情報を取って、本当に子供と一緒に歩けるコースなのかどうか最後まで慎重に検討してください。


トイレ

必ず(REPEAT 必ず)山に登る前に特に「大」はさせておきましょう。ウチの子供達は山でもよおしてきたらどんなにつらいかはよーく分かってきたので、最近はムリしてでも頑張るようです。どうしても山の中でもよおしてきたら・・・・「山の神様、失礼いたします」と言わせて実行するしかありませんが、環境にハードな影響を与えていることを十分認識してください。使ったティッシュはビニールなどに包んで必ず持って帰りましょう
我が家の場合、子供達の山行前のトイレが無事済んだらホッとします。


子供に山で守らせる「約束」

・山では絶対石を投げてはいけません。
・山では絶対走ってはいけません。
・山では絶対一人になってはいけません。
・山では出会った人に「こんにちは!」と挨拶しましょう。
・山では大人の言うことをちゃんと聞きましょう。

最初は登山口でこのくらいをしっかり約束させましょう。



山には神様がいることを教えよう!


どんな山にも神様がいることを子供にも教えましょう。
「悪いことをしたら神様のバチがあたるぞ〜」なんて脅かす必要はありません。
「神様が見守っているから、一生懸命頑張ろう!」この精神です。
「山には登らせてもらっている」「木、水、鳥や動物、み〜んな神様のおかげで生きている」
将来の山に対する謙虚さ、畏敬の念の土壌となります。
ちなみに我が隊では山でオシッコをする時は「山の神様、失礼しま〜す」と必ず言わせます。


山一筋!のストイックおじさんにはならないように。
報告は謙虚に。

尾瀬や上高地。山から降りてくると登山者ではない観光客と一緒になります。これを生理的に嫌う人がいます。「オレはお前達とは違うんだ」そう思っているのか、「シャッター押して頂けませんか〜」の声を無視する人を見たことがあります。これではネクラな「山オタッキー」。せめて子供と一緒の時は最後までニコニコしてましょうよ!B型ファミリーはすぐまわりに同化してしまう単純ファミリーなので、シャッターは何枚でも押してあげますよ!
また記録をHPなどにUPする場合は、たとえコースタイムの何倍も時間が掛かっていても、正直に記載して欲しいものです(私が見たHPの中には、本当にこの時間で歩いたのお?と思ってしまうものがありました)。
ゴルフであれば標準打数(=PAR)より少なくまわれたとかは価値があるでしょうが、山登りは「競技」ではありませんので、ガイドブックのコースタイムより短い時間で登ったとかは全くなんら価値はありません。あらかじめ安全に計画を立てるための目安、これがコースタイムの唯一の役割です。

さらに繰り返しになりますが、山、特に子連れの場合は何が起こるか分かりません。したがってHPを訪れてくれる方のために、山での失敗例はできるだけ正直に記載したいものです。「B型ファミリー物語」は、子供を連れて山に行ってみようかなあ、と思ってらっしゃる方のために作成したHPです。ですから我々の失敗談はできるだけ全て謙虚に報告するようにしています。カッコつけても意味がありません。